ロジハラとは、必要以上に正論を突きつけて相手を傷つける行為のことです。
ハラスメントへの意識が高まった近年、パワハラやモラハラと合わせて、よく聞くようになりました。
「正論なのにハラスメントと言われるなんておかしい」「上司から詰められてつらい」など、お悩みの方も多いでしょう。
ロジハラは正論との境界線があいまいなため、無意識で行っている人もいます。
この記事では、ロジハラの概要から対処法までを詳しくご紹介します。
相手を追い詰めたり、ロジハラに追い詰められたりしないよう、正しい知識を身に付けましょう。
ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは
ロジハラ(ロジカルハラスメント)とはパワハラの一種です。
必要以上に正論を振りかざすことで、相手を傷つけ不快にさせる行為を指します。
ビジネスである以上、正論や論理は必須です。
そのため、
「正しいことを言っているのに、なぜロジハラと言われるのか意味不明」
「ロジハラの何が悪い」
と思う人も多いでしょう。
もちろん、論理的に言うことに問題があるわけではなく、「必要以上に正論を突きつけること」がロジハラに該当します。
ロジハラには、「ここまでは正論、これ以上はロジハラになる」という明確な基準がありません。
本人にまったく悪気がない場合も多々あるため、正論であっても相手を傷つけるような言い方にならないよう、注意が必要です。
パワハラの定義
ロジハラは、パワハラの一種に分類できます。
そもそもパワハラとは、「優越的な関係を利用し、業務上で必要以上・正当な範囲を超えた行動があり、これによって、労働者の就労環境が悪くなったり精神的な苦痛を与えたりすること」です。
たとえば、暴言を吐く、脅迫する、達成不可能なノルマを課す、無視をする、暴力をふるうなどの行為が、パワハラに該当します。
ロジハラとエモハラの違い
エモハラとは、感情に任せて相手を追い詰めたり、必要以上に感情を表現したりすることで相手を嫌な気持ちにさせる行為です。
ロジハラは論理がベースであるのに対して、エモハラは感情がベースである点が大きな違いです。
そのため、両者は正反対の意味として考えられることもありますが、相手を不快にさせる点ではどちらも違いはありません。
ロジハラは何が悪い?
「正論」や「論理的な考え方」は悪いものではなく、特にビジネス上ではとても重要です。
論理的な考え方を突き詰めすぎてしまった場合に限り、「ハラスメント」となりロジハラに該当してしまいます。
では、ロジハラは組織にどのような影響を与えるのかを見てみましょう。
相手を追い詰めてしまう
ロジハラを受けた人は、正論だからこそ相手へ言い返すことができず、自分を追い詰めてしまいがちです。
特に上司からロジハラを受けた場合、反論できないうえにどこからがロジハラに該当するかが分からず、「自分が悪いから仕方がない」と考える人も多いです。
ロジハラが原因で精神的に不安定な状態が続くと、心身に悪影響を及ぼし、最終的には休職や退職に追い込まれることもあります。
チームの雰囲気が悪くなる
ロジハラは、個人だけでなくチーム全体にも悪い影響を及ぼします。
論理的に相手を説き伏せるロジハラが横行していると、ちょっとしたミスで「自分も火の粉を被るかもしれない」との意識が働き、多くの人がプレッシャーを感じます。
強いプレッシャーはチームメンバーを委縮させ、能力を発揮しづらくなるため、自由な意見交換さえ難しくなることも多いです。
ロジハラが起こりやすい場面
ロジハラは、下記の場面で起こりやすいとされています。
- 部下や同僚がミスをしたとき
- 会議やミーティングのとき
- 上司に報告するとき
それぞれの状況について、詳しく見てみましょう。
部下や同僚がミスをしたとき
部下や同僚がミスをした際に、ロジハラが起こりやすいです。
ミスに対して注意することは必要ですが、必要以上に正論を振りかざして部下を責めると、ロジハラとなってしまいます。
また、普段は対等な立場の同僚でも、ここぞとばかりに正論を突きつけて注意することでロジハラが発生することもあります。
会議やミーティングのとき
会議やミーティングは、本来参加者が全員で意見を出し合う場です。
全員が臆せず意見を出し合うのが理想ですが、周りの意見を無視して正論をバシバシと打ち出し、独壇場となる人もいます。
特に、その場で一番上の立場になる人は、正論を押し付けやすい状況にあるため注意しなければなりません。
