サーバントリーダーシップ

「サーバントリーダーシップ」という言葉は知っているが、具体的な内容まではわからない人も多くいるのではないでしょうか。

 

サーバントリーダーシップは支援型のリーダーシップのことで、社員のパフォーマンスアップ目的で、取り入れたいと考えている企業も増えています。

 

そこで本記事では、サーバントリーダーシップの特性や導入方法、注意点について解説します。

 

導入事例もご紹介しますので参考にしてください。

 

サーバントリーダーシップとは

サーバントリーダーシップとは、支援型のリーダーシップ理論のことです。「まず相手に奉仕し、その後にチームを先導するリーダーシップ」を指します。

 

上司は、部下に指示や命令はしません。

 

奉仕の気持ちを持って部下に接し、パフォーマンスを発揮できる環境を整えることで、目標達成をサポートします。

 

支配型リーダーシップとの違い

サーバントリーダーシップと従来からある支配型リーダーシップの違いは、以下のとおりです。

 

  サーバントリーダーシップ 支配型リーダーシッ
考え方 チーム全体で考える 自分の考えを中心とする
コミュニケーション 信頼関係を構築しており、部下の話を傾聴する 権力を使って部下に命令する
モチベーション

自分が評価を得るより、部下に奉仕することでモチベーションアップする

地位を得ること、それに付随して得られる権力

成長に対する考え方

部下のやる気を引き出しチームの成長を促す

自分を磨き昇進すること

失敗に関する考え方

なぜ失敗したのかを考え、成長の糧とする

失敗を責める

失敗に罰を与える

仕事の方法

チームの目標を明確化しそれに向けて、部下とともに学びコーチングする

自分を磨き、その能力を活かして部下に命令する

 

支配型のリーダーシップの場合、上司は自分自身が昇進することが成長であると考えます。

 

自分の考えをもとに部下に命令し、仕事を進めるのが特徴です。

 

一方サーバントリーダーシップは、上司が部下のやる気を引き出しチームの成長を促します。

 

部下の話に耳を傾け、信頼関係を構築した上で、ともに学びコーチングするのが特徴です。

 

サーバントリーダーは“優しいだけ”のリーダーではない

サーバントリーダーについて、部下の言うことを聞き甘やかすリーダー像を思い浮かべてしまう人もいます。

 

しかし、サーバントリーダーは優しいだけのリーダーではありません。

 

部下に奉仕するということは、部下の支援に徹することをいいます。

 

命令ではなく、部下の話を聞いて共感し、チーム内で共有します。チームメンバーの能力を引き出し成長を促していくのです。

 

リーダーは常に正しい方向へ部下を導き、共に協力していくことが理想です。

 

サーバントリーダーシップが求められるようになった背景

現在はITが発達し、国境を越えたグローバル化が進んでいます。

 

ビジネス環境が目まぐるしく変わる中、上司が常に自分の考えで部下に指示をしていては、変化スピードに対応できません。

 

環境の変化に柔軟に対応するためには、自分で考える力を持った部下が、自主的に業務を進める必要があります。

 

サーバントリーダーシップは、メンバーの主体性を高められるため、よりスピード感が求められる現代で重視されるようになりました。

 

サーバントリーダーが持つ10の特性

サーバントリーダーが持つ10の特性についてご紹介します。

 

傾聴

部下の話に耳を傾ける力です。

 

ただ聞くだけではなく、共感していることを態度で表しつつ、相手の考えや意見を引き出します。

 

傾聴することで信頼関係を築きやすくなるでしょう。

 

また、信頼関係が構築されることで業務もスムーズに進みます。

 

共感

部下の話を理解し、共感する力です。

 

部下の立場に立ち、部下が何をしてほしいのか、どうすれば部下を支えられるのかを理解しましょう。

 

癒やし

相手を癒す力です。

 

叱責や意見の対立などで傷ついた部下に寄り添い、本来の力を取り戻させます。

 

組織に対しても同じで、欠けている部分を見つけ、補完しましょう。

 

