少子高齢化により人手不足が叫ばれる近年、外国人労働者に注目が集まっています。

 

しかし、外国人材を受け入れるとなると、言葉や文化の違い、雇用手続きの流れなど不安に思うことも多いでしょう。

 

この記事では、外国人労働者を受け入れるメリット・デメリットや受け入れ制度、準備について解説いたします。

 

また、外国人材の受け入れを積極的に行っている企業事例や、雇用までの流れなどもご紹介しますので、是非ご覧ください。

 

外国人労働者の受け入れの現状

「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」

 

厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

 

厚生労働省の「外国人雇用状況」届出状況によると、2019年10月末時点での外国人労働者数は1,658,804人となっており、前年同期比で198,341人、13.6%増加しています。

 

上図の「外国人労働者数の推移」を見ても明らかなように、2007年の届出義務化以降、外国人労働者の数は過去最多を記録し続けています。

 

国籍別では中国が最多

国籍別外国人労働者の割合

 

厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

 

外国人労働者を国籍別に見てみると、

 

中国…418,327(25.2%)

ベトナム…401,326 人(24.2%)

フィリピン…179,685 人(10.8%)

ブラジル…135,455人(8.2%)

となっており、中国が最多です。

 

また、最も増加率が大きいのはベトナムで、前年同期比 84,486 人(26.7%)増、次いでインドネシアが前年同期比 9,751 人(23.4%)増と、東南アジアの外国人労働者が増えています。

 

外国人労働者の受け入れ企業が増加

事業所規模別外国人雇用事業所の割合

 

厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

 

2019年10月末時点で外国人労働者を雇用している事業所は242,608ヶ所あり、前年同期比26,260ヶ所(12.1%)増加しています。

 

特に、従業員数30人未満規模の事業所が145,000ヶ所と、全体の59.8%を占めています。

 

また、外国人労働者を受け入れる事業所数は、規模の大きさにかかわらず増えていますが、特に30人未満規模の事業所では前年同期比14%と最大の増加率です。

 

外国人労働者が日本で働く理由

言葉や文化、習慣の異なる環境で働くのは、簡単なことではありません。

 

ではなぜ、そうまでして「日本で働きたい」と考えるのでしょうか。

 

安全性が高いから

日本は非常に安全性の高い国として、世界に知られています。

 

街中にゴミが散乱していることもありませんし、上下水道は整備されているため、清潔な環境で暮らすことができます。

 

また、1人で夜道を歩くことができるのは、治安が良いからに他なりません。

 

これほど恵まれた環境で暮らせる国は珍しいため、安全性の高い日本で働きたいと考える外国人は多いです。

 

母国よりも給与水準が高いから

特に東南アジアの外国人に多い理由です。

 

アジア圏の中でも日本の給与水準はトップクラスのため、日本で働いたお金を母国の家族に送る目的で働く人が多い傾向にあります。

 

キャリアアップのため

グローバルな環境に身を置くことでキャリアアップに繋げる、日本の高い技術力を身につけるといった、理由から日本で働く外国人も多いです。

 

医療制度が整っているから

世界的に見ても日本の医療水準は非常に高いですし、日本では国民皆保険制度を導入しています。

 

高度な医療技術を割安で受けられるため、日本滞在中に万が一の事態が起こっても、安心して治療を受けられます。

 

こうした、医療面のメリットから日本で働きたいと考える外国人も多いです。

 

外国人労働者受入れ制度とは?

外国人労働者受入れ制度とは、在留資格制度など外国人が日本で就労するための制度のことです。

 

少子高齢化の進む日本では、年々労働人口が減少しており、日本人だけで労働力を賄うことはできなくなっています。

 

国力を維持するには外国人労働者が欠かせないため、外国人労働者の受け入れを推進するようになりました。

 

そして、外国人労働者を受け入れる施策の一つが、改正入管法によって成立した新しい在留資格「特定技能」です。

 

特定技能の新設により、2019年4月から産業分野における特定技能での外国人受け入れが可能になりました。

 

特定技能の目的は「労働力の確保」であり、研修や実習によって技能を身につけさせる「技能実習」とは性質が異なります。

 

特定技能の種類は、

  1. 特定技能1号
  2. 特定技能2号

の2つがあり、必要となる知識や技術のレベルが異なります。

 