会議やミーティングでのロジハラは、参加者複数人が被害に遭うことが多いです。また、参加者を巻き込んで複数人でロジハラを行うケースもあります。
上司に報告するとき
上司に報告するタイミングも、ロジハラが起こりやすいです。
報告時は上司と部下という優劣の構図がハッキリしていて、上司は部下に対して指摘や注意をしやすいためです。
どんなに良い報告をしても褒められず、ひたすら改善を求められるなど、部下としては大きな精神的負担を強いられることもあるでしょう。
このタイミングでロジハラを受けると、部下は報告だけでなく相談や連絡があっても、上司に声をかけることを躊躇するようになります。
何をするにしても「また言われるのではないか」という不安が先に立ち、部下は思うように動けなくなってしまいます。
ロジハラ上司の特徴
ただ正論で返答されているだけなのか、ロジハラに該当するのかの境界線は、不明瞭で判断が難しい部分です。
そこで、ここからはロジハラをする上司の特徴をご紹介します。
- 自分が正しいと思っている
- 優位に立ちたい
- 相手が無能だと思っている
- 相手の気持ちが分からない
上記に当てはまる上司は、ロジハラをしやすいと考えられるため注意が必要です。
自分が正しいと思っている
自分が正しく、間違っているはずがないと考えている上司は、ロジハラをしやすい傾向にあります。
人の意見を取り入れず、自分の考えに絶対的な自信があるためです。
ものごとにはさまざまな面があるのが普通で、一方から見れば正論であっても、違う角度から見れば正論ではなくなることもあります。
しかし、自分が正しいと思っている場合、人の意見は耳に入らず自分の考えや見方だけが正しいと思い込む傾向が強いです。
これが上司の立場であれば、なおさら「自分が間違えるはずがない」と思い込みやすく、ロジハラにつながります。
部下は上司の正論を無理やり押し付けられて不快になりますが、上司は「ミスを教えてあげている」という親切心で正論を突き付けている場合もあるでしょう。
優位に立ちたい
相手よりも自分が上で、常に優位に立っていたいと考える上司もいます。
上司であることから、ビジネス上は部下よりも優位であるといえますが、このタイプの人はビジネスに限らずどのような場面でも優位を保持したがるのが特徴です。
相手よりも優位に立つことで優越感に浸りたいと考えるため、プライドが高い人も多い傾向にあります。
また、このタイプは人からの指摘や指図をを嫌がり、安心感を得るためにロジハラをする人が多いです。
相手が無能だと思っている
「相手が無能だから正論を教えてあげなければならない」と決めつけている人もいます。
このケースの場合、本当に無能かどうかは関係ありません。
相手が無能だと決めつけることで「自分は有能である」と感じたいため「自分が教えてあげなければ」という歪んだ正義感が暴走しています。
上司は必要だと思って正論を振りかざしているため、相手がいくら不快に思っても気づかないことが多いです。
相手の気持ちが分からない
ロジハラをする人の多くが、相手の気持ちを汲むのが苦手とされています。
相手の気持ちが分かる人であれば、相手の話を聞いて妥協点を見つけ、ものごとを解決できるためです。
相手の気持ちが分からない人は、相手への配慮も考えません。
相手の意見を聞いたり価値観を共有したりできないため、ただ自分の言葉に酔っているだけと思われ、ロジハラ認定されてしまいます。
上司が行うロジハラの対策法
無意識のロジハラを防ぐためにも、
- 人前で叱責しない
- 共感しながら相手の話をよく聞く
- 言い方を配慮する
- 正論が常に正しいとは限らないことを理解する
の4つのポイントを念頭に置いて行動することが大切です。
それぞれのポイントについて、詳しく見てみましょう。
人前で叱責しない
人前での叱責は、相手の自尊心を傷つけます。
わざわざ人前で叱責すれば、部下はより不快になりますし、いくらロジカルに説明しても受け入れられないでしょう。
そこで、不必要に人目にさらすのではなく1対1の状況を作って話をすることが大切です。
部下のことを考えればこそ、叱責などのデリケートなシーンは、プライベートな話ができる空間を選んで行う必要があります。
共感しながら相手の話をよく聞く
一方的に正論を押し付けると、ロジハラになってしまいます。
そのため、相手の話は共感しながらよく聞くようにしましょう。
