採用活動では「面接官による評価のバラつき」が課題として挙がります。
一般的な面接の評価は個人の主観に依存するので、面接官によって評価が分かれてしまいます。
面接官によって、評価がずれることで懸念されるのは「優秀な人材を逃す」「期待に反した人材を採用する」といったケースです。
構造化面接は、この評価のずれを少なくする手段として注目されています。
本記事では、構造化面接とは何か、メリット・デメリットや実施方法、質問例、注意点について紹介します。
有益な情報になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
構造化面接とは
構造化面接とは、評価基準と質問をあらかじめ設定し手順にしたがって面接する手法です。
もともと、構造化面接は臨床心理学などの調査研究で使用されるフレームワークでした。
しかし昨今、より公正な評価を行うための手法として、採用活動に構造化面接を導入する企業が増えています。
構造化面接は判断基準を標準化できるので、面接官による評価のバラつきを抑えられます。
面接手法 | 質問項目 | 評価基準 |
---|---|---|
構造化面接 | 同じ質問項目を、決まった順番で質問する | 一定の評価基準で評価する |
非構造化面接 | 面接官が自由に質問の項目と順番を考えて質問する | 評価基準に一貫性がない |
半構造化面接 | 同じ質問を決まった順番で質問したのち面接官が自由に質問する | 評価基準に一貫性がない |
非構造化面接との違い
非構造化面接とは、面接官が質問の項目と順番を自由に決めて質問する面接手法です。
会話に近いリラックスした雰囲気で進められるため、応募者の本音を引き出しやすいですが、相手の反応に合わせて面接を展開しなくてはなりません。
そのため、面接官の力量に左右されやすく、ある程度経験のある面接官でないと臨機応変な対応が困難です。
加えて評価基準に一貫性がないので、面接官による評価のズレが起こりやすくなります。
半構造化面接との違い
半構造化面接とは、同じ質問を決まった順番で質問したのち、面接官が自由に質問する面接手法です。
半構造化面接では、事前に決められた質問項目がありながら、面接官も自由に質問できます。
構造化面接より会話に近いリラックスした雰囲気で進められるため、応募者の本音を引き出しやすいです。
しかし、面接官が追加で行った質問は評価基準の一貫性がないため、バラつきが出ます。
構造化面接のメリット
次に構造化面接のメリットを紹介します。
面接官による評価のずれを防げる
構造化面接のメリットは、面接官が誰であっても評価基準がぶれることなく、公正に候補者を評価できることです。
構造化面接では、あらかじめ決まった基準・質問にもとづいて候補者を評価します。
そのため、面接官が自由に質問する非構造化面接に比べて面接官の主観が入りにくくなり、面接官による評価のずれを防げます。
採用後のミスマッチが起こりづらい
構造化面接を実施する際、採用要件をベースに評価基準と質問項目を決めます。
面接官は、統一された評価基準にもとづいて評価するため、評価のずれが少なくなります。
面接官の評価がずれた際に発生する「要件に合っていたのに落としてしまう」「要件に合っていないのに採用してしまう」といったケースを防ぐことが可能です。
そのため、採用後のミスマッチが起きにくくなるでしょう。
採用の効率化につながる
構造化面接では、全候補者に同じ内容で面接を進めるため面接前の準備に時間がかかったり、面接が長引いたりすることもありません。
また、面接結果を数値やデータとして管理できるため、入社後のマッチ度と照らし合わせながら、評価基準・質問内容のブラシュアップが可能です。
したがって、構造化面接は採用の効率化につながると言えるでしょう。
応募者の満足度が高い
事前に質問内容を決めることで面接官の主観にもとづく質問や、無駄な質問が減るため応募者は公正な評価が行われていると感じやすいです。
Googleの社内調査によると、構造化面接を受けて不採用になった応募者は、構造化面接を受けずに不採用になった応募者に比べて、満足度が35%高いという結果が出ています。
オンライン面談でも評価しやすい
あらかじめ、質問内容が決められた構造化面接で取得する情報は、言語情報のみです。
一方、質問内容が決まっていない非構造化面接では、身振り手振り、アイコンタクトといった非言語情報も重視されます。
しかし、オンライン面談は対面より得られる情報が少なく、通信環境などの影響も受けやすいため、非言語情報が得づらいです。
