近年、テレビで「AI面接」の特集が組まれるなど、世間的にもAI面接への関心が高まっています。

 

しかし、採用面接はこれまで人間が担ってきた領域であるため、AI面接に対して懐疑的な考えを持つ人も多いでしょう。

 

この記事では、AI面接の概要やメリット・デメリット、導入時の注意点について解説いたします。

 

AI面接とは?

AI面接とは、AI(人工知能)が面接官として、応募者とやり取りを行う面接手法のことです。

 

AIが出題する質問に応募者が回答する形式で面接が進んでいくため、採用担当者が面接に立ち会う必要はありません。

 

デバイスのカメラ・マイクを利用し、応募者の回答内容や話し方、表情を分析して、様々な角度から総合的に評価する仕組みです。

 

質問内容や数によっても異なりますが、所要時間は30分~60分程度です。

 

ただし、応募者が曖昧な回答や浅い回答をすると「具体的に教えてください」など、自動で質問を深掘りするため、人によっては1時間以上かかることもあります。

 

このように、面接を自動化することができるため、書類選考後のスクリーニングとして、1次面接にAIを取り入れる企業が多いです。

 

近年では、

  1. ゲーム感覚で応募者の認知機能などを測れる
  2. 回答内容のテキスト化
  3. 録画面接のAI分析

といった、多様な機能を利用できるAI面接ツールも増えてきています。

 

対人面接の場合、応募者は面接官の態度や表情からヒントを得て、回答をすることもありますが、AI面接では画面越しにひたすら回答するだけです。

 

そのため、AI面接の方が応募者本来の志向や、価値観をより深く理解できるかもしれません。

 

AI面接が注目される背景

AI面接の概要が分かったところで、なぜ今AI面接が注目されているのか、その背景をご紹介いたします。

 

AIの機能が向上し、言語や表情などを処理できるようになった

AI面接が注目される背景の一つとして、AI(人工知能)の技術が向上したことが挙げられます。

 

そもそもAIとは、人間に近いプロセスで物事を考えて判断する技術のことです。

 

AIの技術が向上したことで、画像から人の表情を読み取ったり、回答内容や文脈、声のトーンから感情などを解析したりできるようになりました。

 

こうした技術革新により、客観的に応募者の評価を行えるようになったため、採用面接でも活用されるようになったのです。

 

また、AIはディープラーニング(深層学習)を行います。

 

そのため、合否データやハイパフォーマーの特徴をAIに学習させていくことで、採用の精度を向上させることができます。

 

人材の流動が激しくなり採用・選考の重要度が増した

以前は、就職した企業で定年まで勤め上げるのが一般的だったため、転職する人はそれほど多くありませんでした。

 

しかし、終身雇用制度の終焉や労働に対する価値観の変化、働き方改革の影響で、現在では転職が特別なものではなくなっています。

 

これにより、中途採用市場では人材の流動化が進みました。

 

また、グローバル化やインターネットの普及などにより、社会は目まぐるしいスピードで変化しています。

 

企業が生き残るには、迅速かつ適切に組織を構築する必要があるため、経験やスキルを保有している中途採用の重要性が増したのです。

 

人が行うよりも、高い精度で効率的に採用選考を行えるため、「AI面接」が注目されるようになりました。

 

HRテック領域が発展し、経験に基づいた選考が否定されてきた

HRテックとは、AIやクラウドといったテクノロジーで、人事業務の効率化を図るサービスのことです。

 

これまでは、ベテランの人事や経営者などが経験をもとに、採用・人員配置を行っていました。

 

しかし、経験則や勘などの主観的な視点は正確性に欠けますし、人が評価を行うと少なからず評価者の印象や感情が入ってしまいます。

 

人が面接を行うと評価のブレが起こりやすいため、面接官によって合否判定が変わることも珍しくありません。

 

HRテック領域の進歩により、応募者の考え方や性格を数値化できるようになったため、企業との相性が可視化されるようになりました。

 

これにより、今まで人に頼りきりだった採用面接に、AIを取り入れる動きが活発化しています。

 

AI面接のメリット、デメリット

人に代わりAIが面接を行うと、企業にとってどういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。

 

AI面接のメリット

まずはAI面接のメリットから見ていきましょう。

 

メリット1:業務効率が上がる

AI面接を導入する最大のメリットは、業務効率が上がることです。

 

採用活動では、求人掲載などの応募者獲得までの工程に加え、書類選考や面接といった様々な業務が発生します。

 

他の業務と兼任して採用業務を行っている人も多いため、採用担当者は膨大な業務量を抱えている傾向にあります。

 

こうした状況下で、膨大な応募者を書類選考から最終面接まで時間をかけて選定するのは、非常に負担が大きいです。

 

AI面接であれば、一定の基準にしたがって自動で合否を判断していくため、業務効率が向上します。

 

AI面接によってスクリーニングされた状態で2次面接を行えるので、採用確度の高い候補者とだけ会うことができ採用活動の短期化にもつながるでしょう。

 

メリット2:移動コストや会場コストなどの削減

対面形式で面接を行う場合、応募者に面接会場や企業へ足を運んでもらう必要があります。

 

