少子高齢化が進んでいる近年、外国人を雇用する企業も増えてきました。
しかし、「外国人を雇用したいけど、採用の流れが分からない」「そもそも外国人を雇用すると、どのようなメリットがあるの?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、外国人採用の流れや注意点について解説いたします。
また、優秀な外国人を採用するポイントや外国人採用のメリット、不法就労が判明したときの対応方法についてもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
外国人採用の流れ
外国人採用の流れを具体的にご紹介いたします。
STEP1:募集する
募集は「求人広告」「教育機関」「公的機関」「人材紹介会社」を活用する方法があります。
求人広告の活用
日系新聞や外国語の新聞、雑誌などから募集ができる他、
- Wantedly
- Indeed
といった、海外でも利用されているサービスを活用すれば、海外在住の外国人にも求人情報の発信やスカウトを行えます。
教育機関の活用
大学などの教育機関の就職課や学生課とコンタクトを取り、求人票を掲載することができます。
教育機関の場合、無料で求人情報を掲載できるところが多いですが、手続き方法は学校によって異なりますので、事前の確認が必要です。。
公的機関の活用
ハローワークや外国人雇用サービスセンターなどの公的機関を通して、求人票の掲載や紹介を受けることも可能です。
外国人雇用サービスセンターは、東京・大阪・名古屋・福岡のみに設置されています。
参考:厚生労働省「外国人雇用サービスセンター一覧」
人材紹介会社の活用
民間の人材紹介会社を活用すれば、希望する条件にマッチする人材を紹介してもらうことができます。
ただし、「介護に強みがある」「アジア人が多く登録している」など、紹介会社によって特徴が異なるため、希望内容に合うエージェントを選定することがポイントです。
STEP2:在留資格(就労ビザ)/学歴・職歴を確認する
外国人が日本で働くには、適切な在留資格(就労ビザ)が必要となります。
採用予定者が日本にいる場合
採用予定者が日本在住の場合は、その人が持っている在留資格を確認しましょう。
在留資格とは、その人が日本に滞在するために必要となる資格のことです。
在留資格には「留学」「技術・人文知識・国際業務」など、様々な種類があり、それぞれ許可されている活動の範囲が決められています。
この範囲を超えて活動することはできないため、
- 採用予定者の保有している在留資格
- 従事させる予定の職種・業務内容
が一致しているかを確認する必要があるのです。
就労ビザが従事させる予定の職種と一致しない場合は、該当する種類のビザに変更しなくてはなりません。
採用予定者が海外にいる場合
海外在住の外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合、就労ビザの申請を行わなくてはなりません。
就労ビザを取得するには、申請職種ごとに定められている要件をすべて満たしている必要があるため、雇用契約を結ぶ前にしっかりと確認しておきましょう。
具体的には、
- 従事する職務に関連する専攻の学歴
- 10年以上の実務経験
などが、入管法(出入国管理及び難民認定法)によって定められています。
判断が難しい場合は、入国管理局へ直接問い合わせをしたり、入国管理業務に詳しい弁護士や行政書士に相談したりすると確実です。
STEP3:雇用契約を交わす
就労ビザを確認して内定を出したら、当人と直接、業務内容や賃金といった労働条件について話し合い、書面による雇用契約を結びましょう。
日本と海外では、労働環境や雇用慣行が大きく異なるため、認識の違いからトラブルが発生することもあります。
法律上は、労働条件通知書が交付されていれば、雇用契約書はなくても問題ありませんが、トラブルを回避するには、労使双方が合意した上で雇用契約書を取り交わすことが重要です。
また、雇用契約書を交付しても、当人が理解できないと意味がありません。
そのため、外国人の雇用契約書を作成する際は、英語や内定者の母国語で作成したり、原文の翻訳も用意したりするなど、配慮が必要です。
STEP4:就労ビザの申請手続き
就労ビザの審査は1ヶ月~3ヶ月程度かかるため、内定を出したらすぐに申請手続きを始めましょう。
また、就労ビザは「必要書類を揃えて提出すれば必ず認められる」というものではなく、様々な条件によって審査されるものです。
