「なかなか人材が確保できない」「新人教育をしたのにすぐに辞めてしまう」という悩みをお持ちではありませんか?
少子高齢化や雇用の流動化および働き方改革の影響で、若手の人材不足に悩む企業が増えています。そこで注目を集めているのが「ミドル人材」です。
ミドル人材の採用は、企業にさまざまなメリットをもたらします。今回の記事では、ミドル人材を採用するメリットや注意点、採用時のポイントについて詳しく解説します。
ミドル人材とは
「ミドル人材」という言葉の明確な定義はありませんが、一般的に35歳から55歳の人材が「ミドル人材」に該当します。
また、34歳以下は「ヤング人材」、56歳以上なら「シニア人材」と呼ばれています。
ミドル人材の採用状況
引用:エン・ジャパン「第125回 「ミドル人材(35歳~55歳)の採用について」」
エン・ジャパンが2017年に企業を対象に実施したアンケート「第125回 「ミドル人材(35歳~55歳)の採用について」」の結果、直近3年間にミドル人材を「採用した」と答えた企業は79%です。
ミドル人材の採用人数が直近3年間で「増えた」と回答した企業は37%と、前回の調査結果の35%から増加しています。
ミドル人材の採用については、「積極的に採用したい」「いい人がいれば採用したい」と回答したのは86%でした。
また、エン・ジャパンが転職コンサルタントを対象に行った「2023年ミドルの求人動向」の調査によると、約8割が「2023年は35歳以上のミドルを対象とした求人が増加する」と回答しています。
以上の結果から、多くの企業がミドル人材の採用を検討しており、ミドル人材の需要が高まっているといえます。
なぜ今ミドル人材が注目されているのか
今になってミドル人材が注目されている理由は3つ挙げられます。
自社の状況と合致している点があれば、ミドル人材の採用を検討してみましょう。
マネジメント人材が不足している
管理職層である現在40代前後の人材は、1990年代半ばから2000年代前半の就職氷河期を経験しました。不況により企業が新卒採用を控えた結果、マネジメント人材の不足に陥っている企業が多くあります。
部下の教育や現場管理を担うマネジメント職は、経験や実績がない人に任せるのは難しいでしょう。
そのため、これまでにマネジメント経験のあるミドル人材は、貴重な戦力として注目されています。
若手人材が不足している
日本は、世界的に少子高齢化が深刻化している「超少子高齢化社会」です。労働人口は減少し続けており、特に若手人材が不足しています。
しかし、若手人材の獲得機会となる新卒採用では、知名度のある大企業が有利です。中小企業が優秀な若手人材を獲得するのは困難なため、
ミドル人材を採用する企業が増えています。
転職への意識が変わった
終身雇用や年功序列といった日本独自の雇用慣行は、いまや崩れつつあります。自身のキャリアやライフプランに合わせて転職することが主流となり、転職はポジティブに捉えられるようになりました。
転職への意識の変化が雇用の流動化につながった結果、多くの企業が若手人材だけでなく、ミドル人材を確保する必要に迫られました。
ミドル人材を採用するメリット
ミドル人材に注目が集まるとともに、企業間では優秀なミドル人材の奪い合いが発生しています。ではなぜ奪い合いが激化しているのでしょうか。
ここではミドル人材を採用する3つのメリットを解説します。
豊富な経験から即戦力を期待できる
ミドル人材は、社会で10年以上活躍した人材です。だからこそ、経験と知識を発揮する即戦力となれるでしょう。
ミドル人材は、
- 基本的なビジネスマナー
- 部下や後輩社員の教育経験
- 業界の専門知識及びスキル
- 経営やマネジメント経験
を持っています。
培った経験から出る意見は、企業にとって新たな知見を得るきっかけとなるかもしれません。ミドル人材の採用は、組織の活性化につながります。
教育コストを抑えられる
ミドル人材は社会経験が豊富なので、基本的なビジネスマナーやパソコンスキルといった、初歩的な研修を行う必要がありません。
