今では日常的に使用されるようになった「パワーハラスメント」。

 

2001年に東京のコンサルティング会社によって生み出された言葉として、多くは上司から部下へのいじめ・嫌がらせとして使われてきました。

 

しかし現在では上司から部下だけではなく、部下から上司へのパワハラ事例も出てくるなど、状況は深刻化しています。

 

身近に起こりうる問題だからこそ、いざという時のために理解を深めていくことが大切です。

 

「逆パワハラ」とは

パワハラとは、同じ職場で働く人に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

(厚生労働省より抜粋) 

 

パワハラという言葉が生まれた当時は「上の者が下の者に対して行う」という認識でしたが、最近では“逆”、つまり「下の者が上の者に対して行う」精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為を『逆パワハラ』といいます。

 

「逆パワハラ」が増えてきている原因とは

では、なぜ今『逆パワハラ』が問題となっているのでしょうか。

 

原因は大きく2つあります。

 

原因1:強く出られない上司と部下の“モンスター社員”の増加

「パワハラ」が世間に周知されたと共に、ちょっとした言動が「パワハラ」として訴えることができるということも同時に広がったため、上司が必要以上に部下に対して気をつかう傾向に繋がりました。

 

あわせて、若年層をはじめとする部下にとっても、「パワハラ」についての知識・情報に触れる機会が増えたことで部下としての権利意識が向上し、ちょっとした言動を「パワハラ」と強く主張・悪用する部下と必要以上に気を使う上司という優位関係の逆転が生まれました。

 

「パワハラ」という言葉に過剰になり過ぎた社会的な背景も影響しているといえるでしょう。

 

原因2:実力主義への移行

日本企業は、近年IT化やグローバル化へと移行を進めています。

 

そうした環境の中で若手の部下の方がITリテラシーが高く、上司よりもパソコンやスマートフォンを仕事に活用できるというケースも多く見受けられます。

 

その結果『能力がない』と部下から判断され、業務上の優位性を部下が持つことで逆パワハラに繋がっていきます。

 

年功序列から実力主義となり、一見誰にでもチャンスを掴む環境に見える実力主義社会の落とし穴ともいえます。

 

実際にあった「逆パワハラ」事例

逆パワハラには大きく分けて、以下の4つの典型例があります。

  1. 脅迫型

  2. 無視型

  3. 名誉棄損型

  4. 暴力型

その内、「無視型」と「名誉毀損型」の事例をご紹介します。

 

事例1 :無視型

地方から東京本社に着任し、今までと全く違う業務で課長職となったAさんは部下よりも業務実績がないことから「劣っている」と見なされ、指示を全て無視されました。

 

他の上司の指示は聞くが、Aさんの指示のみ徹底的に無視されていたそうです。

 

その結果、部下たちを掌握できず、業績が下がったこともあり直属の上司から叱責され、結果、職場では孤立。

 

精神的に追い込まれ、うつと診断されました。

 

事例2: 名誉棄損型

部下が「上司(Bさん)が従業員から金銭の着服を受けている」「セクハラしている」と中傷する内容のビラを会社の上層部宛てに送付。

 

また、Bさんの家族やその近所にもばら撒いきました。

 

ビラの内容に関して会社からの事情聴取により、事実無根ということが判明しましたが、会社は逆パワハラ被害については言及、十分な調査は行わず配置転換をさせました。

その後Bさんは自殺。

 

1997~98年に起きた当事件は2009年に開かれた東京地裁で、「部下からの中傷による労災認定」を認める判決が出されました。

 

上司から部下へのパワハラ被害に関しては多くメディアでも取り上げられ、裁判で企業や加害者の責任が問われていますが、逆パワハラについては上司失格の烙印を押されるのではないかという不安や、部下が原因なんて恥ずかしくて言えないといった意見も多く、なかなか表面化されないといった問題があります。

 

「逆パワハラ」の対処法

逆パワハラの内容や程度によっても異なりますが、どんな対処を行っていくべきなのでしょうか?

 

実例でもあげたように、逆パワハラはなかなか周囲に相談できないまま状況が悪化してしまうことがほとんどです。

 

逆パワハラなのでは?と気づいたら

現状をよく把握する

状況の確認や行動の問題点を把握し、業務内容や双方の考え方・意見を聞き必要に応じて正していくことが必要です。

 

マネジメントの問題として捉える

上司には部下に対して指導・監督権限があります。

 

リーダーシップやマネジメント能力の向上に積極的に取り組み、必要であればさらに上の上司や人事担当者へ報告・相談を行いながら社内で罰則を与えることも適切な処置といえます。

 

証拠を残す

ICレコーダー等の録音機器を利用して音声の録音を行い、受けた扱いについて日時を含め、詳細に記載しておきましょう。

 

その際には被害者の対応も残しておきましょう。

 

実際に被害にあっている場合

社内への相談をはじめ、匿名で外部の窓口に相談することが大切です。

 

もし会社が動かず、移動や転勤させられた、管理能力不足とみなされ降格させられた、という場合は労働基準監督署に相談しましょう。

 

実際に被害を受けている場合も上記に記したように、証拠はしっかりと残しておきましょう。

 

逆パワハラがあった場合は我慢せずに相談しましょう

パワハラという言葉が社会的に認知され社会の注目度が増す一方で、一向になくならない問題の一つです。

 

それだけではなく、次々に〇〇ハラスメントとして新しい問題が発生しています。

 

人格否定とまで言えるパワハラは「上司だから言えない…」「自身の頑張りが足りないから…」といって抱え込んでも解決することはありません。

 

取り返しがつかなくなる前に会社や適切な機関に相談しましょう。

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