長時間労働やパワハラなど労働環境が起因でのメンタルヘルスの不調は、現代社会が抱える誰にでも起こりうるトラブルの一つとして認知され始めています。
それに伴う休職も当たり前となりつつある現在だからこそ、もし休職希望者が出た際にどんな対応するべきなのか確認していきましょう。
休職制度とは
「休職」とは勤務を続けることが不適当になってしまった場合、現在の地位を維持したまま一定の期間、勤務を停止することを言います。
休職には会社都合と個人(労働者)都合がありますが、自身の体調や精神的要因の場合は個人(労働者)都合となります。
最近では耳にすることも多い休職制度ですが、この制度自体は法律で定められた制度ではありません。
つまり各法人毎に設ける義務はないのです。
労働基準法で定められているわけではないのに、各企業が休職制度を設けているのは何故でしょう?
それは企業のメンタルヘルス対策への関心の強さや、従業員の健康配慮を推進する風潮の表れとも言えます。
実際に厚生労働省の労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいるという企業は全体の43.6%(平成23年)から59.7%(平成27年)と増加しています。
休職制度を設ける場合の注意点
では休業制度を新たに社内規定として設けるためにはどのような項目が必要なのでしょうか。
先に示したように休職制度に法律上の義務付けはないため、休職制度の内容は会社が自由に決めることが可能です。
あくまで会社の福利厚生の一環として設ける制度にも関わらず、規定によってはトラブルの原因になってしまう場合もあるため充分な注意が必要です。
休職制度を実際に導入する際に最低限、定めておくべき事項は4つです。
(1)休職を認める理由の基準「休職理由」
(2)最長期間やその他、社歴や貢献度によって日数に差異を設けるか、復職後再度休職した際の期間計算方法「休職期間」
(3)個人が休職を希望してきた時から休職辞令を出すまでの流れの詳細、提出書類など「休職手続き」
(4)復職可能と判断する基準や、休職者が復職と再休職のループに陥らないため「復職条件と復職までのフロー」
上記のほか、休職期間中の賃金の処遇や社会保険料の扱い、傷病手当金など金銭に関わる規定はトラブルが起こりやすいため注意が必要です。
休職制度を新たに導入した場合、改正した就業規則に労働者代表の意見書を添付して、所轄の労働基準監督署へ提出して完了です。
休職希望者の対応について
休職に入る際、多くの会社では「医師からの診断書で休職の指示があったり」「病気による欠勤が●日以上継続」ほか、本人から申出がある場合を条件としています。
実際に休職までの流れを見てみましょう。
(1)医師からの診断書・休職願いを確認し、休職理由に該当するかを判断
(2)休職希望者についての情報を上司から収集する
(勤務時間や先輩・後輩間や同僚間での問題がなかったか、職場環境を確認)
(3)休職の原因が労災に該当するかどうかをチェック
(4)休職希望者に対して休職に関する書面を交付し、社内規定に従って休職中の給与有無や病床手当金の申請、休職可能期間、復職条件の確認、職場復帰の際の申出の順序と必要書類などの内容を伝える
休職までの道筋を休職希望者としっかり確認しておきましょう。
休職が決まった際は個人のプライバシーの観点から社内への情報公開は充分な注意が必要です。
休職中は、きちんと休んでもらうために会社の携帯やパソコンは使えないようにしている企業が多く、休職中は必要な時に必ず連絡がつく連絡先を把握しておくことも大切です。
復職後のフォロー
そもそも休職制度は、休職に至った問題を解決させ復職することが前提の制度です。
しかし本人が復職を希望しても、第三者から見て復職は厳しいと判断する場合もあります。
その判断として主治医の診断書を提出するほか、産業医や会社の指定する医師との面談をもとに会社が判断します。
この時、会社は退職強要や復職を認めないということはできません。
とは言え休職からの復職についてはまだまだ課題も多く、復職と休職を繰り返すという事例も多々あります。
そういった際には産業医との面談や厚生労働省が作成したチェックシートなどを用いて、復職をより慎重に判断していきます。
復職が可能と判断された際は、時短勤務や部署の異動などの就業制限を設けながら個人のペースで職場に戻れるようフォローしていきましょう。
まとめ
休職制度の内容はあくまで各企業任意となります。
様々な企業で休職制度を導入し始めていますが、実際には休職期間中の給与の支払いや健康保険の対応など裁判に発展しているものも多数あります。
特に金銭が関わってくる項目については、制度を決める時にこれを機会に社内規定に休職制度を導入するか否かを検討してみても良いのではないでしょうか。