「働く時間が自由に決められる」フレックスタイム制は、働き方改革の影響によって、導入する企業が増加しています。

 

今後は、少子高齢化で介護をしながら働く労働者も増えると予想されるため、ますますフレックスタイム制を導入する企業が増えそうでしょう。

 

しかし、「フレックスタイム制は残業代が出ない」など、誤った認識を持っている人も多いようです。

 

今回は、フレックスタイム制の仕組みや、正しい残業時間の計算方法などについてご紹介していきます。

 

フレックスタイム制の仕組み

フレックスタイム制とは、会社が1日の労働時間を決めるのではなく、労働者が自ら始業・終業の時間、労働時間を決める制度です。

 

会社は一定期間(清算期間*)内で、働かなければならない時間(総労働時間*)のみを事前に決めます。

 

労働者は、その範囲内で働く時間を調整することができるため、「予定がある日は早く帰り、別の日に補填する」など、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。

 

また、フレックスタイム制は、一定期間内において労働時間の過不足を調整することができるため、残業代の軽減に繋がります。

 

また、ワーク・ライフ・バランスを取りやすいため、優秀な人材の獲得や離職率低下にも効果を発揮し、会社にとってもメリットが大きい制度と言えます。

 

※清算期間*…労働時間を計算するための期間で、上限は3ヶ月まで。

清算期間を3ヶ月単位に定めれば、3ヶ月ごとに労働時間が計算されます。

 

※総労働時間*…清算期間内に働かなければならない時間で、上限は法定労働時間の総枠まで。

これを超えると残業代が発生します。

 

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法定労働時間の総枠 = 1週間の法定労働時間(40時間)×清算期間日数÷7日

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コアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制の勤務時間は「コアタイム」と「フレキシブルタイム」の2種類に分かれます。

 

コアタイムとは、その日必ず出社していなければいけない時間を指します。いわゆる、定時にあたる時間となり、コアタイムに遅れてしまうと遅刻扱いになってしまいます。

 

反対にフレキシブルタイムは、勤務するかどうかを自由に決定できる時間を指します。この時間内であれば自由に出退勤が可能です。

 

一般的にフレックスタイム制を導入している企業は総じてコアタイムを設置しています。つまりフレックスタイム制の勤務時間は、『完全に自由』とは限らないということですね。

 

一部の時間帯をコアタイムに定めることで、社内の連携をスムーズにする狙いがあるため、完全に自由にはしない企業が多いようです。

 

また、コアタイムとフレキシブルタイムを設定する場合、就業規則に記載する必要がありますので注意しましょう。

 

フレックスタイム制導入に適した職種

会社にも、労働者にもメリットのあるフレックスタイム制ですが、すべての職種に適しているとは言えません。

 

フレックスタイム制は、労働者が自分で労働時間を決めるので、外部の影響を受けにくく、個人での業務や技術的な業務がメインとなる職種が適していると言えます。

 

・エンジニア

・デザイナーなど

 

反対に、営業など外部の影響が大きい職種では適していないと言えるでしょう。

 

フレックスタイム制の残業・残業代の正しいルールとは

前述の通り、フレックスタイム制は、あらかじめ決めておいた総労働時間を超えて働くと『時間外労働』つまり、残業となります。

※時間外労働は36協定*を締結しておく必要があります。

 

36協定*…正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条により、会社は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労組などと書面による協定を結び労働基準監督署に届け出ることが義務付けられているため、一般的に「36協定」という名称で呼ばれています。

 

下記は、清算期間日数と、その法定労働時間の総枠です。

この範囲内で総労働時間を決めなくてはなりません。

 

引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督賞「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

また、フレックスタイム制の労働は下記のように定められており、法定労働時間の範囲内か否かによって、残業代の計算方法が変わってきます。

 

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清算期間が1ヶ月を超える場合は、下記の要件を満たさなくてはならず、どちらかを超えた時間は時間外労働となります。

 

・清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えないこと

(=清算期間全体の労働時間が、週平均40時間を超えないこと)

・1ヶ月ごとの労働時間が 週平均50時間を超えないこと

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参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督賞「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

法定内残業・法定外残業 それぞれの計算方法

法定内、法定外でそれぞれ支払わなければならない残業代が異なります。

 

法定内残業(総労働時間を超えているが、法定労働時間の範囲内)の場合

残業代=時間外労働の時間数×就業規則で定める時給

 

法定外残業(総労働時間を超えており、法定労働時間も超えている)の場合

法定外残業の場合は、25%の割増賃金を支払う必要があります。

 

残業代=時間外労働の時間数×就業規則で定める時給×1.25

※法定労働時間を超過した分は翌月に繰り越せません。

 

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例)総労働時間が170時間、実労働時間が200時間(時給1300円)の場合

 

1,300 ×(177.1-170) = 9,230(法定内残業の計算)

1,300 ×(200-177.1)× 1.25 = 37,212(法定外残業の計算)

 

⇒ 9,230 + 37,212 = 46,442

 

合計46,442円の残業代が発生することになりますね。

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ご紹介した通り、フレックスタイム制でも残業代は発生するので、残業代未払いとならないよう注意しましょう。

 

フレックスタイム制で違法になる残業のケース

フレックスタイム制では、下記(ⅰ)~(ⅲ)に該当する場合、時間外労働の上限規制違反となります。

 

※「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」では、3か月単位の清算期間を想定して、紹介されています。

 

 

 

 

引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督賞「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

フレックスタイム制の導入で、時間外労働の上限規制に違反しないか確認するためには、年間を通して検証しなくてはなりません。

 

36協定で定めた時間を超えた場合

36協定で定められた時間を超えて労働をさせた場合も、もちろん違反となります。

 

また、雇用者と労働者が36協定を締結せずに法定労働時間を超えて働かせた場合、罰則の対象となるため、法違反とならないよう注意が必要です。

 

フレックスタイム制導入後、会社がやるべきこと

フレックスタイム制を導入する場合、従業員が自分で始業時間・終業時間を決めることになるので、正しく運用するためにも従業員一人ひとりの労働時間管理が欠かせません。

 

管理する内容は以下が挙げられます。

 

・従業員が決めた始業時間と終業時間を把握

・月単位にまとめる

・残業が発生するか確認

・給料に反映

 

通常の労働体制と変わらないように見えますが、フレックスタイム制は部署内の従業員の労働時間がバラバラになる、総労働時間が所定の時間に満たない、などの問題も出てくることがあるため、通常の労働体制よりも勤怠管理が複雑になります。

 

勤怠打刻が自動的に集計されるシステムや、フレックスタイム制適用のシステムを整備すれば、導入による労務管理の負担が軽減されます。

 

フレックスタイム制を導入する際は、勤怠管理システムも一緒に整備すると安心ですね。

 

勤怠管理システムについては、「勤怠管理とは?人事が知っておくべき勤怠管理の必要性とその手法」でご紹介しています。

 

まとめ

今回はフレックスタイム制の仕組みや正しい残業時間管理についてご紹介してきました。

 

働き方改革の影響で、フレックスタイム制を導入する企業は増加しています。

 

子育てや介護などの家庭事情に適応できるこの制度は、今後ますます導入企業が増えていくと考えられます。

 

間違った運用をするとトラブルが発生する原因となりますので、正しく運用できるようフレックスタイム制度を理解し、就業規則の変更や、従業員への説明を十分に行った上で導入しましょう。

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