このページでは、採用、育成、組織開発など人事領域のさまざまなテーマについて、株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健さんに解説していただいています。

 

人事領域は、会社ごとに環境や課題が異なるため、担当者自身が積極的に情報を吸収していくことが求められます。

 

ぜひ、参考にお読みいただき、普段の業務に生かしていただければ幸いです。

 

勝手に育つのと、育てるのは違う

次世代リーダー育成は毎年上位の課題として多くの企業から挙げられているようですが、昨今では、特にそのニーズが高まっているように思います。

 

この背景としては、やはり現在の流動的なビジネス環境があるのかもしれません。

 

ビジネスの勝ちパターンが決まっており、市場全体が右肩上がりであった昔であれば、新卒社員が入社後、何十年という時間的猶予がある中で、自然とリーダーとなるような人物が徐々に頭角を現すということで問題なかった。

 

ある種、勝手に育つのを待つだけの余裕があったのかもしれません。

 

しかし、現在では、昨日まで正しかったことが明日からそうでなくなるといったように、ビジネスの方向も、勝ちパターンも非常に見えにくい世の中となっています。

 

そんな中で、自社の将来を担っていくようなリーダーをできるだけすぐに見つけ、育成したい、という経営者の考えは非常に理にかなっています。

 

育てる、というのは勝手に育つ、ということよりも意図的な行動です。

今後はより明確な意思を持ってリーダーを育てる、ということの重要性が高まってくるでしょう。

 

では、このリーダーを育てるために人事としては何ができるでしょうか?

 

リーダーを形作るのは特性か、経験か

リーダー人材を育成するにあたっては、まず育成すべきポイントはどこかを知る必要があります。

 

実はこの“リーダーは何をもってリーダーとなるのか”というテーマは、非常に古くから研究の的となってきました。

 

リーダーシップ研究やリーダーシップ開発の変遷を少し紹介します。

 

最初の論点は、リーダーには共通する特性があるのではないか?という議論です。

 

これについては、実はリーダーに必要な普遍的な個人特性は存在しない、という結論に終わっています(最近になって性格特性がほんの少しだけリーダーに関係しているという研究結果もあります)。

 

次に、リーダーには共通する行動があるのではないかと考えて研究されたのがリーダーシップの「行動理論」です。

 

ここでは、「構造づくり:タスクが前に進むよう働きかける」、「配慮:集団における人間関係のメンテナンスをする」という2軸がリーダーの共通行動として挙げられました。

 

またどんな状況ではどんなリーダーシップが有効かという「コンティンジェンシー理論」などもありますが、これは何か結論が見いだされたわけではなく、様々な条件とリーダーシップの組み合わせが示されたにすぎませんでした。

 

このような中、“変化の激しい時代にリーダーの特性や行動の解明は困難である。

 

それよりも現場経験に基づく開発について深める方が重要ではないか”という新たな視点がモーガン・マッコールという研究者から提案されました。

 

そして研究の結果、リーダーになるために経験すべき以下のような16の経験が整理されたのです。

 

リーダーに共通する決定的な個人特性はなく、彼らには共通する経験があった、という結論でした。

 

※リーダーシップ研究では、その後も、「変革型リーダーシップ」や「オーセンティックリーダーシップ」といった様々なリーダーシップの形が示されていますが、今回はこの“リーダーシップは開発するもの”、という視点に着目し、ここでの説明は割愛します。

 

いつ何を経験させるかを事前に設計する

確かに、人は何から一番学ぶかというと、経験学習から最も学ぶ、と言われています。

 

企業内人材育成を担う人事としては、できるだけ効率的に、かつ確実にこちらが意図した人材になってもらうように働きかける必要があります。

 

いわば、最短でリーダーになるために、いつ、どんな仕事を、どんな順番で経験させるかを事前に設計する必要があるのです。

 

これを「育成のロードマップ」や「育成体系化」などといいます。

 

将来リーダーとなりそうな人材を現場に配置する際は、このロードマップを参考に、案件のアサインや配属部署を考えると良いかもしれません。

 

また、一点注意点として、自社のリーダー育成ロードマップを考える際は、マッコールの16の経験フレームを参考にしつつ、自社特有の経験はないか、マッコールフレームの中で自社には適さない経験がないか、というのも考える必要があるでしょう。

 

これを探すためには、自社の幹部社員など、すでにリーダーとなっている人材へのインタビューなどを通して、彼らの経験を整理・分類することで抽出することをお勧めします。

 

このように、“経験”という視点からリーダー育成を考えるのが、これからの人事、経営者の方には求められているかもしれません。

 

著者プロフィール

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

株式会社人材研究所 シニアコンサルタント 安藤健

 

児童心理治療施設(旧情緒障害児短期治療施設)での約1年半の現場経験を経て、心理学が日常生活に困難をきたす様々な障害の治療に活きる現場を体験。

その後、心理学を逆に人間の可能性を最大化する方へ活かしたいと感じ、現職である人事コンサルティングに転向。

 

現在は新卒採用・中途採用をメインとして、育成教育配置、評価報酬制度などのコンサルティングに幅広く従事。

 

そのほかに人事のための実践コミュニティ「人事心理塾」運営、人事向けセミナー、若手・新入社員向けキャリアワークショップなども多数実施。

 

■ 株式会社人材研究所
2011年設立。代表取締役社長 曽和 利光

世の中のあらゆる組織における「人と組織の可能性の最大化」を目指している人事コンサルティング会社。

 

組織人事コンサルティング、採用コンサルティング、採用業務代行(RPO)、各種トレーニング(面接官トレーニング、評価者訓練、新入社員研修等)などを提供。

HP:株式会社人材研究所

 

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