企業の経営を支援する助成金には様々な種類がありますが、どれくらいの金額が支給されるのか、受給に必要な条件は何かといった情報はあまり知られていないのではないでしょうか。

 

今回は代表的な助成金を数例挙げ、各々の特徴や申請の際の注意点をまとめてみました。

 

女性活躍加速化コース助成金

女性労働者の雇用を安定させ、能力を充分発揮できる環境づくりに取り組む事業主を対象に支給されます。

 

常用労働者数が300人以下の中小企業のみが申請できる「Aコース」と、特定の条件をクリアした場合により多くの助成金を受給できる「Nコース」に分かれています。

 

企業で「女性が活躍している」という事実を数値として公表することが、この助成金を受け取る条件のひとつです。

 

公表は「女性の活躍推進企業データベース」というサイトに登録することで公表できます。

 

まずは自社における女性の活躍状況を分析し、以下の流れで申請を進めましょう。

 

【STEP1】自社の課題解決に必要な行動計画策定(数値目標の決定)

  ▼

【STEP2】行動期間内に取組目標を達成し、実施状況を公表する

  ▼

【STEP3】加速化AまたはNコースを申請

 

行動策定や数値目標の設定などがあり、簡単に取得することはできませんが、女性活躍推進企業として認められれば、「えるぼし認定企業」として、公共調達での加点評価と、日本政策金融公庫でお金を借りる際に低金利になるという2つの優遇措置を受けることができます。

 

企業のブランディングにも繋がりますので、積極的に取得に向けた活動を進めてみましょう。

 

人材開発支援助成金(特定訓練コース/一般訓練コース)

2017年4月1日に、「キャリア形成促進助成金」から改称したのが『人材開発支援助成金』です。

 

それに伴って新たに「労働生産性」が支給の対象として追加され、3年前と比べて生産性の向上が確認できた場合、助成率または助成額を引き上げられるようになりました。

 

この助成金は訓練に特化したものと、制度の導入に特化したものの2つに分かれています。

 

まずは訓練関連のコースを見てみましょう。

 

特定訓練コース

その名前の通り、若手人材やグローバル人材など、特定の年齢や技能取得者を対象とする訓練に助成金が支給されます。

 

支給対象となる訓練は以下の通りです。

 

・労働生産性向上訓練

・若年人材育成訓練(採用5年以内、35歳未満の労働者が対象)

・熟練技能者の育成、技能承継のための訓練

・特定分野認定実習併用職業訓練

・グローバル人材育成訓練

・厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練

・直近2年間に継続して正規雇用の経験のない中高年齢新規雇用者等(45歳以上)を対象としたOJT付き訓練

 

【一般訓練コース】

上記の特定訓練コース以外の訓練に対して支給されます。

支給額は最大で500万円。

特定訓練コースは最大1000万円まで受給できます。

 

人材開発支援助成金( キャリア形成支援制度導入コース/職業能力検定制度導入コース)

続いて、制度の導入に特化した助成金をご紹介します。

 

こちらも訓練関連のものと同様、2種類のコースに分かれています。

 

キャリア形成支援制度導入コース

社員へのキャリアカウンセリングの実施、社外研修に参加する際の有給付与などを支援する助成金です。

 

受給には「セルフ・キャリアドック制度の導入・実施」もしくは「教育訓練休暇等制度または教育訓練短時間勤務制度の導入・実施」が必要です。

 

セルフ・キャリアドック制度とは、年齢、就業年数、役職などの節目で労働者が定期的にキャリアコンサルティングを受けられる仕組みのことです。

 

後者の教育訓練休暇等制度は、事業主以外が行う教育訓練、各種検定またはキャリアコンサルティングを受けるのに必要な休暇や短時間勤務の仕組みを指します。

 

いずれも助成額は47万5000円。

一定の生産性要件を満たす場合は、60万円に割り増しされます。

 

職業能力検定制度導入コース

技能検定に合格した方への報奨金、社内検定制度の導入にかかった旅費や会議費、担当者への賃金などを対象に支給される助成金です。

 

職務に関連した専門知識および技能の普及を促す目的で策定されました。

 

こちらも47万5000円~60万円が支給されます。

 

助成金申請の注意点

採用や人材育成の大きな助けとなる助成金ですが、申請におけるルールやリスクを把握しておかないと、様々な問題を招くことになります。

 

雇用調整助成金の不正受給

助成金の不正受給に関する問題はたびたびニュースで報道されるため、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

 

不正が発覚した場合は助成金の返還を申し立てられます。

 

これに応じない場合は企業名が公表され、場合によっては刑事告訴もあり得ます。

 

知らぬ存ぜぬでは済まない問題に発展することもありますので、助成金受給に関する正しい知識を身につけておくことが重要になります。

 

悪徳業者に騙される

東日本大震災が発生した後、それに伴う特例措置を利用して不正受給をした企業が有罪判決を受けた事例があります。

 

悪徳業者のコンサルティングを受けると、不正が発覚した際にその企業と繋がりのあった企業まで裁判の対象になる可能性があります。

 

いずれの場合も助成金に詳しい社労士に委託し、正しい判断のもとで資金を受け取れるようにしましょう。

 

ただし、こちらも悪徳業者が社労士を名乗って代行申請をするケースがあるため、評判などをしっかり調査した上で委託するようにしてください。

 

まとめ

助成金は、「1人以上の労働者(アルバイト可)を雇用している」「雇用している人の雇用保険を支払っている」という2つの条件を満たしていれば受給できます。

 

これはつまり、フリーランスの個人事業主であっても人を雇用し、雇用保険を支払っていれば、助成金を受け取る権利を持っているということです。

 

企業・事業規模の大小を問わず、採用や人材育成を経て、事業の発展にも大きく寄与する助成金。

 

社内の体制改善に関する方針をまとめつつ、この機会に取得を目指されてはいかがでしょうか。

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