サービスプロフィットチェーン(SPC)とは? 従業員と顧客の幸せが業績アップにつながる

「お客様は神様だ」という言葉を聞く機会は減りつつありますが、企業と顧客の関係性は良い方が望ましいのは間違いないでしょう。

 

昨今、顧客満足度を上げるための方法として「サービスプロフィットチェーン(SPC)」が注目を集めています。

 

今回は、そもそもSPCとは何かという定義の解説や、具体的な施策例及び導入事例を紹介します。自社に合った施策を実行し、業績アップにつなげましょう。

 

サービスプロフィットチェーン(SPC)とは

「サービスプロフィットチェーン(SPC)」とは、顧客満足度を高めるために有効なフレームワークです。SPCでは、従業員を大切にすることが顧客満足度アップにつながり、結果的に企業の業績アップが期待できると考えられています。

 

このフレームワークは、ハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授らによって1994年に提唱されました。企業の成長には顧客満足度の向上が欠かせません。そこで注目を集めたのがSPCです。

 

過去に日本のホテルを対象に行われた研究では、従業員満足度と顧客満足度および会社の利益は密接に関わっていることが明らかにされています。

 

6年間にもわたって実施されたこの研究では、従業員満足度がサービス品質の高さに影響し、サービス品質は顧客満足度に影響を与えることがわかりました。さらに、顧客満足度は稼働可能客室あたりの粗利益に大きな影響を与えます。

 

日本企業においても効果を発揮するSPCを導入して、企業の成長につなげましょう。

 

サービスプロフィットチェーンの7段階

サービスプロフィットチェーンは、従業員と顧客の満足度の向上により会社の業績アップが期待できるフレームワークです。SPCを導入すると、7つの段階にわかれて効果があらわれるため、この効果を実感するまでは時間がかかるかもしれません。

 

では、効果を得られるまでにはどのような段階を踏むのでしょうか。

 

サービスプロフィットチェーンの7段階について解説します。

 

従業員満足度が向上する

サービスプロフィットチェーンを導入してまず実感するのは、従業員満足度の向上です。

 

SPCでは、福利厚生の充実や正当な人事評価制度の導入などを実施するため、働きがいのある職場環境が整うでしょう。

 

会社に提供する労働力の対価(給与や福利厚生)が十分にあると、従業員がモチベーション高く仕事に向き合えるようになり、従業員満足度の上昇が見込めます。

 

従業員満足度の向上がロイヤルティを高める

従業員満足度が高まると、従業員のロイヤルティ向上が期待できます。「ロイヤルティ」とは、日本語で「忠誠」や「忠義」といった意味を持ちます。

 

従業員がやる気をもって仕事に取り組める環境が整うと、従業員それぞれが「この会社に貢献したい」という忠誠心や貢献意欲を持つようになるでしょう。

 

その結果、従業員同士が協力して「より大きな成果を出そう」と努力できるのです。

 

従業員ロイヤルティが生産性をアップさせる

従業員が企業に「貢献したい」と思えるようになると、企業の生産性がアップします。

 

なぜなら、貢献意欲の高い従業員は仕事の効率アップや成績アップを目指して、業務フローの見直しやスキルアップに取り組むからです。

 

SPCの導入後の3段階目には、従業員一人ひとりがより効率的に仕事を進められるようになり、会社全体の生産性向上が期待できます。

 

生産性の向上によりサービスの質が高まる

生産性が向上すると、SPC導入の効果を顧客も実感できるようになるかもしれません。

 

なぜなら、生産性向上によって製品の製造過程の効率化や、従業員の接客時の心理的余裕につながり接客態度が変わるからです。

 

生産性が高く効率的に働ける環境は、従業員の心の余裕を生むでしょう。丁寧に仕事を進められるようになったり、人的ミスに気づきやすくなったりした結果、サービス品質の向上が期待できます。

 

サービスの質向上が顧客満足度を高める

5段階目には、顧客満足度の向上が実感できるようになるでしょう。顧客が企業のサービスや製品を購入して満足感を得られるかどうかは、その品質の高さが大きく関わります。

 

