採用活動における母集団とは、応募者だけでなく選考に参加する可能性のある人材も含めた集団のことを指します。

 

そして、採用成功のためには母集団の質と量を確保すること重要です。

 

適切な母集団形成ができれば「採用人数が目標割れした」「早期離職者が多い」といった課題を解決できるでしょう。

 

この記事では、母集団形成とは何か、母集団形成の重要性やメリット、手法、手順について解説します。

 

母集団形成とは

母集団形成とは

 

採用活動における母集団形成とは、自社の採用ターゲットになり得る人材を集めることです。

 

母集団形成では量が重要と考えられがちですが、実はそうではありません。

 

たとえば、

  1. 社会人経験3年以上
  2. 営業経験がある
  3. ビジネスレベルの英語力がある

といった人材を求めていても、新卒や英語ができない求職者ばかり集まっても、意味がありません。

 

マッチング度の低い母集団は、採用計画の達成に支障をきたすばかりか、採用担当者の工数増大にもつながるため、「量」と「質」を確保することが重要です。

 

母集団形成はなぜ重要なのか

まず、母集団形成はなぜ大切なのでしょうか。

 

労働者人口の減少

厚生労働省『一般職業紹介状況(令和4年5月分)について』

引用:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和4年5月分)について

 

2022年5月に発表された有効求人倍率は1.24倍です。これは売り手市場と呼ばれる状態で、採用市場に十分な求職者が存在していないことを意味しています。

 

人手不足に陥らないためにも、応募者を継続的に確保することは不可欠と言えます。

 

採用におけるミスマッチの防止

2021年10月に厚生労働省が公表した『新規学卒就職者の離職状況』によると、大卒就職者における3年以内の離職率は31.2%です。

 

母集団形成がうまくいかないと、目標人数に合わせた無理な採用が発生するため、ミスマッチが起こりやすくなります。

 

質の高い母集団形成で、入社後の早期退職を避けましょう。

 

母集団形成のメリット

母集団形成を図ると、3つのメリットを得られます。

 

求める人材を計画的に採用できる

企業の継続的な成長には、経営戦略や事業計画にもとづいた計画的な採用が欠かせません。

 

計画を立てずに成り行きで採用活動を進めた場合、採用のミスマッチや採用目標数に達しないといった事態に陥りやすくなります。

 

母集団形成を図る場合、自社の求める人物像や採用人数などを設定し、計画的に採用活動を行うため、採用のミスマッチや採用人数の不足が起こりづらくなります。

 

綿密な計画を練って、採用活動を開始することが大切です。

 

定着率の向上を期待できる

若年層に多い離職理由のひとつに、就業前のイメージとのギャップが挙げられます。

 

母集団形成をすると、自社の企業理念や社風を理解した応募者が増えるため、入社後のギャップが起きにくくなり、定着率の向上を期待できます。

 

採用コストの最適化につながる

3つ目のメリットは、採用コストの最適化です。

 

母集団形成を図る過程で、求める人材や採用人数が明確になるため、どのチャネルでどんな風に情報発信すれば良いかが見えてきます。

 

ターゲットに合った最適な採用手法・募集方法を絞り込めれば、余計な費用が発生することもないので、適正なコストで効率よく採用活動を行えます。

 

母集団形成の手法

母集団形成には様々な手法があり、メリット・デメリットはそれぞれ異なります。

 

手法ごとのターゲットやメリット・デメリットなどは、下表のとおりです。

  ターゲット 費用相場 メリット デメリット
求人媒体 顕在層 数十万円~数百万円程度 より多くの求職者にアピールできる マッチング度の低い求職者からも応募がある
採用サイト 企業に興味のある求職者

数十万円~数百万円程度

(HP新規作成時)

応募率や入社率などの歩留まりを改善できる

制作費がかかる

即効性がない

人材紹介 顕在層 採用者の理論年収の3割程度

母集団形成の手間がかからない

マッチング度が高い

採用コストが高い
合同説明会

顕在層

潜在層

数十万円~数百万円程度

(ブース数、地域による)

応募前の求職者と接触できる

認知度を向上できる

出展費用が高い
SNS

顕在層

潜在層

無料

(広告を出稿する場合は数万円/月~)

費用がかからない

公募では出会えない人材にも会える

長期的な運用が必要
ダイレクトリクルーティング

顕在層

潜在層

数十万円~数百万円

(成功報酬型・定額型がある)

企業が欲する人材にアプローチできる 求職者の志望度が低い場合がある
リファラル採用

顕在層

潜在層

紹介者へのインセンティブ程度

費用がかからない

マッチング度が高い

常に採用できるとは限らない

 

※顕在層…就職・転職活動を行っている層

※潜在層…就活前の学生・転職の意欲はあるものの活動していない層

 

求人媒体

一度により多くの求職者に求人情報を発信できます。

 

短期間で母集団形成できますが、要件に満たない求職者からのエントリーを防ぐことはできません。

 

Web媒体での掲載が主流ですが、フリーペーパーや新聞など紙媒体で掲載する方法もあります。

 

ターゲットとなる人材の特徴や地域によって、求人を出す媒体を使い分けましょう。

 

また、費用は掲載に対して料金が発生する「掲載課金型」の他、応募や採用といった成果に応じて課金される「成果報酬型」の2種類に分けられます。

 

