少子高齢化により、介護職の需要は年々増加しています。

 

しかし、募集を出しても応募者が集まらない状況が続いており、人手不足が深刻化している事業所も少なくありません。

 

そこでこの記事では、介護業界の現状や採用が困難な理由、採用を成功させるコツについて詳しく解説いたします。

 

介護職の採用におすすめのサービスや成功事例、助成金についてもご紹介いたしますので、ぜひご覧ください。

 

介護業界の現状

介護職の採用を行うにあたり、まずは介護業界の現状を正しく把握しておきましょう。

 

介護職の有効求人倍率

有効求人倍率とは、求職者1人に対してどれくらいの求人があるかを示す指標です。

 

有効求人倍率が1倍を超えると、求職者数よりも求人件数の方が多い状態を表し、数値が高くなるほど採用難易度が高くなります。

 

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)」によると、全職種の有効求人倍率が1.06倍だったのに対し、介護サービス職の有効求人倍率は3.38倍です。

 

求職者1人に対して3社以上の求人がある“売り手市場”であることから、介護業界の採用が厳しいことが分かります。

 

介護職の離職率

介護労働安定センター「平成29年度 「介護労働実態調査」の結果」によると、介護職の離職率は16.2%です。

 

厚生労働省の「令和2年上半期雇用動向調査結果」を確認してみると、全業種の離職率が15.6%であることから、介護職の離職率が特別高いというわけではありません。

 

しかし、採用率が17.8%と低いため、採用してもすぐに辞めてしまう状況にあります。

 

従業員の過不足状況

従業員の過不足状況

引用:介護労働安定センター「平成29年度 「介護労働実態調査」の結果

 

介護労働安定センターの調査によると、介護サービス事業所の66.6%が人手不足を感じており、特に訪問介護職員(82.4%)の不足感が高いです。

 

また、人手不足の理由として88.5%が「採用が困難である」と回答していることから、採用難易度の高さが伺えます。

 

介護業界で採用が困難な理由

介護業界は人材確保が難しいことが分かりました。

 

では、なぜ介護業界は採用が困難なのか、主な理由を見ていきましょう。

 

給与が低い

国税庁調査によると、平成30年の給与所得者の平均年収は441万円です。

 

一方、NCCU(日本介護クラフトユニオン)の調査では、同年の介護職員の平均年収は約360万円と、平均より約80万円も下回っています。

 

介護職員の賃金改善を目的とした「特定処遇改善加算」などの制度により、徐々に給与は改善していますが、未だ十分とは言えないでしょう。

 

介護職員の賃金が低い理由

なぜ介護職員の賃金が低いかというと、事業所の売り上げである「介護報酬」を自由に設定できないことが挙げられます。

 

「介護報酬(介護サービスを提供した事業所に支払われる報酬)」は国が決めているため、事業者が勝手に値段を変えることはできません。

 

支払われた報酬の中でやりくりしている以上、職員に支払える賃金が限られ、給与が低くなってしまうのです。

 

人間関係

介護職では、人間関係が理由で離職する割合が最も多いです。

 

人間関係は、どの業界でもポピュラーな離職理由ですが、介護職は同僚や医療スタッフといった仕事仲間だけでなく、利用者や利用者の家族とも接します。

 

介護の方針を巡って意見の対立が起こったり、利用者や利用者家族とのコミュニケーションに悩んだりすることも少なくありません。

 

このように、介護職は人間関係にストレスを感じやすい環境に身を置くことになるため、避けられがちです。

 

ネガティブなイメージ

長崎県が提供する「介護の仕事のイメージについてのアンケート結果」によると、

  1. 体力的、精神的にきつい(4%)
  2. 給与など雇用面での待遇が悪い(2%)
  3. 仕事内容に不潔なところがある(2%)

と、8割以上が介護職にネガティブイメージを持っていることがわかります。

 

介護職は、高齢者や障がい者の食事・入浴・排泄(はいせつ)介助といった、身の周りのお世話をするため、こういったイメージを持たれるのも当然でしょう。

 

また、介護記録などの事務作業も行う必要があるため、長時間労働の常態化や休暇を取りづらい事業所もあります。

 

介護職の採用を成功させるコツとは?

ここでは、介護職の採用を成功させるコツについてご紹介いたします。

 

離職率から採用計画の立案する

採用計画は、事業目標を達成するために

  1. どこに
  2. どういう人材を
  3. いつまでに
  4. 何人
  5. どのような方法で

採用するか、具体的な計画を立てることです。

 

介護施設を運営し続けるには、運営に必要な人員数を確保しなくてはなりません。

 

1年間にどれくらい離職していて、何人採用する必要があるのかを把握し、具体的な採用計画を立てましょう。

 

また、どういった人材を求めているのかが明確になれば、募集要項や採用基準にも落とし込めるため、ミスマッチ採用の防止につながります。

 

 

 

採用の対象者を広げる

即戦力となる経験者を希望する事業所は多いですが、介護業界は需要過多の超売り手市場です。

 

もちろん、経験者でなくてはならない場合もあるでしょうが、経験や高いスキルに固執していては人が集まりません。

 

