「送られてくる履歴書が多すぎて、すべて目を通すのに1週間かかる」「一次面接の対象者が多すぎて工数を多くとられる」
そういった悩みは「セルフスクリーニング」が解決してくれるかもしれません。
セルフスクリーニングとは、企業が詳細な情報を開示して、応募を抑制することです。
採用活動にうまく取り入れることで、ミスマッチ防止や志望度の低い求職者のスクリーニングにつながります。
そこで本記事では、セルフスクリーニングとは何か、また成功させるコツや事例を紹介します。
セルフスクリーニングとは
「セルフスクリーニング」とは、求人募集をする際に詳細な情報を開示して、求職者自身に適性があるかどうか判断させることです。
業務内容だけでなく、会社の風土や、部署の雰囲気まで開示するのが特徴です。
そのため、セルフスクリーニングは要件に合わない応募を抑制し、採用活動を効率化させる効果があります。
セルフスクリーニングは「RJP理論」にもとづいています。
RJP理論とは、採用活動においてポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も含めて、求職者に正確に情報提供する重要性を説いた理論です。
RJP理論の詳細は下記URLからご覧ください。
では、どんな目的でセルフスクリーニングを行うのでしょうか。
セルフスクリーニングの目的はミスマッチ防止
早期離職は、
- 自身の能力と仕事の難易度とのギャップ
- 仕事の進め方、仕事量が想像と違う
- 社風が合わない
といったミスマッチが原因になることが多いです。
セルフスクリーニングは、企業が詳細な情報を開示するため、マッチ度の低い求職者からの応募を抑制する効果があります。
また、企業にとってネガティブな情報も事前に開示することで、入社後のギャップを減らすワクチン効果も期待できます。
一般的にネガティブな情報の公開は、「求職者にマイナスなイメージを与えてしまうのでは」と懸念しがちです。
しかし、ネガティブな情報を公開する企業に誠実さを感じる求職者も多いので、組織へのコミットメントも高まるでしょう。
セルフスクリーニングのメリット・デメリット
次にセルフスクリーニングのメリット・デメリットを紹介します。
メリット1.早期離職の抑止
セルフスクリーニングは早期離職を防止する効果があります。
早期離職の主な原因は、入社前の想像と入社後に感じる現実とのギャップです。
求人内容がポジティブな情報ばかりだと、期待が大きくなりすぎて、現実との間にギャップが生じやすくなります。
セルフスクリーニングは、ネガティブな情報も掲載することで等身大の姿を伝えられるため、入社後のギャップが発生しづらく、早期離職の防止につながります。
メリット2.効率よく採用活動を行える
セルフスクリーニングは採用活動の効率化にもつながります。
セルフスクリーニングでは、仕事内容だけでなく、社風や残業時間などの詳細な情報も明記します。
そのため、志望度の低い求職者は応募しません。
入社志望度の高い応募者が増えれば、スクリーニングする手間を省けるので、効率よく採用活動を行えます。
メリット3.コスト削減
セルフスクリーニングはコスト削減にも寄与します。
ネガティブな情報を求人に掲載していない場合、多くの求職者から応募が集まるため、一見すると母集団形成に成功しているように見えるでしょう。
しかし、志望度の低い求職者ばかりでは、書類選考や面接会場にかかる費用がかさんでしまいます。
ネガティブな情報も含めて情報開示すると、志望度の高い母集団が形成できるため、選考の総数が少なくなり採用コストの削減が可能です。
また、セルフスクリーニングを取り入れることで、面接官が志望度の低い求職者を選考する過程も省けます。
そのため、セルフスクリーニングは採用工数の削減にもつながるでしょう。
メリット4.企業イメージの向上
セルフスクリーニングは企業イメージの向上にも貢献します。
ポジティブな情報しか記載されていない求人情報は、「この企業はポジティブな面しか見せていないんだ」と不信感を抱かせてしまいます。
ネガティブな情報の掲載は、求職者に誠実な印象を与えるため、心象が良くなるでしょう。
デメリット1.応募者の減少
セルフスクリーニングはネガティブな情報も掲載するため、求職者からの応募が減少してしまいます。
「とりあえず応募してみよう」「志望度は低いけれどエントリーだけしよう」といった応募が少なくなるため、母集団の数は減ってしまいます。
