インターンシップを実施する企業や参加する学生は年々増加しており、今やインターンシップは、新卒採用において欠かせないイベントとなっています。
これまでインターンシップを実施していなかった企業の中には、昨今の流れを受けて始めてみよう、と考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、インターンシップのプログラム作成に役立つ内容について、ご紹介していきます。
新卒採用スケジュールや学生の動向、インターンシップへの参加目的について触れるとともに、インターンシップのプログラム作成手順や成功事例についてもまとめていますので、是非ご覧ください。
主な新卒採用スケジュールは?
引用:マイナビ「2022年卒 就活スケジュールと進め方」
2022年卒の新卒スケジュールは、
広報活動解禁:3月1日~
選考活動解禁:6月1日~
内定式:10月1日~
となっており、これまで通りです。
ただし、広報活動に当たらないインターンシップは、前年(3年生)の6月~2月まで実施されることが通例となっています。
インターンシップの実施が通例化した理由
日本では、少子高齢化や景気回復などの影響により、長らく売り手市場が続いていたため、年々採用活動の早期化が進んでいます。
実際、株式会社ディスコ「2020 年卒・新卒採用に関する企業調査」によると、3月中旬~4月中旬に面接を開始する企業は5割にも上ります。
インターンシップ(職業体験)は採用活動に該当しないため、広報活動解禁に先駆けていち早く学生と接触する手段の一つとして、注目されるようになったのです。
インターンシップのスケジュール
インターンシップのスケジュールは、
夏季:6月~9月
秋季:10月~11月
冬季:12月~2月
に大別できますが、実際にはどの時期に多く開催されているのでしょうか。
引用:株式会社ディスコ「2021 年卒・新卒採用に関する企業調査」
インターンシップの実施時期は、
2月⇒73.1%(前年74.4%)
8月⇒62.5%(前年53.3%)
9月⇒46.9%(前年39.1%)
と、2月開催が最も多いですが、前年と比べると夏季インターンシップを開催する企業の増加が目立ちます。
実施期間では、
1日以内⇒85.0%
2~4日以内⇒26.0%
5日間(1週間程度)⇒25.1%
2週間程度⇒12.0%
3週間以上⇒3.8%
という結果になりました。
また、同調査では約7割の企業が「インターンシップ参加学生に何らかの優遇策を講じる」と回答していることから、インターンシップを本選考に繋げるための手段として活用していることが伺えます。
2022年卒のインターンシップ
2020年は新型コロナウイルス感症拡大の影響によって、インターンシップの開催にも大きな変化が起きています。
引用:イグナイトアイ株式会社「22卒新卒採用計画・インターンシップに関するアンケート調査(SONAR ATSユーザー対象)」
イグナイトアイ株式会社のアンケート調査によると、2022年卒向けインターンシップは、
8月もしくは9月を含む期間に実施⇒9%
10月以降のみを検討⇒7%
であることから、開催時期は8月~9月が最も多いです。
一方、実施方法については「対面とオンラインを併用する」と回答した企業が46.9%と約半数を占めました。
全回答者の95%は昨年度(2021年卒)までに「オンラインでのインターンシップ経験がない」と回答していることから、多くの企業でインターンシップの実施方法について試行錯誤していることが読み取れます。
以上のことから、2022年卒のインターンシップは例年通りの時期に開催されるものの、多くの企業がオンライン化に踏み切るようです。
近年の学生動向
優秀な学生を獲得するには、学生の動向を把握しておく必要があります。
引用:マイナビ「2021年卒 マイナビ大学生 広報活動開始前の活動調査」
インターンシップに参加する学生の割合は、
2014年卒⇒32.1%
2018年卒⇒65.2%
2021年卒⇒85.3%
と年々増加しています。
また、平均参加社数も増加傾向にあることから、インターンシップが就職活動の一環として浸透していることは明らかです。
では、学生のインターンシップ参加意欲が高い時期はいつ頃なのでしょうか。
引用:株式会社ディスコ「2022 年卒学?の職業意識とインターンシップに関する調査」
上記は、株式会社ディスコが2022年卒の学生へインターンシップに参加したい時期について調査した結果です。
これによると、
8月⇒91.1%
9月⇒90.8%
12月・2月⇒58.1%
となっていることから、学生は夏季休暇中のインターンシップを重要視していることが分かります。
10月になると参加意欲は落ち着くものの、就活直前である12月~2月開催のインターンシップに関しては、再び参加意欲が高まっています。
学生がインターンシップに参加する目的
自社のインターンシップに参加してもらうには、「学生が何のためにインターンシップへ参加するのか」理由を知ることが重要です。
ここでは、学生がインターンシップに参加する目的や、人気の高いインターンシップについてご紹介します。
引用:マイナビ「マイナビ 2022年卒 大学生 インターンシップ前の意識調査」
マイナビの調査によると、
「どの業界を志望するか明確にするため」⇒8%
「どの職種を志望するか明確にするため」⇒0%
