売り手市場であるエンジニア採用では、実際に転職活動をしている「転職顕在層」の獲得競争が激化し、求人媒体に掲載するだけといった“待ち”の採用手法が通用しなくなりました。
そのため、具体的な活動はしていないものの転職ニーズを持つ「転職潜在層」にもアプローチする戦略が主流になり、候補者に直接アプローチする「スカウト」に注目が集まっています。
しかし、スカウトを受ける候補者の転職に関するリテラシーが高まっているため、スカウトメールの送り方や内容によっては、返信をもらえず、採用に苦戦する企業も増えました。
そこで本記事は、エンジニア採用を成功させるコツ、スカウトメール返信率をアップさせるコツや注意点を紹介します。
スカウトメールとは
スカウトメールは、企業が採用条件に当てはまるスキルや経歴を持つ候補者に対して、直接アプローチをかけるメールです。
候補者からのエントリーを待つのではなく、企業から「会ってみたい」と思う人材に直接オファーを送ることで、応募を促します。
多くの場合、転職サイトや人材会社のシステムを利用して、候補者に直接メールを送りますが、SNSのDMで送るスカウトもスカウトメールに含まれます。
スカウトメールを送ることで、企業は条件の合う候補者を採用しやすくなり、候補者も特別感を感じてオファーに前向きになるでしょう。
エンジニア採用でスカウトが注目されている理由
なぜ、エンジニア採用でスカウトが注目されているのでしょうか。
スカウトが注目される背景には、エンジニアの有効求人倍率が関係しています。
引用:doda『 転職求人倍率レポート(2022年6月)』
dodaが発表した2022年6月の転職求人倍率レポートにおいて、エンジニア(IT・通信)の有効求人倍率は、8.77です。
端的に言うと1人の求職者を8社以上で取り合っている状況であり、いかにエンジニアが不足しているかが分かります。
さらに、経済産業省『IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果』によると、2030年のIT人材不足は最低でも40万人に登ると予想されました。
エンジニア採用は採用市場が求人過多のため、転職潜在層へアプローチできるスカウトメールが注目されています。
スカウトメールのメリット
次に、スカウトメールのメリットを紹介します。
求める人材を直接スカウトできる
スカウトメールは、自社が求める人材を直接スカウトできる点がメリットです。
さらに、スカウトメールを送ることで、候補者に仕事内容やビジョンをより詳しくアピールできます。
うまく活用して、求人掲載のみでは伝えきれない企業の魅力を伝えましょう。
また、エンジニアの求人倍率が高い昨今、求人媒体への掲載だけでは効果的な採用活動はできません。
企業が自らオファーを出せるスカウトメールは、売り手市場で有効な手段です。
特別感を演出できる
候補者のどんな部分に魅力を感じたのかを記載してスカウトメールを送ると、特別感を演出できるので、候補者が応募を前向きに考えます。
候補者に“あなた宛”のスカウトメールだと伝えることで、「自分に向けた特別なメッセージ」だと感じ、どんな企業なのか掘り下げたくなります。
スカウトメールは、候補者に特別感を演出し、企業に興味を持たせる効果があります。
採用期間を短縮できる
求人広告や人材紹介会社を利用する場合、仲介業者を経由することで多少時間がかかってしまいますし、掲載後は求職者の応募や紹介を待つしかありません。
一方、スカウトメールは、企業が求める人材にピンポイントで直接アプローチできるため、募集期間や採用工数の削減が可能です。
また、インターネットの普及も相まって面接日程の調整といった段取りがスムーズなことも、採用期間の短縮に貢献しているでしょう。
エンジニアからの返信率をアップさせるコツ
次にエンジニアからスカウトメールの返信率をアップさせるコツを紹介します。
ペルソナを設定する
スカウトメールを送る際はペルソナを設定します。ペルソナとは企業や商品のターゲットとなる顧客像です。
ペルソナを設定する際は、「20代のSE経験者」のような、抽象的な人物像ではなく、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、価値観、生い立ちなど、詳しい人物像を描きます。
エンジニアにスカウトメールを送る場合も、その採用でどんなビジョンや事業戦略を実現させたいのか、会社のどんな課題を解決したいのか、そのためにどんな人物が必要なのか、詳細に設定しましょう。
ペルソナ視点に立ちなぜ転職をしているのか、転職で何を実現したいのか、などを考えることもスカウトメールの返信率をアップさせるコツです。
アピールポイントを整理する
どんな点をアピールしたら、ペルソナからの応募を促せるか考えます。
たとえば、設定したペルソナが「エンジニアとして働いているが、同じようなプログラミング業務の繰り返しで、スキルアップできない」と悩んでいるとします。
その場合、AIなど最新技術を利用したサービスを展開している企業なら「AIのシステム開発やプログラミング工程に関われる」点がアピールポイントです。
件名を工夫する
優秀なエンジニアほど、大量のスカウトメールを受け取っています。
