企業にとって、従業員の教育や研修といった人材育成は欠かせない要素です。
e-ラーニングや集合研修を実施している企業も多いですが、こうしたプログラムを実施・管理するのは非常に手間がかかります。
そこでおすすめなのが、「学習管理システム(LMS)」です。
LMSは、学習プログラムを一元管理できるため、管理業務の効率化や学習効果を向上させる効果があると注目を集めています。
この記事では、学習管理システム(LMS)について詳しく解説いたします。
具体的な機能やメリット、導入時やシステム選びのポイントについてご紹介いたしますので、ぜひご覧ください。
学習管理システム(LMS)とは?具体的に何ができるのか
学習管理システムとは、eラーニングだけでなく、オフラインの研修も含めた学習プログラムを管理するシステムのことです。
LMS(Learning Management System)とも言われ、学習教材や受講状況、学習成果などが一元管理できます。
具体的には、
- 学習教材の作成・配信・保管
- 学習状況の進捗確認
- 受講者の成績やアンケートのデータ管理
- コミュニケーション
などが行えます。
通常、e-ラーニングを受講させるには、公開を限定するセキュリティ対策や、対象者の受講状況把握、リマインドといった対応を行わなくてはなりません。
そのため、LMSがないと膨大な手間がかかりますし、サーバー・セキュリティに関する知識や技術も求められます。
LMSであれば、特別な知識や技術がなくても簡単に管理・運営でき、なおかつ社内教育で使用する教材が一本化できます。
学習管理システム(LMS)が普及した背景
インターネットが普及する以前、企業ではCDやDVDによる教育が行われてきました。
しかし、こうした教育では、学習の進捗管理を行えませんし、カリキュラムの変更・更新も容易ではありません。
一方、インターネットが普及するとe-ラーニングによる教育が始まりますが、単に教材を提供するだけでは受講状況や理解度といった、学習状況の把握・管理は困難です。
また、動画を視聴するよう指示するだけでは、従業員の視聴意欲を高めることはできません。
そこで、学習教材の配信はもちろん、学習履歴や成績管理を行えるプラットフォームとして学習管理システム(LMS)が開発され、注目を集めるようになったのです。
学習管理システム(LMS)の基本機能
様々なベンダーがLMSを提供しているため、商品によって細かな機能は異なります。
ここでは、LMSへの理解を深めるために一般的な機能をご紹介いたします。
受講者管理機能
機能 | 内容 |
---|---|
受講者の管理 | 所属部署・氏名・社員番号・メールアドレスなどの情報をもとに受講者を登録し、従業員と紐づける |
受講者の検索 | 登録した情報をもとに検索できる |
履修登録 | 対象者にコースを受講できるよう割り当てて登録する |
連絡機能 | ID・初期パスワードの配信や未受講者への督促連絡など |
教育機能
機能 | 内容 |
---|---|
受講履歴管理 | 視聴履歴や得点などの学習状況を確認できる |
レポート管理 | アンケートやレポートの作成、配信、回収状況の確認、集計 |
教材管理
機能 | 内容 |
---|---|
教材作成・編集 | 教材の作成や作成済み教材の編集 |
学習素材の割り当て | 作成した学習コンテンツをコースへ割り当てる |
ライブ配信・録画機能 | 集合型研修のライブ配信や録画後の配信ができる |
その他機能
機能 | 内容 |
---|---|
質問管理 | 受講者からの問い合わせに回答する |
コミュニケーション機能 | オンライン上でのディスカッションやチャットができる |
学習管理システム(LMS)のトレンド
LMSは、教材や学習の管理はもちろん、人材育成に関する多用な機能が搭載されたシステムが登場しています。
では、どのような機能がトレンドとなっているのか見ていきましょう。
多言語対応
グローバル化や少子高齢化の影響で、外国人労働者を雇用する企業も増えてきたため、ユーザー側で自由に言語を選択できるLMSが主流になりつつあります。
また、デバイスもパソコンやスマートフォン、タブレットなど多言語に対応できるものがほとんどです。
