「過去の実績」から決めるか、「未来の予想」から決めるか

採用のターゲティング、つまり求める人物像を決めるにあたっては、大きく2つの方法が存在します。

 

一つ目は、「帰納的方法」。

 

これは実際に現場で活躍している人を見つけ出し、彼らの行動や思考・性格を元に、求める人物像を決める方法です。

 

この方法では、まさに“過去に活躍してきた人”や“今活躍している人”をベースに決める方法であるため、紛れもない「事実」である分、説得力もあり、現在、多くの企業で実際に行われている方法かと思います。

 

様々な人材ベンダーが提供している「ハイパフォーマー分析」なども、こういった方法を元に行われているケースが多いでしょう。

 

但し、帰納的方法には気を付けるべき落とし穴がいくつかあります。

 

まず実際の好業績社員に「どんな人が活躍すると思いますか?」といった形で直接意見聞く場合、必ずしも彼らが言っていることと、行っていることは同じではない可能性があるということです。

 

かの長嶋茂雄が、少年野球教室にて指導する時、「球がこうスッと来るだろ。そこをグゥーッと構えて腰をガッとする。あとはバッといってガーンと打つんだ」といったことは有名です。

 

「プロは自分がなぜプロか言えない」という格言の通り、本来プロと呼ばれる方々は “無意識に”かつ“自動的に”高度な技能を発揮できる人材のためにプロと呼ばれています。

 

そのため、自分の普段行っている所作や気を付けているポイントを正確に言語化できない方もたくさんいるでしょう。

 

もしプロである好業績社員に直接聞く場合は「意見」ではなく、実際に日々なにをどのように行っているかという「行動」を中心に聞くのが良いかと思います。

 

また、実際に営業同行をさせてもらうなどして行動観察をするのも有効な手段です。

 

そのほか、準客観的データである適性検査データを使って好業績社員に共通した性格を見るのも有効な帰納的方法といえるでしょう。

 

今日まで活躍していても、明日も活躍するとは限らないという落とし穴

このように、効果的な帰納的方法はもちろん存在しますが、それでも避けられない落とし穴があります。

 

それは、帰納的方法はあくまで“これまで”の事実から導きだしているため、今後も同じような人材が活躍するとは限らない、ということです。

 

特にビジネス環境が短期間で激しく変化している昨今では、「今日正しいことが明日も正しいとは限らない」状態です。

 

時代の波に乗るために事業の方向性が突然180度変わることも多々あるでしょう。

 

この点を踏まえると、帰納的方法というのは事実ベースではある一方で、短期的視点に基づいたものと言えます。

 

演繹的方法は“これまで”に縛られないが、推定の域をすぎない

逆に長期的視点から求める人物像を考える方法が「演繹的方法」です。

 

これは「今後の事業ではこんな仕事が生まれるから、こういう人材が必要だ」とか、「事業の方向がこうだから、こういう人材が必要だ」という事業最適で考えることや、学術的な理論に基づいて、「こういう職種ならばこういう性格が必要となる」と決めることです。

 

これらはある意味、「理想」であり「未来の予想」から求める人物像を決める方法です。

 

例えば学術的な理論の一つであるRIASECは、様々な職種に合ったパーソナリティ(性格)を示しています。

 

一方で、演繹的方法は、これまでの事実に縛られることがない反面、あくまで推論であり、究極的には、この方法で決めた求める人物像が将来活躍するかは現時点ではわかりません。

 

但し、RIASECをはじめとした著名な理論は、非常に厳しい批判的検証に耐え、現在まで残っています。

 

また自社が新たな職種を追加する際には、既存職種の人材を分析する帰納的方法が有効とは言えないでしょう。

 

そういった際には、新職種の業務特性を分解して必要な能力・性格を抽出してみたり、市場に存在する同じ職種の事例を見てみたりなど、演繹的に求める人物像を抽出するほうが、より妥当性が高いと考えられます。

 

このように「帰納的方法」と「演繹的方法」のどちらにも、メリット・デメリットが存在するのです。

 

 そのため、もし求める人物像を決める際は、帰納的方法と演繹的方法の両面から考えてみるほうが、過去の実績にも基づき、同時に未来志向でもある、より妥当性が高いものができると思います。

 

著者のプロフィール

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

 

児童心理治療施設(旧情緒障害児短期治療施設)での約1年半の現場経験を経て、心理学が日常生活に困難をきたす様々な障害の治療に活きる現場を体験。

その後、心理学を逆に人間の可能性を最大化する方へ活かしたいと感じ、現職である人事コンサルティングに転向。

 

現在は新卒採用・中途採用をメインとして、育成教育配置、評価報酬制度などのコンサルティングに幅広く従事。

 

そのほかに人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」運営、人事向けセミナー、若手・新入社員向けキャリアワークショップなども多数実施。

 

■ 株式会社人材研究所
2011年設立。代表取締役社長 曽和 利光

世の中のあらゆる組織における「人と組織の可能性の最大化」を目指している人事コンサルティング会社。

 

組織人事コンサルティング、採用コンサルティング、採用業務代行(RPO)、各種トレーニング(面接官トレーニング、評価者訓練、新入社員研修等)などを提供。

HP:株式会社人材研究所

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