特定技能1号

特定産業分野において、相当程度の知識や経験を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。

 

特定技能2号

特定産業分野において、熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。

 

【特定技能1号・2号の比較表】

? 特定技能1号 特定技能2号
在留期間

1年

更新:6ヶ月/4ヶ月ごと

上限:通算5年

3年

更新:1年/6ヶ月ごと

上限:なし

学歴要件 なし なし
技能水準

試験等で確認

(技能実習2号の良好修了者は試験等免除)

試験等で確認
日本語能力

試験等で確認

(技能実習2号の良好修了者は試験等免除)

試験等での確認は不要
家族帯同 原則不可

可(配偶者・子)

対象分野 建設業/航空業/宿泊業/介護/ビルクリーニング/農業/漁業外食業 他(全14分野) 建設業/造船・船用工業

 

参考:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック

 

求められるレベルの高い特定技能2号は、「在留期間の上限がない」「家族の帯同ができる」などの優遇を受けられます。

 

※尚、上記は記事制作時点の情報です。特定技能については法務省、出入国在留管理庁などの情報をご確認ください。

 

 

外国人を積極的に受け入れている企業例

ここでは、外国人を採用する際のヒントとなるような、事例をご紹介いたします。

 

カシオ計算機株式会社

電子計算機販売を行っているカシオでは、ダイバーシティの推進を目的として外国人採用を行っています。

 

施策

  1. 入社後のキャリアプランをイメージしてもらいやすいよう「職種別採用」を実施することで、入社後のギャップを防止
  2. イスラム教徒のために祈祷室を作るなど、宗教への理解・配慮
  3. 「母国帰国休暇制度」の創設で外国人社員が有給申請しやすい仕組みづくり
  4. コミュニケーション促進の施策として「ビジネス日本語能力テスト」の受講料補助

 

結果

5年間で12人の外国人採用に成功しています。

 

パナソニック電工株式会社

電子機器の製造・販売を行うパナソニック電工では、ダイバーシティ・マネジメントの一環として外国人採用を行っています。

 

施策

  1. 日本語レベルに応じてクラス分けし、「ビジネス日本語研修」を実施
  2. 日本と海外における仕事進め方の違いを理解してもらう「クロスカルチャー(異文化)研修」の実施
  3. 企業理念やビジョンの確認・意味づけを行うために「経営理念研修」を実施

 

結果

能力発揮と定着率向上の施策を講じたことで、中国・韓国・インド・アメリカなど、様々な国の外国人51名が活躍しています。

 

株式会社ドリーム・アーツ

業務支援システムなどを手掛けるドリーム・アーツでは、多様な人材による創造性発揮を目的として、外国人採用を行っています。

 

施策

  1. 国別での固まりを防ぐために社内イベントを企画し、準備段階からの参加を促す
  2. 年2回の職務アンケートを実施、本人の意向や適性をもとにキャリア形成に反映
  3. 経営陣が本人の長所を発見する機会を設けるため、MBO(目標管理制度)と360度評価を導入

 

結果

長期的なキャリア形成への取り組みを行った結果、本社社員の約20%が外国人を占めるようになり、優秀な外国人材を活用できるようになったそうです。

 

外国人労働者を受け入れるメリット

前述のように、様々な企業で外国人雇用が行われています。

 

では、外国人労働者を受け入れると、企業にどのようなメリットがあるのでしょう。

 

年齢の若い労働力を確保できる

日本では少子高齢化の影響によって、若年層の人材獲得難易度が高まっています。

 

しかし、海外では「知識やスキルがあってもなかなか就職できない」「給与が低い」などの理由から、日本へやってくる若者も多いです。

 

また、日本にいる外国人は学習・労働の意欲が高い傾向にあるため、外国人労働者を受け入れれば、年齢の若くて人材を確保しやすくなります。

 

海外進出の足掛かりになる

日本企業が海外進出する際、障壁となるのが現地人とのコミュニケーションです。

 

他国とは言語や文化、商習慣、価値観が異なるため、これらを理解していないと商談や現地スタッフとのコミュニケーションが上手くいきません。

 

