働き方改革という言葉が注目されている中、大手企業をはじめ多くの企業で導入が増えている「ノー残業デー」。
言葉の通り、残業せずに定時退社を推奨する取り組みですが、実際に導入したものの社員に浸透せずうまく機能していない…というケースも多いようです。
ここでは、ノー残業デーの導入や運用におけるポイントをご紹介します。
ノー残業デーの目的って?
「ノー残業デー」とは、残業をしないで定時に退社する日のこと。
一般的には、企業が週に1~2日ノー残業デーの曜日を決め、毎週その曜日は定時で帰るように社員に働きかけます。
そもそも所定労働時間を超える残業を含む長時間労働は社会的に問題視されており、労働時間削減の施策の一つとして導入する企業が増えています。
もともとは1970年代からあった取り組みで、特に1990年代以降に労働時間増加への警鐘が強まったり、ワークライフバランスという言葉が広まったことによって、その施策としてもノー残業デーが一層注目されました。
現在まで導入する企業が増え続けている一方、「決まった曜日ではなく毎日残業せずに定時で帰れるようにすべき」という声もあり、近年はその在り方自体を見つめなおす時期にきているかもしれません。
とはいえ、ノー残業デーは企業が行なっている長時間労働対策としては最もポピュラーであり、2016年に実施したアンケート調査によると(一般社団法人 日本経済団体連合会実施:全国270社)、長時間労働削減の取り組みに対して「ノー残業デーの徹底」が67.8%と最も高いことがわかっています。
ノー残業デーがもたらすメリット
ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスは、プライベートの充実と仕事の充実を結びつけ、プライベート(オフ)と仕事(オン)のメリハリをつけることで相乗効果が生まれるとするもの。
ノー残業デーに自分の時間を作ってプライベートを楽しむことにより、オンとオフの充実=ワークライフバランスを取り戻すことができます。
労働生産性が向上する
定時退社の日を設けることで、社員に時間管理の意識を高めることができます。
残業ありきの仕事の仕方ではなく、定時までに終わらせるために効率の良い業務の進め方を考えるようになります。
社員1人1人のそういった意識が会社全体の生産性を高めていきます。
残業代・光熱費などの経費削減
社員が残業をすると、残業代や残業時間の電気・空調代などコストは嵩む一方。
確かに長時間労働に報いるための必要なコストではありますが、ノー残業デーによって残業をしない働き方が浸透すれば、残業代やオフィスにかかるコストが削減できます。
社員のスキルアップ
ノー残業デーを利用して習い事や自分の能力を伸ばすための活動ができます。
1人1人がスキルアップの時間を作ることができれば、企業にとっても優秀な人材が増えることになり、結果として社員と企業どちらにもメリットをもたらすことにつながります。
ノー残業デーの誤った運用によるデメリット
別日に業務のしわ寄せがいく
定時というリミットを作っても、業務の効率化を考えなければその仕事の進捗が滞り、先延ばしになるだけです。
結局別日にしわ寄せがいくという事態に。
ノー残業デーはただ早く帰れる日ではなく、「仕事を効率化して生産性を高める」という目的を会社全体にしっかり伝えましょう。
急ぎの依頼に対応できない
ノー残業デーは、急な依頼がある会社にとっては「仕事ができない日をわざわざ作ってしまう」ことになり、顧客に迷惑がかかったりすることも考えられます。
ノー残業デーを取り入れる最大のデメリットは日程調整が難しくなることです。時期や仕事量に合わせた導入を検討してみましょう。
管理職の負担が増える
管理職にノー残業デーを適用しない企業の場合、いくつかのデメリットを生むことになります。
例えば、ノー残業デーに管理職だけが遅くまで社内に残っている。管理職に仕事のしわ寄せがいく…という事態。
管理職のワークライフバランスが改善できず、スキルアップや労働生産性の向上を妨げる要因になる可能性があります。
ノー残業デーを導入する際には、その目的を考慮した上で適用範囲をしっかり検討し、会社全体にメリットをもたらす制度にすることが大切です。
導入と運用の注意点
このように、ノー残業デーの導入は、ワークライフバランスを改善したり労働生産性を高めるメリットをもたらす一方で、誤った運用をしてしまうと、仕事が滞って別日の残業が増えたり管理職への負担が増えるなどといったデメリットも生んでしまうことがわかりました。
業種や職種によってもしっかり見極めて適切な運用をしないと、なかなか残業時間も減らず、そのうち制度自体を使っている社員も減っていき、結局ノー残業デーの形骸化につながってしまいます。
形骸化させないためには、「ノー残業デーを設定する目的を明確にしてしっかり伝えること」「会社全体で取り組む姿勢を社員に示すこと」、そして「有効に機能させるための施策を徹底して検討すること」が大切と言えます。
まとめ
長時間労働の削減に向けた取り組みで最も利用されているノー残業デーですが、導入するメリットがある一方で、制度が形骸化し逆に社員の負担が増えるなどのデメリットもあります。
導入にあたって、そもそも労働時間削減に対してノー残業デーが的確な施策なのかをよく検討したうえで導入することが大前提です。
そして導入後も、その運用を社員に意識して促すこと、仕事のしわ寄せが特定の社員に偏るなどの問題が起きていないか定期的にチェックする機能を設けることが重要です。
将来的には、ノー残業デーを設けなくても社員がワークライフバランスの充実を図りながら、モチベーション高く業務に取り組めるような組織づくりをしていきましょう。