リモートワークや在宅勤務が普及する中、コミュニケーション不足の解消になるとしてサンクスカードが注目を集めています。
サンクスカードの導入を検討する企業も増えているため、この記事では感謝や賞賛を伝え合うと企業にどういう変化をもたらすのか、メリット・デメリットについて解説します。
導入時のポイントや運用のコツ、企業事例もご紹介しますので、あわせてご覧ください。
サンクスカードとは
サンクスカードとは、日頃の業務で感じた感謝を互いに伝え合うメッセージカードのことです。
例えば、
「会議の議事録取ってくれてありがとうございました。」
「お客様への対応が丁寧で、すてきです!」
のように、業務を通じて感じたポジティブな内容を伝え合います。
また、サンクスカードは感謝や賞賛を伝えることから、「ありがとうカード」「グッジョブカード」とも呼ばれています。
日頃の感謝を気軽に伝えられるため、社内コミュニケーション活性化の一環として取り入れる企業が多いです。
近年では、紙だけでなくアプリやチャットツールなどを使用する企業も増えています。
サンクスカードを導入する目的
では、何のためにサンクスカードを導入するのか、目的について見ていきましょう。
社内コミュニケーションの活性化
サンクスカードは部署や役職に関係なく、日頃の感謝や賞賛を気軽に伝えられます。
組織内におけるタテ・ヨコのつながりが強化されるため、社内コミュニケーションの活性化に役立ちます。
特に、テレワークや在宅勤務が増えた現代では、コミュニケーション不足を課題としている企業も多いため、サンクスカードは良いきっかけとなるでしょう。
賞賛文化の醸成
サンクスカードを導入すると「あの対応すごく良かったよ」「いつも分かりやすい資料をありがとう」など、褒めることが当たり前になるため、自然と賞賛文化が根づきます。
賞賛文化の醸成は、心理的安全性の向上にもつながるため、従業員の自主性を育む効果も期待できるでしょう。
また、企業理念や行動指針に沿った行動をした従業員にサンクスカードを送れば、企業理念や行動指針の理解を深められます。
サンクスカードを導入するメリット
ここでは、サンクスカードを導入することで得られるメリットについてご紹介します。
コミュニケーションが活性化する
サンクスカードを導入する最大のメリットは、コミュニケーションの活性化です。
部署や役職に関係なく、互いに感謝を伝え合うことで、接点の少ないメンバーともコミュニケーションを取れるため、相互理解が深まります。
また、サンクスカードの内容を共有すれば、求められている行動が分かり、企業理解や行動指針の理解促進にも役立ちます。
従業員のモチベーション向上
ポジティブな内容のメッセージを受け取れば嬉しいですし「もっと頑張ろう」という意欲もわくものです。
また、他のメンバーから感謝・賞賛されると、自分の存在意義や貢献度合いを実感できるため、モチベーションや自己肯定感の向上にも効果を発揮します。
定着率アップ
サンクスカードは、従業員定着率の向上にも有効です。
というのも、サンクスカードは社内コミュニケーションの活性化やモチベーションを向上させる効果があるため、組織全体の雰囲気が良くなります。
組織全体の雰囲気が良くなれば、従業員にとって働きやすい環境になるため、定着率の向上につながります。
企業価値の向上
サンクスカードは、企業理念や行動指針の理解を促進させる効果があります。
従業員一人ひとりが企業理念や行動指針を意識した行動を取るようになれば、企業の理想とする姿に近づきます。
また、従業員全体の質も高まるため、取引先や消費者からの信頼も得やすくなるでしょう。
サンクスカードを導入するデメリット
様々なメリットがあるサンクスカードですが、デメリットも存在します。
導入を検討するためにも、デメリットは把握しておきましょう。
運用コストがかかる
サンクスカードを紙で送り合う場合、従業員に書いてもらった後に、手作業で集計を行います。
そのため、人員数によっては運用者の工数が大幅に増えてしまい、日常業務を圧迫する可能性があります。
また、アプリなどのツールを用いる場合、ツールの導入・運用費用が発生するため慎重に検討する必要があるでしょう。
形骸化する可能性がある
サンクスカードは自発的に送るものです。
日常業務に追われる従業員にとっては優先順位が低いので、後回しになってしまい、なかなかサンクスカードを書けない人も出てくるでしょう。
とはいえサンクスカードを強要しても本来の効果は発揮されませんし、従業員から反発を招く可能性もあります。
形骸化を防ぐためにも、イベントを企画するなど何らかの工夫が必要でしょう。
苦手に感じる人もいる
感謝や賞賛を送り合うことに対して、抵抗感を持つ人も一定数います。
特に、「仕事だから当たり前だ」と考える人やコミュニケーションが苦手なタイプはこうした傾向にあるため、事前にしっかりと説明しましょう。
また、紙よりもアプリなどを利用した方が抵抗感は薄まります。
サンクスカードを導入する際のポイント
ここでは、サンクスカード導入時のポイントについてご紹介します。
目的の明確化と共有
サンクスカードの継続には、従業員一人ひとりの協力が欠かせないため、導入目的を共有することが重要です。
「サンクスカードの導入によって何を得ようとしているのか」「どういう効果が期待できるのか」を理解してもらい、協力を呼びかけましょう。