しかし、志望度の低い求職者からの応募が多ければ、選考などの工数も増えるため、応募者数の減少はデメリットとは限りません。
セルフスクリーニングを成功させるポイント・注意点
セルフスクリーニングを成功させるポイント・注意点を紹介します。
ポジティブな面とネガティブな面をバランスよく伝える
セルフスクリーニングを成功させるためには、ポジティブな面とネガティブな面をバランスよく伝える必要があります。
ポジティブな情報ばかり掲載していると、求職者に不信感を抱かせてしまう一方で、残業時間などネガティブな情報が多いと、求職者は応募を躊躇してしまいます。
ポジティブな面とネガティブな面のバランスを取ることで、求職者に企業の魅力と現実の双方を伝えられるでしょう。
問題の対策についても伝える
ネガティブな情報を掲載する際は、対策についても伝えましょう。
たとえば、「休日出勤もあります」とだけ記載すると、ネガティブな印象を与えてしまいます。
そのため、
- 休日出勤がありますが、代休を取れます
- 将来的には休日出勤をゼロにするため、人員増加を図っています
といった情報をプラスすることで、求職者に安心感を与えられます。
問題への対策も記載することで、企業の魅力をアピールしましょう。
欲しい人材を明確に定義する
欲しい人材、ターゲットを明確に定義することも大切です。
ターゲットが違えば、魅力だと思う情報も、短所だと捉える情報も違います。
また、求職者は関心のある部分にだけ目を留めるので、求人内容をすべて読むとは限りません。
求職者のターゲット像を明確にさせると、「年間休日」「給与○○円以上」「海外への異動あり」など、企業の魅力としてアピールすべきキーワードが見えてきます。
そのため、セルフスクリーニングを成功させるには、欲しい人材を明確に定義することが重要です。
客観的な情報を提供する
セルフスクリーニングを行う際は、客観的な意見も取り入れましょう。
企業の長所・短所を、人事部などの採用担当のみで考えた場合、先入観にとらわれて応募者に寄り添っていない情報を開示してしまう可能性があります。
そのため、「早期退職した社員の退職理由」や「在籍社員へのヒアリング」などで、求職者への客観的な情報提供を意識しましょう。
適切なタイミングで提供する
セルフスクリーニングは大企業だけでなく、中小企業でも取り入れることが可能です。
しかし、認知度のない企業が求人にネガティブな情報ばかりを掲載すると、応募が来なくなる可能性があります。
そのため、どの選考段階で何の情報をどこまで伝えるか、慎重に検討しましょう。
セルフスクリーニングの事例
最後に、セルフスクリーニングの事例を紹介します。
インターンシップ
入社前のインターンシップは、スクリーニングのひとつです。
企業での就業体験を通して、求人ではわからない職場の雰囲気を感じ取ってもらうことができます。
実際の職場を求職者に見てもらうことで、求職者自身が企業と合っているかどうかを判断できます。
企業に合っていると考える求職者は選考に進み、合っていないと考える求職者は選考を辞退するでしょう。
自社サイト
自社サイトやSNSでの発信を通じて、セルフスクリーニングを促せます。
現在では、ほとんどの求職者が応募を検討している企業のサイトやSNSアカウントをチェックします。
企業サイトやSNSは、ポジティブな情報もネガティブな情報も含めて、求人では把握しきれない情報まで発信できるのが特徴です。
そのため、自社サイトやSNSアカウントでの情報発信が、セルフスクリーニングにつながるでしょう。
面談
対面・Web問わず、面談でセルフスクリーニングを取り入れることも可能です。
面接ではなく、ざっくばらんに話す面談では企業の課題なども共有しやすいです。
企業の実情をしっかりと伝えて、セルフスクリーニングにつなげましょう。
また、面談実施前に採用ピッチ資料を展開すれば、セルフスクリーニング効果が強まるため、企業にとっても求職者にとっても無駄が少なくなります。
採用ピッチ資料についての詳細は下記記事からご覧いただけます。
セルフスクリーニングで無駄のない採用選考を
セルフスクリーニングは、ネガティブな情報も含めた詳細な情報開示によって、応募数を抑制することです。
母集団の数は減ってしまいますが、志望度の高い求職者が集まるため、採用コストの削減につながります。
ミスマッチによる早期離職も防げるため、企業にとっても求職者にとってもメリットがあります。
どの選考ステップでセルフスクリーニングを取り入れるかを考慮して、無駄のない採用活動を実現させましょう。