そのため、海外進出先を母国とする外国人を雇用することができれば、当該外国人に協力を依頼することができます。

 

文化や商習慣を踏まえたコミュニケーション時のアドバイスや通訳、顧客対応、現地調査の派遣スタッフなど、多様な状況下での活躍が期待できるでしょう。

 

新しいアイデアの創出

外国人は文化や教育、歴史的背景など、日本とは異なる環境で育っており、価値観や考え方が違います。

 

外国人ならではの視点・方法でアプローチを試みるため、日本人では気づけなかった課題の発見や新しいアイデアが創出されることもあります。

 

また、こうした新鮮な意見は、新商品・サービスの開発や業務効率の向上に役立つため、組織活性化にも繋がるでしょう。

 

外国人労働者を受け入れるデメリット

外国人労働者を受け入れると多くのメリットを得られることが分かりましたが、良いことばかりではありません。

 

外国人労働者の雇用を検討するならデメリットもしっかりと把握しておきましょう。

 

価値観やコミュニケーションの違い

日本人と外国人では育った環境が違うため、価値観が異なります。

 

たとえ、目の前の外国人と問題なく会話ができたとしても、相手の民族性や価値観を無視してコミュニケーションを取ってしまっては、良好な関係を築けません。

 

また、流暢に日本語を話せるからといって、日本の商習慣や価値観を理解しているとは限りません。

 

こうした違いを理解しておかないと、後々トラブルに発展する可能性もあります。

 

外国人労働者と信頼関係を築くためにも、コミュニケーションの取り方やマネジメント時の注意点をよく確認しておきましょう。

 

在留資格に注意が必要

外国人が日本に在留するには「在留資格」が必要であり、期限や活動内容が決められています。

 

そのため、外国人を採用する際は、

  1. 「従事してもらう仕事」と「保有している在留資格」が一致しているか
  2. 在留期限は過ぎていないか

を確認する必要があります。

 

在留資格と異なる仕事に従事させたり、在留期限の過ぎた外国人を雇用したりした場合、不法就労助長罪として罰則を科されることになるため、注意が必要です。

 

また、在留資格の取得には1ヶ月~3ヶ月程度、変更には2週間~1ヶ月程度掛かりますし、申請しても必ず認められるとは限りません。

 

日本人を雇うよりコストが高くなることもある

外国人労働者を安く雇えるという感覚は、一昔前のものです。

 

日本で働いている外国人にも労働関連法は適用されるため、最低賃金以下で働かせることはできません。

 

また、就労資格の取得条件には「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上の報酬」が設けられていますし、優秀な人材ほど能力に見合った給料が必要でしょう。

 

例えば、高い技術力を持ち、専門性の高い職種についている高度人材のニーズはどこの国でも高いため、こういった人材を獲得するには高額な給料が必要です。

 

さらに、海外から呼び寄せる場合、ビザの取得費用や渡航費用も発生するため、日本人よりも人件費が高くなることもあります。

 

外国人労働者を受け入れる準備

外国人労働者を受け入れるには、準備を整えておくことが重要です。

 

労働環境を整える

外国人労働者を雇用する場合、コミュニケーションに苦戦する場合が多いです。

 

コミュニケーションが上手くいかないと業務に支障をきたす可能性もあるため、

  1. 多言語での標識やマニュアルを作成する
  2. 社内の英語力を強化する
  3. 外国人材向けの日本語学校や教材を手配する

のように、外国人材が働きやすいよう労働環境を整えましょう。

 

給料の見直し

先述のように、就労ビザの取得条件には「日本人と同等額以上の報酬」が設けられているため、外国人材を雇用する際は給料の確認が必要です。

 

また、基本的に海外は成果主義のため「能力・成果に見合った給料を得られない」と思われてしまうと、離職されやすくなります。

 

外国人労働者を雇用するまでの流れ

つづいて、外国人労働者の雇用までの流れを見ていきましょう。

 

STEP1:確認

外国人が日本で働くには、従事する業務内容と一致した在留資格が必要なため、「当該外国人が日本に滞在しているかどうか」で対応が変わります。

 

日本在住の場合

既に日本にいる場合、当該外国人の在留カードから「在留資格」と「在留期限」を確認しましょう。

 

