週休3日制の実態やメリット・デメリットは? 導入時の検討事項や企業事例をご紹介

近年、大手企業を中心に週休3日制を導入する企業が増えつつあります。

 

政府も選択的週休3日制の導入について言及するなど、新しい働き方として週休3日制への注目が高まっています。

 

この記事では、週休3日制の概要や注目されている背景、実態、メリット・デメリットについて解説します。

 

週休3日制を導入する際の検討事項や企業事例についてもご紹介しますので、ぜひご覧ください。

 

週休3日制とは?

週休3日制とは、1週間あたりの労働日数を減らして、休日を3日設ける制度です。

 

曜日の指定や週休3日制の対象者、給与体系といった運用方法については、企業が自由に決められます。

 

現在は週休2日制の企業が大半ですが、週休3日制を導入する企業も徐々に増えてきています。

 

週休3日制が注目されている背景

ではなぜ、週休3日制が注目されるようになったのか、詳しく見ていきましょう。

 

政府による選択的週休3日制の推奨

選択的週休3日制とは、希望者が週休3日で働ける制度のことです。

 

2021年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」では、多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践として「選択的週休3日制度の導入を促進し、普及を図る」と盛り込みました。

 

現段階では、選択的週休3日制の導入時期は未定ですが政府は民間企業で選択的週休3制をスタートし、公務員に広げていくことを想定しています。

 

ワークライフバランスを重視する労働者の増加

少子高齢化や働き方改革の推進などにより、ワークライフバランスを重視する労働者が増加したことも週休3日制が注目されている要因の一つです。

 

休みが増えれば育児や介護をする人も働きやすくなりますし、病気療養などで週休2日制の勤務が難しい人も活躍の機会が増えます。

 

つまり、ワークライフバランスが取りやすくなることで離職率の低下や人材確保につながると期待されているため、週休3日制が注目されているのです。

 

週休3日制のパターン

週休3日制の主なパターンは、

  1. 給与減額型
  2. 総労働時間維持型
  3. 給与維持型

の3つに分けられます。

 

ここでは、それぞれのパターンについてご紹介します。

 

給与減額型

休みが増えた分だけ給与も減るパターンです。

 

「1日8時間×週5日」から「1日8時間×週4日」のように、1日の労働時間は、週休3日制導入以前と変わりません。

 

給与水準は変更しないので、総労働時間の減少にともない給与も減ります。

 

人件費は抑えられますが、従業員が不満を募らせる可能性があるため、注意が必要です。

 

総労働時間維持型

総労働時間を維持するために、1日の労働時間を増やすパターンです。

 

例えば「1日8時間×週5日」から「1日10時間×週4日」など、1日あたりの労働時間を増やすことで、週の所定労働時間は維持します。

 

ただし、法定労働時間は1日8時間・週40時間と定められているため、このままでは毎日2時間の時間外労働が発生することになります。

 

一定期間の単位で労働時間を調整する「変形労働時間制」であれば、勤務時間が増えても時間外労働扱いにはならないので、月の変形労働時間制を導入している企業が大半です。

 

以前と変わらない給与で休みが多くなるのは、従業員にとって大きなメリットですが、10時間労働が負担となる場合もあるでしょう。

 

給与維持型

休みを増やして、給与は変えないパターンです。

 

「1日8時間×週5日」から「1日8時間×週4日」など、労働時間は減らすものの給与は従来と同じ金額を維持します。

 

従業員満足度は高まりますが、企業側の負担が大きくなるため慎重な判断が必要です。

 

週休3日制の導入実態

2021年に行った厚生労働省の調査によると、「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」を採用している企業は8.5%、前年度の8.3%と比較すると0.2ポイント増加しています。

 

企業規模別では、

 

1,000人以上…6%

300~999人…9%

100~299人…5%

30~ 99人…4%

 

と、企業規模が大きくなるほど、導入率が高くなる傾向にあります。

 

また、「完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度」で働く労働者の割合は、11.3%です。

 

参考:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況

 

労働者は週休3日制をどう思っている?

