「カフェテリアプラン」型の福利厚生サービスをご存じでしょうか。
近年、福利厚生制度の効果をさらに高めるものとして「カフェテリアプラン」型の福利厚生サービスが企業経営者、人事・労務担当者などから注目を集めています。
今回は、新しい福利厚生の形であるカフェテリアプラン型のサービスについて、メリット・デメリット、導入企業もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
カフェテリアプランとは?
カフェテリアプランとは、近年、新たに登場した福利厚生サービスの形態で、主に福利厚生のアウトソーシングサービスを行う事業者などが提供しているサービスです。
具体的には、会社が“福利厚生サービスの事業者”と契約をすることで、従業員は“福利厚生サービスの事業者”が提供する様々なメニューから、自分の希望に合ったサービスを利用することができるというものです。
カフェテリアプラン型の福利厚生サービスが注目される背景には、企業が抱える福利厚生制度の課題があります。
多くの企業は、「人材採用のアピールポイントにしたい」、「既存従業員の満足度を高め離職率を減らしたい」といった目的で福利厚生制度を用意しています。
しかし、実際にはすべての人が魅力を感じ、利用したいと思える福利厚生メニューを自社だけで用意することは難しく、「そもそも、利用率が上がらない」、「一部の人だけが利用しており不公平感がある」という課題が生まれています。
その点、カフェテリアプラン型の福利厚生制度なら、数多くのメニューから従業員一人ひとりが好みのメニューを選べることから、利用率が向上し、全員が平等に福利厚生制度の恩恵を受けられるようになります。
このように、カフェテリアプラン型の福利厚生は多くの企業が抱える“福利厚生に関する課題”を解決できるということから、今注目されているのです。
ちなみに、「カフェテリアプラン」という名称は、従業員がメニュー表を見ながら自分の好きな福利厚生を選ぶ様子が、カフェで注文をする様子に似ていることが由来です。
カフェテリアプランを利用する際のポイント制度について
カフェテリアプラン型の福利厚生は、提供されているメニューが無限に利用できるというものではなく、従業員はあらかじめ付与されているポイントと引き換えにメニューを利用する仕組みとなっています。
また、メニューの価格(≒設定されている消費ポイント)も一律ではなく、一度の利用でポイントをたくさん消費するサービスもあれば、少ないポイントで利用できるサービスもあります。
ちなみに、ポイントは1年に1回(年度始めなど)チャージされる仕組みとなっています。
パッケージプランとの違い
カフェテリアプランと類似する福利厚生サービスに「パッケージプラン」があります。
カフェテリアプランとパッケージプランは非常によく似たサービス形態ではありますが、仕組みがやや異なります。
先ほど、カフェテリアプランではあらかじめ付与されているポイントを消費しながらサービスを利用すると紹介しました。
つまり、カフェテリアプランはポイントがなくなり次第、次回、ポイントが付与されるまでの間は使うことができません。
しかし、パッケージプランでは、そもそもポイント制度が無く、メニューにあるものであれば何度でも利用できる仕組みになっています。
カフェテリアプランとパッケージプランの最大の違いは、ポイント制度の有無、利用回数に上限があるかどうかということになります。
カフェテリアプランの一般的なメニュー
カフェテリアプランのメニューは企業ごとに異なりますが、ここではよく利用されているメニューをまとめています。
育児
・育児費用補助
・育児用品補助
介護
・介護サービス利用補助
・介護施設利用補助
・介護用品補助
医療
・人間ドック費用補助
・脳ドック費用補助
・歯科治療費用補助
・予防接種費用補助
・メンタルヘルス利用補助
・医療費補助
・差額ベッド代補助
健康増進
・スポーツクラブ利用補助
自己啓発
・資格取得補助
・各種スクール補助
・クラブ活動支援
財産形成
・財形補助
・持株会補助
・生命保険/損害保険料補助
・長期所得補償保険補助
・FP相談費用補助
住宅
・家賃補助
・住宅修繕費用補助
・住宅ローン補助
・引っ越し費用補助
レジャー
・旅行/宿泊費用補助
・映画鑑賞補助
・レジャー施設利用補助
・リラクゼーション利用補助
食事
・食券購入補助
・昼食補助
カフェテリアプランのメリット・デメリットは?