相手の考え方やものごとの経緯をしっかり聞けば、相手の言い分を知り本質を見極め、適切な対応を講じることも可能です。
共感しながら話を聞くことができれば、一方通行のコミュニケーションではなくなり、相手に受け入れてもらいやすくなります。
言い方を配慮する
どんなに正論であっても、言い方の配慮を忘れてはいけません。
相手が理解しやすい言葉を選び、状況に合った適切な伝え方を心がけましょう。
怒っている時は言葉も伝え方も乱暴になりがちなので、一度頭を冷やしてから、感情抜きで冷静に伝えることがポイントです。
正論をただ振りかざして説き伏せるのではなく、相手に伝わりやすい言葉を選ぶなどの「配慮」をすることで、ロジハラを回避できます。
正論が常に正しいとは限らないことを理解する
ものごとにはさまざまな側面があります。
一方的に見れば正論であっても、ほかの角度から見れば正論ではなくなることもあるでしょう。
「正論だから間違っているはずがない」と最初から決めつけるのではなく、相手の話を聞き状況をさまざまな視点から見て話すことが大切です。
企業が行うロジハラの対策法
ロジハラが横行すると、休職者や離職者の増加につながります。
企業が行うロジハラの対策法としては、下記が有効です。
- 企業の方針を明確にし、周知する
- ハラスメントに関するルールを定める
- 社内アンケートを実施する
- ハラスメント研修を行う
- 相談窓口を設置する
ここからは、対策法を一つずつ見ていきます。
企業の方針を明確にし、周知する
全社を挙げてロジハラ対策を行うなら、まず企業としての方針を明確にする必要があります。
「ロジハラは容認しません。発覚した場合は相応に対処します。」など、企業としてロジハラへの考え方や対処法を明確にしましょう。
「ロジハラは許さない」方針を一企業として外部に発信するだけでなく、社内に周知します。
社内に周知することで、社員それぞれに対して企業が目を配っていることを伝えやすくなります。
ロジハラに限らず、さまざまなハラスメントを含めた方針を公開するのも効果的です。
ハラスメントに関するルールを定める
万が一ロジハラなどのハラスメントがあった場合、どのような対処が行われるのかについても明確にしておきましょう。
厳重注意や減給、停職、状況によっては退職を勧告することもあるかもしれません。
対処法を明確にルールとして定めておくと、ハラスメントの抑制に大きな効果を発揮します。ルールを決めたら、社員全員に周知しましょう。
社内アンケートを実施 する
ハラスメントを受けている人の中には、誰にも相談できず一人でひたすら耐えている人もいるでしょう。
そこで、社内でアンケートを実施してみましょう。
面と向かって相談できない、相談できる人がいない場合でも、アンケートなら現状を打ち明けやすくなります。
アンケートは集計者のみが閲覧できるようにし、秘密を保持しつつ状況を把握・改善できる仕組みを作ることが大切です。
ハラスメントについて言及するだけでなく、〇×の回答形式でストレス度合いや精神的な状態を測るのも良いでしょう。
定期的に社内アンケートを実施することで、ハラスメントへの早期対処が可能です。
従業員の離職リスク把握や適材適所の配置を実現したいとお考えの方は、人事管理システム『ヒトマワリ』がおすすめです。社内アンケートも簡単に行えるため、社内環境の改善にも役立ちます。
ハラスメント研修を行う
研修を行うと、企業としてハラスメントを容認していないことを伝えられるだけでなく、対処法を効率的に教えられます。
ハラスメントとは具体的にどのようなことなのか、実際に被害に遭ったらどう対処すれば良いのかなどを、分かりやすく伝えましょう。
また、研修の実施によって「もしかして自分はロジハラをしてしまっているかも?」と気付きを促すきっかけになります。
被害者を守るだけでなく、無意識のまま加害者になるのを防ぐためにも、ハラスメント研修で知識を深めましょう。
相談窓口を設置する
いくらハラスメントの知識があっても、相談できる先がなければ改善は見込みにくくなります。
そこで、誰でも気軽に相談できる窓口を設置しましょう。
窓口を設置したら、全社員がいつでも相談できるようにしっかりと周知することが大切です。
また、相談窓口の仕組みもしっかり作っておく必要があります。
守秘義務を徹底し、事実確認を適切かつ迅速に行うなど、相談があった際の動き方をマニュアル化しておきましょう。