地方などの遠隔地に住んでいる求職者の場合、移動にかかる費用や時間がネックとなって応募をあきらめてしまうケースも多いです。

 

求職者に交通費を支給したり、面接官が地方へ出張して面接会を行ったりする方法もありますが、いずれにしても移動費用や会場のレンタル代などのコストが発生します。

 

AI面接であれば、AIの質問に回答するだけで済むため、求職者は自宅にいながら企業の選考に参加することができます。

 

物理的距離によるコストが発生しない点は、企業側と求職者側の双方にとって大きなメリットと言えるでしょう。

 

メリット3:候補者の情報を数値やデータとして保存できる

人による面接は、経験値や勘、印象といった主観的視点に左右されるため、候補者の情報を数値化したり、自身の経験をナレッジとして残したりすることは非常に困難です。

 

AI面接であれば、候補者を様々な角度から解析して数値化することもできますし、データとして保存することができます。

 

さらに、AIはディープラーニングを行うため、情報が蓄積するほど分析や解析の精度が向上していきます。

 

AI面接のデメリット

つづいて、AI面接のデメリットをご紹介いたします。

 

デメリット1:導入のハードルが高い

AI面接を導入する企業は増えてきているものの、全体で見ると大半は人が面接を行っています。

 

というのも、面接には応募者を見極めるだけではなく、志望度を高める目的も含まれているためです。

 

面接官とのやり取りを通して志望度を向上させることも多いですが、AI面接は質問と回答を機械的に繰り返すだけなので、求職者の疑問解消や惹きつけはできません。

 

そのため、企業の魅力をしっかり発信できていない場合、選考辞退率が高まる可能性があります。

 

また、AI面接は過去の採用パターンに基づいて人材を選定しますが、社会や企業の状況は常に変化するため、過去のデータと求める人材がマッチしないこともあるでしょう。

 

このように、AI面接を導入するには、クリアしなくてはならないハードルが多い点がデメリットとして挙げられます。

 

デメリット2:候補者からの理解が得られないことも

キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果」

引用:株式会社ディスコ「キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果

 

キャリタス就活の調査によると、「AIが自分に合う企業をおすすめしてくれる」ことには約7割の学生が肯定的に受け止めています。

 

一方で、AIに書類選考や面接の合否を判定されることに対しては、過半数の学生が否定的です。

 

機械に判定されることに抵抗を感じる人もいるため、候補者の理解を得られないままAI面接を導入すると、企業の好感度や印象を損ねる可能性があります。

 

デメリット3:画一的な情報でしか判断できない

AIは、良くも悪くも人間の直観のような、曖昧な要素で判断することはありません。

 

過去の採用パターンやハイパフォーマーのデータなどに基づいて、合否を判断するため、AIに「どういったデータを学習させるか」によって運用の精度が変わってきます。

 

例えば、Amazonでは過去10年間の採用パターンをAIに学習させたところ、技術職で女性志望者の評価が低くなる事態が発生しており、AIによる運用を取りやめています。

 

これは、過去の採用で判断に偏りがあり、そのバイアスをAIが引き継いでしまったために起きた事象です。

 

このように、評価基準を統一化させるとAIが画一的な情報でしか判断できないため、多様性が失われる可能性もあります。

 

AI面接を企業が導入する際の注意点

AI面接を導入するメリットは大きいですが、デメリットもあります。

 

では、導入にあたってどのような点に注意したら良いのでしょうか。

 

採用要件について

AIが合否を判断するにはその基準となるデータが必要ですし、学習させるデータによって精度が大きく左右されます。

 

そのため、評価項目や評価基準といった採用要件を明確にする必要があります。

 

選考フローへの組み込み方

採用面接をAIが行った場合、必然的に応募者とのコミュニケーションは減少します。

 

求職者の不安や疑問の解消や惹きつけの機会を喪失することにつながるため、どの段階で選考フローに組み込むかが重要となります。

 

また、AIは合格・不合格の判断はできても、その判断を行った理由を説明できません。

 

2019年に政府が発表したAI活用に関する7つの原則には「AIを利用した企業に決定過程の説明責任」が盛り込まれています。

 

場合によっては、AIが下した判断を再度確認する作業も必要となってくるでしょう。

 

こうした点から、多くの企業では書類選考や1次面接のみの利用など、補助的に使われることが多いです。

 

AI面接で業務効率化

AI面接は多忙な採用担当者に代わって、合否判断をしてくれる便利なツールです。

 

業務効率化や面接官による評価のブレを抑えるなどの大きなメリットもありますが、まだまだ新しい技術であり課題も多いことから、AIに頼りすぎるのは危険でしょう。

 

まずは「1次面接だけ利用する」「採用の判断材料として利用する」のように、補助的ツールとして利用するのが適切と考えられます。

 

技術分野は日々進歩しているので、将来的にはAI面接が当たり前に行われるようになるかもしれません。

 

定期的に情報を集め、自社に合った方法でAIを取り入れて、業務効率化を目指しましょう。

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