採用活動が長期化して採用コストの増大につながるため、

  1. 未経験者
  2. 無資格者
  3. ブランクあり

など、採用対象者を広げましょう。

 

近年は、資格取得支援制度や教育研修制度を導入し、積極的に未経験者を受け入れる企業が増えています。

 

時短勤務や事業所独自の休暇制度など、様々な家庭環境の人が働きやすい環境を整えると、他社との差別化を図れますし、結果的に離職率の低下につながります。

 

求人原稿を工夫する

求人サイトには、多様な業種・職種の求人広告が数多く掲載されているため「ただ求人原稿を作成した」だけでは他社に埋もれてしまいます。

 

求職者の興味を引くためには、タイトルや原稿内容を工夫しましょう。

 

ただし、過度な表現は誤解を招くため、ありのままの情報を正確に記載することが重要です。

 

職種名(タイトル)

職種名は求職者が初めて目にする場所であり、ここで興味を持たれないと求人原稿を読んでもらえません。

 

逆に言えばタイトルで大まかな仕事内容やメリットを伝えられれば、その先を読んでもらえる可能性が高まるということでもあります。

 

例えば、

  1. 特別養護老人ホームの介護福祉士 月の残業時間〇h以下、有給取得率100%!
  2. デイサービスの介護スタッフ 食事・入浴介助なし!未経験者歓迎

のように、書くと求職者の興味を引きやすいです。

 

原稿内容

どんなに魅力的な仕事でも、求人広告に書かれる仕事内容が不明瞭では、応募する人も減ってしまいます。

 

仕事内容は、求職者がイメージしやすいよう「利用者様の送迎」「レクリエーションの企画」など、具体的に書くのがポイントです。

 

応募資格は、必須の条件とそうでない条件を分けて考えましょう。

 

というのも、「未経験者歓迎、経験者優遇」など必須とそうでない条件を混ぜてしまうと、未経験者が尻込みして機会損失につながる可能性があるからです。

 

この場合、経験を問わない旨を記載するだけで十分です。

 

一定の経験を要する場合は「食事・入浴・排泄(はいせつ)介助ができる方」「介護事業所でマネジメント経験をお持ちの方」のように、具体的にどんな経験が必要なのかを明確に書きましょう。

 

介護職の採用におすすめのサービス

つづいて、介護職の採用におすすめのサービスを採用手法ごとにご紹介いたします。

 

求人サイト

より多くの人に自社求人情報を閲覧してもらえますが、掲載社数が多いため他社求人に埋もれないよう工夫する必要があります。

【料金相場】

掲載課金型:10万円~100万円

成果報酬型:5千円~5万円(応募課金)/数万円~10万円(採用課金)

 

介護求人パーク

介護求人パーク

介護求人パークは、介護業界特化型の求人サイトです。

 

SEOに強く、Indeedやキャリアインデックスといった他サイトとも連携しているため、自社求人を広く告知できます。

 

掲載プランは「月額固定型」「成果報酬型」の2種類があります。

 

Indeed

indeed

Indeedは、世界最大級の求人検索エンジンです。

 

勤務地や職種などのキーワードを入力・検索すると、ネット上で公開されている求人情報の中から条件に合致するものをまとめて閲覧できます。

 

Indeedは基本無料で掲載できますが、有料掲載にすれば自社求人の露出度を高めることができます。

 

自社求人がクリックされたときのみ料金が発生する「クリック課金型」を採用しているため、無駄な費用が掛かりません。

 

人材紹介

人材紹介会社に登録している求職者の中から、採用ニーズにマッチした人材を紹介してもらえるため、採用工数を大幅に削減できます。

 

ただし、採用者1人につき紹介報酬を支払う必要があるため、採用単価は高くなります。

【料金相場】

成功報酬型(入社決定時に費用が発生):採用者の年収の30%~35%

 

マイナビ介護職

マイナビ介護職

マイナビ介護職は、マイナビグループが運営する介護職に特化した人材紹介サービスで、年間利用者は200万人以上です。

 

費用は完全成功報酬型となっており、早期退職時の返金制度もあります。

 

人材派遣

必要な時期に、必要な人材を必要な数だけ派遣してもらうことができるため、期間限定で人員を確保したいときに適したサービスです。

【料金相場】

スキルや経験、就業地域、時間帯、業務内容などによって異なります。

一般的には、派遣料金の20%~30%を差し引いた金額が派遣スタッフの報酬として支払われます。

 

株式会社ニッソーネット

株式会社ニッソーネット

求人サイト「かいご畑」を運営する株式会社ニッソーネットは、福祉に特化した人材サービスを20年に渡って展開しています。

 

2,000以上の施設と取引してきた豊富なノウハウにもとづき、ニーズにマッチした人材の派遣を行っています。

 

介護職採用の成功事例を紹介!

