雇用のミスマッチを防止するRJP理論とは?メリット・デメリットや導入のポイント、事例をご紹介!

人材採用を行う際に自社のネガティブな情報も開示することで、ミスマッチ防止に効果があるとして、RJP理論にもとづいた採用活動を行う企業が増えています。

 

この記事では、RJP理論の概要やメリット・デメリット、導入のポイントについて解説いたします。

 

RJP導入のヒントとなるよう、RJPの企業事例についてもまとめていますので、ぜひご覧ください。

 

RJP理論とは

そもそもRJPとは「Realistic Job Preview」の略で、「現実的な仕事情報の事前開示」という意味です。

 

採用活動で発信する情報を、ポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も含めて、正確に提供する重要さを説いたのが「RJP理論」です。

 

1975年アメリカの産業心理学者ジョン・ワナウス氏によって提唱されました。

 

必要以上に良く見せようとせず、ありのままの情報を提供することから「本音採用」「ありのまま採用」と呼ばれることもあります。

 

近年では、ミスマッチを防いで早期離職リスクを低減させる効果があるため、RJP理論を導入する企業が増えています。

 

RJP理論が注目されている理由

RJP理論が注目されている理由は、早期離職の防止です。

 

苦労して採用してもすぐに離職されてしまっては意味がありません。

 

これまで採用や教育にかけてきた時間とお金がすべて無駄になるため、早期離職の防止は企業にとって重要な課題です。

 

厚生労働省「新規学卒者の離職状況」

引用:厚生労働省「新規学卒者の離職状況

 

厚生労働省の調査によると、新規学卒者における3年以内の離職率は、大卒者が約3割、高卒者では約4割で推移し続けています。

 

また、「就労等に関する若者の意識調査」で初職の離職理由として上位を占めたのは、

  • 仕事内容が自分に合わなかったため…4%
  • 人間関係がよくなかったため…7%
  • 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかったため…4%

です。

 

仕事内容や人間関係、労働条件のミスマッチが原因で、離職に至っていることが分かります。

 

ネガティブな面を伏せて採用活動を行う企業も多いですが、入社後ギャップを感じれば離職につながります。

 

採用の初期段階でネガティブな面も含めたありのままの情報を提供すれば、内情を理解した上で応募してくるため、ミスマッチによる早期離職のリスクを低減できます。

 

RJP理論で得られる心理的効果

RJPを導入することで得られる心理的効果をご紹介いたします。

 

ワクチン効果

入社前にネガティブな情報も含めて伝えることで、求職者が企業に寄せる過度な期待を抑えられます。

 

理想と現実とのギャップを軽減させる効果があります。

 

セルフスクリーニング効果

事前に十分な情報を与えることで、求職者は職場や仕事との相性・適性を判断しやすくなります。

 

マッチ度の高い人材が応募してくるため、採用の精度が高まります。

 

また、求職者は納得感の高い就職・転職活動ができるため、採用辞退も起こりづらくなるでしょう。

 

コミットメント効果

ネガティブな面も含めたありのままの情報を提供すると、求職者に誠実さが伝わります。

 

誠実に向き合ってくれる企業に愛着心や共感を抱く求職者は多く、帰属意識の向上にも役立ちます。

 

役割明確化効果

「どういった仕事を任せたいのか」「何を期待しているのか」を明確に伝えると、求職者は働く姿をイメージしやすくなります。

 

結果的に、就業意欲を向上させる効果があります。

 

RJP理論のメリット・デメリット

では、RJPにもとづいた採用活動を行うと、具体的にどういうメリット・デメリットがあるのかを見ていきましょう。

 

メリット1.ミスマッチ防止

RJP最大のメリットは、ミスマッチの防止です。

 

情報提供が不十分な状態で採用活動を行うと、求職者は表面的な情報だけで応募や入社を決めることになります。

 

企業理解が浅い状態で入社した場合、「思っていたのと違った」と入社後にギャップを感じやすくなるでしょう。

 

RJPは、ネガティブな情報も含めたありのままの情報を開示して採用活動を行います。

 

求職者はデメリットも理解した上で入社してくるため、ミスマッチのリスクが低減します。

 

