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人事業務は複雑化しやすく、業務量が多いため、基本的には複数人で対応するケースが多いです。
しかし、人材不足が慢性化している中小企業では、1人で人事業務を行う「ひとり人事」が増えています。
ひとり人事では、どのようにして業務を進めればよいのか、業務効率化を図れば良いのか悩んでしまう方が多いです。
悩みを抱えていると、ストレスが溜まり、業務の進捗も遅れてしまう恐れがあるでしょう。
今回はひとり人事とは、どのような悩みを抱えているのか詳しく解説します。
ひとり人事の課題や解決方法についても紹介していくので、ぜひご一読ください。
そもそも「ひとり人事」とは?
ビジネスにおいて「ひとり人事」とは、人事業務を担当者1人で実施することを指しています。
人事業務は求人広告の作成や面接の実施など、業務量が多いため、複数人に行うケースが多いです。
しかし、人材が不足している中小企業では、人事業務に充てる人材が少ないため、担当者1人で業務を進めることがあります。
複数人で進めるべき人事業務を1人で担当していることから、ひとり人事ではさまざまな課題や問題が生じ、トラブルに発展する可能性が高いです。
ひとり人事の特徴
ひとり人事は、1人で人事業務を回す必要があるため、人事以外の経営に関する業務も求められる可能性があります。
例えば、人材が少ないベンチャー企業では、採用戦略や採用方針の作成を経営者と連携して進めることもあるでしょう。
他にも、採用スケジュールを決めたり求人広告を作成したりと、スケジュール管理の能力も求められます。
応募者や面接者が多いほど、ひとり人事の負担が大きくなるので、課題や問題が山積みになってくるでしょう。
課題や問題が増えても、担当者が1人であるため、相談できる相手がいないのもひとり人事の特徴です。
効率よく人事業務を行うためにも、複数人で業務を回すことが重要になってきます。
ひとり人事に陥る会社の特徴
ひとり人事は、中小企業が成長段階のベンチャー企業、スタートアップ企業などの小規模な会社組織で生じやすいです。
また、小規模な会社組織だからこそ、採用に力を入れているケースが多く、常に採用活動を行う必要があります。
採用戦略や採用計画を採用担当者が実施するなど、通常の人事業務の枠を超えた、複雑な業務を1人で遂行しないといけません。
そのため、ひとり人事は採用事業以外にも、幅広い知識とノウハウが求められます。
ひとり人事の5つのメリット
ひとり人事は担当者1人の負担が大きく、問題視する企業も多いでしょう。
しかし、遂行する業務が多い分、ひとり人事で得られるメリットも大きいです。
ひとり人事のメリットとしては、下記の5つが考えられます。
・意思決定をしやすい
・業務経験の幅が広がる
・業務を自身の裁量で進められる
・業務フローを把握しやすい
・コストの削減が可能
ひとり人事の5つのメリットについて、詳しく解説します。
意思決定をしやすい
人事業務は、本来複数人で対応するため、それぞれに確認をとる必要があります。
例えば、書類選考から面接をするまで、人材を絞り込む作業が必要です。
そのときに、企業にマッチした人材なのか、複数人で意見を照らし合わせてから面接者を選びます。
ひとり人事の場合は、このように意見を伺うフェーズが発生しないため、個人で意思決定しやすいのが特徴です。
素早く人材に対してアプローチできるのが、ひとり人事のメリットといえるでしょう。
業務経験の幅が広がる
ひとり人事の場合、採用業務以外にも採用計画の策定や採用戦略などの複雑な業務を行う必要があります。
そのため、経営に関する知識や経験が得られやすいのが、ひとり人事の特徴です。
キャリア形成で価値のある経験ができるので、転職や起業する際に大きく役立ちます。
業務経験の幅が広がり、個人で活動できる能力を培うきっかけになるでしょう。
業務を自身の裁量で進められる
人事業務を1人で対応するため、自身の裁量で業務の優先順位を決めたりスケジュール調整したりできます。
自分が思い描いた人事業務が行えるので、仕事に対するモチベーションや達成感を向上させやすいのが特徴です。
やりがいのある仕事として、業務に充実することができます。
業務フローを把握しやすい
1人で人事業務を行うため、各部門のつながりなど、業務フローが把握しやすくなります。
企業全体の人事戦略が立てやすくなり、企業や社会の変化に臨機応変に対応できるでしょう。
企業にとって、重要な人材に成長できる可能性があるので、キャリア形成に大きく影響します。
