若者の間で大人気の「Tiktok(ティックトック)」ですが、最近では採用活動に用いる企業が増えています。
Tiktokが応募のきっかけになることも多いため、この記事では、若年層の採用に苦戦している企業向けにTiktokの概要や、取り組み方、ポイントについて解説します。
また、Tiktokを採用活動に用いるメリットや企業事例についてもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
TikTokとは
Tiktokとは、中国のIT企業ByteDanceが開発したアプリで、短尺動画(15秒・60秒・3分・5分)をシェアするSNSの一つです。
5分の動画はアップロードのみですが、15秒~3分までの動画であれば、アプリ上で撮影~編集加工、タグづけして投稿までできます。
アプリ内の機能を使うだけで、誰でも簡単にBGMや特殊効果などの加工が行えるため、日本では2017年のリリース以降、若者を中心に利用者が増加しています。
なお、アメリカの調査会社AppAnnieが2021年に行った調査では、アメリカとイギリスにおけるTikTokの利用時間が、YouTubeを超えたことが明らかになりました。
InstagramやTwitterなどとの違い
では、InstagramやTwitter、Facebookといった他のSNSとは、具体的に何が違うのでしょうか。
Instagramは、写真や短尺動画をシェアするSNSで、20代~30代の若い世代の女性が多く利用しているのが特徴です。
ビジュアル重視のSNSなので、美容やファッション関係の採用活動と相性が良く、企業ブランディングにも適しています。
一方、Tiktokは10代~20代の若者を中心に幅広い世代に利用されており、Instagramよりもカジュアルな投稿が多いです。
映えるかどうかよりも、面白い動画に人気が集まりやすく、若年層へのアプローチに期待できます。
Twitterは、140文字以内の短い文章を投稿するSNSで、幅広い世代に利用されています。
他人のツイートを自分のタイムラインに載せられる「リツイート機能」があるため、拡散力が強く、リアルタイム性のある情報が好まれます。
画像や動画も投稿できますが、Tiktokのような高度な編集加工はできません。
TiktokとTwitterを連携させて情報を拡散し、自社採用サイトへ誘導する企業も多いです。
Facebookは実名制のSNSで、40代以上の男性が多く利用しています。
ビジネス用として使う人が多いため、他のSNSと比べると固い印象が強いです。また、投稿では写真や動画、長文の投稿も可能です。
ビジネスアカウントであれば、Facebook上で求人募集をかけたり、広告を出したりして、多くのユーザーに訴求することもできます。
ただし、Tiktokと違って若者の利用率が極端に低いため、新卒・第二新卒の採用には向きません。
30代~50代のキャリア採用向きのSNSと言えるでしょう。
TikTokの利用状況
参考:総務省情報通信政策研究所「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
総務省情報通信政策研究所の調査によると、Tiktokの利用者は10代が57.7%、20代が28.6%と、10代~20代で86%以上と、若い世代の利用者が圧倒的に多いです。
また、動画マーケティング支援事業を行っている株式会社Suneightの調査では、81%の就活生が「Tiktokで企業動画を見たことがある」と回答しています。
さらに、そのうちの80.2%が「Tiktokの企業動画がきっかけで、企業に興味を持ったことがある」と回答、「実際にエントリーした経験がある」は66.2%でした。
7割近くの学生がTiktokをきっかけとしてエントリーしているため、Tiktokは新卒・第二新卒はもちろん、早期就活生へのアピールとしても有効と考えられます。
企業イメージを伝えるのが重要
引用:株式会社Suneight「Z世代就活生のTiktok活用実態に関する調査」
同調査でTiktokがきっかけで興味を持った学生に対し、その理由について聞いたところ、
企業イメージが掴めたため…5%
企業の世界観が掴めたため…5%
簡潔に企業の魅力がわかったため…9%
短い動画で最後まで視聴できたため…4%
が大多数を占めました。
若い世代はTiktokでも情報収集しているため、短い動画でテンポよく企業イメージを伝えることが重要と言えるでしょう。
TikTokで採用活動をするメリット
では、Tiktokで採用活動をすると、どういったメリットを得られるのでしょうか。
他のSNSにも投稿できる
Tiktokに投稿した動画は、TwitterやYouTube、Instagramにも投稿できます。
他のSNSと連携させれば、Tiktok単体で発信するよりも拡散力が高まり、多くの人に閲覧してもらえます。
動画が拡散すれば、自社の業界や仕事内容に興味のない人にも間接的にアプローチできるため、母集団の形成にもつながるでしょう。
コストがかからない
Tiktokを活用すると、コストの削減につながります。
