少子高齢化などの影響により、人材獲得難易度が高まっている近年、「なかなか良い人材を獲得できない」「転職回数の多い人ばかりで採用につながらない」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、転職回数の多さを理由に敬遠してしまうのは、優秀な人材の取りこぼしにつながるため、もったいないです。
そこで、この記事では、転職を繰り返すジョブホッパーについて解説していきます。
ジョブホッピングとは何か、ジョブホッパーのメリット・デメリット、優秀なジョブホッパーとそうでないジョブホッパーの違いについてご紹介しますので、ぜひご覧ください。
ジョブホッピングとは?
ジョブホッピングとは、短期間で転職を繰り返すことです。
そして、短期間に何度も転職している人のことを「ジョブホッパー(job-hopper)」といいます。
明確な定義はありませんが、
- 2~3年以下のサイクルで転職を繰り返している
- 転職回数が5回、6回以上
になると、ジョブホッパーと見なされることが多いです。
日本では、長らく終身雇用や年功序列といった、独自の雇用慣行が続いていたため、「就職したら生涯その会社で働く」のが一般的でした。
しかし、グローバル化や働き方改革などの影響から、転職はそれほど珍しいことではなくなってきています。
とはいえ、「あくまで転職はイレギュラーであり、入社したら尽くしてもらう」前提で考えている企業は多く、転職回数が多い人への印象は、あまり良くありません。
ジョブホッパーを採用するデメリット
では、なぜジョブホッパーがネガティブな印象を与えるのでしょう。
ここでは、デメリットをご紹介します。
忍耐力がない
ジョブホッパーは、嫌なことや合わないことがあると、すぐに放り出してしまう人が多いです。
仕事においても、計画通りに進まないと途中で投げ出してしまい、根気強く取り組めない可能性があります。
本人の意欲や適性を把握し、それを活かせる環境でないと、思ったような活躍は期待できないでしょう。
プライドが高い
ジョブホッパーの中には、自分の能力を過大評価している人も多いです。
そのため、仕事を選り好みし、
「こんな仕事は私がやるべきじゃない」
「私は○○が向いているのに分かってくれない」
など、不満を溜めやすい傾向にあります。
また、上司や同僚から注意されると、すぐに辞めてしまう人も少なくありません。
協調性がない
ジョブホッパーは、自分のやり方や考えに固執しがちです。
そのため、会社のルールに従わなかったり、周囲の意見を聞き入れなかったりして、対立してしまうこともあります。
協調性がないことから職場に馴染めず、結果として転職を繰り返す人も珍しくないのです。
人間関係の構築が苦手
当然ですが、転職すると人間関係も一からスタートとなります。
中には性格の合わない人もいるでしょうが、円滑に仕事を進めるには、職場の人たちとのコミュニケーションが欠かせません。
しかし、ジョブホッパーには、上手く人間関係を築くことができず、職場に馴染めなくて辞めてしまう人も多いのです。
採用してもすぐ辞める可能性がある
ジョブホッパーは、短期間で何度も転職を繰り返しているため、採用してもすぐに辞めてしまう可能性があります。
採用活動は、広告掲載費用や採用担当者の人件費など、様々なコストがかかります。
早期離職されると、これまでかけてきた手間やコストが無駄になるだけでなく、新たに募集を行わなくてはならないため、企業にとって痛手となってしまうのです。
スキルが身についていない
ジョブホッパーの中には、場当たり的に転職を繰り返している人もいます。
明確な目的がある場合は別ですが、本人のキャリアに一貫性がなく、短期間で転職を繰り返している場合、十分にスキルが身についていない可能性があります。
即戦力を期待して採用すると、入社後にギャップを感じることも珍しくありません。
ジョブホッパーを採用するメリット
ネガティブな印象を持たれることの多いジョブホッパーですが、メリットもあります。
