近年、日本企業では英語公用語化の動きが活発化しており、大手企業ではすでに導入している企業も珍しくありません。

 

しかし、「なぜ日本の企業なのに社内公用語を英語にする必要があるのか」ということに疑問を感じる人も多いと思います。

 

そこで、英語公用語化を導入する企業の狙いや、メリット・デメリット、社内公用語を英語にした企業例をご紹介します。

 

社内公用語を英語にしている企業の狙いとは?

そもそも、「社内公用語を英語にする」ということは、社員同士の電話やメール、ミーティング、議事録などの文書を全て英語で行うことを言います。

 

英語公用語化は、1999年に日産がルノーの傘下に入り社内公用語が英語になったことがきっかけで多くの大手企業でも導入されるようになりました。

 

日産に続き、楽天やファーストリテイリンググループなど、名だたる企業で続々と導入されるようになりました。

 

日本人相手にも英語を使うことになるので、少々まどろっこしい印象を受けますが、英語公用語化の狙いとしては下記が挙げられます。

 

・経済のボーダレス化による海外進出

・グローバル化に伴う優秀な人材の採用

・海外に支店や工場がある

・現地スタッフとのコミュニケーション

 

日本経済の先を見据えて海外進出する企業にとって、さまざまな国籍の人とコミュニケーションをとるためには、世界共通語である英語が必要不可欠となります。

 

つまり、英語を話せないとビジネスが不利になってしまうことから、英語公用語化を取り入れる企業が増加したのです。

 

また、英語を公用語化することでダイバーシティの実現にもつながるため、世界中の優秀な人材を獲得するチャンスも広がることが企業の狙いと考えられます。

 

ダイバーシティについての詳細は「ダイバーシティ・マネジメントとは?」をご覧ください。

 

社内公用語を英語にすることによる効果

ビジネスチャンスを逃さない

日本のマーケットは少子高齢化の影響で縮小傾向にあり、海外進出する企業が増えています。

 

今後、更なるグローバル化が進むと予想されるため、世界共通語である英語を話せないと、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。

 

今後のビジネスを広げていく上で、英語は必須と言えるでしょう。

 

円滑なコミュケーションができる

通訳を介さないとコミュニケーションを取れないようでは、スムーズに意思疎通ができませんし、仕事上の信頼感も得られません。

 

英語を話せるようになれば、海外企業との商談や、現地スタッフとのコミュニケーションも円滑に行えます。

 

優秀な人材を獲得できる

社内で英語が浸透することで、日本語を話せない外国籍の人でも働けるようになり、世界中の優秀な人材が活躍できる環境が整います。

 

コストと手間が減る

英語公用語化がされていない場合、海外企業との商談や海外支店の従業員と会議を行う際、外部へ通訳を依頼するとコストがかかってしまいます。

 

また、議事録などの資料を海外の人へ渡す場合、日本語版と英語版の2パターン作成しなくてはなりませんが、英語公用語化すれば人件費や資料翻訳などの手間を削減できます。

 

社内公用語を英語にしたことで発生するデメリット

英語が浸透するまでに時間がかかる

英語公用語化は長期的に見れば非常にメリットが大きいです。

 

今後のビジネスでは英語力は絶対的に必要となるでしょう。

 

しかし、「学生時代に英語を習っただけで、その後は全く触れていない」という人も多くいます。

 

仕事上で英語を使いこなすには、それなりに時間がかかるため、長期的な施策として、社内メールから徐々に英語化へ移行するなど、慎重な取り組みが必要です。

 

英語が苦手な社員の離職

英語公用語化を導入すれば、どの社員も英語を勉強する必要がありますが、中には英語に対してアレルギーがある人もいます。

 

うつ状態になる人や、離職する人が出ることもあるため、すでに働いている日本人従業員への配慮も大切です。

 

翻訳作業が必要になる

社内には就業規則や議事録など、重要な書類がたくさんあります。

 

英語公用語化を導入するのであれば、それらの書類を翻訳する作業が必要です。

 

また、今後文書を作成する際にも、「文書の意味が伝わる内容になっているか」などの確認作業に通常よりも時間が掛かると考えられます。

 

会議の質が低下する可能性も

日本語での会議や仕事の打ち合わせなどは、微妙なニュアンスや相手の言いたいことが理解しやすいです。

 

しかし、第二言語同士の会話では相手が理解できているのか不安になることも多く、「英語だと言いたいことの半分も伝えられない」ということもでてくるので、会議の質が低下してしまう可能性が考えられます。

 

社内公用語を英語にした企業例

楽天

2010年に社内公用語を英語にすると発表してから、2年間の移行期間を設け、2012年には本格的に英語公用化しました。

 

楽天では、人事評価面でも英語力を重視しており、昇進するためにはTOEICで一定のスコアを取得するなどの基準を設けています。

 

このような制度を確立したこともあり、2015年には楽天社員のTOEIC平均スコアは800点以上をマークし、社員全体の英語力が向上しました。

 

2018年12月には、「楽天社員全体の20%が外国籍社員」、「新規採用のエンジニアでは70%が外国籍社員」という結果を出しています。

 

ファーストリテイリング

楽天と同様、ユニクロを展開しているファーストリテイリングも、2年間の移行期間を経て2012年には本格的に英語公用化をしています。

 

Eラーニングで一定の成績を上げた人には授業料全額負担する制度など、英語力を上げるためのバックアップ体制も充実させました。

 

グローバル企業になるために、世界で活躍できるような人材獲得を目指して導入が決まったもので、2012年には新卒採用者の約8割が外国籍という結果を出しています。

 

まとめ

英語を公用語化した企業の狙いやメリットについてご紹介してきました。

 

英語公用化の導入は、通常の業務に加えて英語の勉強を行うなど従業員の負担が増加するため、不満がたまってしまい離職にも繋がる可能性もあります。

 

移行期間やバックアップ体制、英語力を評価する制度などを設けることで、従業員のやる気や向上心を引き出すことが大切です。

 

メリットの大きい英語公用化導入の際には、従業員への十分な配慮を心がけましょう。

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