企業活動をしていくにあたり、必ずと言っていいほど耳にするリスクマネジメント(リスク管理)。

 

特に現代では、リスク要因の多様化もあり人事に求められる役割も大きくなっています。

 

未然にトラブルを防ぐために何をすべきか解説します。

 

問題行動を起こす社員への対応と予防策

SNSの普及や雇用形態が多様化したことなど、さまざまな要因から発生するリスクも増加しており、世間の目も厳しくなる一方です。

 

特に企業は色々な人が集まる集合体ですので、倫理やコンプライアンス(法令順守)関係のリスク管理を意識して行う必要があります。

 

人事労務トラブルで相談件数の多い問題は、ハラスメント問題、メンタルヘルス不調、解雇などが挙げられます。

 

中でもハラスメントに関する相談件数が最も多く、ここ数年増加の一途を辿っています。

 

ハラスメント問題に直面した企業の事例をもとに、対策を考えてみましょう。

 

<事例>愛知県の製造業の場合ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

“ハラスメント”という言葉が知られていなかった当時、パワハラ問題が発生。

会社に悪影響が出たことで対策に乗り出した。

 

同社が行った対策は以下の通りです。

 

・就業規則の変更(ハラスメント全般の禁止規定)

・社員への周知徹底

・ハラスメント防止研修実施

 

≪出典:厚生労働省平成28年度 職場パワーハラスメント対策取組好事例集≫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さらに、役員が率先して現場へ赴き、ハラスメントになりそうな言動を耳にしたらその場で注意をしていたそうです。

 

このような根気強い指導により職場の風土が変わり、現在のところパワハラの訴えは1件もないとのこと。

 

ハラスメント防止には、このように社員一人一人の意識向上が極めて大きな変革をもたらすことが分かりますね。

 

就業規則の見直しと社員への周知

就業規則は10人以上の従業員がいる場合、労働基準監督署に届け出る必要があり、労働条件や働く上でのルールを具体的に定めたものを指します。

 

就業規則を作り、違反した際の罰則規定を盛り込むことで、未然にトラブルを防ぐ効果が期待できます。

 

しかし、一昔前に作成したものをそのまま使用し、内容が現状に即していないというケースも見られます。

 

ご紹介したパワハラの事例からもお分かりいただけるように、働く上での最低限のルールと、社員へ周知徹底することが意識向上への第一歩と考えられます。

 

労働時間関連・賃金関連・退職関連などに加え、秩序を保つための服務規律を見直して、離職率の低い働きやすい職場環境づくりを目指しましょう。

 

人事として労働法は理解しておきたい

労働法とは、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法をはじめ、育児介護休業法、最低賃金法などの労働に関する法律を総称したものを指します。

 

労働法は就業時間や賃金など働く上での最低条件を定めて、労働者を守るための法律です。

 

労働基準法は2019年4月、大幅に改正されます。

 

主な内容は下記の通りですので、ご参考までにご覧ください。

 

労務関連の情報は、リスクを避けるためにも、常にチェックしておきましょう。

 

時間外労働の上限規制入

原則月45時間、年間360時間。

臨時的な特別の事情がある場合でも下記のガイドラインを設けています。

 

・年720時間が上限

・休日労働含む、複数月平均80時間以内

・月100時間未満

・月45時間を上回る回数は年6回まで

※除外される業界あり

 

有給休暇取得の義務づけ

年10日以上の有給休暇がある労働者は、その内の5日間は取得しなくてはなりません。

 

同一労働同一賃金

正規雇用者と非正規雇用者間の待遇に不合理な差をつけることが禁止となります。

 

勤務間インターバル制度(努力義務)

勤務終了後から次の始業まで一定時間の休息を設けることで、労働者の睡眠時間などの確保に努めること、とされています。

 

産業医の機能強化(従業員50名以上)

産業医に対する労働者の情報提供や、産業医から受けた勧告内容を衛生委員会へ報告、労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めること、などが挙げられています。

 

高度プロフェッショナル制度の創設

年収1075万円以上の専門的知識を持つ一部労働者が対象。

 

企業と労働者間の合意があれば、労働時間規制から除外されます。

 

時間給ではなく、成果によって報酬が支払われることになるため、短時間で成果を上げることができれば都合の良い時間に働くことができます。

 

3ヶ月のフレックスタイム制

フレックスタイムを導入している企業が対象。

 

これまで最大1ヶ月だった清算期間が3ヶ月まで認められます。

 

労働時間の状況把握の実効性確保

管理・監督者や裁量労働制の労働者を含むすべての人が、タイムカードやICカードなどの客観的な方法で労働時間を把握するよう義務づけられます。

 

従業員のSOSを見逃さないために

職場に関して深い悩みを抱えていても、その人が必ずしも相談をしてくれるとは限りません。

 

悩みがあっても誰にも打ち明けず、いきなり退職という場合も多々あります。

 

人事としては、貴重な人材を失ってしまったこと、改善の機会を失ったことなど非常に悲しく、やるせない状況ですよね。

 

一見サイレントな退職であっても、悩みを抱えている従業員は、何かしらのサインを発しています。

 

下記はほんの一例ですが、しっかり観察して従業員の発するSOSを察知しましょう。

 

・遅刻や欠勤が増える

・笑顔が減った、声が小さくなった

・周囲の人間を避ける

・服装の乱れ

・ミスが増える

 

こうして例を挙げてみると、普段から観察していないと見逃してしまいそうなほど、些細な部分でもありますよね。

 

しかし、大きな部分は隠せても、些細な部分まで隠しきれる人はそういません。

 

少しでも違和感を覚えたら、積極的に話を聞いてみると状況を変えられるかもしれませんね。

 

まとめ

人事担当が知っておきたいリスクマネジメントについて、簡単に触れさせていただきました。

 

当記事内容を見て当たり前に感じた部分も多かったと思います。

 

しかし、企業と従業員相互にとって安心できる職場づくりを心掛けることで“人”に関するトラブルはある程度抑止できるのではないかと思われます。

 

法改正のタイミングで、今一度就業規則の見直しや職場の同僚へ目を向けてみてはいかがでしょうか。

 

この記事が少しでもお役に立てることを願っています。

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