採用サイト

企業で保有する採用サイトからエントリーを募る方法です。

 

求人広告やSNSと連動させると企業理解を促せるため、母集団の質が高まり、応募率や入社率といった歩留まりの改善につながります。

 

また、求人広告は掲載できる情報が制限されていますが、採用サイトは文字数や画像の枚数に制限がなく、デザインも自由です。

 

採用サイトのデメリットとしては、制作費がかかる点や即効性がない点が挙げられます。

 

人材紹介

企業からの要望を聞き、条件に合った人材を紹介するサービスです。一般的に「就職エージェント」と呼ばれています。

 

人材紹介はエージェントが採用候補者を探すため、企業側が母集団形成をする必要はありません。

 

また、ある程度スクリーニングされた状態の候補者と面接できるので、採用期間の短縮も可能です。

 

ただし、1名採用するごとに年収の3割程度の費用が発生するため、大人数を採用する場合には莫大な費用が掛かります。

 

合同説明会

合同説明会とは、一つの会場の中に複数の企業がブースを設置し、人材採用を目的とした説明会や面談を実施する採用イベントのことです。

 

大手人材会社や地方自治体などが主催するため、多くの求職者が来場することが多いです。

 

イベントの規模によってメリット・デメリットは変わりますが、求職者と直接接点を持てるため、工夫次第では自社に興味のなかった求職者を振り向かせることもできます。

 

一度に多くの求職者と接点を持てるため、短期間で母集団を形成できます。

 

一方で、求職者一人に割ける時間が限られることから、求職者の見極めや選考の時間はありません。

 

SNS

ソーシャルリクルーティングと言われるもので、InstagramやTwitterなどのSNSを通して採用活動を行う手法です。

 

アカウントの取得や情報発信、メッセージのやり取りも無料なので、他の手段に比べてコストがかかりません。

 

また、SNSは拡散力が強いです。そのため、工夫次第では就職・転職活動中の「顕在層」だけでなく、就活前の学生や機会があれば転職したいと考えている「潜在層」にまで、広く情報を届けられます。

 

ただし、成果が出るまでには時間がかかるため、長期的な視点で運用する必要があります。

 

ダイレクトリクルーティング

企業が直接、求職者へアプローチをかける採用手法です。

 

自社の求める人材に対して、ピンポイントでオファーできる点が最大のメリットと言えるでしょう。

 

ただし、オファー相手の意欲が低い可能性があるため、選考参加や入社への意欲を高める工夫が必要です。 

 

質重視の採用手法のため、大量採用向きではありません。

 

リファラル採用

縁故採用とも言われ、自社社員からの紹介を活用した採用方法です。

 

実際に働く社員からの紹介ということもあり、企業と求職者のマッチ度は高いです。

 

支払う費用は紹介者に対するインセンティブ程度で済むため、採用コストも大幅に削減できるでしょう。

 

しかし、タイミングよく求職者が見つかるとは限らないため、一般的には他の採用手法と併用してリファラル採用を行います。

 

母集団形成の手順とポイント

ここでは、適切な母集団形成を行うための、手順とポイントについてご紹介します。

 

採用の目的を明確にする

目的が曖昧な状態では、求める人物像や採用人数が分からないため、採用のミスマッチにつながります。

 

そのため、まずは何のために採用するのか、事業計画などと連動して目的を明確にしましょう。

 

たとえば、事業計画達成に向けた売上向上を目的とするならば、いくら売り上げるために、どういう人材が、いつまでに、何人必要なのかまで明確にします。

 

目的を明確化することで、求める人物像や採用人数、採用の期限が見えてきます。

 

採用人数、ターゲットの設定

採用の目的に沿って、行動特性や経験の有無、年齢、保有資格などを設定します。

 

経験者を募集する場合、ある程度の報酬を用意する必要はありますが、即戦力になります。

 

未経験者は経験者より報酬を低く設定できる上に、ターゲットも多いため、複数人の採用も可能でしょう。

 

しかし、活躍するまでには時間を要します。

 

様々な点を複合的に考えて、採用人数とターゲットを設定しましょう。

 

 

採用スケジュールと手法を決める

次は、採用スケジュールを決めて、母集団形成の手法を選択します。

 

目的の明確化により、いつまでに採用する必要があるのか期限が見えてくるため、ここから逆算して内定や面接、募集時期のスケジュールを立てましょう。

 

また、年代や経験の有無、業種などによって効果的な手法は異なるため、ターゲットが多く利用している採用手法・メディアを選ぶことが重要です。

 

採用活動の実施と振り返り

採用計画が完成したら実行に移し、採用活動終了後には、必ず活動を振り返りましょう。

 

たとえば、

  1. 予定通りの人数、人材が採用できたか
  2. 目的に合った手法を取れていたか
  3. コストに見合っていたか

など、細かく振り返ることで、改善点が明らかになり、次の採用活動に活かせます。

 

母集団形成で精度の高い採用を実現

母集団形成を図ることは、採用活動において重要です。

 

人手不足を避けられる、早期離職を防げる、採用コストを適正化できるなど、母集団形成にはメリットが多いです。

 

効率的に採用活動を進めるためにも、採用手法ごとの特徴を把握して、求職者にアプローチしましょう。

 

適切な母集団形成は精度の高い採用が実現するため、企業の発展につながります。

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