したがって、言語情報のみが結果に影響する構造化面接は、オンライン面談でも評価しやすいです。
構造化面接のデメリット
では、構造化面接のデメリットは何でしょうか。
応募企業への評価が下がる可能性がある
構造化面接では、あらかじめ決めた質問内容を候補者全員に質問します。
そのため、人によっては事務的、機械的な印象を与えてしまうこともあり、企業への好感度が下がってしまう可能性があります。
ただしGoogleの社内調査では、構造化面接を受けた応募者は、そうでない応募者に比べて35%も満足度が高いです。
このことから、構造化面接は企業への好感度が下がる可能性がある一方、候補者全体の満足度は高くなると言えます。
機械的な面接へ嫌悪感を抱く候補者が、一定数いることは割り切って、面接外のフォローなどで対策しましょう。
質問内容を検討するのに労力がかかる
採用要件に照らし合わせて最適な質問内容を考えることや、評価基準を標準化する作業は労力がかかります。
なぜなら採用担当や関係部署が納得する評価基準や、妥当性の高い質問を作るのは難しいからです。
各部署へのヒアリングを丁寧に行い、採用部門が目指す評価のあり方や構造化面接への理解を促すようなコミュニケーションが必要です。
質問内容が外部に漏れる可能性がある
構造化面接では、すべての応募者に同じ質問をするため、大規模に採用活動をする場合は、SNSや口コミサイトを通じて、質問内容が外部に漏れる可能性があります。
さらに、応募者が回答を用意してきてしまうと、正しい評価ができず、ミスマッチが発生する可能性があります。
質問内容が外部に漏れる可能性を踏まえて、質問内容の定期的な見直しが必要です。
応募者の新たな側面を見出しにくい
構造化面接では、事前準備した質問に対する答え以上の情報は得にくく、応募者の新たな側面や考え方については知ることができません。
面接自体が事前設定した仮説の確認的な機能しか果たさないため、採用される候補者の答えは、面接官の想定する範疇に留まります。
一次面接は、候補者に一律の質問をする構造化面接にして、二次面接は自由な質問をする非構造化面接にする、などの対策をとって多角的に評価しましょう。
構造化面接の実施手順
ここからは、構造化面接の実施手順を説明します。
求める人物像の明確化
最初に「どのような人材が欲しいのか」を明確にします。
漠然としたスキルや実績を定義するのではなく、企業の経営戦略や人材配置状況を加味して、要件設定しましょう。
仕事に対する価値観、企業へのマッチ度や募集する役職といった要素によっても求める人物像は変わるので、幅広い観点から考え、求める人物像を明確にしましょう。
評価項目や評価基準を定める
引用:Google re:Work『構造化面接を実施する』
構造化面接では、候補者の「何を」「どのように」評価するのかを決めます。
評価項目については「デザイン性」や「技量」といった、何を評価したいのかに合わせて作成します。
また、項目ごとの評価基準は「段階別」に用意することが重要です。
たとえば、評価項目がデザイン性なら「こうしたデザインであれば非常に良い、こうしたデザインであれば普通、こうしたデザインは悪い」という判断ができるように評価基準を決めます。
Googleが公表している構造化面接の評価基準表では、縦軸の評価項目に対する評価基準が段階ごとにそれぞれ設定されています。
応募者の回答を表に照らし合わせるだけで評価できるため、Googleの評価基準表を参考に作成すると良いでしょう。
起点となる質問をする
次に、設定した評価項目に合わせた質問を考え、評価の起点となる質問を行います。
たとえば、「主体性」が評価項目であれば、「これまで、自主的に行ってきたことはありますか」などの質問です。
フォローアップの質問で掘り下げる
起点の質問を軸に、候補者の回答に対するフォローアップの質問をして、内容を深掘りしましょう。
先述した「主体性」が評価項目であれば、「自主的に行ってきたこと」に対して「どんな目標だったのか」「そこから何を得たか」などを質問します。
評価基準にしたがって合否を判定する
面接終了後は、返答の内容から行った評価をもとに合否判定します。
構造化面接では、あらかじめ決めた評価基準に沿って評価を行い、評価基準に沿っていないものは評価しません。
構造化面接の質問例
構造化面接では、主に「行動」と「状況」に関する質問を組み合わせて行います。
それ以外の項目もありますが、「自己PR」や「雑談」などに関する内容では、統一された評価基準を設定しにくいため、おすすめできません。