「視野を広げるため」⇒9%
「自分が何をやりたいのかを見つけるため」⇒0%
「特定の企業のことをよく知るため」⇒6%
「仕事に対する自分の適性を知るため」⇒4%
という結果になりました。
学生は進路を決めるのに役立つ情報を求めているため、業界や職種についての理解が深まるプログラムを求めていることが分かります。
ただし、就活の開始時期が迫ってくると、業界研究を済ませた学生は相対的に多くなるため、企業研究に役立つプログラムのニーズが高まると考えられます。
インターンシップのプログラムを考える際は、時期による学生の心境変化にも注目しましょう。
学生に人気の高いインターンシップ
では、どのような形式のインターンシップが学生に人気なのでしょう。
引用:マイナビ「マイナビ 2022年卒 大学生 インターンシップ前の意識調査」
同社による調査結果の上位5つは、
現場の社員に交じって業務を体験する「同行体験型」⇒2%
現場を社員の説明で見学する「職場見学型」⇒2%
業務を疑似的に体験する「ロールプレイング型」⇒7%
企業や業界について知識を深める「座学講座型」⇒39%
働いている社員と話せる「社員インタビュー型」⇒9%
です。
「同行体験型」や「ロールプレイング型」が半数以上を占めていることから、業務を体験できるプログラムの人気が高いと言えるでしょう。
また、「同行体験型」「職場見学型」「社員インタビュー型」の割合も多いため、企業理解促進に繋がるプログラムもニーズが高いです。
インターンシップの種類
インターンシップの種類は、
1dayインターンシップ…半日~1日
短期インターンシップ…数日~1ヶ月
長期インターンシップ…1ヶ月以上
のように、期間によって3つのタイプに分かれます。
1dayインターンシップ
1dayインターンシップは、1日のみ実施されるインターンシップです。
主に、
- 会社説明
- グループワーク/ディスカッション
- 社内見学
- 先輩社員との交流
といった内容が多く、大学3年生を対象として行われる傾向にあります。
1dayインターンシップは気軽に参加できる反面、時間が限られているため、仕事への理解度を深めるには、プログラムを工夫する必要があります。
短期インターンシップ
短期インターンシップは、数日から1ヶ月程度実施されるインターンシップのことです。
長期休暇中に行われることが多く「サマーインターンシップ」「ウィンターインターンシップ」と呼ばれることもあります。
企業から用意された課題を複数人で取り組むグループワークや、業務の疑似体験プログラムが多いため、企業や仕事への理解度を高める効果があります。
また、プレゼンテーションに対するフィードバックなど、社員との交流も図れるため、学生の応募意欲を向上させることも可能でしょう。
ただし、短期インターンシップは「○月○日~○月○日まで」のように、複数日程をまとめて開催することが多いため、開催時期によっては集客が難しいです。
長期インターンシップ
長期インターンシップは、1ヶ月以上実施されるインターンシップのことで、数年間かけて行われることもあります。
実際の職場で企業の一員として実業務に携わるため、時給や日給といった給与が発生することが多いです。
他のインターンシップとは違って「誰でもOK」というわけではなく、求人募集時時と同様、応募条件の設定や面接の実施によって、受け入れるインターン生を決定します。
長期インターンシップは実際の業務を行うため、企業側は雇う前に適性や自社との相性を見ることができます。
インターンシッププログラムの作成手順
インターンシップ実施の前例がなく、どのようにプログラムを作成したらいいのか分からない方も多いでしょう。
ここでは、インターンシッププログラムの作成手順についてご紹介いたします。
求める人物像の明確化
「誰に向けたプログラムなのか」が曖昧な状態では、適切なプログラムを組めません。
まずは「どういった人材を採用したいのか」を明確にさせ、その人材に合ったプログラムを考えましょう。
求める人物像は、
- 企業理念や経営戦略を確認
- 出てきた条件を分類(MUST/WANT/NEGATIVE)
- 人物像を設計
によって、明確化させます。
会社の目標を達成するには、「自社にどのような人材が、どのくらい必要なのか」を把握した上で、採用要件を決める必要があるため、経営戦略との連動は欠かせません。
経営陣や現場社員からのヒアリングを通して、どういった条件(スキルや知識など)が求められているのかをピックアップし、MUST(必要)/WANT(希望)/NEGATIVE(不要)に分類すると優先度が明確になります。
整理した条件を踏まえて、家族構成や性格、価値観、出身大学といった情報を実在する人物かのように詳細に設定していきましょう。
人物像が具体的になれば、その人が興味・関心を抱きそうな企画を考えやすくなります。
自社の魅力を整理する
求める人物像が明確になったら、その人が自社のどこに魅力を感じそうかを考えます。
企業の魅力は、
- 企業理念やビジョンへの共感
- 戦略の将来性
- 仕事のやりがい
- 事業や商品の競合優位性
- 風土への親和性
- 人材の多様性
- 職場環境の利便性
- 制度や待遇の充実度
に大別されます。
8つのカテゴリーを参考に自社の強みを洗い出していき、求める人物像の志向と一致するか確認していきましょう。