では、労働者は週休3日制についてどう考えているのでしょうか。

 

収入減少と利用意向の相関性

収入減少と利用意向の相関性

引用:マイナビ転職「週休3日制の意識調査

 

週休3日制の利用意向については、収入も減少する場合「利用したくない」と回答した人は78.5%に達しました。

 

一方、収入は変わらず1日の労働時間が増える場合、「利用したい」は46.1%、1日の労働時間も収入も変わらない場合、「利用したい」が77.9%です。

 

収入が減少するかどうかによって、週休3日制の利用意向が大きく変わることが分かります。

 

休みが増えたときに想定される仕事への影響

休みが増えたときに想定される仕事への影響

引用:マイナビ転職「週休3日制の意識調査

 

休みが増えたときに想定される仕事への影響として、

 

収入が減りそう…0%

効率的に仕事を進めるよう努力しそう…5%

長く働き続けられそう…3%

 

が多く挙がりました。

 

先の結果同様、休みの増加に対しては仕事への好影響より、収入減少に大きな不安感を持っていることが分かります。

 

給与重視派と休み重視派の割合

給与重視派と休み重視派の割合

引用:マイナビ転職「週休3日制の意識調査

 

「給与は高いが休みは少ない」「給与は少ないが休みが多い」どちらが良いかの質問では、休み重視が50.1%、給与重視が49.9%と半々です。

 

ただし、年代別に見ると、20代~30代は休み重視、40代~50代は給与重視の割合が高い結果となりました。

 

このことから、休みは若手社員のエンゲージメント向上に、重要な要素であることが分かります。

 

週休3日制導入のメリット

ここでは、週休3日制を導入するメリットについてご紹介します。

 

人手不足を解消できる

少子高齢化による労働力不足は、年々深刻化しています。

 

労働日数が減少すれば、プライベートの時間を確保しやすくなるため、週休3日制はワークライフバランスを重視する労働者にとって魅力的な制度です。

 

大手企業を中心とした一部の企業にしか採り入れられていないので、週休3日制を導入すれば、自社の優位性をアピールできます。

 

家庭や体調面など、さまざまな理由から週5勤務が難しい人も働きやすくなるため、人手不足の解消につながります。

 

労働環境改善に積極的な企業というイメージを与えられれば、優秀人材も集まりやすくなるでしょう。

 

離職率の低下につながる

週休3日制の導入で働き方の選択肢が増えれば、その分仕事と家庭を両立しやすくなります。

 

育児や介護といった家庭の事情による離職を低減できますし、プライベートが充実すれば、エンゲージメントも向上するでしょう。

 

コストを削減できる

週休3日制の導入によって、従業員の出勤日数が減れば、電気代などの光熱費を削減できます。

 

また、組織体制や業務方法を見直して総労働時間を減らせれば、残業代の支払いも少なく済みます。

 

イノベーションが促進される

週休3日制の導入によって休日が増えるとプライベートな時間が増えるため、セミナーや勉強会への参加や教育機関での学び直し、副業などにも励みやすくなります。

 

能力アップやコミュニケーションの幅が広がることで、新たなアイデアが生まれれば、イノベーションの促進につながります。

 

また、十分な休息により心身をリフレッシュできれば、従業員のモチベーションも向上するため、生産性向上を期待できるでしょう。

 

感染症のリスクが低減する

労働日数が減少すると従業員同士の接触機会も減るため、感染症のリスクが低減します。

 

週休3日制導入のデメリット

つづいて、週休3日制を導入するデメリットについてご紹介します。

 

これまでの業務量をこなせなくなる可能性がある

1日の労働時間を変えずに週休3日制を導入する場合、総労働時間が減少するため、従来通りのやり方ではこれまでの業務量をこなせなくなる可能性があります。

 

従来通りの業務量をこなせなくなると、顧客満足度の低下や業績悪化を招く恐れがあるため、システム導入による業務効率化や増員を検討する必要があります。

 

また、総労働時間が減らないよう、1日の労働時間を増やすのも一つの手です。

 

勤怠管理が煩雑化する

週休3日制の導入により、週休2日と週休3日の従業員が混在する企業も出てくるでしょう。

 

従業員によって休日日数や総労働時間が異なれば、勤怠管理や給与体系は煩雑化するため、人事・労務担当者に大きな負担がかかります。

 

また、週休3日制の運用方法の検討や就業規則の見直しなど、新たな体制を構築するには、それなりに時間や手間、コストがかかります。

 

人事・労務担当者の負担を軽減し、人的ミスを防止するためにも、多様な働き方に対応できる態勤怠管理システムの導入を検討しましょう。

 

コミュニケーション不足に陥る可能性がある

1週間あたりの出勤日数が減れば、自ずと社内・社外の関係者とも接触する機会が減るため、コミュニケーション不足に陥る可能性があります。

 

社内におけるコミュニケーションの量・質が下がると、業務が円滑に進まなくなり、生産性低下につながります。

 

また、社外関係者との接触機会が減少し「担当者と連絡が取れない」「緊急対応ができない」などの事態が起きれば、機会損失や取引終了に発展することもあるので、注意が必要です。

