少子高齢化の影響で人手不足が深刻化する中、業務を自動化するRPAの導入企業が増加しています。
しかし、「活用方法が分からない」「どうやって導入するのか分からない」という方も多いでしょう。
この記事では、少ない人員数でも業務をこなすために欠かせないRPAの概要やメリット、導入手順について解説します。
RPAの導入事例もご紹介していますので、ぜひご応募ください。
RPAとは
「RPA(Robotic Process Automation)」とは、バックオフィス業務を自動化するテクノロジーのことです。
PC上で人間が行うあらゆる操作をロボットが代替することで、正確かつ迅速に処理できるため業務効率化や働き方改革につながるものとして期待されています。
RPAの特徴
RPAの特徴は、一定のルールにもとづいた反復作業を得意とする点です。
人間の場合、同じ作業を続けていると徐々にミスや効率が低下していきますが、ロボットはミスなく作業を繰り返すため、業務効率を最大限向上できます。
では、RPAの得意な作業と、苦手な作業を具体的に見ていきましょう。
得意な作業1.入力・転記
ウェブサイト・社内システム・アプリケーションなどへのデータ入力や、受け取ったデータを別のシステムに転記する作業の自動化です。
例えば、請求書の処理や発注・受注、納品といった多様な業務に活用できます。
人間がデータ入力や転記する場合、その都度内容を確認しなくてはなりませんが、RPAはミスなく迅速に業務をこなすため、チェック作業を省略できます。
得意な作業2.モニタリング
24時間のデータ監視と、異常を検知した際のユーザー報告の自動化です。
RPAにモニタリング作業を任せることで、データの確認作業を省略できる上に、異常の早期発見による対応の遅れを防止できます。
得意な作業3.送付
RPAでは、問い合わせメールやリマインドメールなど、定型メールの送信を自動化できます。
大量の取引先に請求書などを送付する作業を自動化できるため、大幅な作業工数削減につながります。
得意な作業4.照合
複数のシステムに蓄えられているデータを比較し、精査する作業も自動化できます。
データの照合作業をRPAに任せれば、入金データと請求データの相違チェック作業を手早く進められます。
得意な作業5.集計
複数のデータを自動で集約し、加工する作業の自動化です。
Webサイトのアクセスログを集計し、グラフを作成する作業も自動化できるため、正確なデータにもとづいた分析や施策の考案を効率的に行えます。
苦手な作業
RPAが苦手とするのは非定型の作業です。
RPAは、あらかじめ定められたルールにもとづき作業するため、RPAが自ら判断することはありません。
そのため、柔軟な対応を求められる仕事や、企画・分析・議論といったクリエイティブな仕事はRPAの苦手分野とされています。
しかし、最近はAIとの連携で非定型の作業を自動化する事例も出てきています。
RPAの種類
RPAの動作形態は「サーバー型」「デスクトップ型」「クラウド型」の3種類に大別されます。
ここでは、それぞれの特徴についてご紹介します。
サーバー型
ロボットが自社サーバー内で稼働し、横断的に業務を管理・自動化するオンプレミス型のRPAです。
サーバー内で稼働する全ロボットを一括管理できるため、部署をまたいで作業連携が必要な業務や、大量にデータ処理する必要のある業務に適しています。
ただし、サーバー型は他のRPAよりも導入費用が高いため、大企業向けの形態と言えるでしょう。
デスクトップ型
デスクトップ型は、PCにインストールして使うRPAです。
PC1台単位で導入でき、導入費用も手ごろなため、小規模向きのRPAと言えます。
PCごとに調整できるのはデスクトップ型のメリットですが、業務管理が属人化しやすい点には注意が必要です。
クラウド型
クラウド型は、サービス提供企業が管理しているクラウドサービスにログインし、Web上で業務を自動化させるRPAです。
サーバーの構築やPCにインストールする必要がないため、時間的・金銭的なコストはあまりかかりません。
ただし、インターネット経由でアクセスできないシステムと連携不可な点や、データ漏えいリスクがある点には、注意が必要です。