そのため、SPCを導入したことによるサービス品質の向上が、顧客満足度アップにつながるのです。

 

顧客ロイヤルティが向上する

顧客にとって、満足感のある体験は「もう一度体験したい」と思うものではないでしょうか。満足度の高いサービスや商品提供を続けられれば、顧客ロイヤルティの向上が見込めます。

 

例えば、

  1. 記念日に利用したホテルで従業員が優しく接してくれた
  2. 友人の誕生日に利用した飲食店でサプライズケーキを用意してくれた
  3. 子ども連れで利用した飲食店で子ども用のイスを持ってきてくれた

といった体験をすると「また利用しよう」と感じやすくなります。

 

リピーター獲得につながるため、SPCの導入が企業の利益増大に役立つでしょう。

 

得た利益を従業員満足度の向上に活かす

SPCは、一度企業の業績がアップして終わりではありません。最終段階として、得られた利益を従業員満足度の向上のために活用することをおすすめします。

 

企業が成長を続けていくためには、企業の利益を向上させるための好循環を維持することが重要です。

 

そのため、これまでのサイクルをもう一度最初から繰り返すと良いでしょう。もし7段階のうちに改善点が見つかったら、改善してから再度実施することでより大きな成果を実感しやすくなります。

 

サービスプロフィットチェーンは2種類

SPCには、

  1. 外部サービスのプロフィットチェーン
  2. 内部サービスのプロフィットチェーン

の2種類があることをご存じでしょうか。

 

それぞれの特性を理解し、自社に導入すると効果的です。2種類のサービスプロフィットチェーンについて解説します。

 

外部サービスのプロフィットチェーン

外部サービスのプロフィットチェーンは、社外に対する取り組みによる顧客満足度の向上が期待できます。

 

自社サービスや商品の品質がアップすることで顧客が満足感を得やすくなるでしょう。その結果得られるのが、顧客ロイヤルティの向上です。

 

ロイヤルティの高い顧客は、

  1. リピーターとして商品やサービスを再購入
  2. 口コミサイトに良い評価を投稿
  3. 友人や家族に商品やサービスをおすすめ
  4. 新商品も抵抗感なく購入する

といった行動を取りやすくなります。

 

外部サービスのプロフィットチェーンは、顧客の満足度やロイヤルティを高め、企業の業績アップにつながるフレームワークです。

 

内部サービスのプロフィットチェーン

人事評価制度や採用活動の見直し、人材配置や育成方法の改善といった、社内システムの適正化を通して、内部サービス品質を向上させることが「内部サービスのプロフィットチェーン」です。

 

内部サービスのプロフィットチェーンでは、従業員に対するサービスを向上させることで従業員満足度アップを目指します。従業員の満足度が高まると、企業に「貢献しよう」という意欲が生まれて従業員ロイヤルティが向上するでしょう。

 

ロイヤルティの高い従業員は、モチベーション高く仕事に取り組めるようになります。結果的に、サービス品質向上といった効果が得られるでしょう。

 

また、働きがいのある環境を提供することで会社に定着しやすくなるので、離職率の低下も見込めます。

 

従業員満足度を高める施策

SPCにおいては、従業員満足度を高めることが顧客満足度向上および会社の業績アップにつながるとされています。そのため、企業は従業員満足度を高める施策を実行することが重要です。

 

しかし、具体的には何をしたら良いのかわからない場合も多いでしょう。従業員満足度向上につながる施策例を4つ紹介します。

 

職場環境の整備

たとえやりがいがある仕事でも、残業時間が長すぎたり給与額に納得感がなかったりすると、仕事に対するやる気は維持しにくいでしょう。

 

従業員満足度を高めるためには、従業員が「働きやすい」と感じる職場環境の整備が不可欠です。

 

働きやすい職場の条件としては、

  1. 人間関係が良好
  2. 心理的安全性が確保されている
  3. 過度な身体的負担がない

などが挙げられます。

 

