広義の社会保険とは?

広義の社会保険とは、

  1. 労災保険(労働者災害保険)
  2. 雇用保険
  3. 健康保険
  4. 厚生年金保険
  5. 介護保険

の5種類です。

 

このうち、労災保険と雇用保険の2種類を「労働保険」、健康保険・厚生年金保険・介護保険の3種類を「社会保険(狭義)」と言います。

 

単に社会保険と言われた場合、一般的には健康保険・厚生年金保険・介護保険の3種類を指します。

 

社会保険の区分

社会保険(広義) 労働保険 労災保険(労働者災害保険)
雇用保険
社会保険(狭義) 健康保険
厚生年金保険
介護保険

 

 

労働保険は、労働者を保護する制度です。

 

企業などに雇われている「被雇用者(従業員)」が加入の対象となるため、使用者は加入できません。

 

一方、社会保険は国民を守る制度のため、被雇用者だけでなく使用者も加入対象です。

 

労働保険の種類

労働保険と狭義の社会保険の違いが分かったところで、各労働保険の概要と加入条件について見ていきましょう。

 

労災保険(労働者災害補償保険)

労災保険は、業務上または通勤途中での事故により、病気やケガ、死亡などが発生したとき、労働者に給付する保険です。

 

保険料

全額会社負担のため、従業員が保険料を支払う必要はありません。

 

給付の種類

 

療養(補償)給付…治療費や薬剤費

休業(補償)給付…働けないときの損害補償

傷病(補償)給付…1年6ヶ月経っても治らず、傷病等級に該当する場合

障害(補償)給付…後遺障害が残った場合

介護(補償)給付…介護が必要になった場合

遺族(補償)給付…労働者死亡時に遺族に支払われる

葬祭料…葬儀費用

 

 

加入条件

対象者

すべての労働者が対象です。

 

正社員や派遣社員、パート・アルバイトといった雇用形態は問いません。

 

強制適用

原則、1人でも労働者を雇っている事業所は、加入義務があります。

 

暫定任意適用事業

暫定任意適用事業は、農林水産の事業のうち、労働保険の加入を「事業主の意思」または「労働者の過半数の意思」に任されている事業です。

 

労災保険の場合、

  1. 労働者5人未満の個人経営の農業(特定の危険・有害な作業を主としない)
  2. 個人経営の林業で常時雇用する労働者がいないかつ、年間使用労働者数が300人未満
  3. 個人経営の畜産または水産で、労働者が5人未満

が該当します。

 

原則、事業主の意思のみで任意加入可能です。

 

労働者の過半数が加入を希望するときは、申請義務が生じます。

 

なお、労災保険には特別加入制度があるため、

  1. 中小事業主
  2. 海外派遣者
  3. 一人親方

は、加入することができます。

 

雇用保険

雇用保険は、労働者が「失業したとき」「働き続けることが難しくなったとき」「自ら教育訓練を受けたとき」などに給付金を支給する保険です。

 

保険料

会社と労働者の折半

 

給付の種類

 

求職者給付…失業した場合

就職促進給付…再就職を支援

教育訓練給付…所定の教育訓練を受けた場合

雇用継続給付…定年後の再雇用者や介護・育児で休業する場合

「求職者給付」は、就職する意思とその能力がある人に一定期間支給する給付金です。

 

よって、ケガや病気、妊娠・出産といった何らかの理由ですぐに就職できない人や、個人事業主に転身する人は失業給付金を受け取れません。

 

▼加入条件

対象者

1週間の所定労働時間が20時間以上であること

31日以上の雇用見込みがあること

 

上記①②の要件を満たす労働者は、雇用形態にかかわらず加入する必要があります。

 

また、原則として学生は雇用保険に加入できませんが、休学中など一定の条件を満たす場合は、加入対象となります。

 

強制適用

労災保険と同じ条件

 

暫定任意適用事業

常時5人未満の労働者を雇用している個人事業で、一定の農林・畜産・養蚕・水産の業に該当する場合「暫定任意適用事業」となります。

 

「事業主の意思」+「労働者の1/2以上の同意」が原則です。

 

ただし、労働者の1/2以上が加入を希望する場合は、事業主に申請義務が生じます。

 

社会保険(狭義)の種類

つづいて、社会保険の種類とその加入条件についてご紹介いたします。

 

健康保険

健康保険は、労働者や被扶養者の病気やケガ、出産、死亡に関して給付を行う保険です。

 

医療機関などで保険診療を受けた場合、健康保険被保険者証を提示すると、一部負担金(一般的には3割)の支払いで治療や薬剤の処方を受けられます。

 

企業の健康保険の運営主体(保険者)は、「健康保険組合」「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類です。

 

保険料

会社と労働者の折半

 

給付の種類

 

療養の給付…診療・治療を受ける場合(医療費の一部負担)

療養費…医療費の立て替え払いをした場合

高額療養費…医療費の自己負担額が高額になった場合

傷病手当金…ケガや病気で働けない場合

出産手当金・出産一時金…出産した場合

埋葬料・埋葬費…死亡した場合 など

 