保有している在留資格と就労予定の業務内容が一致しない場合「在留資格変更許可申請」を行い、該当する種類のビザに変更する必要があります。

 

海外在住の場合

海外在住の外国人を日本に呼び寄せる場合、就労ビザを取得する必要があるため「在留資格認定証明書」を申請します。

 

就労ビザの取得要件は申請職種ごとに異なりますが、

  1. 従事する職務に関連する専攻の学歴
  2. 10年以上の実務経験

などが定められています。

 

定められた取得要件を全て満たさないと認定されないため、雇用契約を締結する前にしっかりと確認しておきましょう。

 

STEP2:雇用契約書の作成

内定を出したら、業務内容や労働時間、賃金といった労働条件について当人と話し合い、雇用契約書を作成しましょう。

 

法律上、労働条件通知書を交付していれば雇用契約書がなくても問題ありませんが、雇用契約書は労使双方が合意した証明となります。

 

認識の違いによる雇用トラブルの回避に繋がるため、作成しておくのが適切です。

 

雇用契約書を交付する際は、本人が理解できるよう配慮する必要があります。

 

「英語や当該外国人の母国語で作成する」「原文の翻訳も用意する」など、柔軟に対応しましょう。

 

STEP3:就労ビザの申請

就労ビザは、審査に1ヶ月~3ヶ月程度かかるため、内定を出ししたら直ちに手続きを行いましょう。

 

また、就労ビザは様々な条件から審査されるため、場合によっては不許可となる可能性もあります。

 

留学生の新卒採用/日本在住の外国人の中途採用(前職と異なる職種)

在留資格の変更が必要です。

 

入国管理局へ「在留資格変更許可申請」を行ってください。

 

日本在住の外国人の中途採(前職と同一職種)

基本的に就労ビザの手続きは不要です。

 

ただし、当該外国人の次回ビザ更新時に不許可となるケースもあるため「就労資格証明書交付申請」を行っておくと良いでしょう。

 

※就労資格証明書交付申請…保有中の就労ビザで転職後も就労できるかどうかを入国管理局に判断してもらう手続き

 

海外在住の外国人を日本に呼び寄せる場合

就労ビザを取得する必要があるため、下記の手順で準備を進めましょう。

 

①入国管理局へ「在留資格認定証明書」を提出(企業側)

②発行された「在留資格認定証明書」を内定者へ発送(企業側)

③認定証明書とパスポートを持参し、本国の日本大使館・領事館で就労ビザを申請(内定者側)

認定証明書には有効期限があります。

 

発行後3ヶ月以内に入国しないと無効になるため、採用から入国予定日まで間が空く場合は、申請時に入国予定日を伝えて発行時期を調整してもらいましょう。

 

STEP5:雇用スタート

就労ビザを取得できたら雇用開始です。

 

外国人材を雇用する際は、

  1. 外国人雇用状況の届出(企業側)
  2. 所属機関等に関する届出(内定者側)
  3. 住民登録(内定者側)

を必ず行ってください。

 

外国人雇用状況の届出

外国人の雇用・離職があった際は、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を行います。

 

外国人雇用状況の届出は全ての事業主に義務付けられており、これを怠ると30万円以下の罰金が科されるため、注意が必要です。

 

厚生労働省「外国人雇用状況の届出

 

契約機関等に関する届出

「契約機関等に関する届出」は14日以内に行う必要があり、届出を怠るとビザ更新時の審査でマイナス評価されます。

 

届出が必要なことを知らない外国人も多いため、必ず伝えましょう。

 

法務省「所属機関に関する届出

 

住民登録

居住地が決まったら、14日以内にその地域を管轄する市町村役場で住民票の登録を行う必要があります。

 

基本的に住民登録がないと銀行口座も開設できないため、早急に手続きするよう伝えましょう。

 

外国人労働者を活用して人手不足解消

働き手が減少している日本では、外国人労働者の存在が欠かせません。

 

外国人労働者を雇用すれば、労働力確保だけでなく海外進出の足掛かりになるなど、多様な恩恵を受けることができます。

 

ただし、在留資格やコミュニケーションといった、外国人ならではの注意点もあるため、外国人材を雇用する際は、受け入れ準備や雇用までの流れをしっかりと確認しておきましょう。

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