ここでは、構造化面接でよくある「行動」と「状況」に関する質問について紹介します。
行動面接(過去の経験に基づく質問)
行動面接とは、候補者の「過去の行動」に関する質問です。
これは候補者の能力や、パーソナリティーを見極めることを目的としています。
行動面接では、人材に求めるスキルや能力と照らし合わせながら、候補者の過去の行動にスポットを当てた質問をします。
起点となる質問の後に、過去の状況、そのときの課題、実際のアクション、得られた成果について掘り下げる質問をしましょう。
【質問例】
- あなたの行動がチームに良い影響を与えたときの話をしてください。
- そのときの目標は何ですか。
- どうしてその目標を立てたのですか。
- チームメイトはどんな反応でしたか。
- どのようにどの目標を達成しようと行動しましたか。
- それによってどのような成果を得ましたか。
状況面接(仮説に基づく質問)
状況面接は、「もし~という状況だったら」という仮説のもと、未来志向の質問をすることです。
状況面接では、応募者がさまざまな状況にどのように対応するかを評価し、応募者の力量や本質を推し量ることを目的としています。
【質問例】
- 自分のミスに誰も気づいていない場合、どう対応しますか。
- これまでに経験のない仕事を頼まれたときは、どうしますか。
- 不満を抱え、怒っているお客様に対応する場合、どうしますか。
- あなたが広報担当者になったとして、企業の認知度向上のためにどのような企画を提案しますか。
構造化面接の注意点
最後に構造化面接の注意点を紹介します。
質問は定期的に見直す
構造化面接では、あらかじめ質問内容を決め、すべての応募者に同じ質問をするため、SNSや口コミサイトを通じて、質問内容が外部に漏れる可能性があります。
応募者が質問を事前に知り、回答を準備してきた場合、正しく評価できずミスマッチにつながります。
そういった事態を避けるために、構造化面接を実施する際は、質問を定期的に見直しましょう。
また、構造化面接では、企業の経営戦略や人材配置状況を加味して、質問内容や評価方法を考えます。
経営課題や社内状況が変わった際には、採用目的も変わり、構造化面接での質問内容や評価方法も変わるでしょう。
そのため、構造化面接では、質問の定期的な見直しが必要になります。
想定質問や誘導質問は避ける
応募者が事前に回答を準備できそうな質問や、採用企業が期待している答えを見透かされてしまうような質問は避けましょう。
たとえば、「志望動機は何ですか」「転勤はできますか」や「弊社が第一志望ですか」といった質問です。
こういった、回答を準備しやすい想定質問や誘導質問は、候補者の本音が見えづらいため、正当な評価を下しにくいです。
そのため、構造化面接では想定質問や誘導質問は避けましょう。
難問奇問はNG
かつて Google では面接の際、「ボーイング 747 の中にゴルフボールはいくつ収まりますか?」といった難問や、「もしあなたが 5 セント硬貨と同じ大きさに縮んで、ミキサーに入れられたとしたら、どうやって脱出しますか?」といった奇問を出題していたそうです。
そして、Googleは難問奇問に対する面接時のスコアとそれ以降のパフォーマンスを比較しました。
それによると、難問奇問を解く力は、仕事におけるパフォーマンスを予測できないことが判明しています。
さらには、一般的な認知能力と、難問奇問を解くための能力との間に相関関係がないと結論付けられました。
したがって、構造化面接で難問奇問を出さないよう注意しましょう。
他の手法と組み合わせる
構造化面接にはデメリットがあるので、別の採用手法も選考フローの中に取り入れましょう。
たとえば、構造化面接では、事前準備した質問への答え以上の情報は得にくいため、構造化面接は、事前設定した仮説の確認的な機能しか果たしません。
しかし、選考フローに面接官が自由に質問内容を決める非構造化面接も取り入れれば、さまざまな面を引き出せるので、多角的に評価できます。
他の採用手法を組み合わせて、構造化面接のデメリットをカバーしましょう。
構造化面接でミスマッチ減少
構造化面接を採用活動に取り入れれば、面接官による評価のずれを防止できます。
また、質問内容や順番が決まっているため、経験が浅くても採用面接に臨めるところも、メリットです。
とはいえ、構造化面接は採用において完璧な面接手法ではありません。
デメリットを理解して、適切に構造化面接を実施できれば、企業の発展に貢献する採用が実現できます。