メリット2.コスト削減

十分な情報を提供せずに採用活動を行った場合、求職者は企業や仕事との適性・相性を判断しづらいため、マッチ度の低い人材からも応募が来るでしょう。

 

たとえ応募者の量を確保できたとしても、そこにターゲットとなる人材がいなければ意味がありませんし、かえって採用担当者の業務負担を増やすことになります。

 

セルフスクリーニング効果のあるRJPであれば、応募者の質が高まって効率よく採用活動を進められるため、コスト削減につながります。

 

メリット3.定着率の向上

あらかじめ組織の課題や仕事の厳しさ・大変さを伝えておくと、「思っていたのと違った」「こんなはずではなかった」という入社後のギャップを軽減できます。

 

企業に寄せる過剰な期待を緩和させることで、ミスマッチによる早期離職を防止できるため、従業員の定着率向上につながります。

 

メリット4.企業の信頼性向上

ポジティブな情報のみを開示して採用活動を行う企業も多いですが、どの企業にも必ずネガティブな面は存在するものです。

 

ネガティブな情報を伏せても働けば実情は見えてくるので、あらかじめ求職者に伝えておくことで「他と違う誠実で信頼できる会社」という印象を与えられます。

 

誠実に対応してくれる企業に愛着を持つ求職者は多いですし、入社前に覚悟もできるため、就労意欲を高めることも可能です。

 

デメリット1.応募者が減る可能性がある

ネガティブな情報を開示すれば「向いていない」「ここでは働きたくない」と思い、応募を控える求職者も出てくるため、応募者数の減少が予想されます。

 

人手不足が深刻な企業では、応募者が減ることに危機感を感じることもあるでしょう。

 

しかし、ネガティブな情報を伏せて採用した場合、ミスマッチが発生する可能性が高いです。

 

ネガティブな側面を知った上で応募してくる人材はマッチ度が高く、長期間の就労を期待できることも忘れてはいけません。

 

「大変だけどその分スキルが身につく、教育体制も整っている」など、ポジティブな情報とのバランスを考えて、ネガティブな情報を伝えるのがポイントです。

 

RJP理論導入のポイント

RJP理論にもとづいた採用活動を成功させるためのポイントをご紹介いたします。

 

ガイドラインに沿って導入する

RJPで心理的効果を引き出すには、

  1. RJPの目的を求職者に説明した上で誠実に情報提供し、十分な検討と自己判断による決定を促すこと
  2. 提供する情報に適したメディアを用いて、信用できる正確な情報を提供すること
  3. 現役社員の意見など、感情的側面も含めた情報を提供すること
  4. 組織の実態に合わせて、良い情報と悪い情報のバランスを考えて提供すること
  5. 採用活動の早期段階で行うこと

の5つのガイドラインに沿って導入することが重要です。

 

応募者数にこだわりすぎない

「応募者数が多いほど、優秀な人材も多く含まれる」と考える企業は多いですが、量を集めても質が高まるとは限りません。

 

応募者の数を優先する場合、必然的に求職者へ提供する情報はポジティブな情報のみに偏ります。

 

応募者数は増えるでしょうが、その分ターゲットとは異なる人材も増えてしまいます。

 

転職が一般化した現代においては、マッチングの精度を高めることが重要なので、求職者が自分で適性や相性を判断できるよう、十分な情報を提供する必要があります。

 

よって、採用活動を成功させるには「応募者数の確保」にこだわりすぎないことがポイントです。

 

体験的就業と組み合わせる

メディアでの情報提供も重要ですが、求職者の理解を促すには実際に体験してもらうのも有効です。

 

体験入社やインターンシップといった体験的就業を、採用プロセスに組み込んでみましょう。

 

体験入社やインターンは、希望者に一定期間働いてもらう取り組みです。

 

新卒・中途の両方で行われており、内容によっては参加者に報酬を支払うこともあります。

 

期間は1日~3ヶ月程度が一般的ですが、インターンは数年と長期に及ぶものもあります。

 

体験入社やインターンを行う際は、悪い面を隠さないよう注意が必要です。

 

仕事の厳しい部分や不満に感じているところなどもあるがままに見せましょう。

 

 

 

提供する情報の質やタイミングを考慮する

RJPを導入する際は、求職者に提供する情報の質やタイミングも十分に考慮する必要があります。

 