社会人の基本となるさまざまなスキルは、ミドル人材の多くがすでに有しています。そのため、新人研修やOJTのためのコスト削減が期待できるでしょう。
人脈を活用できる
ミドル人材の中には、会社経営や事業戦略に携わった経験のある人もいます。会社にとって重要なポジションを経験した人材は、自社にない人脈や業界とのつながりを持っている可能性が高いです。
もし新規事業の立ち上げを検討しているなら、ミドル人材が持つ人脈を活用しましょう。専門的な観点からアドバイスを受け、スピーディに事業拡大を図ることができます。
さらに、ミドル人材の持つ経験や人脈は、組織力強化にもつながるでしょう。
ミドル世代の転職理由
ミドル世代が転職する背景には、世代ならではの理由があります。ここでは、ミドル世代の転職理由を4つ紹介します。
キャリアアップ
転職に対するイメージがポジティブに変化している今、キャリアアップを目的に転職するミドル世代は多くいます。これまで培ったスキルを活かして、「もっと自分の力を発揮したい」と考えるのは自然なことです。
ミドル人材は向上心が高い傾向にあります。高い意欲とスキルを持つミドル人材の採用は、社内に良い刺激を与えてくれるでしょう。
人間関係の悩み
多くの人が集まる組織の中では、どうしても人間関係の問題が発生するものです。特にマネジメントを担うようになったミドル世代は、部下とのコミュニケーションが悩みの種となるケースが多くあります。
会社は1日の大半を過ごす場所だからこそ、精神的な負担は少ない方が良いでしょう。ミドル人材の採用後のポジションは慎重に検討することが大切です。
会社への不満
会社への不満が募って、転職するミドル人材が増えています。
例えば、
- 給与の低さ
- 労働環境や待遇の悪さ
- 人事評価の納得感がない
などが不満の要因です。
ミドル世代は、子どもの養育費や親世代の介護費用をはじめ、経済的負担が増える時期を迎えています。そのため、より高待遇な会社へ転職する傾向にあります。
プライベートな事情
ミドル世代である35歳から55歳頃の人は、体力の低下を感じたり、身体に不調を感じたりする世代でもあります。その場合、身体的負担のない職種への転職を希望するでしょう。
また、親の介護や配偶者の転勤のような、プライベートな事情も転職理由となります。
ミドル人材の採用方法
ミドル人材を採用する方法は複数あります。それぞれの採用方法の違いを理解し、自社にとって適切な方法を選びましょう。
ここでは、代表的な4つの採用方法を紹介します。
人材紹介サービス
人材紹介サービスは、採用したい企業と働きたい転職希望者の仲介をしてくれるサービスです。
求人サイトに求人情報を掲載するよりも秘匿性が高いため、ミドル人材の採用を行っていることを社外に伝えたくない場合に活用しやすいでしょう。
ミドル人材に特化したサービスや成果報酬型のサービスを利用すれば、採用コストを抑えながら効率的に人材を獲得できます。
ミドルハンティング
「ミドルハンティング」とは、即戦力となるミドル人材をターゲットにしたヘッドハンティングです。
主に部長や課長クラスの中間管理職ポジションや、専門職の経験がある人を対象としているため、自社に必要な人材をピンポイントで見つけられます。
ミドル人材は多忙を極めているほか、現状の給与や待遇に満足している場合が多く、一般的な転職市場では見つかりにくいです。
ミドルハンティングであれば、積極的に転職活動をしていない「転職潜在層」にもアプローチできます。自社にとって最適な人材を獲得しやすくなるため、ヘッドハンティング会社への依頼がおすすめです。
転職イベント
ミドル世代向けの転職イベントを活用して、ミドル人材を採用する方法もあります。合同企業説明会や転職フェアには多くの人材が集まるため、採用候補者を確保しやすいでしょう。
転職イベントには複数の企業が参加します。自社に興味を持ってもらえるようなアピール方法を工夫し、人材獲得に努めることが大切です。
リファラル採用
「リファラル採用」とは、自社の社員から紹介を受けて新しい人材を採用する制度です。企業の風土や働きやすさを知っている社員が紹介する人材なので、採用後のミスマッチが起こりにくいなどの特徴があります。
