目次
アンガーマネジメントとは
イライラしたり、カッとなってしまったときに、怒り(anger)を管理(management)することで、衝動的な言動を抑制し問題解決のために適切なコミュニケーションへと繋げることを「アンガーマネジメント」と呼びます。
アメリカでは1970年代から心理教育として浸透していて、教育やビジネスの分野で確かな成果を残しています。
ストレス社会と呼ばれている現在において、老若男女問わず「キレる」人が増加しているといわれている昨今。
国内においても、アンガーマネジメントの必要性は高まっており、アドラー心理学を代表とした自分の感情をコントロールする自己啓発書が書店をにぎわせています。
ビジネスの世界でも、業務の効率化や職場環境の改善を目的としてアンガーマネジメントに関する研修やセミナーも盛んに行われており、管理職の社員を中心に多くの企業が参加しているようです。
人はなぜ怒るのか?怒ることのデメリット
アメリカの心理学者の研究によると、人が怒るときは「危険にさらされた」という意識が万人共通の要素であると指摘しています。
この「危険にさらされる」というのは、物理的な危険だけではなく、自尊心や名誉、目的の阻害など、心理的な部分に関しても該当します。
行動心理学の分野では、自分では対処できない事柄が発生したときの「代償行動」のひとつとして怒ることが挙げられており、この2つを総評すると「予定外のことで、自分に損害を被った」ということが、人が怒る理由となります。
ビジネスの分野においては、誰かのミスによって仕事が上手くいかなかったり、自分にだけ仕事が集中したりするなどがその典型的な例ではないでしょうか。
その怒りに任せて周囲に怒鳴ったり、イライラをぶつけたりすると、上司や同僚・部下との関係性が悪化したり、コミュニケーションがスムーズにいかず生産性が低下するといった問題が発生するだけでなく、怒った本人の心的ストレスになり、健康にも影響を与えてしまいます。
職場でのアンガーマネジメントの必要性
ある試算によると、社員の振る舞いによる悪影響で企業が被る損害額は、年間最大1,600万円にも上ると言われています。
イライラをぶつける社員や、酷く怒鳴る社員が1人いるだけでも周囲の生産性は落ち、社員の退職や、最悪の場合労務問題にまで発展してしまうケースもあります。
また、組織行動論でも実証されている通り、人の性格や行動は波及性があるため、日常的にそんな社員と接し続けてしまうと、会社全体の雰囲気が悪くなるだけでなく社員の私生活にも悪影響を与えかねません。
しっかりとしたアンガーマネジメントが実現できれば、組織全体のチームワークの向上や、社員のやる気や成長意欲を高めることができるだけでなく、問題が起きたときに即事態の収束に取り組めるなどリスクヘッジにも繋がります。
組織の連携や業務効率向上を推し進めていくうえでも、社会倫理的な観点から見ても、アンガーマネジメントはとても価値が高い取り組みといえるでしょう。
上手に叱るコツとは
アンガーマネジメントが最も必要なのは、管理職の立場にあたる人材です。
というのも、職務上、部下のミスと向き合うことが多く、いわゆる「叱る」ことも少なくないからです。
そんなときに感情的になってしまい、頭ごなしに怒りを部下にぶつけてしまうと、何の指導にも繋がらないばかりか部下の士気を落としてしまったり、信頼を失ってしまうことになりかねません。
本項では、どうすれば上手に叱れるのか、その方法について少し解説したいと思います。
叱る前の6秒間を意識する
怒りのピークは最長で6秒間と言われています、これは、怒りの感じた時に分泌されるアドレナリンが体内をめぐる時間と言われており、この6秒間さえ乗り切ることができれば怒りが制御しやすくなるそうです。
部下を叱る前に、心の中でゆっくりと6秒数えてから、言葉や行動に移すことと良いかもしれません。
人格攻撃をしない
「いつも期限を守らない」「前も注意したじゃないか」「能力がない」など、人格を攻撃したり、決めつけたり、過去まで遡っての言及は、部下の自信を喪失させるだけで、なんの意味もありません。
叱る目的はあくまでも社員の指導です。
こういった無意味な発言は避けることが賢明です。
「なぜ」という理由を説明する
部下が同じことを繰り返さないようにするためには、行動への指導だけでなく、何故それが必要なのかまでしっかりと説明することも大切です。
「当たり前」「常識」と思うようなことであっても、しっかりと説明してあげることで、部下自身がなぜ叱られているのかを理解してもらいやすくなります。
まとめ
日々の仕事の中で、思わずカッとしてしまったり、つい感情的に起こってしまったとき、いかに周囲に悪い影響を与えていたかを考えるだけでもアンガーマネジメントとしては大いに役立ちます。
そのうえで、上記に記載した内容を参考にしながら、どうやって自分自身の「怒り」と向きあうのか、この機会にぜひ考えてみてください。
小さいことから取り組んでいくだけで、あなたの仕事や私生活を劇的に変化させる良いきっかけとなるかもしれません。