決断力・行動力がある
これまで務めてきた会社を辞め、新しい環境に飛び込むのは、人生を左右する大きな決断です。
多くの人は、変化よりも安定を望むため、こうした決断はしません。
しかし、ジョブホッパーは「チャンスを掴むのに必要だ」と判断すれば、現在の環境に見切りをつけて、チャレンジすることができます。
安定志向でない、新しい価値観を持つ人材を取り込めるかもしれません。
社会経験が豊富
ジョブホッパーは、様々な企業を渡り歩くため社会経験が豊富です。
これまでの経験を通して、多様な仕事のやり方や考え方を学んだことで、引き出しが増えるため、トラブル発生時にも臨機応変な対応がしやすくなります。
今までの経験で得た知見から、新たな課題発見や課題解決の糸口を掴むことも可能でしょう。
また、様々な企業を渡り歩いたことで顔が広くなるため、ジョブホッパーの人脈をビジネスに活用することもできるかもしれません。
コミュニケーション能力が高い
転職をすると、職場の人間関係もゼロからスタートしなくてはなりません。
どの職種にも当てはまりますが、仕事を効率的に進めるには、人間関係を構築して早く職場に馴染むことが重要です。
ジョブホッパーは何度も転職しているため、コミュニケーション能力が磨かれ、多くの人と友好関係を築ける人が多い傾向にあります。
コミュニケーション能力の高いジョブホッパーであれば、早期活躍も期待できるでしょう。
向上心が高い
ジョブホッパーには、「○○のスキルを高めたい」「将来は起業したい」などの明確な目標があり、キャリアを構築するために転職している人も多いです。
そういった人は、キャリア構築に必要なスキルアップへの努力や、仕事の成果を意識して働きます。
現状に満足せず、さらに成果を上げるべくPDCAを回しながら仕事をするため、物事を改善させる力を持っているのです。
向上心の高い人を雇うことができれば、生産性向上や周囲の社員の手本にもなるでしょう。
新しいことを短期間で身につけるスキルがある
様々な企業で働いてきたジョブホッパーは、新しいことを短期間で身につけるスキルを持っている人が多いです。
経験や学習を身につけるコツや、会社のルール・仕組みを理解するために必要な情報収集など、短期間で成果を上げるためにするべきことを分かっています。
近年は、グローバル化やインターネットの普及によって、多様な技術・サービスが提供されていますが、同時にスキルの賞味期限も早くなっています。
そのため、新しいことを短期間で身につけるスキルを持つ人は、企業にとっても有益な人材といえるでしょう。
優秀なジョブホッパーとそうでないジョブホッパーの違い
一口にジョブホッパーといっても、優秀なジョブホッパーと、そうでないジョブホッパーがいることが分かりました。
では、優秀なジョブホッパーとそうでないジョブホッパーには、どのような違いがあるのでしょう。
優秀なジョブホッパーには、
- キャリアに一貫性がある
- 転職するごとに年収がアップしている
- 確かな実績がある
といった特徴があります。
キャリアに一貫性がある
優秀なジョブホッパーは、計画性のない転職は繰り返しません。
なぜなら、自分の価値を高めるために転職をしているため、キャリア形成につながらない転職はしないからです。
そのため、優秀なジョブホッパーは、「営業」「システムエンジニア」など、一つの分野に特化してキャリアを重ねていきます。
また、「アパレル業界の中小企業でキャリアをスタートさせ、国内の大手企業や外資系の企業へ転職」のように、業界にも一貫性があります。
このように、業界や職種に一貫性があるため、着実にキャリアを積み重ねていくことができるのです。
転職するごとに待遇がアップしている
優秀なジョブホッパーは、「25歳までに年収いくら、35歳までにはこういうポジションに就いていて年収はいくら」のように、明確なキャリアプランを持っています。
そして、キャリアプランを実現させるために、どのような経験・知識・スキルが必要なのかを把握しています。
