これまで『人事評価制度』を構築するにあたって、何を対象にし、どう評価すれば良いかについて説明してきましたが、その結果を何に反映すれば良いのでしょうか。
ズバリその答えは『等級や賃金』などです。
ただし、公正かつ効率よく反映させるためには『制度』が必要となります。
Part3では、どういった制度をどのようにして整えていけば良いのかについて見ていきたいと思います。
職務等級制度の策定
等級を定めるにあたって、当然1級や2級といった等級制度が必要です。
その際まずは、等級数を決めなければなりません。
一般的にはトップが1で、管理職層が2~3、そして一般社員層が4~6というものが多いですが、各企業によって事情は異なるでしょう。
等級数が少なすぎると、同じ等級の中に明らかにレベルが異なる人が混在します。
逆に多すぎると、等級間の差が分かりにくくなるので注意が必要です。
等級数が決まったら、等級ごとに必要な能力を定義付けします。
容易に判断しづらい内容であるため、社内にいるどんな人が相応しいか・またその人がどんな役割を果たしているか・どれほどの主体性や責任感を持っているか、などから逆算して考えるのも1つの手です。
等級制度があるということは、昇格・降格が発生するという意味でもあります。
後ほど詳しく述べますが、これには給与等の変動が伴います。
昇格であれば問題にはなりにくいですが、一方で降格に関しては注意が必要です。
下手すると人事権の濫用とみなされ、後の大きなトラブルを招く可能性があります。
等級制度を新しく整備する際は、あらかじめ就業規則に該当する規定が存在するかどうか確認しておきましょう。
存在しない場合は制度そのものを見直すか、就業規則の改定が求められます。
給与テーブルの作成
等級制度ができたら、その次は『各等級に応じた賃金や賞与をどうすべきか』をリンクさせた給与テーブルが必要です。
一概には言えませんが、1つの等級の中にもレベルが異なる社員がいるため、給与テーブルを作成する際は、賃金のレンジに幅を持たせた方が賢明です。
例えば基本給であれば、下から6等級=20~25万円、5等級=26~30万円、4等級=31万~ …といった具合です。
等級制度とそれにリンクする給与テーブルが完成したら、実際にいる社員が『どの等級に該当するか』割り振っていきます。
ここで起こりうる問題が、新たに設けた給与テーブルと、現行の給与とのズレです。新しい等級に格付けし、それに当てはまる賃金にすると、給与テーブルの上限・下限を超えてしまうことがしばしば起こります。
例えば、元々の基本給が31万円だった社員が5等級(26~30万円)に該当するとみなした場合、現行の基本給と1万円の差額が発生します。
こういった場合はその人の等級、もしくは賃金テーブルのレンジを見直していきましょう。
運用の注意点
上記に挙げた制度は、運用をスタートしてからが肝心です。
特に就業規則の変更を伴っている場合は、『社員への周知・徹底』が必要不可欠となります。
制度を構築した趣旨やその中身について、説明会の場などを設け、社員にしっかり理解を求めていきましょう。
十分な説明がないと、たとえ会社にとって有用な制度だとしても、社員にはうまく伝わりません。
結果として運用がうまくいかなくなる可能性があります。
一朝一夕に納得を得られないこともあるでしょう。
だからこそ焦らず時間をかけて丁寧に説明する姿勢が求められます。
可能であれば制度の導入前から地道にアナウンスしていった方が、後々の運用がスムーズに進んでいくかもしれません。
その中で、制度の見直しが必要となることもあります。
何か問題が起きてから場当たり的に対処するのは、賢明な判断とは言えません。
臨機応変に対応するためにも、あらかじめ問題が起きることを想定し、制度の見直し期間を設定しておく方が良いでしょう。
まとめ
以上、3回にわたって『人事評価制度』をつくる上で押さえておくべきポイントを見てきました。
制度を新しく構築する際は、今一度、その制度をつくる目的をハッキリさせておきましょう。
いざ制度が完成しても、うまく運用できる社員がいなければ元も子もありません。
適切に運用するためにも、社員への教育は必要不可欠です。
何といっても『制度が“誰のため” に使われているのか』を意識することが重要になってきます。
制度は言うまでもなく、現場で働く社員たちにあるものです。
完成した制度の導入を会社側から一方的に押し付けるのではなく、社員たちのよる一定の理解が得られた上で、運用をスタートしていきましょう。
そうすれば人事評価制度は今後会社を発展させていく上で、きっと役に立つはずです。