動画投稿プラットフォームであるYouTubeには、簡易的な編集機能しか用意されていない上に映像のプロもYouTubeに参入しているため、全体的にクオリティが高いです。
そのため、YouTubeを活用する場合、撮影・編集に関するスキルや知識が求められますし編集の手間とその人件費もかかります。
一方TikTokは、基本的にアプリ内の機能だけで撮影から編集加工、投稿まで行えるため、特別なスキルや知識がなくても簡単に利用できます。
また、無料で利用できるので、Tiktok経由で採用ができれば掲載費用など外部に支払うコストを大幅に抑えられるでしょう。
会社の雰囲気を伝えられる
企業サイトや求人サイトでは、事業内容や企業理念といった基本的な情報を伝えることはできても、社風や人柄などの雰囲気を伝えるのは難しいでしょう。
動画であれば、言語化しづらい社員の人柄や社風も伝わりやすくなるので訴求力が高まります。
Tiktokのコンテンツは短尺でテンポよく進む動画が多いため、飽きずに最後まで見てもらえますし、記憶にも残りやすいです。
TikTokで採用活動をするデメリット
Tiktokで採用活動をするとさまざまなメリットを得られますが、デメリットも存在します。
炎上リスクがある
Tiktokに限った話ではありませんが、SNSは不特定多数が閲覧しているため、不用意な発言や行動がきっかけで炎上する可能性があります。
炎上すると企業イメージの悪化につながるため、
- 触れない話題を決める(政治・宗教など)
- ダブルチェック体制を整える
- 教育プログラムを実施する
など、運用ルール決めてから会社の方針にしたがって投稿しましょう。
また、炎上を完全に防ぐことはできないので、事前に炎上発生時のマニュアルを作成し、万が一の事態に備えることが大切です。
匿名性が高い
FacebookやLinkdinといった実名制のSNSと違い、Tiktokは自由にユーザー名を決められます。
匿名性が高いため、ユーザーの情報を収集することは困難です。
仕事の大変さが伝わりづらい
短尺動画で具体的な業務内容や仕事の大変さ、やりがいまで伝えるのは困難です。
特に、TikTokはBGMに合わせて踊る動画など、面白そう、楽しそうなコンテンツが人気のため堅苦しいコンテンツはあまり好まれません。
そのため、業務に関する情報を企業サイトや採用サイトでしっかり発信した上で、TikTokで会社の雰囲気や親しみやすさをアピールしましょう。
TikTokで採用活動をするには?
ここでは、Tiktokで採用活動をする方法についてご紹介します。
目的やペルソナを明確にする
誰に何を伝えたいのかが曖昧な状態では、ありふれた内容の動画になってしまうため、ユーザーに刺さる動画は制作できません。
まずは、動画制作の目的や対象を明確化させましょう。
「Tiktokの動画で何をしたいのか」「どういう人材に向けて発信するのか」を明確にすることで、運用の方向性や発信するべき内容が見えてきます。
ペルソナを考案する際は、
- 年齢
- 性別
- 居住エリア
- 家族構成
- 学校(学校名・学部・学科)
- 趣味
- 行動特性
など、特定の人物をイメージできるくらい細かく設定しましょう。人物像が明確になるほど、訴求の高いコンテンツを企画しやすくなります。
動画の内容を検討する
目的やペルソナが明確になったら、動画の内容を考えましょう。
例えば、
会社の雰囲気を伝えたい…先輩と後輩、上司と部下が躍っている動画
企業ブランディング…社長自らが動画に出演する
といった内容が考えられます。
企画を練り上げたら、出演者や担当者のスケジュール調整など、撮影に向けた準備も整えましょう。
運用ルールをつくる
Tiktokは不特定多数が視聴するため、事前に運用ルールを定めることが重要です。
具体的には、
- トラブル発生時の対処法
- 発信する情報の範囲
- コメントへの返信ルール
などをあらかじめ決めておきましょう。
また「毎週〇曜日の〇時に投稿」のように、決まったタイミングで定期的に投稿すると、ユーザーから認知されやすくなります。
継続的に投稿できるよう、無理のないスケジュールにしましょう。
動画の撮影
Tiktokはアプリ上で撮影から編集まで行えるため、特別な機材は必要ありません。スマートフォンを用意したら、撮影を開始しましょう。
ただ撮影するだけでなく、好きなタイミングでカットと再撮影ができるので、動画の内容に合わせてアレンジを効かせることも可能です。
なお、Tiktokの動画を撮影する際は、スマートフォンで閲覧しやすいよう、縦向きで撮影してください。
動画の編集
Tiktokのアプリでは、
- BGMの挿入・音量調整
- アフレコの挿入
- 音声加工
- 複数動画の組み合わせ
- 再生速度の変更
- テキストの挿入(170文字まで)
- 動画のエフェクト(メイクのフィルターなど)
といった機能が用意されています。
さまざまな加工編集機能を利用して、視聴者の興味を引きましょう。
データを分析する
動画を投稿しても、すぐに効果が出るわけではありません。
投稿したら、
- 合計動画再生回数
- 平均視聴時間
- 視聴維持率
- 視聴完了率
