短時間勤務やテレワーク、副業・兼業など、多用な働き方を導入する企業が増える中、新しい働き方として注目を集めているパラレルキャリア。
ここでは「副業との違い」や「企業・個人のメリットとデメリット」、「実際の導入事例」について紹介します。
パラレルキャリアとは?副業との違い
「個人的なボランティア活動」や「NPO(非営利団体)への参加」、「別企業への就職」、「自営業の開始」など多岐にわたる第二の活動。
この第二の活動を本業と並行してするのが、パラレルキャリアです。
副業との大きな違いは、“収入増”という目的以上に「スキルアップや将来への自己投資、社会貢献などが重視される」という点にあります。
実際のビジネスパーソンたちの“パラレルキャリアへの関心”はというと、58%が「パラレルキャリアを実践したい」と回答。
一方で、「パラレルキャリアをしている」と回答した人は26%に留まり、理想と現実とのギャップも見られます。
(エン・ジャパン株式会社の「パラレルキャリア」の意識調査より)
また副業への興味はというと、全就業者のうち「副業をしている」就業者は約234万人(3.6%)、「副業を希望する」就業者は約 368万人(5.7%)という結果に。
(総務省統計局「平成24年度就業構造基本調査」より)
しかしながら、兼業・副業を禁止している企業の割合は77.2%にのぼり、多くの企業が副業解禁に対して慎重な姿勢を示しているのが現状です。
(リクルートキャリアの「兼業・副業に対する企業の意識調査」より)
企業にとってのメリット・デメリット
企業がパラレルキャリアを認めることで享受できるメリットとしては、「採用力の強化」や「社員のスキルアップ」とそれに伴う「生産性向上」「本業とのシナジー(相乗効果)」が挙げられます。
今後の採用において、自社はパラレルキャリアが可能と謳うことが、優秀な人材を引きつける材料にもなるでしょう。
デメリットとしては、「情報漏えいのリスク」「本業への支障」「従業員の健康配慮」「他社への人材流出」「就業規則改正などの事務コストの増大」が挙げられます。
本業以外の活動が順調にいけば、本業を退職して起業や転職を選ぶ可能性もあり、また事務コストの面でも就業規則の改正や社会保険料、割増賃金などの負担調整等が発生することも予想されます。
従業員にとってのメリット・デメリット
従業員にとってのパラレルキャリアを実践するメリットとしては、「自身のスキルアップや視野の拡大」「自己実現や社会貢献を追求することによる幸福感の向上」「本業では出会えない人々との人脈形成」が挙げられます。
デメリットとしては、「就業時間が増えることで本業に支障がでること」「タイムマネジメント・タスク管理が困難になること」「本業へのコミットメントを疑われる恐れ」が挙げられます。
副業が認められていない会社に勤めている場合、例えその活動が無報酬であったとしても、周囲からは「本業にコミットしていない」と思われる可能性があり、会社の規則に違反していると見なされるリスクと隣り合わせの状態にあると言えるでしょう。
実際の「導入事例」に学ぶ
企業と従業員の双方がメリットを享受している先駆事例を2つご紹介します。
1.ソニー株式会社勤務の正能茉優さんの場合
在学中に起業した株式会社ハピキラ FACTORYの経営も継続。
「パラレルキャリア女子」「新しい働き方の実践者」として注目を集めています。
企業側
正能さんがハピキラで得てきた人脈や幅広い経験を「新規事業創出」などに活用。
正能さん
「仕事や趣味、家族などバランスよくこなし、生きていきたい」という本人のニーズが満たされ、理想の生き方ができている。
2.サイボウズ株式会社の場合
チームワークを支えるソフトウェアの開発を続けると同時に、多様な働き方への実現に向けた取り組みを実践している企業です。
企業側
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フルタイム分の給与が不要になったことで、高級人材が登用しやすくなった
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働き方の多様化を促すことで、マネジメント力を強化できた
従業員側
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自分自身の経験の幅が広がった
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リフレッシュ効果を得られ、意欲と集中力の向上に繋がっている
企業がパラレルキャリアを導入するためには?
まずは導入を前提に、兼業・副業禁止規定を見直すという制度的な変更が重要となります。
また、情報漏えい等のリスク管理の対策としては、毎年兼業や副業の申請の機会を設けて、「社内情報を持ち出さない」「本業に影響しない」といった基本事項を確認するという方法も有効です。
パラレルキャリアは国も推進している新しい働き方の一つ。
まさに今、人事担当者や経営者にとって「自社でもパラレルキャリアのニーズがあるかもしれない」という前提のもと、導入を検討すべきタイミングです。
メリット・デメリットを客観的に比較し、他社の成功・失敗事例を学ぶところから、検討を進めてみてはいかがでしょうか。