 

加入条件

  1. 適用事業所(会社が社会保険に加入している)であること

     

  2. フルタイム勤務の一般社員は原則全員加入対象

     

  3. 1週間の労働時間と1ヶ月の労働日数が一般社員の3/4以上あること

に該当している労働者は、強制加入です。

 

また、上記に該当しない場合でも一定の要件を満たせば、加入対象となります。

 

詳しくは、同記事内「短時間労働者の加入対象者」をご覧ください。

 

厚生年金保険

厚生年金保険は、労働者の老後や死亡、障害に対して給付を行う保険です。

 

会社員や公務員といった厚生年金保険の被保険者は、国民年金保険の被保険者でもあるため、「国民年金の基礎年金(基礎年金)」+「厚生年金」の2階建てになっています。

 

保険料

会社と労働者の折半

 

給付の種類

 

老齢厚生年金…65歳になったときに支給

遺族厚生年金…労働者が死亡した場合、遺族に支給

障害厚生年金…病気やケガなどで障害が生じた場合 など

 

 

加入条件

健康保険と同じ

 

介護保険

介護保険は、介護を必要とする40歳以上の人にその費用を給付する保険です。

 

40歳になると加入が義務づけられ、保険料の支払いが始まります。

 

保険料

 

第二号被保険者(40~64歳)…健康保険の保険料と一緒に徴収(事業主と折半)

第一号被保険者(65歳以上)…原則年金から天引き(全額自己負担)

 

 

要介護認定されると、介護サービスの利用費用や住宅改修費用の一部負担、車いすなどのレンタルといったサービスを利用できます。

 

加入条件

40歳以上のすべての国民

 

健康保険の加入手続きで完了するため、介護保険の手続きは不要です。

 

社会保険の加入対象となる「適用事業所」

適用事業所とは、健康保険・厚生年金保険の加入対象となる事業所のことです。

 

ここでは、適用事業所の種類についてご紹介いたします。

 

強制適用事業所

強制適用事業所は、社会保険への加入が義務づけられている事業所です。

 

社員(社長含む)が1人でもいる会社は、強制適用事業所となるため、必ず会社を設立したら加入することになります。

 

対象の事業所

    • 常時使用する従業員が1人以上いる法人事業所

    (国・地方公共団体や事業主だけの事業所を含む)

  1. 常時使用する従業員が5人以上いる個人事業所
    (農林水産業・始業・一部サービス・宗教などを除く)

 

任意適用事業所

強制適用事業所以外でも、一定の条件を満たせば社会保険に加入可能です。

 

従業員が5人未満の個人事業所は、従業員の半数以上が同意し、厚生労働大臣から認可を受けることで「任意適用事業所」になります。

 

健康保険・厚生年金保険どちらか一方だけの加入も認められています。

 

申請には、「健康保険・厚生年金新規適用届」「任意適用申請書」「任意適用同意書」といった書類が必要です。

 

特定適用事業所

特定適用事業所は、厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上いる事業所のことで、短時間労働者の社会保険加入が義務づけられています。

 

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴い、「特定適用事業所」が定義されました。

 

ただし、

 

2022年10月…常時101人以上

2024年10月…常時51人以上

 

に変更されるため、注意が必要です。

 

任意特定適用事業所

厚生年金保険の被保険者数が500人以下であっても、労使合意にもとづいて申し出れば、「任意特定適用事業所」として、短時間労働者の社会保険適用が可能になります。

 

短時間労働者の社会保険加入要件

短時間労働者とは、フルタイム勤務の一般社員よりも短い勤務時間の労働者です。

 

アルバイト・パートはもちろん、契約社員や臨時社員、準社員も働く時間が短ければ、短時間労働者に該当します。

 

短時間労働者の加入要件は以下の通りです。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 雇用期間の見込みが1年以上(2022年10月以降:2ヶ月以上)
  3. 月額賃金(所定内賃金)が8万円以上
  4. 学生でない
  5. 「特定適用事業所」or「任意特定適用事業所」に勤めていること

すべての要件を満たす短時間労働者は、社会保険の加入対象です。

 

週の所定労働時間が20時間以上

短時間労働者の場合、

  1. 所定労働時間が通常の労働者の3/4未満
  2. 1週間の労働時間が20時間以上

の要件を満たす必要があります。

 

所定労働時間とは、就業規則や労働契約で企業が定めた勤務すべき時間のことです。

 

例えば、一般社員の労働時間が週40時間(1日8時間、週5日)だった場合、「20時間以上かつ30時間(3/4)未満の労働者」が該当します。

 

雇用期間の見込みが1年以上(2022年10月以降は2ヶ月以上)

期間の定めなく雇用される場合や雇用期間が1年以上の場合が対象です。

 

ただし、雇用期間が1年未満であっても、

  1. 就業規則や雇用契約書等の書面で、契約が更新される可能性があると明示されている場合
  2. 同様の雇用契約で雇用された者が更新などによって、1年以上雇用された実績がある場合

は対象となります。

 

