マイクロラーニングという学習方法をご存じでしょうか。
深刻な少子高齢化の影響などにより、ますます多忙を極めているビジネスパーソンにとって、毎日まとまった時間を確保することは難しく、「なかなか学習の習慣が根付かない」など、お悩みの企業も多いかと思います。
そこで、今回は短時間学習ができるマイクロラーニングについて解説していきます。
マイクロラーニングとは何か、導入のメリット・デメリット、注意点についてご説明します。
また、おすすめのマイクロラーニングツールもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
マイクロラーニングとは?
マイクロラーニングとは、1~5分程度の短時間で視聴できるコンテンツを利用した学習法です。
従来のe-ラーニングよりも短い時間で、スマートフォンやタブレットといったモバイル機器からも視聴できる点が特徴です。
マイクロラーニングは、学習内容がコンパクトにまとめられているため、通勤時間帯や休憩時間中などのスキマ時間を活用し、スマートフォンから学習することができます。
また、クイズなどのゲーム要素を取り入れたコンテンツも多く、現代に合った学習スタイルと言えるでしょう。
マイクロラーニングが注目されている背景
時間と場所を選ばずに学習できるマイクロラーニングですが、なぜ最近注目されているのでしょう。
ここでは、マイクロラーニングが注目されている背景をご紹介します。
モバイル機器の普及
従来のe-ラーニングは、一般的に長時間の学習コンテンツをオフィスのパソコンで視聴していました。
しかし、こういった学習法は、
- 長すぎて集中力が続かない
- 忙しすぎて視聴する時間がない
など、多くの課題を抱えていたのです。
近年は、スマートフォンなどのモバイル機器が普及し、ネットワーク技術も発達したことで、いつでも・どこからでも気軽に動画を視聴できるようになりました。
そのため、スキマ時間に短時間学習できるマイクロラーニングが、e-ラーニングの課題を解決できると注目されているのです。
ミレニアル世代との親和性の高さ
ミレニアル世代とは、1980年代から2000年代初めの間に誕生した人です。
幼いころからインターネットが身近だったため、「デジタルネイティブ世代」とも言われています。
ミレニアル世代は、インターネットを使ってすぐに欲しい情報を手に入れていたため、手軽な学習やモバイル端末を好みます。
したがって、スマートフォンで短時間学習ができるマイクロラーニングは、ミレニアル世代との親和性が高いと言えるでしょう。
ミレニアル世代が次々と社会に出てくる今後は、より一層マイクロラーニングの需要が高まっていくと考えられます。
マイクロラーニングのメリット
マイクロラーニングについて理解が深まったところで、どのようなメリットがあるのでしょう。
ここでは、マイクロラーニングのメリットをご紹介します。
学習を定着化させやすい
マイクロラーニングは、長いコンテンツでも10分程度と短い時間で学習できる教材です。
加えて、スマートフォンからも視聴可能なため、通勤中や移動中、休憩時間中といったスキマ時間に学習することができます。
従来のe-ラーニングのように「時間を確保してパソコンの前で学習する」手間がない分、学習へのハードルが高くありません。
いつでも・どこでも学習できるため、学習する習慣を定着させやすいのです。
学習効果が高くなる
人間の集中力は15分周期とされています。
事実、東京大学薬学部の池谷教授が行った実験では、下記の通り「長時間学習(60分学習)」よりも、「積み上げ型学習(15分学習×3回)」の方が学習の定着・集中力に効果があったという結果が出ています。
勉強時間による学習の定着・集中力に関する実証実験
中学1年生29名を学力が均等になるよう、下記3つのグループに分け、当日・翌日・1週間後の3回に分けて事後テストを実施した。
- 「60分学習」グループ
- 「45分学習」グループ
- 「15分×3 (計45分)学習」グループ
1週間後に行った事後テストにおいて、「60分学習」グループの上昇スコアが16.00点であったのに対し、「15分学習×3回」グループの上昇スコアは18.75点であった。
また、短い休憩をはさんだ「15分学習×3回」グループは、脳波の測定から集中力も持続していたことが判明した。
実験結果からも、短時間学習を積み上げていくマイクロラーニングは、学習効果が高いと言えるでしょう。
教材の作成・修正がしやすい
マイクロラーニングは一つひとつのコンテンツ内容が少ないため、企画や編集といった政策作業を短時間で行えます。
また、内容変更を行う際も、対象コンテンツのみの修正作業で完結するため、長時間コンテンツのように一部修正後に全体を調整する必要がないのです。
マイクロラーニングは、作成や修正の手間が少ないため、変化スピードに合わせた柔軟な対応が可能となります。
マイクロラーニングのデメリット
マイクロラーニングは、メリットの多い学習方法であることが分かりました。
では、どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
内容によっては向かない
マイクロラーニングは、一つひとつのコンテンツ内容量や時間をコンパクトにして行う学習法です。
そのため、長時間学習が必要な資格取得のための学習や、経営課題の解決法といった複雑で難しい内容の学習には向きません。
このような学習はコンテンツ内で解説しきれないため、マイクロラーニングだと効果を得にくいのです。
従来のe-ラーニングをベースとして、要点の解説や確認テストなどでマイクロラーニングを実施するなど工夫が必要でしょう。
また、現場経験を通して上司・先輩からアドバイスを受けて習得するスキルや、ディスカッションで理解を深めるものもマイクロラーニングには向いていません。
