平成28年版障害者白書によれば、身体・知的・精神障害者の数は合計で約860万2千人と言われています。

 

前年比20%増という状況下で障害者の就労意欲は急速に高まっており、受け入れを始めた企業も増えています。

 

今回は平成28年に改正された障害者雇用促進法に触れ、改めて障害者雇用について考える機会を設けたいと思います。

 

障害者雇用促進法とは?

障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)は、昭和35年に制定された「身体障害者雇用促進法」がベースとなっています。

 

その後、名称変更・内容の改正が行われ、平成28年には障害者に関連した国際条約や関係法制の変化に伴って、「差別禁止規定」や「合理的配慮」の概念が導入されました。

 

差別にあたる行為

・手当を支払わない

・研修や実習などを受けさせない

・障害者を優先して解雇の対象にする など

 

合理的配慮

・車いすを利用している方に配慮し、机や作業台の高さを調整する

・知的障害のある方に対し、分かりやすい文章や絵を用いて業務を説明する

・問題用紙に点訳や音訳を加える など

 

また、障害者雇用促進法は「法定雇用率」というものを定めており、従業員数が50名以上の企業は最低でも総従業員数の2.0%以上の人数の身体・知的障害者を雇用しなければなりません(例:従業員50名の場合は1名の採用義務)。

 

法定雇用率に達しておらず、さらに常用労働者数が101名以上の企業は障害者雇用納付金が課せられる仕組みになっています。

 

なお、精神障害のある方は雇用義務の対象ではありませんが、実雇用率を算定する際、障害者としてカウントできます。

 

法整備の背景と実際の雇用状況

国が法整備を通じて障害者雇用を促すのは、少子高齢化が進む日本において、労働力の確保が大きな課題になっているという背景があります。

 

障害者に限らず、女性、高齢者、外国人労働者の雇用も進み、新しい社会の担い手として注目を集めています。

 

もちろん、真の目的は障害を持つ方も活き活きと働き、経済的に自立できる社会の形成です。

 

それに伴って、企業には障害を持つ方々の活躍をサポートし、人材の多様性(ダイバーシティ)を受け入れる理念の普及が望まれています。

 

しかし、厚生労働省が平成28年にまとめた「障害者雇用状況」によれば法定雇用率を満たしている企業は全体の50%を下回っています。

 

民間企業の雇用障害者数、実雇用率自体は共に過去最高を更新していますが、思うように障害者雇用が進んでいない理由として、「雇用はしたいが受け入れのノウハウがない」「ニーズを満たす人材に出会えない」といった声が聞かれます。

 

企業側も「障害者雇用納付金を払いたくないから」といったネガティブな理由で採用したために、採用したもののコミュニケーションが上手くいかず、早期退職する羽目になったというケースも少なくありません。

 

雇用促進のメリット

法定雇用率未達成時の納付金支払い義務などデメリットに目が行きがちですが、ここで受け入れを進めることで得られるメリットにも触れておきましょう。

 

調整金の支給

法定雇用率を達成している企業には、下記の条件で調整金が支給されます。

 

200名超の企業の場合

障害者雇用の超過人数1人あたり、月額2万7千円を支給

 

200名以下の企業の場合

常用労働者数の4%、または6名のどちらかを超えた人数に応じて、1人あたり月額2万1千円を支給

 

助成金を申請できる

「ハローワークなどの紹介によって雇用する」「最低でも2年以上継続して雇用する見込みがある」という二つの条件を満たすと、下記の助成金を申請することができます。

 

特定求職者雇用開発助成金

障害の程度、所定労働時間によって支給額が増減する助成金です。

最大で3年にわたり、合計240万円の助成金を得られます。

 

ファーストステップ奨励金

上記の2条件に加え、【過去に障害者雇用の経験がない50~300名規模の中小企業が障害者を雇用し、その後の3ヶ月間で法定雇用率を達成する】という条件を満たした場合、支給対象期(6ヶ月)経過後に120万円が支給されます。

 

企業・従業員が心がけるべきこと

まず、採用した方が抱えている障害がどういったものなのかを現場の従業員に周囲することが不可欠です。

 

例えば、単純に「彼には障害がある」と伝えるよりも、「彼は同時に複数の指示をされるのが苦手」というように、具体的に注意すべき内容を示した方がコミュニケーションを取りやすくなります。

 

後天的な統合失調症、うつ病などの精神疾患については、症状が落ち着けば薬の服用によって以前と同じように仕事ができるようになる可能性もありますので、「回復まで無理な残業をさせない」「体調が悪いときは早めに対処する」といった配慮を心がけましょう。

 

身体・知的・精神障害を持つ方が障害の内容を隠して一般就労した場合、障害のことを周りに話せず、一人でストレスを抱え込むことも考えられます。

 

そうした理由から、最初にハンディキャップを理解して採用する障害者雇用は「就労の安定」という点でも大きな意味を持つのです。

 

その意味をしっかりと受け止め、障害を持つ方々と冷静に話し合える環境づくりを進めていきましょう。

 

まとめ

現在、民間企業では2.0%の法定雇用率が定められていますが、平成30年4月1日に引き上げられ、【2.2%】になるという告知が厚生労働省から既に為されています。

 

さらに、平成33年4月までには、さらに0.1%引き上げられることになっています。

 

政府の主導により、障害者雇用促進の動きは今後も活発になっていくでしょう。

 

実際に障害者雇用を始めた企業からは、「障害を持つ方が真摯に仕事に向き合う姿を見て、職場が活性化した」「分かりやすい指導を心がけることでマネジメント能力が向上した」という声も多く聞こえてきます。

 

そうしたメリットを享受しつつ障害者の自立を支援し、企業の活性化、延いては多様性に寛容な社会の実現を目指していきましょう!

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