カフェテリアプラン型の福利厚生サービスにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
メリット
従業員満足度の向上
従来の画一的な福利厚生では、利用率が低かったり、不公平感が生まれたりすることもありました。
幅広いメニューの中から好きなものを自分で選べるカフェテリアプランであれば、多様なニーズに応えられるため、従業員満足度を向上させることができます。
コストが管理しやすい
従来の福利厚生は、従業員が利用するかどうかによってコストが変動していました。
しかし、カフェテリアプランは従業員へ支給するポイントをあらかじめ設定するため、予算の上限が明確となり、福利厚生に掛かるコストを管理しやすくなります。
他社との差別化ができる
利用者にとってメリットの大きいカフェテリアプランは、「福利厚生に力を入れている企業」という大きなアピールポイントになります。
他企業との差別化を図ることで、採用活動での人材確保や従業員の定着にも繋がるでしょう。
デメリット
企業側の負担金額が多くなることもある
カフェテリアプラン型の福利厚生サービスを利用するためには、毎月もしくは毎年、提携する福利厚生サービス事業者に料金を支払う必要があります。
福利厚生にかかる費用を企業側が負担している場合、自社のみで福利厚生を賄う場合とくらべて、負担金額が多くなることもあります。
従業員への周知、説明会などの手間がかかる
カフェテリアプラン型の福利厚生サービスを新しく企業が導入する場合、社内への周知や利用方法などに関する説明会を実施する必要があり手間がかかります。
また、定期機に利用を促していないと、思ったほど利用率が上がらなかったということにもなりかねないので注意しましょう。
カフェテリアプランの導入状況
従業員の定着や人材確保の目的で導入する企業の多いカフェテリアプランは、年々、導入企業が増加しています。
経団連「第62回福利厚生費調査結果報告」によると、2002年度の導入企業は4.3%でしたが、2017年にはカフェテリアプランを導入している企業は14.7%にまで増加しました。
また、カフェテリアプランの導入状況を企業規模別にすると、従業員が1,000人以上在籍している規模の大きい企業が導入全体の9割以上を占めています。
なぜ大企業での導入が進んでいるかというと、従業員数が多いほどポイントを管理する1人当たりのコストが下がる、というメリットを活かしやすいためです。
つまり、下記のような企業がカフェテリアプラン向きと考えられます。
従業員数が多い
カフェテリアプランはポイントを管理しなくてはならないため、少人数の企業が導入するにはコストの負担が大きくなる可能性があります。
業員数が多いほど一人当たりのコストは減るため、カフェテリアプランのメリットを感じやすくなります。
従業員の多様化が進んでいる
カフェテリアプラン最大の魅力は、「多様なニーズに応えられる」ことです。
子供のいない従業員が育児関連の補助を必要としないように、従業員のニーズは年齢・性別・家族構成などさまざまな要素によって異なります。
カフェテリアプランを導入している企業例
カフェテリアプランを実際に導入しているをご紹介します。
【日立製作所】
人間ドックやレジャー施設利用補助、各種スクール費用補助、家事代行利用補助など、多様なメニューが設けられています。
【NTT】
人間ドック・オプション検査受診補助や住宅補助費、確定拠出年金奨励金など、さまざまなメニューが取り揃えられています。
【JCB】
医療費補助や、育児・介護の補助、通信教育受講補助、マッサージ利用補助などのメニューから自由に選べます。
このほかにも、下記のような企業で導入されています。
・トヨタ自動車
・三菱電機
・日本たばこ産業
・TOTO
・オリンパス
・アサヒビール
福利厚生はあくまで従業員のためにあるものです
従業員をサポートする福利厚生は企業にとって重要なアピールポイントです。
しかし、福利厚生が充実していても、それが従業員のニーズに合致していないと意味がありません。
従業員自身が好きなメニューを選べるカフェテリアプランは、そういったミスマッチを解消し、従業員満足度の向上に繋がります。
ぜひこの機会にカフェテリアプランの導入を検討してみてはいかがでしょうか。