審査の結果、不許可になる場合もあることを認識しておきましょう。
また、不許可の理由については、基本的に開示してもらうことができません。
留学生を新卒採用する場合
留学生の場合、在留資格が「留学」となっているため、就労可能な在留資格に変更する必要があります。
入国管理局へ「在留資格変更許可申請」を行いましょう。
日本在住の外国人を中途採用する場合(前職と違う職種)
採用予定者に前職と違う業務を担当してもらう場合、就労予定の職種・業務内容に該当する在留資格に変更しなくてはなりません。
そのため、入国管理局へ「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
日本在住の外国人を中途採用する場合(前職と同じ職種)
前職と同じ職種の場合、基本的に就労ビザに関する手続きは必要なく、採用予定者の次回ビザ更新時に「在留資格更新許可申請」をすれば問題ありません。
ただし、場合によっては更新時に不許可となることもあるため、「就労資格証明書交付申請」を行っておくと安心です。
就労資格証明書交付申請とは、「採用予定者の保有している就労ビザで、転職後も問題なく就労できるか」を入国管理局に判断してもらう手続きです。
海外にいる外国人を採用して日本に呼び寄せる場合
海外在住の外国人を現地で採用し、日本に呼び寄せる場合、
企業が「在留資格認定証明書」を入国管理局に申請する
↓↓↓
「在留資格認定証明書」が発行されたら、海外の内定者へ送付する
↓↓↓
内定者本人が認定証明書とパスポートを持って、本国の日本大使館・領事館に就労ビザを申請する
の手順で準備を進めます。
受け入れ企業の規模によっても異なりますが、在留資格認定証明書の審査には、1ヶ月~3ヶ月程度かかるため、内定が決まり次第すぐに申請をスタートするのが望ましいです。
ただし、認定証明書は、発行されてから3ヶ月以内に入国しないと、無効になってしまいます。
そのため、採用から入国予定日までの期間が長い場合は、申請時に内定者の入国予定日を伝え、発行時期の調整をしてもらいましょう。
STEP5:受け入れ準備
就労ビザを取得したら入社日を決め、
- フライトの手配(海外から呼び寄せる際)
- 住居の手配
- 日本語学校の手配
- 研修や教育体制の整備
などを行い、受け入れ準備を整えましょう。
STEP6:入社
外国人を雇用した際は、
- ハローワークへ「外国人雇用状況報告」(企業が申請)
- 入国管理局へ「所属(契約)機関に関する届出」(本人が申請/代理申請可)
- 住民登録の指導
を行いましょう。
外国人を雇用した際や離職した際は、「外国人雇用状況の届出」がすべての事業主に義務づけられているため、忘れずに行ってください。
契約機関に関する届出は、14日以内に行う必要があり、これを怠ると次回ビザ更新時の審査に影響を及ぼします。
届出について知らない外国人もいるため、必ず本人に伝えましょう。
また、居住地が決まったら、その住所を管轄する市町村役場にて、外国人本人が住民票の登録を行います。
住民票に登録すると、銀行口座の開設もできるようになります。
原則、入国から14日以内に行う必要があるため、入社前に忘れず説明してください。
参考:厚生労働省「外国人雇用状況の届出」
参考:法務省「所属(契約)機関に関する届出」
優秀な外国人を採用するポイントは?
ここでは、どのようなポイントを抑えれば、「即戦力となる優秀な外国人」を採用できるのかを、ご紹介いたします。
給料を見直す
海外の多くの国では、成果主義の考え方が主流です。
そのため、基本給はありますが、従業員の能力や成果に応じて給料やボーナスが決まり、在籍期間が短くても成果を出せば、その分きちんと報酬が与えられます。
一方、日本は年功序列制度の企業も多いため、若手社員が成果を出しても、在籍期間の長い社員の方が多く報酬を得る仕組みです。
また、制度面の整備はされていても、能力に見合った給料が反映されていないケースも多く見受けられます。
このような状況では外国人労働者が魅力を感じにくいため、優秀な人材を採用するには十分な給料を支払うことがポイントと言えるでしょう。
多言語の対応
外国人労働者を雇い入れる際に問題となるのが、コミュニケーションです。
企業が外国労働者に日本語力を求めるように、外国人労働者も働く仲間に英語力を求めているため、多言語対応も重要なポイントとなります。
日本語しか話せない従業員ばかりでは、外国人労働者の負担が大きいですし、業務に支障をきたす恐れもあるため、社内の英語力強化を図ってみてはいかがでしょうか。
外国人を採用するメリットは?