気づき

ありのままに物事を見る能力です。

 

先入観を持たずに物事を見ることで、些細な変化をとらえて迅速にサポートできます。

 

説得

互いに納得しながら仕事を進めるスキルです。

 

支配型リーダーのように、権力で部下を服従させるのではなく、お互いにとって最適な結論を導き出します。

 

概念化

組織の将来を見据えた目標を、部下に分かりやすく伝えるスキルです。

 

明確な目標を提示することで、部下は目標に向かって自分から行動できます。

 

先見力

過去や現在の業務状況から、これから起こりうる事柄を予測する力です。

 

トラブルの回避と方向性を見定めるときに役立ちます。

 

執事役

執事のように一歩引いて部下を支えるスキルです。

 

チームのメンバーが気持ちよく働けるよう、献身的に支えて、部下の利益を追求します。

 

人々の成長に関わる

相手の成長を促すスキルです。

 

部下が個々に持つ価値や伸びしろに注目して、成長を促します。

 

コミュニティづくり

部下が成長できるコミュニティを作るスキルです。

 

チームのメンバー同士がお互いに成長できるよう、協力的な環境を作ります。

 

サーバントリーダーシップのメリット

サーバントリーダーシップを実践するメリットをご紹介します。

 

生産性の向上

部下が自分から動いてくれるようになるため、生産性の向上が期待できます。

 

サーバントリーダーシップでは、上司が部下を支え成長を促し、能動的に動けるチーム作りが可能です。

 

目標が明確化されているため、チーム一体となって目標に向かうことができ、生産性の向上を見込めます。

 

顧客満足度の向上

現場スタッフは顧客に一番近いため、顧客の生の声や意見をよく知っています。

 

サーバントリーダーは普段から、スタッフの話にも耳を傾けているため、顧客視点で施策を練れます。

 

顧客の生の声を経営に活かせば、必然的に顧客満足度も向上するでしょう。

 

社内コミュニケーションの円滑化

リーダーが部下の話をよく聞き、共感し、支えることで信頼関係が構築されます。

 

部下との間に信頼関係が構築されていると、さまざまな話がしやすくなります。

 

必要な情報だけでなく、意見交換も活発になるため、社内コミュニケーションが円滑に行われるようになるでしょう。

 

サーバントリーダーシップのデメリット

サーバントリーダーシップも状況によってはデメリットが生じます。

 

デメリットを把握し、対策を講じましょう。

 

意思決定に時間がかかる

個々の考えを傾聴することに時間がかかり、意思決定に時間がかかる恐れがあります。

 

個人の意思を尊重するあまり、意思決定が遅くなり、プロジェクトの進行に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 

スピード感が求められる際は、デメリットになる可能性があるでしょう。

 

脱落するメンバーが出やすい

サーバントリーダーシップの下では、脱落するメンバーが出やすいです。

 

能動的に動くことを求められるため、「知識や経験が浅い」「自分で考えて気づきを得る」ことが苦手な人は、ついてこれない可能性があります。

 

部下のタイプ別に寄り添う必要があるでしょう。

 

サーバントリーダーシップの導入方法

サーバントリーダーシップの導入方法について解説します。

 

リーダーの役割を把握する

サーバントリーダーは、これまでの支配型リーダーとは大きく異なるため、自分の役割を十分に把握する必要があります。

 

サーバントリーダーは部下を甘やかす、優しいだけのリーダーではありません。

 

部下が個々の能力を活かし、チームが成果を出すためには、リーダーが自分の役割を把握し業務を行う必要があります。

 

そのためには傾聴の仕方を学び、常に内省しながら部下を支えられているか、問題を後回しにしていないかなどを確認しましょう。

 

目標を明確に設定する

明確な目標設定も欠かせません。

 

明確な目標を提示すると、全員が同じ方向に向かって自ら行動できるため、生産性向上につながります。

 

まずはメンバー全員が理解し、それぞれが自走できるような目標を設定し、共有しましょう。

 