休暇が十分に取れない、ハラスメントが容認されているといった環境は、肉体的にも精神的にもストレスがかかります。

 

ストレス過多な職場では従業員のモチベーションも仕事効率も下がってしまうでしょう。企業は、従業員が前向きに仕事に取り組める環境づくりに努めることが求められています。

 

自主性を育む仕組みづくり

モチベーションの高い従業員は、業務の効率化や品質アップのために自主的に行動します。

働きがいのある仕事は従業員満足度を向上させるため、企業は従業員が自ら行動できる仕組みづくりに注力する必要があるでしょう。

 

例えば、

  1. 意見を発しやすい環境づくり
  2. 一人ひとりに合った役割の付与
  3. 業務効率化によるムダの排除
  4. 目標管理制度の導入

といった施策が有効です。

 

従業員が能動的に行動する機会をつくるために、従業員の負担軽減や責任感を育む制度の導入を検討することをおすすめします。

 

採用と育成

やる気があるだけでは、顧客が満足する価値を提供できません。高いサービス品質や製品品質を保つためには、従業員が仕事に必要なスキルを持っていることが重要です。

 

SPCにおいては、採用活動と人材育成によって高いスキルを持つ人材を確保することが求められます。

 

従業員にとっても、自身の能力と合致する仕事をすることができるほか、知識や技術を習得してできることが増えるため、満足度が高まるでしょう。

 

報酬と表彰

褒められたり、頑張りが認められたりすると、誰もが「嬉しい」「もっと頑張ろう」という気持ちになるのではないでしょうか。

 

従業員が満足感を得るためには、適切な報酬と表彰が効果的です。

 

例えば、

  1. 成績に応じた賞与の支給
  2. 「成約1件あたり○円」といったインセンティブの支給
  3. 社内キャンペーンによる表彰の実施

といった施策が、従業員のやる気をアップさせます。

 

特に表彰は、「頑張りが認められる会社」だと社内に周知するよい機会になるでしょう。このように、従業員の帰属意識や貢献意欲を刺激する工夫が必要です。

 

 

顧客満足度を高める施策

SPCの効果を最大化するため、従業員満足度だけではなく顧客満足度の向上にも取り組むことが大切です。

 

顧客への「サービス品質の向上」と、顧客満足度を高めた先にある「顧客のロイヤルティ向上」に効果的な、4つの施策を紹介します。

 

サービスコンセプトの明確化

意外と見落としがちな施策が「サービスコンセプトの明確化」です。サービスコンセプトとは、「誰のための、何が得られる」サービスや商品なのかを意味します。

 

明確なサービスコンセプトは、他社との差別化につながり、顧客が自社商品を選ぶ理由となるでしょう。

 

具体的には、

  1. 一人暮らしの人の家事を楽にするアイデア商品
  2. 在宅ワークをする人向けのレンジで温めるだけで食べられるレトルト食品
  3. 自宅以外でテレワークしたい人のための、ホテルのビジネスプラン

といったコンセプトがあります。

 

自社のファンを増やしリピーター化するためにも、コンセプトは明確にすることが重要です。

 

ニーズに合ったサービスの提供

顧客は、自分に「必要だ」「合っている」と感じた商品やサービスを購入します。たとえ良い商品であっても、ニーズがなければ購入には至らないのです。

 

そのため顧客満足度を上げるためには、顧客のニーズを正確に把握する必要があるでしょう。

 

ニーズを知るには、

  1. 市場調査
  2. 見込み顧客へのアンケート
  3. 従業員へのヒアリング

といった事前の調査が欠かせません。

 

アメリカの航空会社である「サウスウエスト航空」は、顧客と直接接する従業員の声を聞くために、毎日報告を受ける独自の調査システムを導入しました。

しっかりと調査をしてニーズを知り、そのニーズに合ったサービスを提供することが、顧客の満足度向上に役立つのです。

 

顧客の確保・維持

会社の存続のためには、顧客をリピーターとして確保することが大切です。

 

企業は自社サービスや商品の認知拡大に努めて顧客を増やし、顧客満足度の高い商品を提供することで顧客のロイヤルティ向上を目指す必要があります。

 