コストの削減が可能
人事業務を1人で対応するため、企業としては人件費削減につながります。
採用活動にかける労力にもよりますが、基本的に人事業務は複数人で対応するケースが多いです。
しかし、ひとり人事なら担当者は1人なので、コストは最小限で済みます。
また、部署のスペースも確保する必要がないので、さまざまコストや手間を省くきっかけになるでしょう。
ひとり人事が陥りやすい悩み
ひとり人事は、さまざまな知識や経験が蓄積され、転職や起業に有利になるといったメリットがあります。
しかし、ひとり人事だからこそ、悩んでしまうことも多いのです。
ひとり人事で陥りやすい悩みとしては、下記の通りになります。
・社内に相談できる相手がいない
・業務の負担が大きい
・人的なエラーが起こりやすい
・自身の評価をされにくい
・自分の代わりがいない
ここからは、ひとり人事で陥りやすい悩みについて、詳しく解説します。
社内に相談できる相手がいない
ひとり人事の特徴として、人事業務は個人で実施します。
そのため、業務上の悩みがあっても、相談できる相手がいないのが難点です。
人事業務を複数人で対応している場合は、同じように悩みを抱えている社員と話し合い、相談内容から解決に導いてくれるケースがあります。
しかし、ひとり人事の場合は、個人で業務を行うため、従業員の個人情報を他の人に開示できない可能性が高いのです。
そのため、個人で情報を抱え込んでしまい、悩みを打ち明けられず、ストレスが溜まることもあるでしょう。
業務の負担が大きい
人事業務は本来、複数人で対応しないといけないほど業務量が多いです。
1人で対応するのは業務負担が大きく、過労やストレスの原因になる可能性があります。
長期的にひとり人事を行うのは、健康問題につながる恐れがあるでしょう。
また、業務量が多いあまり、人事業務の効率が下がり、適切に採用活動を行えなくなるかもしれません。
個人で対応できない業務量のときは、人事業務を行ってくれる人材をもう1人探すなど、職場環境の改善を求める必要があります。
人的なエラーが起こりやすい
ひとり人事は、本来複数人で対応すべき業務量を個人で行うため、人的エラーが発生するリスクが高くなります。
業務負担が大きくなるほど、ミスが発生する可能性は高くなり、最悪の場合は企業に大きな損失を与えるかもしれません。
複数人で人事業務を行っていれば、ダブルチェックの実施ができるため、人的エラーを回避できます。
しかし、1人で人事業務を行っていると、確認してくれる上司や同僚がおらず、トラブルが生じやすいのが問題です。
自身の評価をされにくい
ひとり人事の場合、上司や同僚がいないため、業務評価がしにくい環境にあります。
どれだけ頑張っても、結果が伴わない可能性があり、努力したことが評価されない恐れがあるでしょう。
ひとり人事を行うときには、人事評価制度を導入し、どのような業務・結果が評価されるのか明確にしておくことが大切です。
自分の代わりがいない
人事業務を1人で対応していると、体調不良になったとしても代わりに業務を行ってくれる人がいません。
そのため、簡単に休みを取得することができず、最悪の場合は有給を昇華できない可能性があります。
また、人事業務を個人で行っている場合、企業内で属人化が進み、後継が育たない恐れがあるでしょう。
マニュアルやルール化を徹底していないと、人材が不足したときにトラブルに発展するかもしれないので注意が必要です。
ひとり人事が向き合っている課題
ひとり人事の場合、業務を遂行するうえで、さまざまな課題が出てきます。
ひとり人事が向き合っている課題の例としては、下記の通りです。
・就業規則
・評価制度
・採用
・オンボーディング
・労務管理
具体的に、ひとり人事が向き合っている課題としては、どのような内容なのか詳しく解説します。
就業規則
労働基準法にて、10人以上の従業員を雇用する場合は、就業規則を作成する必要があると定められています。
就業規則は、労働法や雇用法などの法律に精通していないと、適切に定められないため、専門的な知識やノウハウが求められるでしょう。
ひとり人事で就業規則を定める場合は、作成に手間や時間がかかります。
相談できる人も少ないため、就業規則の作成に手間取るといった課題が出てくる可能性が高いです。
評価制度
公正な評価制度を導入する場合は、従業員全員が納得する制度にする必要があります。
ひとり人事の場合は相談する相手が少ないため、経営を担っている社長や取締役と話し合って決めないといけません。
評価制度を適切に制定するためには、時間と労力がかかるので、1人で制度の概要を作成するのは困難です。