4つの軸からインターンシップのフレームを決める
ターゲットが自社のどういった部分に魅力に感じそうかが分かったら、インターンシップのフレームを決めましょう。
インターンシップは、
形式…疑似体験/グループワーク/セミナー 他
プログラム…業界理解/会社理解/仕事理解/スキルアップ 他
期間…1日/短期/長期
時期…夏季/秋季/冬季
の4つの軸から、絞り込むことができます。
例えば、仕事のやりがいについてアピールしたい場合は、仕事理解のプログラムを疑似体験形式で行うのが適切でしょう。
また、疑似体験のインターンシップを長期間自社で行えば、仕事や企業についての理解度は高まるでしょうが、その分手間やコストも掛かります。
そのため、インターンシップのフレームを決める際は「自社で実行できるかどうか」の視点で考えることが重要です。
学生は、インターンシップを就活の一環として認識していますし、今後は就活ルールが廃止される可能性もあります。
就活ルールが廃止されれば、採用活動が早期化すると考えられるため、インターンシップによる学生との早期接触がより重要となるでしょう。
今後さらにインターンシップが活発化する可能性を考え、今からPDCAを回して改善していけるよう、まずはインターンシップを実施することが大切です。
インターンシップの成功実例
インターンシップのプログラム作成手順が分かったところで、他社がどういったプログラムを実施しているのか見ていきましょう。
ここでは、インターンシップの期間ごとに成功実例をご紹介します。
1dayインターンシップ
まずは、1dayインターンシップから見ていきましょう。
ゲーム会社:A社
A社では、「モバイルゲームのデザインを作成する」デザイナー体験を行っています。
参加者数名でチームを作り、
- 企画書の作成
- ワイヤーフレーム作成
- パーツの作成
などを行い、最後にデザインを発表する形式です。
現役のデザイナーがチームに加わり、アドバイスや完成品に対するフィードバックを行うため、仕事の進め方や考え方など仕事への理解度が促進されます。
また、A社では、発表後に懇親会も開かれるため、他チームのデザイナーから話を聞くことも可能です。
実践的かつ有意義なインターンシップであるため、参加した学生からの満足度は高く、応募者獲得にも繋がっています。
<不動産会社:B社>
B社では、バトル形式のユニークな1dayインターンシップを実施しています。
バトル内容は、
スピード対応…1問1答の早押し対決
顧客視点…お題に沿ったマイホームの企画対決
提案力…ディベート形式によるプレゼンバトル
の3つで構成されており、バトル後には懇親会も開催されます。
また、バトル優勝者には懇親会のバーベキューで高級和牛がプレゼントされるため、学生の参加意欲や満足度を高められる面白いプログラムです。
学生からの評判も高く、本選考への応募率向上に繋がっています。
短期インターンシップ
つづいて、短期インターンシップの成功実例です。
IT企業:C社
B社では、5日間に渡る「オリジナルプログラムを開発する」エンジニア体験を行っています。
B社のインターンシップは、自社のチーム内にインターン生が参加する実践的な形式で、報酬が発生します。
具体的には、
- 企業や事業内容、部署の説明
- モデル設計やコーディング
などを行い、最終日には開発プログラムのプレゼンを行います。
実際のチーム内でエンジニア職を体験できるため、参加学生の企業や職業への理解を促進できるだけでなく、選考では判断しづらい能力・適性を見ることも可能です。
職場の人達と実業務に当たることで志望度向上に成功し、本選考への通過に繋がっています。
長期インターンシップ
最後に長期インターンシップの成功実例をご紹介いたします。
輸送機器メーカー:D社
C社では、理系学生を対象とした3週間の「技術職向け実務体験」を行っています。
C社の実務体験は複数のコースを用意しており、希望するコースでの実務体験ができるようになっています。
具体的なプログラムは、
初日…会社や業務に関する基本的知識・注意事項の座学研修
2日目…各コースに分かれ、参加予定の現場見学を実施
3日目~最終日前…各コースで実務開始
最終日…実務体験で得た成果物をチームごとに発表
です。
実業務に当たる際は、現場の社員がメンターとしてインターン生について様々な業務を体験するため、仕事の流れ・やりがいなどを伝えられます。
また、最終日のプレゼンでは、フィードバックを実施するため、インターン生のスキルアップにも役立ちます。
技術職は採用難易度が高いですが、インターンシップ参加者は本選考への移行率が高く、採用にも繋がっているそうです。
採用活動においてインターンシップの重要性は増している
インターンシップの実施企業や参加学生の割合は年々増加しており、平均参加社数も増え続けています。
インターンシップは、学生にとって就活の一環として認識されているため、優秀な学生を獲得するためには、欠かせないプロセスです。
まだインターンシップを実施したことのない企業は、短期間かつ少人数で実施できる「1dayインターンシップ」を検討してみてはいかがでしょうか。
通年採用の動きが出始めている今後は、インターンシップによる学生との早期接触が益々重要になるため、PDCAを回して改善できるよう早めに取り組みましょう。