受講者のモチベーション管理や学習後の分析機能
教材の提供だけでは、受講者のモチベーションを高めることはできません。
近年のLMSは、学習内容の進捗度や設定した目標の達成度を表示して、受講者のモチベーションアップを促す機能もあります。
また、LMSでの学習時間を給料に反映しモチベーション管理につなげる企業も出てきています。
タレントマネジメントや人事評価機能
従業員ごとの研修履歴やテスト、アンケートなどの情報に加え、キャリアマップやスキル、能力の情報を管理できる機能が搭載されたLMSも存在します。
こうしたLMSを活用すれば、プロジェクトチームや新規事業を立ち上げる際の従業員選びにも役立てられるでしょう。
また、人事評価をLMS上で行うと、評価の比較や過去データを参照できる機能がついたものもあります。
リアルタイムのコミュニケーションツール
掲示板やFAQ、チャットといった、コミュニケーション機能のついたLMSが主流になっています。
近年は、ビデオ会議ツールを搭載したモデルも増えており、LMS上でオンライン研修の管理・運営ができるようになっています。
集合型研修の管理機能
集合型研修の案内や出欠確認、アンケートの配布・回収・集計の機能がついたLMSもあります。
ライブ配信や録画機能も利用すれば、研修の一元管理ができるため、担当者の負担を大幅に軽減することが可能です。
学習管理システム(LMS)のメリット
LMSには、多様な機能が搭載されていることが分かりました。
では、LMSを導入すると、どういったメリットを得られるのでしょうか。
人材育成のノンコア業務を自動化できる
従業員に学習プログラムを受けさせるには、対象者への案内や出欠確認、アンケート配布・集計といった、様々な業務を行わなくてはなりません。
さらに、プログラム実施後は、従業員の学習状況に応じた対応など、管理業務も発生するため、担当者の業務負担は大きいです。
LMSであれば、
- 受講予定者に自動でリマインドメールを送信する
- 研修後のアンケート配信・集計を自動で行う
- アンケート未提出者へ自動でリマインドメールを送信する
のように、人材育成のノンコア業務が自動化できます。
ノンコア業務をLMSに任せられれば、プログラム内容検討などのコア業務に注力できるため、時間を有効に活用できます。
人材育成の施策を一元管理できる
LMSは、「いつ・だれが・何を・どこまで受講し、どういう結果になったのか」をリアルタイムで把握できるため、結果に応じて対象者に改善アプローチをすることが可能です。
加えて、レポートやアンケート、集合型研修、スキル管理など、人材育成に必要な機能が搭載されているため、LMS上で人材育成の施策が一元管理できます。
施策の一元管理ができれば、業務の効率化や組織全体の学習効果向上に役立つでしょう。
遠隔地にいる受講者にも同等の教育を提供できる
LMSは、インターネット環境さえ整っていれば、どこでも利用可能です。
地方や海外など遠隔地にいる受講者にも、本部と同等の教育を提供できるため、地域による教育格差の是正につながります。
また、多言語対応可能なLMSを利用すれば、外国人スタッフも利用しやすいですし、あらゆる拠点の教育を一元管理できます。
学習管理システム(LMS)を導入する際のポイント
システムは頻繁に入れ替えられるものではないため、慎重に検討する必要があります。
ここでは、LMSを導入する際に押さえておきたいポイントをご紹介いたします。
目的を明確にする
何のためにLMSを導入するのか、目的を明確にすることが重要です。
LMSの導入目的が不明瞭な状態では、どんな機能が必要なのかが分からないため、思うような効果を得られません。
自社の課題やニーズを洗い出し、現状を把握するところから始めましょう。
「従業員の教育を強化したい」「管理業務に時間を取られすぎている」など、LMSの導入を検討するに至った理由があるはずです。
目標を立てる
具体的な目標を立てることも欠かせないポイントです。
「人材育成の管理業務を〇%削減」「会社全体の業績を〇%アップ」のように、LMS導入でクリアしたい目標を数値化しましょう。
