戦略人事をご存知でしょうか。
近年、日本経済を取り巻く状況は目まぐるしく変わり、それに伴い人事部のあり方も変化を求められています。
外資系企業では戦略人事の導入が進められており、従来型の人事からの脱却に取り組んでいます。
今回は“戦略人事とは何か”“なぜ戦略人事が必要とされているのか”に焦点を絞ってご紹介をしていきます。
戦略人事とは何か
戦略人事とは、アメリカの経済学者が提唱した4つの人事の役割をもとに経営戦略と連動して人材・組織の変革を行っていくものです。
通常、他社よりも良い業績を実現するためには、経営戦略を策定することで目標達成を目指していくことになります。
戦略人事は、この経営戦略と連動させることにより競合優位性(業績アップ、目標達成)を目指しましょう、という戦略です。
つまり、明確化された経営戦略をもとに、効率よく組織的なサポートをすることが戦略人事で求められているのです。
企業の力となる人材を経営戦略にもとづいて戦略を立てるというのは、確かに理に適っているような感じがしますね。
では、近年戦略人事の必要性が叫ばれているのはなぜなのでしょう。
なぜ今戦略人事なのか
現在、日本経済は急速に多様化しており、この流れに対応するため従来型のオペレーション業務から脱却し、人事・組織の領域で他社との差別化を図って、競合優位性を目指す方向に舵を切るべきと言われています。
従来型のオペレーションが効かなくなった原因として、バブル時代に起きた日本の経済成長が一段落したことが挙げられます。
高度経済成長期の日本では、終身雇用制度が戦略としてマッチしていました。しかし、今の日本経済は高度経済成長期とは大きく異なるので、従来の人事的戦略がマッチしないのです。
さらに、日本は少子高齢化の影響で労働力人口(働く意思と能力を持つ15歳以上の人)が減り続けており、働き方も多様化しています。
このような背景により、これまで当たり前に行われていた大量採用や人事システムが通用しなくなったため、企業は生き残りをかけた変革を迫られているのです。
人事の重要な4つの役割
戦略人事はデイビッド・ウルリッチ教授の提唱した4つの役割(戦略パートナー、変革エージェント、人材管理のエキスパート、従業員チャンピオン)で構成されており、これをベースとして人事機能を下記の役割に整理しています。
1.HRビジネスパートナー(HRBP)
経営者の右腕として、経営戦略をしっかりと理解し、人材・組織面から目標達成のための戦略を立て、実行する
2.センターオブエクセレンス(COE)
人事領域の専門家として、採用や人材開発、制度設計、組織開発などを行う
3.HRシェアードサービス(HRSS)
人事の日常的な業務で、福利厚生や労務管理を行う
4.チーフヒューマンオフィサー(CHO/CHRO)
人事部門に関わる全ての事に責任を持つ人物。
最高人事責任者人事のプロフェッショナルであると共に、企業の課題解決を提案・実行していく
企業の資源は“人・物・金”と言われています。
戦略人事は企業の資源である“人”を経営戦略と連動させ、採用、配置、評価、教育などの人事機能も整合性を持たせて変革していくことが必要となります。
そのため、人事担当者は経営方針や事業目標を正しく理解しなくてはなりません。
戦略人事成功に欠かせないキーマン
戦略人事を取り入れることで得られるメリットは大きいですが、上手く機能していない企業も多くあります。
戦略人事は人事部だけでは成立しません。
経営者
戦略人事は経営戦略ありきです。経営戦略が不明瞭であったり、一貫性がない場合は的確な戦略人事を策定することができません。
経営者は目指すべきゴールに沿った戦略を立て、人事がパートナーであるという認識を持つことが肝要です。
人事
人事は経営戦略を正しく理解し、人材・組織的な面から企業目標を達成するためのサポートをすることが求められています。
人事の専門知識とビジネスに関する理解を深め、従業員に戦略の必要性を説明し、全従業員が同じビジョンを共有しなくてはなりません。
従業員
戦略人事には変化が伴います。従業員の中には、変化を嫌う方も少なからず存在するでしょう。
抵抗感を示す従業員は、戦略人事の必要性を理解できていないことが大きな要因と考えられます。
理解してもらえるように丁寧な説明と意識改革が必要となります。
戦略人事で大切なことは、人事部だけではなく、企業の人間すべてが当事者意識を持ち、同じビジョンを共有するところにあります。
人事部は経営者と従業員のかけ橋になるよう尽力しましょう。
まとめ
戦略人事についてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
戦略人事では、事業目標を達成するために社員一人一人の能力を最大限に発揮することが求められます。
人事に求められる役割は非常に大きいですが、戦略人事は全従業員の協力なくして成功しません。
全従業員に戦略人事を行う理由や経営のビジョンを明確に示し、協力を仰ぎましょう。