スカウトメールの返信率をアップさせるには、メールがエンジニアの目に留まるよう、件名の工夫が必要です。
件名の工夫について、いくつかの方法を紹介します。
メリットを入れる
件名が「当社のITエンジニアとして働きませんか」だけでは、興味が湧きにくいです。
エンジニアが企業で働くメリットを記載しましょう。
例:東証プライム上場企業!月収40万円以上!ITエンジニア募集
面接確約・前給保証など特別感を出す
エンジニアが選考の基準を満たしているのであれば、「書類選考なしで面接確約」を件名に記載すると効果的です。
また、前職の給料を保証するのも良いでしょう。
例:【面接確約】ITエンジニア募集/前職の給料保証
代表者からのメッセージ
代表取締役が採用活動に関わっている場合、代表取締役が直接スカウトメールを出すと特別感が演出でき、返信率アップが見込めます。
例:【代表の●●です】ぜひ一度お会いしましょう
メッセージ一覧での見え方を工夫する
メッセージ一覧での見え方にも、こだわりましょう。
工夫した件名でも、文字数が多すぎると最後まで表示されません。
冒頭何文字までがメッセージ一覧で表示されるのか、またPCとスマホで表示は変わるのかまで把握しましょう。
NG例:【株式会社●●】当社のエンジニアとして活躍しませんか?面接確約・月収40万円以上
OK例:【面接確約】SE募集!月収40万円以上!株式会社●●
本文は簡潔に分かりやすく書く
スカウトメールは、「誰に」「何を」「どのように伝えるか」を意識して、不要な内容は削りましょう。
特に自社の紹介が長くなりすぎないよう注意してください。
エンジニアへの訴求点を明確にし、箇条書きを取り入れるのも手です。
また、オファーの詳細を知りたい候補者は、企業の採用サイトか、転職サイトの募集要項に誘導しましょう。
例:会社の魅力について
「〇〇専門企業、△△を展開し業界トップクラスのシェア」
- 当社の△△は業界で3本の指に入るシェア率
- 当社は△△を筆頭に、〇〇業界に強い商品展開
- 商品の継続率が安定、業績も順調に推移
例:条件について
「時間外手当は全額支給、代休・有給休暇の取得を推奨」
- 月給25万円以上(能力、経験に応じて決定)
- 残業手当全額支給(平均残業時間20時間/月)
- 有給取得率80%
特別感を演出する
スカウトメールは、候補者一人ひとりに合わせて特別感を出すことが重要です。
テンプレートをそのまま利用した「一斉送信だろうな」と思われてしまう文面では、返信はもらえません。
しっかりと候補者のレジュメを見て、具体的にどこに魅力を感じたか、自社のどのポジションでどのように活かしてほしいか、詳細に記載しましょう。
「あなた宛」の特別感を出すことでスカウトメールの返信率がアップします。
ターゲットの気持ちに寄り添う
どのような人でも、多かれ少なかれ転職には不安を感じるものです。候補者の不安を払拭できる文章にすることで、企業への興味を沸かせます。
たとえば、
- 「給与見直しが四半期ごと」と記載して、昇給への不安を払拭する
- 「出産、育児に伴う休暇が充実」と記載して、子育てへの不安を払拭する
などです。
運用体制を整備する
スカウトメールの運用体制を整えることも重要です。
具体的には、
- スカウトメールを送る頻度は隔週か、毎週か
- 再送の期間をどのくらいにするのか
- 効果検証のタイミング
などの運用スケジュールを事前に組むことで、スムーズにスカウトメールを運用できます。
また、役割分担も重要です。
たとえば、人事担当が候補者をリストアップし、現場マネージャーがスカウトメールの送信可否を判断する、といった分担です。
運用体制の整備は、効率的で効果的なスカウトメール配信につながるでしょう。
スカウトメール送付時の注意点
最後に、エンジニアへスカウトメールを送付する際の注意点を紹介します。
テンプレートはそのまま使わない
テンプレートを使ったスカウトメールは、「大人数に一斉送信している」印象を与えるため、候補者は興味をなくしてしまいます。
テンプレートを使用する場合、特別感を演出するために、候補者に合わせたアレンジを施しましょう。
ネガティブワードは使わない
エンジニアに送るスカウトメールに「急募」「大量採用」「未経験可」などのワードがあると「社員がすぐ辞めてしまう」ネガティブな印象を与えます。
企業に対して候補者が不安を感じるようなネガティブワードは、できる限り使わないようにしましょう。
メールを送るタイミングに注意する
スカウトメールは送るタイミングにも注意します。
たとえば、出勤時や退勤時の朝8時や夕方18時ごろは、メールを確認する余裕があるので開封率が高くなるかもしれません。
また、夜間のメールは失礼に当たることも多いため避けるべきです。
スカウトメールで効果的なエンジニア採用
エンジニアの採用市場は人数不足により激化しており、求人媒体への掲載のみでは、効果的な採用ができません。
スカウトメールは転職顕在層だけでなく、転職潜在層にもアプローチできる手法です。
また、“待ち”の姿勢だけでは採用に至れないエンジニア市場で、企業から先手を打つ手段です。
スカウトメールの特徴と運用方法を理解して、効果的なエンジニア採用につなげましょう。