RPAとAIの違い
RPAは、人間が定めたルールにしたがって、機械的に作業を進めるシステムであり、業務範囲は定型作業に留まります。
一方、AI(Artificial Intelligence)は、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータにもとづいて、AI自身が判断する仕組みです。
人間のように判断できるため、RPAなどのシステムに組み込むことで、プロセスの分析や改善・意思決定まで自動化できます。
AIがシステムに作業を指示する司令塔で、RPAはその指示にしたがって実際の作業を行うプレイヤーと考えるとイメージしやすいでしょう。
RPAが注目されている背景
ここでは、RPAが注目されるようになった背景についてご紹介します。
生産年齢人口の減少
少子高齢化の進む日本では、1990年代をピークに労働の中核を担う生産年齢人口(15~64歳)が減少し続けています。
2060年には約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されており、未就業者の就業支援や外国人労働者の活用だけで、これまでの経済活動を支えるのは困難です。
日本経済へのインパクトを軽減するためには、テクノロジーの活用による業務効率化が欠かせないため、RPAが注目されるようになりました。
働き方改革の実現
政府主導で進められている働き方改革の目的には、生産性の維持・向上が含まれています。
日本の生産年齢人口は減少し続けているため、少ない労働力で生産性を維持・向上させるには、業務の自動化が欠かせません。
RPA導入のメリット
では、RPAで業務を自動化すると、具体的にどういったメリットを得られるのでしょうか。
人件費の削減
RPAを導入する最大のメリットは、人件費の削減です。
これまで人が行っていた業務をRPAに任せることで、ミスなく迅速に業務を進められるため、少ない人員数でも問題なく対応できます。
また、業務効率化によって残業時間が短縮されれば、残業代を削減できますし、ワークライフバランスも取りやすくなるため、従業員満足度の向上にもつながります。
付加価値の高い業務に専念できる
RPAは一定のルールにもとづいた反復作業を得意とするツールです。
そのため、単純作業をRPAに任せれば従業員は企画や分析、業務改善といった付加価値の高い業務やコミュニケーションが必要な業務に専念できるようになります。
RPAの特性を理解した上で業務の住み分けを行えば、最小限のコストで業績アップを実現することも可能でしょう。
スケジュールの短縮
RPAは、24時間365日稼働し続けられます。
自動化によって業務スピードが飛躍的に向上するだけでなく、ミスなく作業し続けるため、スケジュールを大幅に短縮できます。
ヒューマンエラーの削減
手動で作業する場合、抜け漏れや入力ミスといったヒューマンエラーを完全に防ぐことはできません。
一方、RPAはあらかじめ定められたルールにしたがって、自動で処理していくため、作業ムラやミスを防止できます。
そのため、ダブルチェックやミスの修正作業を省きつつ、業務品質の向上を図れます。
小規模単位で導入できる
PC1台単位で導入できるサーバー型や、ユーザー単位でライセンスを発行するクラウド型のRPAを利用すれば、部門・担当者といった小規模単位でスタートできます。
必要な分だけ導入できるので無駄なコストがかからず、大規模な改修も必要ありません。
RPAの導入手順
RPA導入の効果を最大限引き出すための導入手順についてご紹介します。
自動化する業務を決める
RPA導入にあたり、まずは「どの業務を自動化するか」を決めましょう。
導入の効果を最大限引き出すには、RPAの特性にもとづいて自動化する業務を決めることがポイントです。
よって、
- 同じ作業を繰り返す単純作業
- 高頻度なルーチン業務
- ミスが許されない業務
- 複雑なルールや作業手順が少ない業務
といった特徴に当てはまる業務を自動化すると、効果が出やすくなります。
例えば、「請求書を作成してデータを添付し、取引先に送信する」「応募者の面接日調整や管理」「タイムカードの集計・転記業務」などが挙げられます。