提供する情報は実態に即したものでないと意味がありません。

 

経営者や人事が把握している情報だけでは不十分と考えられるため、現場の社員からヒアリングした情報や退職者の離職理由をもとに、客観的な情報を提供しましょう。

 

また、採用活動の早期段階で伝えるのが望ましいですが、最初からネガティブな情報をすべて伝えてしまっては応募自体来なくなります。

 

面接で伝えるにしても時間が限られているため、「どのタイミングで、何を、どこまで伝えるか」についても十分考慮する必要があります。

 

情報開示の段階や内容は企業によって異なりますが、ポジティブな情報とネガティブな情報をバランスよく伝えることが重要です。

 

RJP理論の導入事例

他の企業ではどのようにRJP理論を導入しているのでしょうか。

 

ここでは、RJP理論の導入事例についてご紹介いたします。

 

株式会社ヴィレッジバンガードコーポレーション

遊べる本屋をキーワードに様々な商品を販売しているヴィレッジヴァンガードでは、本気度の高い人材を見極めるために、正社員採用でRJPを実施しています。

 

入社希望者は全員アルバイト(平均4年間)からスタートです。給与は地域の最低水準賃金となり、期間中の交通費支給はありません。

 

4年間のアルバイト経験を通して会社や個人のリアリティがすべて伝わるため、正社員登用前に長い選考プロセスをしているようなイメージです。

 

株式会社アプレッソ

パッケージソフトウェアの開発・販売事業を行うアプレッソは、ネット上のやり取りで自社のリアリティを発信し、選考段階でお互いの技術レベルを開示しています。

 

採用対象者は、ブログなどネット上のやり取りで既に自社のことを知っている人のみです。

 

普段からTwitterやブログで等身大の企業実態を開示して、ユーザーとやり取りすることで信頼関係を構築し、面接で本人の得意分野に応じたプログラムを一緒に作ります。

 

このように、プログラマーに必要なコーディングを面接で実施することで、お互いにスキルやレベル感を把握できるため、求職者も相性や適性を見極められる仕組みになっています。

 

株式会社ノバレーゼ

婚礼施設を中心にドレスショップやレストランを運営しているノバレーゼの採用活動は、現場の社員やマネージャークラスを活用したRJPです。

 

候補者に自己決定を促すことを重視しているため、学生は採用担当者だけでなく、現場の社員やマネージャークラスとも面談を繰り返します。

 

面談回数は最大で10回です。

 

質問にはすべて回答すると事前に宣言した上で、実際の現場を見せて就労意欲を高め、学生自身の入社意志決定を促しています。

 

RJP理論にもとづいた採用活動の実施で高い定着率を実現

これまでは、自社や仕事の魅力・メリットを全面に打ち出して、求職者を惹きつける採用活動が一般的に行われてきました。

 

採用活動において、魅力やメリットを伝えることはもちろん重要ですが、ネガティブな情報を意図的に伏せてしまうと、ミスマッチによる早期離職リスクが高まります。

 

RJPは、あらかじめネガティブな要素を含めた等身大の情報を開示することで、求職者の企業に寄せる過度な期待を防げます。

 

ミスマッチによる早期離職を防止し、定着率を高めるためにもRJP理論にもとづいた採用活動を実施してみてはいかがでしょうか。

 

 

ノウハウ記事は毎週【火・木】更新!

無料会員登録をすると、新着記事をまとめたメルマガを受け取ることが可能。
その他、さまざまな会員限定コンテンツをご利用いただけます。

無料会員登録する

最新記事

ログインまたは新規会員登録してからご利用ください。

新規会員登録

無料会員登録をすると、さまざまな会員限定コンテンツをご利用いただけます。

無料会員登録する

人事バンクについて

この企業をフォローしました。
フォローした企業の一覧はマイページからご確認いただけます。

この企業のフォローを解除しました。

このメールアドレスは、現在仮登録状態です。
本会員登録のご案内メールをご確認いただき、本会員登録を行ってください。

本会員登録のご案内は、下記メールをお送りしております。

▼メール件名
【人事バンク】本会員登録のご案内

送信が完了しました。
コメントをお寄せいただき、誠にありがとうございました。
サイト上に反映されるまで少しお時間をいただいております。
今しばらくお待ちいただけますと幸いです。