 

コミュニケーションツールや管理システムの導入で情報共有をスムーズにする、シフト制やフレックスタイム制を導入し常に対応できる体制を整えるなど、対策を講じましょう。

 

離職率が高まる可能性がある

総労働時間の減少にともなって給与も減らす場合、企業側は人件費を削減できますが、従業員から反発されることがあります。

 

また、1日の労働時間を増やすことで従来の総労働時間を維持する場合、負担に感じる従業員もいるため、離職率が高まる可能性があります。

 

十分に説明した上で希望者のみ週休3日制にする、副業を認めるなどの対策で、離職リスクを低減させましょう。

 

週休3日制を導入する上での検討事項

ここでは、週休3日制の導入で検討するべき事項についてご紹介します。

 

目的の明確化

対象者や給与体系は、以下の表のように目的で変わるため、まずは「何のために週休3日制を導入するのか」目的を明確化させることが重要です。

 

目的 対象者 制度
育児・介護との両立支援 小さな子どもや介護を必要とする家族を持つ従業員 給与減額型
人材確保 希望者のみ 給与維持型
長時間労働の是正 全従業員 総労働時間維持型

対象者の決定

目的に応じて、対象となる従業員を決定しましょう。

 

従業員に対して、週休3日制に関する意見をヒアリングした上で対象者を決めると、理解を得やすくなります。

 

利用期間の検討

週休3日制の利用期間についても検討します。

 

「一定期間のみの適用」「年間通しての適用」以外では、週休2日制と週休3日制を選べる「1か月単位での選択制」にする方法もあります。

 

一定期間のみの適用であれば、週休3日制の試験導入としても活用できるでしょう。

 

給与体形・所定労働時間・休日を決める

導入目的に応じて「給与減額型」「総労働時間維持型」「給与維持型」のいずれの方法が適切かを検討し、所定労働時間や休日を決定します。

 

労働条件が変わるため、従業員に十分な説明をした上で、就業規則も変更しましょう。

 

有給休暇や平均賃金の算定

週4日勤務かつ週の所定労働時間が30時間未満になった場合、年次有給休暇は比例付与となります。

 

有給休暇の日数が少なくなるため、誰が比例付与の対象となるのか、確認・算定しましょう。

 

なお、日給制や時間給制の場合、平均賃金の最低保障額に留意する必要があります。

 

副業の可否

週休3日制を導入する場合、副業や兼業の希望者が増加するでしょう。

 

副業や兼業は、スキルアップや業績向上が期待できる反面、情報漏えいなどのリスクもあるため、メリット・デメリットを把握した上で可否を決めます。

 

週休3日制を導入している企業事例

最後に、他企業ではどのように週休3日制を導入しているのか、具体的な事例を見ていきましょう。

 

株式会社ファーストリテイリング

ユニクロを運営するファーストリテイリングでは、総労働時間維持型の週休3日制を導入しています。

 

「オン・オフの充実」「仕事と家庭の両立」を目的として、「1日10時間×土日含む週4日の勤務」で週休2日制と同額の給与を支給しています。

 

地域正社員を対象としており、仕事と介護や家事・育児の両立はもちろん、スキルアップのための勉強時間確保など、多様な目的で利用されているようです。

 

日本マイクロソフト株式会社

日本マイクロソフトでは、2019年・2020年に「1日8時間×週4日勤務で給与変更なし」の給与維持型の週休3日制を試験的に導入しました。

 

パフォーマンスを維持するために、会議時間の短縮やリモートワークの活用、積極的な人材交流などの施策を組み合わせています。

 

印刷枚数や電力消費量が大幅に削減できた他、従業員の約9割が週休3日制に満足したと回答したそうです。

 

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、2020年12月から給与減額型の週休3日制以上の制度を導入しています。

 

メガバンクでは初めてとなる取り組みで、週休3日で従来の8割、週休4日で従来の6割にまで給与が減額する仕組みです。      

 

「個人の人生設計において、働き方の選択肢を増やす目的」としており、希望者のみを対象としています。

 

週休3日制の導入は慎重な検討が必要

週休3日制は、人手不足の解消やコスト削減といったメリットがある反面、こなせる業務量が減少したり、コミュニケーションが不足したりとデメリットもあります。

 

また、運用方法によっては従業員の負担増加やコストカット目的と認識されて、反発される可能性もあります。

 

いずれにしても、週休3日制の導入にあたっては、従業員が納得できるよう十分な説明をすることが重要です。

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