目標を数値化することで、LMS導入の効果測定やPDCAサイクルを回しやすくなります。
運用体制を整備しておく
LMSは、コンテンツ作成や社内の既存システムとの連携、導入環境の整備など、導入目的に応じて様々な部署の人たちに協力を依頼することになります。
そのため、どの従業員にどういった協力をしてもらう必要があるのかを把握し、事前に説明しておくと、スムーズに導入できます。
導入方式を決める
LMSには、インターネットを介して利用する「クラウド型」と、社内サーバーにLMSを設置して運用する「オンプレミス型」の2種類があります。
それぞれのメリットとデメリットを把握した上で、自社にマッチする導入方法を決めましょう。
【導入方式の特徴一覧】
? | クラウド型 | オンプレミス型 |
---|---|---|
導入作業 | 該当サイトにアクセスするだけなので、すぐに利用できる | 社内サーバーへの構築作業が必要 |
セキュリティ | ベンダーのセキュリティに準じる | 自社サーバーを利用するため、外部流出のリスクが低い |
バージョンアップ |
ベンダーが自動でバージョンアップされるため、最新サービスを利用できる ※有料の場合もあり |
別途料金を支払ってバージョンアップする必要がある |
カスタマイズ |
別途料金を支払えばカスタマイズ可能 ※ベンダーによる |
別途料金を支払えばカスタマイズ可能 ※ベンダーによる |
コスト | 安い | 高い |
オンプレミス型は、セキュリティ面の強みがありますが、導入の手間やコスト面ではクラウド型に後れを取ります。
条件が合うなら、クラウド型の方がおすすめです。
学習管理システム(LMS)選びのポイント
様々なベンダーからLMSが提供されているため、どれを選べば良いのか分からない人も多いでしょう。
ここでは、LMSを選ぶ際のポイントについてご紹介いたします。
どういう機能があるか
システムを選ぶ際、多様な機能が搭載されているものに目が行きがちですが、利用しなければ意味がありません。
一般的に、多機能なシステムほど操作が複雑になるため、使いこなすのは大変ですし、料金も高くなります。
ベンダーから機能を説明されると「あった方が良い」と感じることもあると思いますが、それが本当に必要かどうかを冷静に考えましょう。
「目的や目標をクリアするには、どんな機能が必要か」を第一に考えて選ぶことが大切です。
使いやすさはどの程度か
操作性もLMS選びの重要なポイントです。
ユーザーが使いにくさや分かりづらさを感じるシステムは、ストレスを与えてしまうため、未受講者の増加につながる恐れがあります。
管理画面の操作性をチェックするのはもちろん、受講者が迷わず必要なコンテンツに辿りつける仕様になっているかも必ず確認してください。
サポート体制は十分か
LMS導入後は本格的な運用が始まるため、トラブル発生時のサポート体制について確認しておくことが重要です。
LMSサービスの導入サポートや運用支援のサービス、メンテナンス、バージョンアップ時のサポート体制なども合わせて確認しましょう。
柔軟性はあるか
カスタイマイズの可・不可やその範囲などを確認し、柔軟性のあるベンダーを選びましょう。
LMSは長期的に運用するシステムのため、柔軟性のあるシステムを導入できれば、必要に応じて都度改修することができます。
また、対応人数に制限のある製品もあります。制限数は数百人~数万人程度と幅があるので、対象人数をカバーできるシステムを選ぶことも大切です。
LMSを活用して人材育成を効率よく進める
LMSは、教材の提供だけでなく、履修状況や理解度の把握など、学習管理も行えるシステムです。
従業員ごとの学習データに応じて、一人ひとりに合ったフォローが行えるため、学習効果を高めることができます。
また、出欠確認やアンケートの配布・集計といった、教育研修に付随する業務もLMS上で行えるため、管理業務の効率化が実現します。
限られたリソースの中で成果を出すには、こうしたシステムの活用が欠かせません。
多様な機能のついたシステムが登場していますので、LMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。