
近年、企業の人事施策において、従業員のメンタルヘルスへの配慮が重要視されるようになっています。
働き方の多様化などを背景に、精神的な不調への対応は、企業にとって避けて通れない課題です。
本記事では、法定制度ではない「メンタルヘルス休暇」という考え方について整理したうえで、海外の事例をもとに、日本企業が制度設計や運用を検討する際の参考となるポイントを解説します。
メンタルヘルス休暇は制度として定義されているのか
日本を含む多くの国では、「メンタルヘルス休暇」という名称の法定休暇は存在していません。
精神的な不調による欠勤は、病気休暇や有給休暇の範囲で取り扱われるのが一般的です。
そのため、企業がメンタルヘルス休暇を導入しているといっても、実際には特別休暇として独自に設けている場合や、既存の休暇制度の対象範囲を明確にしている場合がほとんどです。
制度の有無よりも、どのように運用されているかが重要なポイントとなります。
なぜメンタルヘルスへの配慮が重視されているのか
職場におけるメンタルヘルスは、以前から課題として指摘されてきました。
精神的な不調が欠勤や休職につながるだけでなく、出勤していても十分に力を発揮できない状態を生む可能性があることが、各種調査や報告で示されています。
ここで注意したいのは、休暇制度を導入すれば必ず生産性が向上するといった単純な因果関係が示されているわけではない点です。
一方で、不調を抱えたまま働き続けることが、本人だけでなく職場全体に影響を及ぼす可能性があるという認識は、徐々に共有されるようになっています。
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海外におけるメンタルヘルス休暇の考え方
海外では、メンタルヘルス休暇という名称の制度を設けるよりも、既存の休暇制度の中で精神的な不調に対応する考え方が一般的です。
アメリカにおける位置づけ
アメリカでは、精神的な不調による欠勤は、病気休暇や個人休暇の枠組みで対応されるのが一般的です。
一部の企業では、従業員のウェルビーイングを目的として「メンタルヘルスデー」と呼ばれる休暇を設けている事例も見られますが、これらは法的に義務付けられた制度ではなく、企業独自の取り組みです。
スウェーデンにおける対応
スウェーデンでは、精神的な不調も身体的な不調と同様に病気として扱われ、病気休暇制度の中で対応されています。
短期間であれば医師の証明なしで休養を取ることができる仕組みがあり、結果として従業員が休みを取りやすい環境が整えられています。
オーストラリアにおける考え方
オーストラリアでも、精神的な不調は病気休暇の対象に含まれるのが一般的です。
新たな休暇制度を設けるというよりも、既存の制度の中でメンタルヘルス不調も正当な理由として扱う運用がおこなわれています。
日本企業における現状と課題
日本では、メンタルヘルス休暇は法定制度ではなく、企業が任意で設ける特別休暇に該当します。
そのため、制度の有無や内容は企業によって大きく異なります。
制度が整っていたとしても、実際には利用が進まないケースも少なくありません。
その背景には、周囲への配慮や評価への影響を気にして休みにくい職場文化があると考えられています。
日本企業においては、制度設計だけでなく、利用しやすい環境づくりが課題となっています。
海外事例から日本企業が学べるポイント
海外の事例を見ると、新しい休暇制度を導入すること自体が目的ではないことが分かります。
精神的な不調を理由とした休養を正当なものとして認め、その考え方を社内で共有することが重要です。
既存の休暇制度の中でメンタルヘルス不調も対象に含まれることを明確にしたり、短期間の休養を取りやすくしたりするだけでも、従業員の受け止め方は変わります。
管理職や人事の関わり方も、運用面で大きな影響を与える要素です。
まとめ:メンタルヘルス休暇を検討する際に押さえたい視点
メンタルヘルス休暇は、特定の制度名として導入すべきものではありません。
従業員が心身の不調を感じたときに、過度な負担を感じることなく相談や休養ができる環境を整えることが、本来の目的です。
海外の取り組みは、そのためのヒントを示しているにすぎません。
日本企業においても、自社の規模や文化に合わせて、どのような形が現実的かを検討することが求められています。