また、採用にかかるコストが抑えられるのも大きなメリットです。
ミドル人材を採用する際のポイント
どの企業も、ミドル人材の採用で「失敗したくない」と考えるものですが、ポイントを押さえればミドル人材の採用を成功に導くことができます。
ミドル人材を採用する際の4つのポイントを解説します。
求める人物像を明確にする
求める人物像を明確化する重要性は、ミドル人材の採用においても変わりません。どれほど経験やスキルがあっても、企業が求める人物像と合わなければ採用してもすぐに離職する可能性があります。
人物像の明確化には、一人ひとりの行動特性を明らかにするコンピテンシー診断がおすすめです。自社に定着しやすい人材の特徴を把握すると、求める人物像がわかりやすくなります。
必要な能力を明確にする
ミドル人材には、
- 専門性
- 自社にない能力
- マネジメント能力
が求められ、即戦力としての活躍が期待されます。
そのため、ミドル人材にどのようなポジションを任せるか、どのようなスキルや経験が必要かを事前に明らかにしておきましょう。必要な能力が明確になったら、優先順位を決めることも大切です。
ポジションの流動性について説明する
ミドル人材の中には、自身のキャリアアップを望んで転職する人がいます。そのため、ミドル人材の採用では、ポジションの流動性に関する説明が特に重要です。
採用後に部署や業務内容が変わる可能性がある場合は、事前に説明してミドル人材の理解を得るようにしましょう。入社前後のギャップが大きいと、せっかく採用したミドル人材が離職してしまう可能性があります。
適性検査を活用する
適性検査は、採用候補者の考え方や能力を見極めるために行うテストです。面接だけでは判断できないストレス耐性や向上心といった項目を採用前に測定することで、自社に合う人材か判断できるでしょう。
ただし、適性検査の結果はあくまで判断材料の1つに過ぎません。面接や書類審査の結果も踏まえて、ミドル人材の採用可否を検討することが大切です。
ミドル人材が活躍するための施策
ミドル人材には、即戦力としての活躍が期待されます。しかし、社内制度や環境が不十分だと、ミドル人材のスキルが十分に発揮できません。
ミドル人材が活躍するための2つの施策を紹介します。
教育制度の見直し
ミドル人材は、それまでの社会経験や業界経験を活かして、自社にさまざまな刺激を与えてくれる存在です。
しかし、自社の業務フローや独自システムに精通しているわけではないため、できる限り早く活躍できるような教育制度を整えましょう。
労働環境の整備
ミドル人材は家庭環境の変化が多いため、それぞれの家庭の事情に配慮した労働環境の整備に努めましょう。
例えば、
- 子育てのために長時間の残業が難しい
- 親の介護のために転勤ができない
- 持病で定期通院が必要
といった事情を抱える人がいます。
状況に応じて、在宅勤務やフレックスタイム制度の利用を促しましょう。ミドル人材が「働きやすい」と感じる職場なら、離職率の低下も期待できます。
定期的な面談
ミドル人材にとって、転職は大きな決断となります。企業はミドル人材が安心して働き続けられるように、待遇や給与、働きがい、人間関係などの悩みをヒアリングする仕組みづくりに取り組みましょう。
定期的に面談をして不安や悩みを早期発見できれば、ミドル人材の離職を防止できます。
ミドル人材の活用で組織力強化
ミドル人材を採用すると、教育コスト削減や人脈や即戦力の確保ができるようになります。
採用にあたっては、一人ひとりのプライベートな事情やキャリアプランに配慮したポジションや職場環境を整備する必要があります。
せっかく採用した人材がすぐに離職しないよう注意しながら、ミドル人材を活用してみてはいかがでしょうか。
就職氷河期の時代に就活を迎えた人たちは、十分なマネジメント経験を積めなかった人も多いです。
なので、経験者が多いというよりは、マネジメント経験のあるミドル人材が貴重、という結論に持って行った方が自然です。