今回はナレッジワーカーの定義やマニュアルワーカーとの違いについてご紹介していきます。
ナレッジワーカーという言葉を聞いたことがありますか。
日本語だと「知識労働者」という意味になりますが、近頃このナレッジワーカーという言葉が注目を集めています。
現代はテクノロジーが進化し、AI(人工知能)やロボットが大量に作られる世の中となりました。
それに伴い、これまでのモノづくりにおける単純作業は、正確で作業スピードも速いAIやロボットが代わりにやってくれるというのがスタンダードになりつつあります。
今回は、これから求められるナレッジワーカーとしての働き方、また対比としてマニュアルワーカー(単純作業労働者)についても取り上げていきたいと思います。
ナレッジワーカー(知識労働者)とは?
ナレッジワーカーとは「ナレッジ(知識)」と「ワーカー(労働者)」を組み合わせた言葉で、1960年に社会学者のピーター・ファーディナンド・ドラッカーが自身の著書の中で提唱したものです。
ナレッジワーカーは、「肉体労働ではなく、自らの知識によって企業や社会に貢献する労働者」という意味で、ナレッジを駆使し付加価値を生み出す労働者ということになります。
単純な知識量だけではナレッジワーカーにはなれません。
「業務をいかに効率的かつ迅速に遂行できるか」という意識を持ち、それらをまとめて第三者にわかりやすく共有できることが求められます。
ナレッジワーカー(知識労働者)とマニュアルワーカー(単純作業労働者)の違いとは
ナレッジワーカーの対語として「マニュアルワーカー」という言葉があります。
マニュアルワーカーとは、字のごとくマニュアル化された業務にあたり、画一的に働く単純作業労働者という意味です。
与えられた仕事を効率よくこなすことを主目的としています。
かつて、日本も高度経済成長期(1955年~1973年頃)を迎え、モノ作りにおける大量生産を求められた時代がありましたが、この頃の働き方はまさにマニュアル化されたものであるといえるでしょう。
与えられたテーマや課題を効率よくこなすことが重要視されており、マニュアルに基づいた教育や、働いた時間と量で評価するというマネジメントが有効であるとされていました。
しかし、現在ではテクノロジーの進化により、ロボットがこの単純作業を請け負うケースが増えてきています。
生産性・効率性の観点だけを鑑みれば、人間が機械を上回ることは難しいため、当然の流れだといえますね。
現代では「働き方のモデル」というものは存在しません。
不確定要素が多く、前例がないケースが多々発生する状況で、いかに戦略的で自発的な行動がとれるかが理想の働き方となっています。
このことから、人の働き方というのはロボットではカバーできない部分をやること、つまりナレッジによる付加価値を社会や企業に提供できることが大切であるという考え方が浸透してきているのです。
ナレッジワーカーが活躍する仕事
ナレッジワーカーが活躍する仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。
具体例を以下に挙げてみました。
・弁護士、行政書士、税理士など「士業」と呼ばれる職業
・コンサルタント
・金融ディーラー
・ITエンジニア
・webデザイナー
これらは、情報収集能力や論理的思考力(ロジカルシンキング)、発想力などが求められる代表的な仕事です。
既存の情報をまとめ、新たな価値を創造する、問題点をまとめて解決策を提示するなどのナレッジが必要とされます。
ナレッジワーカーが活躍する仕事というと、ホワイトカラー(オフィスで頭脳労働をする人)の職種というイメージもありますが、ここでホワイトカラーとブルーカラーについても少し触れておきます。
ホワイトカラー=ナレッジワーカー?
ホワイトカラー(オフィスで頭脳労働をする人)とブルーカラー(作業着を着て働く人)という言葉を知っていますか?