評価制度は従業員の定着率にも影響するので、時間をかけてでも公平な内容に制定する必要があります。
採用
ひとり人事で採用活動を行うためには、履歴書の確認や面接の調整など、数々の業務を1人でこなす必要があります。
適切な人材を採用するためにも、密に連絡を取り合い、企業の風土に合った人材を確保しないといけません。
1人で実施するには、かなりの労力が必要となり、面接希望者が多いほど、時間と労力がかかります。
オンボーディング
オンボーディングを適切に行うためにも、担当者は専門的な知識やスキルが求められます。
会社の業務に慣れるためにも、新人の教育や研修は予め実施しておかないといけません。
従業員のニーズやレベルに合わせて、適切な教育・研修プログラムを設計する必要があるので、担当者1人では負担が大きいでしょう。
オンボーディングを適切に行うためにも、計画の企画立案から、実施・評価まで担当する必要があるので、1人では困難な業務になります。
労務管理
時間管理や有給休暇の管理など、労務管理もひとり人事では対応しないといけません。
従業員が多いほど、労務管理の難易度は上がるため、時間的・精神的にも大きな負担となります。
また、働き方の多様化に伴い、テレワークを行う従業員も増加傾向にあり、在宅業務の時間管理も把握しないといけません。
ひとり人事の課題解決に役立つ5つのヒント
ひとり人事の課題解決を行うためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
ひとり人事の課題解決に役立つ5つのヒントは、下記の通りです。
・経営陣と向き合い連携する
・社員とのコミュニケーションを活発化させる
・外部のリソースや便利なシステムを活用してみる
・社外のネットワークを広げる
・2人目の人事を採用する
ひとり人事の課題解決に役立つ5つのヒントについて、詳しく解説します。
経営陣と向き合い連携する
ひとり人事を成功させるためには、経営陣と向き合い、協力を求める必要があります。
1人で採用活動を成功させるためには、さまざまな課題があり、個人では解決できない問題もあるでしょう。
そのときに、自分の判断だけでは決められない人事評価の評価基準の策定は、経営陣の許可がないと定めることができません。
普段から経営陣と良好な関係を維持し、必要なタイミングで協力が仰げる関係を築いておくことが大切です。
社員とのコミュニケーションを活発化させる
ひとり人事の場合、どんな人材を企業が求めているのか把握するため、組織全体の情報を集めて、適切な意思決定を行う必要があります。
現在、人材が不足している部署はどこなのか、素早く情報を集めて迅速に求人広告の作成や面接の日程調整を行わないといけません。
社員とのコミュニケーションを活発化させれば、自然と組織全体の情報を集めることができるので、人事業務に活かせるはずです。
組織全体のヒアリングを定期的に行い、採用したいターゲット像を明確にしておきましょう。
外部のリソースや便利なシステムを活用してみる
人事業務を1人で行うのは、労力が足りなくなってしまい、人的エラーにつながる恐れがあります。
その対策として、外部のリソースとしてアウトソーシングを活用する方法が有効です。
アウトソーシングでは、給与計算や採用手法など、一任することができるので、人事担当者の不安を軽減させるきっかけになります。
他にも、クラウドシステムを導入し、日々の労務管理を効率化させる方法もおすすめです。
システムやツールを活用すれば、普段の業務負担を軽減させられます。
社外のネットワークを広げる
社外の人事担当者と関係を築き、新たな視点から情報を得る方法があります。
ネットワークを広げることで、社内では解決できなかった課題を解決する手段を思いつく可能性があるでしょう。
人事のための交流会を開催して、必要な情報が得られる環境に身を置くことも大切です。
2人目の人事を採用する
企業が成長し、人材不足が加速すると、ひとり人事では対応しきれなくなる可能性があります。
そうなった場合、2人目の人事を採用することも検討しましょう。
人事業務を分散させれば、人事担当者ひとり一人の負担が軽くなります。
業務効率化を図るきっかけにもなるので、検討してみてください。
まとめ
ひとり人事では、さまざまな悩みが生じる可能性があり、課題や問題が発生します。
特に1人で人事業務を行うのは、かなりの激務になるため、業務負担が大きくなってしまうでしょう。
今回紹介した、課題や問題解決のヒントを参考に、ひとり人事の悩みを解消する手段を検討してみてください。