ここでは、介護職採用の成功事例をご紹介いたします。

 

介護老人福祉施設A

兵庫県にある介護老人福祉施設Aでは、

  1. ハローワークや有料求人を利用しても応募が集まらない
  2. ようやく応募者が来てもターゲットの年齢層と離れている

といった、状態が長く続いていました。

 

【施策】

採用活動に行き詰まりを感じていたため、求人広告代理店に相談したところ「求人サイト掲載+スカウトメール・コンタクトメール」を提案されました。

 

介護士の地方採用はターゲットの絶対数が少ないため、上位企画よりも居住エリアや給与などにマッチする求職者に直接アプローチするオプションを付加すべき、とのアドバイスを受けて運用を開始しました。

 

【結果】

スカウト経由の応募から面接に進んだ4名のうち、2名の介護士採用に成功しています。

 

また、スカウトメールの配信によってマッチ度の高い人材からの応募も増えたそうです。

 

介護老人保健施設B

介護老人保健施設Bでは、人手不足による退職が相次ぎ、利用者10人を1人で対応しなくてはならない程の介護職員不足に直面していました。

 

【施策】

求人サイトへの掲載もしていましたが、応募も来ない上に早急な人員確保が必要だったため、人材派遣の利用を決定、介護業界に精通した派遣会社へ相談しました。

 

【結果】

フルタイム勤務可能な介護士の派遣を依頼したところ、相談した翌週には介護士2名が派遣されてきました。

 

人手が増え、既存スタッフとも良好な関係を築いてくれているため、職場の雰囲気が明るくなりました。

 

介護人材の採用に活用できる助成金

助成金は、国や地方自治体から支給される返済義務のない資金です。

 

要件を満たしていれば受給されるため、該当するものがある場合は、積極的に申請しましょう。

 

特定求職者雇用開発助成金

高年齢者や障害者といった、特定の就職困難者をハローワークなどの紹介によって継続雇用する場合、支給される助成金です。

 

特定就職困難者コース

高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れた際に支給されます。

 

【主な支給要件】
  1. ハローワークまたは、民間の職業紹介事業者等の紹介による雇い入れ
  2. 雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続雇用が確実であること

 

【支給額】

40万円~240万円(中小企業事業主以外の支給額:30万円~100万円)

※対象労働者や勤務時間によって異なります。

厚生労働省:特定就職困難者コース

 

生涯現役コース

65歳以上の高年齢者を雇い入れた際に支給されます。

 

【主な支給要件】
  1. ハローワークまたは、民間の職業紹介事業者等の紹介による雇い入れ
  2. 雇用保険高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上の雇用が確実であること
【支給額】

短時間労働者:50万円(中小企業事業主以外の支給額:40万円)

短時間労働者以外:70万円(中小企業事業主以外の支給額:60万円)

厚生労働省:生涯現役コース

 

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験や技能、知識といった理由により、安定的な就職が困難な求職者に対して、ハローワークや職業紹介事業者などからの紹介で、一定期間試行雇用した場合に支給される助成金です。

 

【主な支給要件】
  1. 職業紹介を受けた時点において、安定した職業に就いていないまたは、学生でないこと
  2. ハローワーク・紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  3. 原則3ヶ月のトライアル雇用をすること
  4. 1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度(30時間を下回らない)であること

 

【対象労働者】
  1. 過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返している
  2. 離職していた期間が1年を超えている
  3. ニートやフリーター等で55歳未満である
  4. 生活保護受給者や母子家庭の母など、特別の配慮を有する者

 

【支給額】

支給対象者1人につき月額4万円が最長3ヶ月間支給されます。

(母子家庭の母・父子家庭の父:1人につき月額5万円)

厚生労働省:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

 

65歳超雇用推進助成金

65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換を行った場合に支給される助成金です。

 

65歳超継続雇用推進コース

65歳超継続雇用推進コースは、

  1. 65歳以上への定年引上げ
  2. 定年制度の廃止
  3. 希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する「継続雇用制度」の導入

のいずれかに該当する制度を実施した場合、助成金が支給されます。

 

【主な支給要件】
  1. 制度を規定した際に経費を要したこと
  2. 制度を規定した労働協約または、就業規則を整備していること
  3. 支給申請日前に、高年齢者雇用推進員の選任および、高年齢者雇用管理に関する措置を実施していること
  4. 制度実施日の1年前から申請日前日までの期間中、高年齢者雇用安定法に違反していないこと
  5. 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること(無期限雇用労働者または、定年後、継続雇用制度により引き続き雇用されている者に限る)

 

【支給額】

5万円~160万円

※措置の内容や年齢の上げ幅、60歳以上の被保険者数によって異なります。

厚生労働省:65歳超雇用推進助成金

 

採用の枠を広げつつ、離職率を低下させることが重要

どの業界でも年々人手不足感は高まってきていますが、更なる少子高齢化が進行する今後、介護職の需要はますます増えるでしょう。

 

しかし、介護業界は3Kのネガティブイメージが付いて回ることから、求職者から敬遠されがちで、なかなか応募者が集まりません。

 

そのため「採用計画を立てる」「採用の対象者を広げる」といった施策を講じることが重要です。

 

また、「職員が働きやすいよう労働環境をする」など、離職率を低下させる取り組みも忘れてはいけません。

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