ホワイトカラーとは、「白いワイシャツやスーツを着て働く人たち」というイメージから作られた造語で、同じくブルーカラーも「青い作業着などを着て働く人たち」というところから付けられた造語です。
さきほど、高度経済成長期の日本について触れましたが、とにかく質よりも量という作業的な仕事が多く、まさにブルーカラーが活躍した時代といえます。
デスクワークにも単純作業はたくさんありますので、ホワイトカラー=ナレッジワーカーということにはなりませんが、頭脳労働の割合が多いのはどちらかと考えると、ナレッジワーカーとの関連性が強いのはホワイトカラーといえそうです。
ナレッジワーカーの領域は日々拡大している
先に挙げた職種がナレッジワーカーの代表例ではあるものの、ナレッジワーカーの領域は日々拡大しています。
例えば、「教師」はどうでしょうか。
生徒一人ひとりと向き合い、その生徒に合った指導法を考え、実践していく。
そして、どうすれば生徒が伸びやすいのかを常に模索し、指導案を創出して他の教師へ共有する、といった行動はナレッジワークそのものであるといえます。
つまり、「自らの知識によって企業や社会に貢献する労働者」という定義に当てはまるのであれば、どんな職業でもナレッジワークになり得るということです。
今後は職業に関わらず、ナレッジワーカーのとしての働き方が必要となってくるでしょう。
ナレッジワーカーに求められるもの
ナレッジワークが必要不可欠となりつつある現代において、ナレッジワーカーに求められているもの(スキル)とはどんなことなのでしょうか。
情報収集能力
ナレッジワーカーには、豊富な知識量が必要です。まずは、さまざまな情報に触れ、色んなことにアンテナを張り巡らせましょう。
知識が増えてきたら、今度はどんなものが仕事に応用できるのかということを考える必要があります。
例えば、部署内で効率化が必要な課題があったとして、それを解決するツールを知っているかどうかは大きな差です。
しかし、ただ単に知っているだけでは、いざ問題や課題に直面した時に対応できません。
大切なのは「問題意識」です。
課題となっていることを常に頭に置きながら、この解決方法は今回の問題に応用できるというマインドを持っていれば、自分の知識を仕事に結びつけられるでしょう。
オリジナリティのある発想力・視点
ナレッジワーカーには、斬新な発想力が求められます。
既存の体制や概念を覆すようなアイデアを生み出すことや、他社との差別化を図れる施策を考える力が求められるからです。
その発想に行き着くためには、「独自の視点」を持っていなくてはなりません。
会社の事業にどう活かすことができるのかということを考え、課題の本質はどこにあるのかを自分自身の視点で観測することによって、はじめて斬新な発想力が生まれるのです。
目に見えない知識を形式知に変換できること
ナレッジワーカーには、個人のスキルやアイデア、独自ノウハウなどの「目に見えない知識」を形式知に変換するスキルが求められます。
企業として成長し競争社会を勝ち抜くには、そのような見えない知識をいかに組織に展開できるか、つまり形式知(文章や図形など目に見えるアウトプット)に落とし込むかということが重要です。
これからの時代はナレッジワーカー(知識労働者)が必要
高度経済成長期の日本では、大量生産を求められていた背景から、量を重視する傾向にありましたが、先述した通り、今やモノ作りの作業はAIやロボットに任される時代になりました。
ナレッジワーカーという言葉の生みの親である、社会学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが自身の著書で予見していた通り、今の時代は「量」よりも「質」が求められるのです。
そんな時代にあって、ナレッジワーカーの存在はますます企業にとって重要なものとなっています。他社との違いを作るのは、自社のナレッジワーカーにかかっているといっても過言ではありません。
併せて、「ナレッジワーカーを育成する」という視点も企業にとっては非常に大切です。
ナレッジワーカーは常に最新の情報をインプットしようと努めますが、組織としても情報収集力を高めるサポートができるとよいでしょう。
社内研修などを定期的に設け、効率的かつ効果的なインプット・アウトプットができるような環境をつくることが、新しいナレッジワーカーを生み出すことにつながりますよ。