つづいて、外国人を採用するメリットをみていきましょう。
若い労働力を確保できる
少子高齢化の進む日本では、年々若い働き手が少なくなっており、企業間の人材獲得競争が激化しています。
また、働き方改革や価値観の変化などにより、転職が珍しくなくなった現在、従業員の離職も企業にとって大きな課題となっています。
多言語対応や日本語習得のサポート、教育マニュアルの整備など、日本語力が低くても働ける環境を整えることができれば、海外の若い労働力を確保することが可能です。
海外進出の際に戦力となる
海外進出をする上で、文化や風土、市場調査など、その国に対する情報収集は欠かせません。
進出予定国出身の人材を雇用すれば、情報収集時はもちろんのこと、現地人との交渉時にも大きな貢献を期待できます。
外国人観光客への対応ができる
日本には、毎年多くの外国人旅行客が訪れています。
しかし、英語を苦手とする人も多いため、コミュニケーションが上手くいかず、十分なサービスを提供できないこともあります。
外国人材を雇うことができれば、海外からの観光客にもスムーズに対応することが可能です。
組織の活性化
日本とは違うバックグラウンドを持つ外国人労働者からは、日本人では思いつかない発想や、アイディアが出てくるでしょう。
そうした柔軟な発想は、日本人従業員の刺激になるだけでなく、新たな価値の創造にもつながります。
また、多様な人材を採用すれば、「ダイバーシティを推進している企業」としてイメージアップにもつながるでしょう。
外国人を採用する際の注意点とは?
ここでは、外国人を採用する場合の注意点をご紹介していきます。
就労ビザの下りない職種もある
外国人の場合、就労ビザの範囲内かつ定められた期間内に限って、日本での就労が認められています。
現在のところ、単純労働に従事することを目的とした在留資格はないため、コンビニのレジ担当や一般事務といった、特別なスキルを要求されない職種には就労ビザが下りません。
そのため、外国人を採用する場合は、担当してもらう業務内容が就労ビザの範囲内なのかを確認する必要があります。
就労ビザの種類は、
- 外交:大使・公使など
- 公用:大使館・領事館の職員など
- 教授:大学教授など
- 芸術:画家・作曲家など
- 宗教:宣教師・僧侶など
- 報道:カメラマン・記者など
- 経営・管理:経営者・役員など
- 法律・会計業務:弁護士・税理士など
- 医療:医師・看護師など
- 研究:政府関係機関や私企業の研究者
- 教育: 小学校・中学校・高等学校の教師
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニア・デザイナー・通訳など
- 企業内転勤:日本の支社に転勤する従業員
- 技能:調理師・パイロットなど
- 興行:ダンサー・歌手・スポーツ選手など
- 技能実習:技能実習生
- 高度専門職:高度な学術研究・技術分野など
です。
詳細は、出入国在留管理庁「在留資格一覧表」をご覧ください。
但し、2019年4月より新設された特定技能1号、2号では、建設業、介護、農業、漁業等の14の業種で労働を許可しています。
詳しくは、法務省や入国管理局などに確認しましょう。
学歴や実務経験を確認する
「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」を申請するには、学歴要件があります。
具体的には、
- 職務に関連する科目を専攻し、大学または大学と同等以上の学校を卒業
- 職務に関連する科目を専攻し、日本の専門学校を卒業
- 10年以上の実務経験(在籍証明書が必要)
- 以上のいずれかを満たしていること
と定められています。
例えば、経理の専門学校に通っていた学生を営業で採用するなど、職務と関連していない場合、申請しても「不許可」となる可能性が高いです。
ただし、学歴がない場合でも、10年以上の実務経験があれば、就労ビザを取得することができる可能性はあります。
そのため、外国人の採用を行う際は、必ず学歴や実務経験を確認しましょう。
【卒業証明書の見方】
海外の大学を卒業している場合、卒業証明書に
Associate(準学士)
Bachelor(学士)
Master(修士)
Doctor(博士)
の学位が記載されているかを確認してください。
ただし、国によって学校制度は異なります。
上記の基準が当てはまらない場合もありますし、本人は大学だと思っていても、日本の基準では、専門学校に当たる場合もあります。
不明な場合は、出入国管理局や入国管理業務に詳しい弁護士、行政書士に相談してみましょう。
就労ビザの「在留資格」と「在留期間」を確認する