対象業務のフローや費やしている工数の可視化
対象業務の全体像を把握していないと、業務における課題点や自動化するべき業務の範囲を決められません。
そのため、自動化する業務を選定したら、業務フローや費やしている工数を可視化することが重要です。
業務フローの可視化を行う際は、ワークフローやプロセスを図示するプロセスマップを作成しましょう。
フローチャートのように、各ステップ流れを矢印などの図形を用いて作成すると、把握しやすくなります。
運用ルールの整備
RPAを導入する際は、必ず運用ルールを整備しましょう。
ベンダーのサポートを受けられるといっても、スムーズな運用にはマニュアルやガイドラインが必要ですし、トラブルの迅速な対応には現場担当者の存在が欠かせません。
したがって、ロボットが正しく動作するためのルールや、トラブル発生時の対応部署・対応フローなどを整備しておくことが重要です。
導入するRPAツールの検討
対象業務のフローや工数を可視化したら、導入するRPAツールの検討です。
RPAツールは様々なベンダーから多数リリースされています。
機能や特徴はツールによって異なるため、自動化したい業務や導入したい範囲、社内システムとの親和性などを考慮して、自社に合うRPAツールを選定しましょう。
また、機能面だけでなく、導入支援サポートやトラブル発生時の対応などのサポート体制も確認しておくと安心です。
テスト導入して検証
RPAを導入したら、実業務に適用する前に必ず動作テストを行いましょう。
使い勝手が悪いツールの場合、実業務に支障をきたす可能性がありますし、何らかのバグが発生している恐れもあります。
ベンダーによっては、無料トライアル期間を設けているRPAツールもあるので、トライアル期間を利用して使い勝手や操作方法を確認するのがおすすめです。
なお、トライアル中に出てきた疑問点や気になる点をまとめておきましょう。
運用開始前にベンダーへ質問することで、スムーズに導入できます。
運用開始
RPAを導入する際は、一部の業務から運用を開始しましょう。
適用範囲が広いほどロボットは多くなるため、知見がない状態でいきなり全社展開すると統制が取れなくなる可能性があります。
大規模なシステムエラーを引き起こすリスクが高まるため、担当者や部門などの小規模な単位で運用を開始し、判明した改善点を修正しながら横展開していきましょう。
RPAの導入事例
RPAの活用方法を知るためにも、他社の導入事例についてご紹介します。
三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループでは、2017年4月からRPAを本格展開しています。
銀行の営業店では、訪問する顧客向けのレポート作成業務を自動化したことで、営業担当者はロボットから送られてくるチェック作業のみとなり、作業時間の8割削減に成功しています。
また、金融商品の不正販売を防ぐ「金融商品取引モニタリング」や、海外送金業務を効率化させるロボットも開発しています。
2年半で1,400代のロボットを稼働させた結果、累計290万時間、1,450人分の業務をRPAで代替できたそうです。
楽天カード株式会社
楽天カードのシステム運用部門では、それまで手作業で「カード決済システムからログ抽出⇒データ加工⇒分析作業」を行っていました。
データを転記する単純作業ですが、非常に工数が多かったため、RPAが導入されることになったそうです。
RPAの導入により、従来の1/4にまで作業時間が短縮された上、すべてのログデータで分析できるようになったため、より高い制度の分析ができるようになりました。
RPAの導入で生産性向上
RPAで定型業務を自動化することにより、従業員は付加価値の高い業務やコミュニケーションが必要な業務など、人間にしかできない仕事に専念できるようになります。
RPAと人間で業務の住み分けを最適に行えば、業務効率化だけでなく、生産性の向上にも役立つでしょう。
少子高齢化で人手不足が進む今後、RPAによる業務の自動化は健全な経営に欠かせないツールとなります。
早めにRPAツールの導入を検討されてはいかがでしょうか。