マイクロラーニングが活躍するシーン
手軽に学習できるマイクロラーニングは、様々なシーンで活用できます。
ここでは、マイクロラーニングを活用できるシーンについてご紹介します。
従業員に学習の習慣をつけさせたい
マイクロラーニングは一つひとつのコンテンツが短く、スマートフォンを利用してスキマ時間に学習することができます。
従来のe-ラーニングよりも学習のハードルが低く、習慣化させやすいため、学習の風土づくりを促せます。
また、従業員の学習状況も可視化されるため、管理もしやすいです。
新入社員への教育
マイクロラーニングは、新入社員への教育としても活用できます。
名刺交換や接客の仕方、業界の基本的な知識など、実際の業務を行う前に新入社員が身につけるべき知識やマナーは多々あります。
このような教育を動画で行うことで、仕事を具体的にイメージでき、知識も定着しやすくなるため、その後の指導や研修をスムーズに進行できるでしょう。
また、事前に教材を制作しておき、マイクロラーニングで自主学習を促しておけば、教育や研修のコスト削減にも繋がります。
管理職研修
管理者には、マネジメントスキルをはじめとした、多くの知識やスキルが求められるため、適切な能力を養うための研修が必要不可欠です。
しかし、一般的に管理職は多忙なためスケジュール調整が難しく、一ヶ所に集まって研修を行うのは困難です。
また、一般の社員よりも人件費が高いため、何度も開催するとコストが高くなってしまいます。
マネジメントや経営戦略の基礎的な知識をマイクロラーニングで学習すれば、コストを最小限に抑えられますし、スケジュール調整を行うも必要ありません。
マイクロラーニングで基礎知識を習得しておけば、その後の集合研修進行もスムーズに行えるでしょう。
ノウハウのインプット
先述の通り、マイクロラーニングは、制作や編集作業をしやすいため、情報更新にも対応しやすいです。
業務関連のノウハウや能力の高い社員からのノウハウを共有することで、社員のスキルや能力を一定に保つことができるため、チームや組織のパフォーマンス向上に繋がります。
マイクロラーニング導入時の注意点
マイクロラーニングの効果を最大限に発揮するには、どのような点に注意すればいいのでしょう。
ここでは、マイクロラーニング導入時の注意点をご紹介します。
コンテンツを細かく分けない
マイクロラーニングは、一話完結型コンテンツにするのが望ましいです。
というのも、続編をすぐに視聴できない場合、中途半端な状態で学習が中断してしまうからです。
また、学習が不十分な状態のまま次のコンテンツに進もうとするなど、学習効率が悪くなるため、一話完結型が適しているのです。
多忙な人でも手軽に学習できるよう、シリーズものではなく、一話完結型のコンテンツを作りましょう。
教育方法をマイクロラーニングだけにしない
先述の通り、マイクロラーニングは、全ての学習・教育に有効な学習方法ではないため、他の方法と組みわせることが重要です。
例えば、
- 集合研修やOJTの予習・復習教材として利用する
- e-ラーニングでの学習をベースとして、要店解説や確認テストをマイクロラーニングで行う
といった方法が考えられます。
このように、従来の研修やe-ラーニングなどの学習方法を組み合わせて教育すると、一層高い学習効果を得やすくなります。
マイクロラーニングのサービス例
学習効果の高いマイクロラーニングを活用する企業も増えてきました。
ここでは、マイクロラーニングのサービスをご紹介します。
株式会社4COLORS:PIP-Maker
パワーポイントのファイルをアップロードするだけで、動画制作できるサービスです。
PIP-Makerのマイクロラーニングは、アバターによる読み上げ機能が付いているため、撮影や録音を行う必要もありません。
パワーポイントで作成・修正を行えるため、コストを抑えて簡単にマイクロラーニングの教材が制作できます。
また、パワーポイント上にハイパーリンクを設置すれば、クイズやアンケートを作成することも可能です。
ロゴスウェア株式会社:Spotty
Spottyは、必要な従業員に必要な情報を送り、閲覧状況に応じて必要なフォローを行えるマイクロラーニングシステムです。
画像や動画はもちろん、選択型・記述形式のアンケートコンテンツも遅れるため、様々なニーズに対応できます。
また、パソコンやモバイル端末から閲覧することができるため、移動中などのスキマ時間にも手軽に学習できます。
アステリア株式会社:Handbook
Handbookは、1,500件以上の導入実績を誇るモバイル向けコンテンツ管理システムです。
マニュアルや研修教材などの書類や画像、動画などをクラウド上で管理し、タブレットやスマートフォンからの閲覧もできます。
また、コンテンツ配信だけでなく、クイズやアンケート機能もあるため、現場の評価やコメント収集することも可能です。
ユームテクノロジージャパン株式会社:UMU
UMUのマイクロラーニングは、画像や質問、音声、動画などを組み合わせたコンテンツ制作をすぐに行えます。
また、学習状況をリアルタイムで把握できるため、受講者の管理はもちろん、機能しているコンテンツの傾向を統計分析から割り出すことも可能です。
機能しているコンテンツの傾向が分かれば、新しいコンテンツを制作する際のヒントにもなりますね。
マイクロラーニングは学習の効果を高める
マイクロラーニングは、スマートフォンなどのモバイル端末から手軽に視聴できるため、学習する習慣が身につきやすいです。
また、短時間のコンテンツであるため、制作も簡単に行えることから、管理者側・受講者側双方にとってメリットの大きな学習法と言えるでしょう。
学習の風土を根付かせたいとお考えの企業は、ご紹介した注意点をご参考に、マイクロラーニングの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。