運用ルール
サンクスカードを導入する際は、「集計日」や「目標枚数」といった運用ルールも事前に決めておきましょう。
自動集計機能のついたツールを利用する場合、集計日を決める必要はありませんが、紙を用いる場合は自分たちで集計しなくてはなりません。
月末にその月のサンクスカードを集計するケースが多いです。
また、サンクスカードの目標枚数も設定しておきましょう。
ただし、ノルマになると従業員からの反発を招く可能性があるため、無理のない範囲内で目標を設定してください。
経営層の積極的な参加
サンクスカードの文化がない中、従業員同士で送り合うのは心理的なハードルが高いため、自発性に任せていてもなかなか定着しません。
そのため、経営層自らが積極的に参加することが重要です。
経営層や上司からのサンクスカードは嬉しいものですし、経営層が積極的な姿勢を見せることで従業員の参加率も高まります。
サンクスカードを継続して運用するコツ
では、サンクスカードを継続して運用するにはどうしたら良いのでしょうか。
運用時のコツを見てみましょう。
感謝を可視化する
サンクスカードを掲示板に貼りだしたり、イントラネットなどのWeb上で確認できるようにしたりして感謝を可視化しましょう。
どの従業員が誰にどんなメッセージ送っているか分かりますし、社内におけるコミュニケーションの偏りも把握できます。
また、企業理念や行動指針に沿った感謝を掲載すれば、従業員の企業理解も促進され、組織力向上にもつながるでしょう。
従業員の負担を軽減させる
サンクスカードを紙で運用する場合、手書きで記入しなければなりませんし、カードを収集・集計する手間がかかります。
従業員の負担が大きくなると形骸化しやすくなるため、できる限り工数のかからない方法で運用するのがコツです。
そのため、記載項目は最低限必要な「所属(差出人・相手)」「氏名(差出人・相手)」「内容」に留めましょう。
また、従業員数の多い企業やリモートワークを取り入れている企業は、紙よりもアプリなどのツールを用いる方が適しています。
ピアボーナス制度の併用
アボーナス制度は、従業員同士が互いの行動に対して報酬を送り合う仕組みです
ピ。
少額の報酬と一緒に感謝や賞賛を伝え合えるため、ピアボーナス制度と併用するとサンクスカードの形骸化を防ぐことができます。
また、最も多くサンクスカードを獲得したメンバーを表彰するなど、イベントとの組み合わせもおすすめです。
内容にこだわりすぎない
サンクスカードの継続運用には、内容のハードルを上げないことが重要です。
人事評価への活用も考えている場合、簡易的な内容ばかりでは物足りないと感じるでしょうが、記載内容を指定されるほどハードルが高まります。
導入しても肝心の従業員が参加しなければ意味がないので、
「いつもありがとう!」
「頑張ったね!」
「応援しているよ!」
のように、一言メッセージや応援メッセージも認めましょう。
メッセージの基準を緩く設定すれば、気軽に送り合えるようになるため、サンクスカードの流通量が増えます。
定期的な運用方法の見直し
サンクスカード導入後は、定期的に運用方法を見直しましょう。
導入直後はスムーズにいかないことも多いです。
定期的な振り返りで「従業員の負担が大きくなっていないか」「期待する効果は出ているか」を確認し、繰り返し改善することで自社に適した運用ができるようになります。
サンクスカードの企業事例
最後に、サンクスカードの企業事例をご紹介します。
サンクスカード導入のヒントを得るためにも、確認してみましょう。
オリエンタルランド
東京ディズニーリゾートの運営で有名なオリエンタルランドでは、年に1度パーク閉演後に「サンクスデー」を開催しています。
サンクスデーとは、東京ディズニーリゾートで働くキャスト(準社員)をゲストとしてパークに迎え、日頃の感謝を伝えるプログラムです。
このほか、上司がその場でメッセージを手渡したり、仲間同士でメッセージを送り合ったりするプログラムも行っており、賞賛文化が根づいています。
また、表彰イベントの開催も、サンクスカード定着に役立っています。
JALグループ
JALグループでは、賞賛し合う風土づくりを目的としてサンクスカードを導入しています。
自然とやり取りされる雰囲気をつくるために、名刺サイズのカードを常に携行させた上で「褒めたいことがあったら渡すように」とだけ伝えたそうです。
導入からわずか1年半で3.5万枚以上のサンクスカードが使われ、社内コミュニケーションの活性化に効果を発揮しています。
ザ・リッツ・カールトン
ザ・リッツ・カールトンでは、担当業務を超えて手助けした従業員に対して、感謝の気持ちを伝える「ファーストクラス・カード」を導入しています。
手伝ってくれた従業員に送られるファーストクラス・カードには「あなたは最高だ」という意味が込められており、人事評価の査定資料としても使われます。
手伝ったことと感謝したことが加点評価されるため、賞賛文化が醸成されやすい仕組みです。
サンクスカードで社内コミュニケーションが活性化
サンクスカードは、日常業務での行動に対して賞賛や感謝の気持ちを伝えるカードです。
賞賛文化の醸成や社内コミュニケーションの活性化につながるため、組織全体の雰囲気が良くなり、働きやすい環境を提供できるでしょう。
ご紹介したポイントやコツを参考に、サンクスカードの導入を検討してみてはいかがでしょうか。