必要に応じてそれらを獲得していくため、転職するごとに年収やポジションといった、待遇がアップいていくのです。
何のビジョンもなく、無計画に転職を繰り返している人は、こうはなりません。
よって、優秀なジョブホッパーは、「転職するごとに待遇がアップしている人」といえるでしょう。
転職回数の多い応募者には、キャリアプランを確認し「その人にとって今回の転職がどういった意味を持つのか」を確認することで、優秀なジョブホッパーかどうかを見極めることができます。
確かな実績がある
優秀なジョブホッパーは、「いかに成果を出すか」考えて仕事をしているため、スキルアップや創意工夫に余念がありません。
PDCAを回しながら改善していく力もあるため、就業している先々で確かな実績を残します。
そのため、履歴書などでよく見かける「チームの一員として」のような、曖昧な書き方はしません。
例えば、「個人売上ランキング○位になりました。」「部署の売り上げを○%アップさせ、その年の優秀社員賞を受賞しました」など、具体的なアピールができるのです。
前職での実績の有無は、優秀さを判断する重要な指標といえるでしょう。
一方、優秀でないジョブホッパーは、
- キャリアに一貫性がない
- 雇用形態にこだわらない
- 転職ごとに年収がダウンする
特徴があります。
キャリアに一貫性がない
優秀でないジョブホッパーには、明確なキャリアプランがありません。
例えば、「営業職⇒介護職⇒コールセンター⇒営業職⇒飲食業界の店長職」のように、前職での経験やスキルを活かそうとしない転職をします。
優秀でないジョブホッパーは、明確なキャリアプランもなく場当たり的に転職を繰り返しているため、キャリアに一貫性がないのです。
雇用形態にこだわらない
優秀でないジョブホッパーは、雇用形態にこだわらない傾向にあります。
人によって適した雇用形態は異なりますが、優秀なジョブホッパーは、自分の価値観に合った働き方を理解し、それにマッチした転職先を選びます。
しかし、優秀でないジョブホッパーは無計画に転職をするため、「正社員⇒アルバイト⇒派遣社員⇒アルバイト」など、雇用形態にも一貫性がありません。
転職ごとに年収がダウンする
優秀なジョブホッパーは、キャリアプランを実現するために必要なスキルなどを身につけ、自分の市場価値を着実に上げていきます。
そのため、転職するごとに年収がアップしていきますが、そうでないジョブホッパーは、無計画に転職を繰り返します。
前職の経験やスキルを活かせない、場当たり的な転職を繰り返していると、いつまで経ってもスキルが身に付きません。
自分の市場価値も上がりませんし、一貫性のないキャリアを持つ人は避けられるため、必然的に高待遇の求人から縁遠くなってしまいます。
こうして負のループに陥っていくため、優秀でないジョブホッパーは、転職するごとに年収がダウンしていくのです。
優秀なジョブホッパーを見極めるには
転職回数の多い応募者が、どちらのジョブホッパーに該当するのかを見極めるには、
- 転職理由
- 失敗や苦労した経験と、それをどのように乗り越えたか
- 今後のキャリアビジョン
をヒアリングしましょう。
「明確なキャリアビジョンがない」、「転職理由が薄い・ネガティブ」、「挫折を乗り越えた経験を語れない」などの場合、優秀なジョブホッパーではない可能性が高いです。
また、豊富な面接経験から受け答えが上手な人もいるため、「なぜ?」「どのように?」といった質問を投げかけて、深堀りしていきましょう。
ジョブホッパーの種類を見極めることが重要
ご紹介してきた通り、ジョブホッパーには「優秀なジョブホッパー」と「そうでないジョブホッパー」がいます。
「転職回数が多い」という理由だけで採用対象から外してしまうのは、優秀な人材の取りこぼしにつながるため、得策ではありません。
両者には、「計画性の有無」という大きな違いがあるため、面接からしっかりと応募者の見極めを行うことが重要です。