顧客の確保および維持のためには、

  1. 知名度を上げるため広告の掲出
  2. 見込み顧客向けの販促活動
  3. 再購入しやすいキャンペーンの実施

といった施策を実行しましょう。

 

リピート率の向上

リピート率の向上に努めることが、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上につながります。

「リピート率が高い」とは、顧客が何度も購入するほど自社サービスへの満足度が高く、信頼感がある状態です。

 

高いリピート率は業績アップをもたらすため、リピーターの確保をないがしろにせず、さまざまな工夫を凝らすとよいでしょう。

 

具体的には、

  1. サービスコンセプトの見直し
  2. サービス品質向上
  3. リピーターにならなかった場合の原因解明
  4. リピーターにならなかった人が選んだ競合他社の解析

を実施します。

 

競合他社との違いや自社サービスの問題点を分析すると、自社が他社よりも劣っている部分や優れている部分を明らかにできるでしょう。

 

サービスプロフィットチェーンの注意点

SPCに限らず新しいフレームワークを導入するには、時間的コストや人的コストを消費するものです。多くの人事担当者は「どうしたら失敗しないか」が気になるのではないでしょうか。

 

SPCの効果を最大化して成功に導くためには、

  1. 人材への投資を増やす必要がある
  2. 粘り強く取り組む必要がある

という2つのことに注意することが大切です。

 

人材への投資を増やす必要がある

SPCにおいて気をつけたい点は、従来の職場環境を大きく変えなければならない可能性があることです。

 

福利厚生や教育制度の充実、成績に応じたインセンティブの支給など、従業員の働きやすさを高める施策を実行すると、人材への投資が大幅に増えるかもしれません。

 

経費がかかることを覚悟しなければ、従業員満足度を高めるほどの効果が得られない場合があるので、注意しましょう。

 

粘り強く取り組む必要がある

SPCは7つの段階を経てから効果があらわれるため、導入後すぐに効果を実感することができません。導入開始から結果が出るまでの期間は、大きな変化を感じなくても粘り強く取り組む必要があるでしょう。

 

人材への支出額が増えるためできるだけ早く効果を実感したいものですが、将来への投資だと考えることが大切です。

 

サービスプロフィットチェーンの事例

SPCの導入を検討していても、実際に効果があるのか不安に思う人は多いでしょう。

 

ここでは、SPCを導入して効果を得られた4つの企業を紹介します。

 

スターバックス

コーヒーショップであるスターバックスは、高い従業員満足度を維持することに重きをおいています。

 

実施している施策の一つは、入社した全従業員に対しておよそ80時間の研修です。比較的長時間の研修により、従業員が知識や技術不足を理由に活躍の機会を逃さないようなサポートをしています。

 

サポート体制の充実が従業員の満足度を高め、結果的にサービス品質の向上を実現しました。

 

オリエンタルランド

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、従業員満足度が高く、離職率が低いことで知られています。

 

従業員が自らのアイデアを気軽に提案できる社風と制度があり、従業員が当事者意識を持って仕事に取り組める環境が整っているのが特徴です。

 

星野リゾート

複数のホテルを経営する星野リゾートは、顧客の生の声を重視する企業です。

 

具体的には、利用客に対してアンケートを実施し、得られた要望や改善点を経営に反映することで、顧客満足度向上に努めています。さまざまな工夫を凝らし、よりよい価値提供を心がけた会社運営が特徴です。

 

サービスプロフィットチェーンが企業の成長を促進させる

サービスプロフィットチェーン(SPC)は、従業員と顧客の満足度向上を通して、企業の業績アップが期待できるフレームワークです。

 

SPCの実施による従業員満足度の向上が従業員のロイヤルティ向上につながり、さらに顧客の満足度やロイヤルティ向上をもたらし、会社の業績が上がります。

 

人材にかかるコストや時間が必要な点に注意しながらSPCを実施し、従業員にとっても顧客にとっても「価値のある会社」を目指していきましょう。

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