衛生面や栄養面の改善、医療の発達などにより私たちの寿命は飛躍的に伸び、人生100年と言われる時代へ突入しました。

 

過去に類を見ないほど長命になった現代では、生き方そのものを見直す転換期に入っており、政府も『100年時代構想会議』を開くなど、国を挙げた取り組みが迫られています。

 

この記事では、人生100年時代を迎えたことによる働き方の変化や企業は個人とどう向き合うべきかについてご紹介します。

 

人生100年時代とは

人生100年時代とは、ロンドンビジネススクールの教授リンダ・グラットン氏が自身の著『LIFE SHIFT』で「人が100年前後生きることになれば、“教育を受け、仕事をし、引退して余生を過ごす”という今までのフローは通用しなくなる。」と提唱した考えです。

 

世界の中で最も高齢化が進んでいる日本では、政府主導で『人生100年時代構想会議』が開催されました。

 

構想会議では“人づくり革命”に必要となる下記5つについて、グラットン教授ら有識者と意見交換を行っています。

 

幼児教育の無償化

幼稚園や保育所、認定こども園に通う3~5歳のこども全てと、住民税非課税世帯の0~2歳児が対象(2019年10月から開始予定)

 

高等教育の無償化

低所得世帯のこどもを対象とした高等教育(専門学校、大学など)の無償化(2020年4月から開始予定)

 

大学改革

何歳でも学び直しができる環境の整備、学問と実践的な職業教育の拡充など、人づくり改革をけん引するような施策

 

リカレント教育

仕事をしていても、個人が必要とすれば年齢に関係なく教育機関に戻って学び直しができる教育システム

 

高齢者雇用の促進

65歳以上への定年引上げ、高年齢の有期契約労働者の無期雇用へ転換を行う事業主への助成金制度など構想会議の内容を見ると分かるように、今後は個人の能力・スキルの重要性がさらに増すと考えられます。

 

人工知能の発達などにより、無くなる仕事や新しい仕事も出てくるでしょう。

 

先を見据えて変化に対応できるよう、成長する姿勢が重要となってきます。

 

 

平均寿命が延びたことによる働き方の変化は?

平均寿命が延びることで、定年後の生活も長期化することになります。

 

65歳で定年を迎えても100年生きるとしたら、その後35年も引退生活が待っており、これを退職金や年金だけで賄うのは不可能です。

 

 

≪出典:経済産業省ウェブサイト 「人生100年時代を踏まえた「社会人基礎力」の見直しについて」

 

 

長く活躍するには、“働きながら学ぶ、同時に複数の仕事や活動を行う、独立する”といった、教育・仕事・引退のライフステージを、状況に応じて行き来するマルチステージの人生設計が必要となります。

 

また、人生100年時代において教育、多様な働き方、無形資産の必要性が増すものと予想されています。

 

教育

グローバルな時代となり、世界中の競合と差別化を図る必要があります。

 

今後活躍していくためには、専門知識やスキルを自ら学び続けることが必須です。

 

多様な働き方

年齢に関係なく働くことを想定し、フリーランスなどの独立した立場で仕事について考える必要があります。

 

無形資産

お金や不動産といった有形の資産だけでなく、経験や人的ネットワークなど、目に見えない資産を積み重ねていくことが重要です。

 

状況に合わせたステージの変更は、出産や育児などがある女性にとっても、メリットのある働き方と言えますね。

 

人生100年時代に必要になる社会人基礎力とは

経済産業省では、今後多様な人々と仕事していくために必要となる“社会人基礎力”を3つの能力と12の能力要素として定義しています。

 

前に踏み出す力(アクション)

“一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力”

常に試行錯誤しながら、粘り強く、自ら物事に取り組む力が求められています。

 

・主体性   … 物事に進んで取り組む力

・働きかけ力 … 他人に働きかけ巻き込む力

・実行力  … 目的を設定し確実に行動する力

 

考え抜く力(シンキング)

“疑問を持ち、考え抜く力”

物事に対して疑問を持ち、それに対する解決法や、プロセスを考え抜く姿勢が求められています。

 

・課題発見力 … 現状を分析し目的や課題を明らかにする力

・計画力   … 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

・想像力   … 新しい価値を生み出す力

 

チームで働く力(チームワーク)

“多様な人々とともに、目標に向けて協力する力”

仕事の細分化が進むと、多様な人々と共に仕事をすることになります。

そのため、コミュニケーションを円滑にし、目標へ向かって協力し合うことが求められています。

 

・発信力   … 自分の意見をわかりやすく伝える力

・傾聴力   … 相手の意見を丁寧に聴く力

・柔軟性   … 意見の違いや立場の違いを理解する力

・状況把握力 … 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

・規律性   … 社会のルールや人との約束を守る力

・ストレスコントロール力 … ストレスの発生源に対応する力

 

企業は個人とどう向き合うべきか 

以前の日本では、定年まで一つの会社に勤め続けるのが一般的でした。

 

しかし、少子高齢化の進んだ現在、終身雇用制度は崩壊し、転職でのキャリアアップを目指す方が多くなりました。

 

今まで、企業側は“雇用し続けること”で働き手を守ってきました。

 

しかし、今後は社内外の転進も視野に入れ、“社会で活躍し続けられるよう支援すること”で働き手を守ることが求められます。

 

また、働き方改革でも推進されているように、副業の解禁やテレワーク等の労働環境整備、適材適所の人材配置など多様な働き方を認めることで、生産性向上や人材の定着に繋がっていくと考えられます。

 

つまり、学び直し(リカレント教育)による個人スキル向上の支援、多様な働き方の容認など労働環境の整備をする姿勢が重要視されています。

 

まとめ

世界に先駆け少子高齢化社会が進んでいる日本では、100年時代への対応が急がれています。

 

100年時代では『教育、多様な働き方、無形資産』が重要となります。

 

個人は自身の価値を向上できるよう学び続ける姿勢、企業は予期せぬ事態に備えて個人の市場価値を向上させる必要があります。

 

状況に合わせてライフステージが変化されるこれからの時代は、個人のキャリア形成や多様な働き方に理解のある企業が、働き手から選ばれることになるでしょう。

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