先述の通り、外国人は就労ビザで決められた範囲内かつ定められた期間に限り、就労を認められています。
したがって、在留資格で定められている活動範囲を超えて就労した場合は、「不法就労」となりますし、在留期間以降も日本に留まっていれば「不法滞在(オーバーステイ)」となってしまいます。
そのため、日本在住の外国人を採用する際は、その人が保有している就労ビザを確認する必要があるのです。
就労ビザの種類は、在留カードで確認できます。
【在留カード表面】
【在留カード裏面】
画像引用:出入国在留管理庁「在留カードとは?」
在留カードには、
- 番号
- 氏名
- 顔写真
- 生年月日
- 性別
- 国籍
- 住居地
- 在留資格
- 就労制限の有無
- 在留期間(満了日)
といった情報が載っています。
採用を検討する際は、在留カードの表面に記載されている「在留資格」と「在留期間(満了日)」を確認しましょう。
満了日が過ぎていて、裏面に「在留資格更新許可申請中」などの記載がない場合、在留資格は消失しているため、雇用できません。
不法就労が判明した場合の対応について
不法就労が判明した場合、外国人本人はもちろんのこと、事業主も「不法就労助長罪」として、3年以下の懲役もしくは、300万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
不法就労とは、
- 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
- 入国管理局から働く許可を得ずに働くケース
- 入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
のことです。
?
不法滞在者や被退去強制者が働くケース
「密入国した人」や「在留期限が切れた人」、「退去強制が決まっている人」など、日本に居てはいけない人を働かせてしまった場合が当てはまります。
入国管理局から働く許可を得ずに働くケース
「観光等短期滞在目的で入国した人」や「留学生や難民認定申請中の人」など、就労が認められていない人を働かせてしまった場合のことです。
入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
「語学学校の先生として働くことを認められた人が工場・事業所で単純労働者として働く」「留学生が許可された時間数を超えて働く」のように、定められた範囲を超えて働かせてしまった場合のことを言います。
不法就労判明時の対応方法
万が一、不法就労が判明した場合、法律で禁止されているため、当該外国人を解雇せざるを得ません。
ただし、「不法滞在を理由として、雇用した外国人従業員を解雇できるか」が問題となり、企業側が不法滞在を知っていたかどうかで、対応が変わります。
参考:入国管理局「不法就労助長罪」
不法滞在を知らなかった場合
雇用契約を結ぶ際、「パスポート」や「在留カード」、「履歴書」などから、合法的な在留を確認した上で雇用したにもかかわらず、
- 雇用後に、提出された書類が偽造であったことが判明した
- 在留期間の更新期限が過ぎ、不法滞在になってしまった
ケースです。
この場合、採用時の経歴詐称を解雇対象として、就業規則の懲戒事由に記載していれば、即時解雇できる可能性が高いと考えられます。
また、在留期間の更新手続きを忘れて不法滞在になってしまった場合、当該外国人には、退去強制や出国命令手続きが取られる可能性が高いです。
1日でも在留期限が過ぎれば不法滞在になるため、判明した時点で入国管理局へ直接出向き、相談してください。
外国人だけでは上手く説明できないこともあるため、更新を忘れてしまった事情を書面にまとめたり、企業の人事担当者が同行したりするとスムーズです。
不法滞在と知った上で雇用した場合
採用する前から在留資格がなく、不法滞在者であることを知った上で雇用した場合、当然入国管理法の「不法就労」「不法就労助長罪」に該当します。
しかし、違法であっても雇用関係が成立している以上、労働者保護規定が適用されます。
そのため、労働基準法や就業規則と照らし合わせて解雇を行わなくてはなりません。
したがって、不法就労者であっても、
- 30日前の解雇予告
- 30日分以上の平均賃金を支払う
のいずれかを行う義務が生じます。
採用の流れや注意点を把握してメリットを最大限に引き出す
外国人の雇用は、労働力の確保や組織の活性化といった、様々なメリットがあります。
しかし、外国人の場合、どのような仕事でも無条件で就労できるわけではありません。
就労ビザの確認や申請を怠ると、罪に問われる可能性があるため、採用の流れや注意点を把握した上で、採用活動を行うことが重要です。