チームの多様性を認める

サーバントリーダーシップでは、部下の話を傾聴し共感することが大切です。

 

部下のなかにはさまざまな考え方を持つ人がいるでしょう。

 

多様な考え方を聞き、自分とは異なる価値観でも否定せずに受け入れると、新しい考え方を取り入れることができます。

 

さまざまな視点から目標を設定すること、部下によって違う得意なことを伸ばしていきましょう。

 

サーバントリーダーシップ導入時の注意点

サーバントリーダーシップを導入するときの注意点をご紹介します。

 

方向性は慎重に調整すること

サーバントリーダーシップでは、部下の話を聞いた上で、目標を決めます。

 

チームの方向性を決める際は、多様な意見を聞き入れてチーム全体が納得できる内容にし、誰か1人が損をしないよう注意してください。

 

そのうえで、全員が明確なビジョンを持てるよう目標を共有しましょう。

 

脱落者を出さないようにする

知識や経験が浅い人や、自分から動くことが苦手な人はサーバントリーダーシップについてこれない可能性があります。

 

そのため、経験の浅い部下やスキルが身についていない部下については、より手厚くサポートする必要があるでしょう。

 

サーバントリーダーシップの導入事例

サーバントリーダーシップを取り入れている5つの企業の導入事例をご紹介します。

 

資生堂

資生堂のサーバントリーダーシップの実践者は、相談役の池田守男氏です。

 

「資生堂を生まれ変わらせる」という使命を与えられ、自社の仕組みの改革を行いました。

 

市場の変化に合わせた生産・販売の仕組みを作るために、ビューティーコンサルタントや営業職の会議に出席して現場の話を傾聴したのです。

 

池田氏は、現場の意見を施策の立案や環境の整備などに活用し、さまざまな改革を行いました。

 

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、優秀な人材を活かすためにはサーバントリーダーシップが重要だと考えられています。

 

会社が挑戦できる環境を提供し、社員一人ひとりに能力を引き出してもらうのです。

 

例えば「上司や仕事が合わない環境では、能力が十分に発揮できないであろう」という考え方から、キャリチャレという半年に一度、人事異動の希望が出せる制度を設けています。

 

また、社内キャリアエージェントという部署があり、今後のキャリア相談にのってもらい、別の部署にアサインしてもらうこともできます。

 

人を活かすために適材適所を重視する仕組みです。

 

スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーでは「社員を大切にする」「会社が社員を支える」という考えのもと組織作りが行われています。

 

例えば、アメリカで初めてパートタイマーに、正社員並みの健康保険に適応しました。

 

また、現場のマネージャーや店長の生の声を聞くために、2年に1回リーダーシップ会議を開催していました。

 

社員を大切にすることで離職率が下がると、研修費用の削減につながります。

 

創業者のハワード・シュルツ氏は「社員との信頼関係こそが真の競争力を生み出す源泉だ」と考えていたそうです。

 

良品計画

『無印良品』で知られる良品計画では、社長自らが現場の声を聞いて回ったそうです。

 

現場の声を活かして作られたマニュアルにもとづいて、店舗運営が行われた結果、悪化していた業績が回復に転じました。

 

ダイエー

ダイエーはトップダウン経営を行っていて、業績が悪化していました。

 

そんな中、赤字が続き閉鎖が決まった店舗に社長自らが赴き、閉鎖の理由を説明し、労いの言葉を伝えたそうです。

 

社長の言葉を聞いた従業員たちはモチベーションが上がり、各従業員の努力によって「閉店売り尽くしセール」が成功し、業績回復につながりました。

 

サーバントリーダーシップを導入してチームを育成

サーバントリーダーシップは、働きやすい環境や能力を発揮しやすい環境を整えて部下の力を引き出す「支援型のリーダーシップ」です。

 

生産性の向上や社内コミュニケーションの活発化につながります。

 

また、コミュニケーションの末に考え出された明確な目標を提示することで、部下の主体性も育成できるでしょう。

 

従来のリーダーシップに限界を感じているのであれば、サーバントリーダーシップを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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