などを分析しましょう。
再生回数が多い動画でも、平均視聴時間が低ければ内容を工夫する必要がありますし、視聴維持率や視聴完了率を分析すれば、ユーザーの興味・関心の度合いを判断できます。
特に、平均視聴時間や視聴維持率、視聴完了率は、Tiktokのレコメンドシステムに大きく影響するため、これらを改善すると優先的におすすめ表示されます。
よって、データを分析していくことで、ターゲットにマッチするコンテンツが作れるようになるはずです。
TikTokによる採用活動を成功させるポイント
つづいて、Tiktokでの採用活動を成功させるためのポイントについてご紹介します。
アルゴリズムを知る
Tiktokでは、「加算アルゴリズム」「減算アルゴリズム」の2種類を総合的に判断してランクづけしています。
加算アルゴリズムは、
- 平均視聴時間
- 視聴維持率
- 視聴完了率
- いいねの数
- コメント数
- シェア率
- 保存数
- プロフィール遷移率(動画再生からプロフィールを見た割合)
- フォロー率
の要素です。
数値が高いほどおすすめフィードへの表示回数が増えるため、ユーザーが何を求めているのか他の動画を参考にリサーチしてから動画を制作しましょう。
減算アルゴリズムは、
- コミュニティガイドラインに反する行為(信頼性・安全性を損ねる)
- UXを悪化させる行為(「つづきはYouTubeで」など、外部サイトへ直接誘導する)
- ネガティブな評価(「興味がありません」「通謀する」ボタンが押される)
の3つで、マイナス要素が多いほどバズりにくくなります。
また、ガイドラインに反している場合、アカウントバンされる可能性があるので、注意しましょう。
社内の理解と協力を得る
動画の撮影・編集や社員の出演など、Tiktokの運用には社内の理解と協力が欠かせません。
事前にTikTokを運用する目的やルール、作業時間、撮影の時間帯、出演依頼のフローといった情報を共有し協力を呼びかけましょう。
また、定期的な結果報告や企画のアイデア募集を行うと、社内全体で取り組んでいる姿勢をアピールでき、社員からのさらなる協力も得やすくなります。
ビジネス色を抑える
Tiktokは個人ユーザーによる投稿が多く、カジュアルな動画がほとんどです。
ポップで面白い動画ばかりの中、自社情報を前面に押し出した動画を投稿しても、良い反応は期待できないでしょう。
おすすめフィードの動画をチェックすると、Tiktokユーザーに好まれる動画の傾向を把握できます。
コンバージョンへの導線を確保
興味を持ったユーザーに、問い合わせやエントリーをしてもらえるよう、他サイトへの導線を確保しましょう。
プロフィールに採用サイトのURLやSNSアカウントのリンクを掲載するのはもちろん、してほしいアクションを動画内で伝えるのも効果的です。
TikTokの活用事例
最後に、Tiktokで採用活動を行った企業事例をご紹介いたします。
大京警備保障株式会社
大京警備保障は、社員の平均年齢50代でありながら、アカウント開設からわずか1年でフォロワー9.7万人以上を獲得した警備会社です。
社員の普段の姿を見せることを意識し、業務とは一見関係のない投稿をつづけたところ、1本の動画をきっかけにフォロワーが急増しました。
「出演する社員を増やす」「オリジナルの動画を投稿する」などの工夫をつづけた結果、Tiktokがきっかけで12名から応募があり、そのうち1名の採用が確定したそうです。
20代~30代の応募者が多いため、若手の採用に成功しています。
三陽工業株式会社
アカウント名:@sanyoukougyou
製造業を営む三陽工業株式会社では、2021年2月に運用を始めてから9か月でフォロワー4.4万人、累計動画再生数1,200万回以上、ライブ配信の総視聴者数約2,000人を突破しています。
ものづくりの技能承継のため、若者の確保を目的として、平均年齢57歳の中高年の社員が毎日動画を更新しています。
ポップな曲に合わせて踊ったり、筋トレしたりする動画が好評となり、フォロワーが増加しました。
2022年新卒採用では、説明会参加者の7割がTiktokを視聴していたそうです。
同社の内定者8人のうち、3人がTiktokを通しての応募だったこともあり、若者たちから大きな支持を得ていることが分かります。
株式会社BEEM
アカウント名:@beem_official
株式会社BEEMは、Instagram運用やSNS動画スクール運営などを行っているコンテンツマーケティング企業です。
昼休みや帰宅風景などの動画が数多く投稿されており、オフィス内の様子や上司と部下の関係性が分かるつくりになっています。
トレンドの音楽や、エフェクトを使ったユーザーを飽きさせない工夫が施されているため、動画制作のヒントを得られるでしょう。
Tiktokで若年層へリーチ
Tiktokは、Z世代(1990年後半~2000年代)と呼ばれる若年層が数多く利用していますし、今後もさらに利用者が伸びると予想されます。
Tiktokの動画がきっかけで企業に興味を持ち、応募する人も多いため、若年層の確保に苦戦している企業はTiktokを運用してみてはいかがでしょうか。