窓口担当者には別途勉強会を設けるなど、適切な対応をするための準備も欠かせません。
ロジハラ上司への対処法
ロジハラを受ける当事者となってしまったら、適切な対処をすることが大切です。
何もせずにただ耐えるのではなく、少しでも状況が改善するように、下記の対処法を試してみてください。
- ロジハラ上司と距離を取る
- 自分の気持ちを伝える
- 会社や信頼できる上司に相談する
ロジハラ上司と距離を取る
できる限り、ロジハラをしてくる上司とは距離を取りましょう。
どんなに相手が変わるよう願ったとしても見込みは薄いため、これ以上精神的な被害を受けないためには、近付かず関わらないようにするのがベストです。
部署異動を申し出て物理的な距離を取るのも、良いかもしれません。
仕事上どうしても距離を取れない場合は、可能な限り上司と接する時間を減らしてみてください。
報告は事前に要点をメモにまとめて短時間で終わらせるなど、ちょっとした工夫で距離を取れます。
また、上司からいわれたことは真に受けず、受け流すことも大切です。
自分の気持ちを伝える
相手に直接、自分の気持ちを伝えるのも有効です。
「それは、ロジハラです。」など直球で伝えると、対応が変わる可能性があります。
もちろん、全員に効果があるわけではないですが、いわれて初めて「ロジハラをしていたんだ」と気付く上司もいるため、一度試してみるのも良いでしょう。
伝える際には、あくまでも冷静に、責め立てるような口調を避けることが大切です。
相手の感情を逆立てしないよう、落ち着いたトーンで伝えましょう。
会社や信頼できる上司に相談する
ロジハラの悩みを一人で抱え込んでしまうと、精神的な負担がどんどんと増えて追い込まれてしまいます。
そうなる前に、会社や信頼できる上司に相談してみてみてください。
同僚へ相談するのも良いですが、相談窓口や上司のほうが早急に対処してもらえる可能性が高いです。
誰かに相談するのは勇気がいりますが、相談せずに一人で抱え込んでいてもロジハラはなくなりません。
ほんの少し勇気を出して、まずは信頼できる相手に相談してみましょう。
ロジハラ発生時の対処法
ロジハラがあった場合、企業側は適切に対処しなければなりません。
対応を間違えてしまうとロジハラを悪化させてしまうこともあるため、下記の流れで対処するようにしましょう。
- 事実関係を確認する
- 関係者に必要な措置を講じる
- 再発防止に取り組む
それぞれについて、ご紹介します。
事実関係を確認する
最初に、必ず事実関係を確認しましょう。
この時のポイントは、当事者全員から話を聞くことです。
どちらか一方だけの話を聞くと、主観が入ってしまい事実関係が分からなくなるためです。
話を聞く際は、それぞれ個室でしっかりヒアリングするようにしましょう。
また、ロジハラの被害に遭った人のプライバシーを守り、意思を尊重する配慮も必要です。
二次被害やハラスメントの悪化を防ぐために、適切で迅速な対応を心がけましょう。
関係者に必要な措置を講じる
事実関係が確認できたら、関係者全員に対して必要な処置をそれぞれ講じる必要があります。
加害者側には、処罰を与えるなどの処置を講じましょう。
会社に該当する規約がある場合には、規約に沿った処置をします。
一方で被害に遭った社員には、精神的なケアや就業環境を改善するなどの対処が必要です。
「医療機関へつなげる」「カウンセリングをセッティングする」といった精神的なケアのほか、働きやすい環境を整えるための部署異動なども検討しましょう。
再発防止に取り組む
しかるべき処置を講じた後は、社を挙げて再発防止に取り組むことも重要です。
就業環境や社員の人間関係などを見直し、ロジハラなどのハラスメントが起こりやすくなっていないかをチェックし、改善しましょう。
社員全員が精神的に余裕を持って仕事に取り組めるように、残業を減らしたり業務の効率化を図ったりするのも有効です。
また、ハラスメント予防のための研修を定期的に開催し、再発防止を社員に意識づけるなどの取り組みも必要です。
ロジハラ対策で労働環境を整えよう
いくら上司だからといっても、部下へのロジハラは許されません。
「ロジハラかもしれない」「精神的につらい」と感じたら、早めに信頼できる人や会社の相談窓口へ相談しましょう。
一人で悩んでいても解決は難しいだけでなく、場合によってはロジハラが悪化する可能性もあります。
企業はハラスメントの研修実施やルールづくりによって、ロジハラをしない・させない体制を整えましょう。