2022年10月から「雇用期間の見込みが2ヶ月以上」に拡大されるため、注意が必要です。

 

月額賃金(所定内賃金)が8.8万円以上

時給・日給・週給を月額換算し、8.8万円以上である場合が対象です。

 

ただし、残業代や通勤手当、家族手当、精皆勤手当などの手当は含めません。

 

学生でない

学生は社会保険の適用外です。

 

ただし、夜間や通信、定時制の学生、休学中の学生は対象となります。

 

「特定適用事業所」or「任意特定適用事業所」に勤めていること

勤務先が「特定適用事業所」もしくは「任意適用事業所」の場合、短時間労働者も社会保険に加入することができます。

 

社会保険への加入を怠った場合の罰則

社会保険の強制加入条件を満たしていながら加入を怠った場合、事業主はどのような罰則を受けるのでしょうか。

 

労災保険の罰則

労災保険の加入を怠った場合の罰則は、

  1. 過去2年分の労災保険料と追徴金の徴収
  2. 未加入時の労災事故が発生したときは、保険休学の一部または全部を徴収

です。

 

また、労災保険の未加入は労働基準法違反にもあたるため、悪質な場合は30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役を科される可能性もあります。

 

雇用保険の罰則

雇用保険の加入を怠った場合は、過去2年分の雇用保険料を納付します。

 

悪質な場合は、30万円以下の罰金または6ヶ月以下の懲役を科される可能性があります。

 

健康保険・厚生年金保険の罰則

健康保険・厚生年金保険の加入を怠った場合は、過去2年分の保険料を納付します。

 

なお、退職済み被保険者の保険料に関しては、全額会社負担になることもあります。

 

このほか、30万円以下の罰金または、6ヶ月以下の懲役を科される可能性もあるため、注意が必要です。

 

社会保険の加入手続き

全国健康保険協会に加入している場合は、「健康保険」と「厚生年金」の加入手続きをまとめて行えます。

 

健康保険組合の場合、年金事務所への届け出を行うとともに、各組合の規定に沿って手続きを進めてください。

 

資格取得時は、事業主が加入対象者の氏名・生年月日・性別・住所・マイナンバーまたは、基礎年金番号を確認した上で、資格取得届に記入・届け出を行います。

 

手続きを行う際は、必ずマイナンバーや基礎年金番号を確認してください。

 

事業所としてはじめて社会保険に加入する場合

強制適用事業所は設立から5日以内、任意適用事業所は同意を得た後に、以下の書類を所轄の年金事務所に提出します。

 

提出書類

  1. 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  2. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  3. 被扶養者(異動)届(被保険者に被扶養者がいるとき)
  4. 保険料口座振替納付(変更)申出書

 

必要書類

 

法人事業所…法人登記簿謄本(原本)

強制適用所(個人事業所)…事業主世帯全員分の住民票(原本)・事業実態を確認できる書類

任意適用事業所(個人事業所)…事業主世帯全員分の住民票(原本)・任意適用申請書・任意適用同意書・公租公課の領収書1年分

 

 

従業員を雇用した場合

社会保険の加入対象者を採用した日から5日以内に、

  1. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  2. 健康保険被扶養者(異動)届(被保険者に被扶養者がいるとき)

を所轄の年金事務所へ提出します。

 

労働保険の加入手続き

労働保険は、原則として1人でも労働者を雇っていれば加入しなくてはなりません。

 

労災保険の加入手続きは、業種によって異なりますが、農林漁業や建設業以外であれば、大半は労災保険と労働保険をまとめて行えます。

 

開業してはじめて従業員を雇用した日が労働保険の加入日となり、10日以内に手続きを行います。

 

所轄の労働基準監督署へ書類を提出

「保険関係成立届(保険関係成立の翌日から10日以内)」と「労働保険概算・確定保険料申告書(保険関係成立の翌日から50日以内)」を提出します。

 

添付書類として、会社の情報が書かれた「履歴事項全部証明書」も必要となるため、あらかじめ用意しておきましょう。

 

所轄の公共職業安定所で加入手続きを行う

「雇用保険適用事業所設置届(設置日の翌日から10日以内)」と「雇用保険被保険者資格取得届(資格取得日の翌月10日まで)」を提出します。

 

必要書類

  1. 労働保険関係成立届(事業主控え)
  2. 登記簿謄本
  3. 事業実態を確認できる書類
  4. 労働者名簿
  5. 出勤簿orタイムカード
  6. 賃金台帳
  7. 雇用契約書or雇入通知書
  8. 雇用保険被保険者証

 

社会保険加入は企業の義務

社会保険の加入は企業の義務です。

 

保険加入を怠った場合、未納分の保険料納付だけでなく、懲役や罰金を科される可能性もあります。

 

加入義務違反は企業にとって大きな損害につながるため、漏れのなく加入手続きを行い、従業員を守りましょう。

 

また、社会保険の適用範囲は2022年10以降、段階的に拡大されます。

 

小規模な事業所も他人ごとではなくなってくるので、しっかりと情報をアップデートしておきましょう。

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