2018年6月29日、参院本会議で「働き方改革関連法案」が可決・成立しました。
労働者保護のために、多くの内容が盛り込まれたこの法案。
今回は、その中でも企業へ与える影響の大きい「5日間の有給休暇取得の義務化」について、その概要から背景、企業に与える影響などをまとめました。
平成31年4月1日の施行に向けて、今からそのポイントをしっかりと押さえてきましょう。
「有給休暇の義務化」の概要
今回の法案でも目玉ともいわれる有給休暇の取得義務化。
概略だけ簡単に説明すると「年10日以上の有給休暇取得の権利がある従業員は、最低でも5日以上は有給休暇を取得させることが企業の義務になった」というものです。
正社員やフルタイムの契約社員ではすべての従業員が該当となり、これからの働き方が大きく変わる可能性があります。
もし、有給休暇を取得させなかった場合や、有給中に労働を課した場合は、労働基準法違反で企業側に罰則が与えられるようになっており、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
年5日以上の有給が取得されていない場合、企業側が指定して必ず有給を取得させる必要がありますが、そうなる以前に既に5日以上の有給を取得しているケースや、計画年休制度で年5日間の有給休暇が付与されているケースの場合は、これに該当することはなく、大きな影響を受けることがないと予想されます。
有給休暇が義務化になる背景
そもそも、何故このようなルールが今回の法案に盛り込まれたのでしょうか。
その背景には、日本の有給取得率が世界各国に比べて低いという理由が挙げられます。
「エクスペディア・ジャパン」が2017年に実施した調査によると日本の有給休暇取得率は53%で、調査対象となった世界30か国の中で最も低い水準となっていました。
過去の調査でも、日本はほぼ最下位で、有給休暇が取りにくい国というイメージが定着してしまっているのが現状です。
なぜ日本人が有給休暇を取りたがらないのかということも、この調査を通じて浮き彫りになっており、「有給休暇の取得に罪悪感がある」、「上司が有給取得に協力してくれるか分からない」と考える人の割合が最も多いようです。
導入に伴う会社や業績への影響
日頃から有給休暇を取得することを推奨し、高水準の取得率をキープしているような会社であれば、今回の義務化に伴って大きな影響を受けることはありませんが、社員があまり取得しないような会社の場合、大きな改革が求められる可能性があります。
特に人事にとって大きな課題となってくるのは、社員の有給休暇の取得状況の把握です。
万が一にも見落としがあり、既定の取得を達成できていなかった場合、罰則の対象となってしまいますので、今以上に従業員全体の動きに目を光らせていくことになるでしょう。
また、5日間の有給休暇取得に伴い、業績に影響を与える可能性も示唆されます。
特に労働集約型のサービスを行っている企業では顕著になることが予想されますので、業務上の無駄を省くための改善に取り組む必要がありますし、売り上げの維持が難しければ、根本的な報酬に関するシステムから見直すことも迫られるでしょう。
また、特定の社員しかできない業務に対するリスクヘッジも求められます。人材の育成や引き継げる体制の確立など、多くの課題が生まれてきます。
企業の対応はどう変わる?
上記のような課題だけを見ると、企業にとっては由々しき問題に見えるかもしれません。
しかし、このことを転機として労働環境の改善や業務効率の改善につなげていくことで、大きく業績を伸ばしたり、社員の定着率を向上させることができるチャンスでもあります。
法律の施行までまだ猶予がありますので、今のうちから無駄を洗い出し少しずつ業務を改善していくことで、法律施行後も無理なく移行を進めていくことができます。
また、夏季休暇などがない企業であれば、これを機に計画年休制度を導入し、新たな連休を作るという手もあります。
個別の管理に比べ確実に有給を取得させることができるため、管理コストも大幅に削減することができますし、有給取得に抵抗がある社員も一律で取得してもらえるため、効率的に導入を進めることが可能です。
まとめ
長時間労働の是正、有給休暇の取得など、社員の働き方が大きく変わりつつある昨今。
会社としても、そんな働き方改革の流れをしっかりとキャッチアップし、順応していくことが求められています。
今回の法案可決を機に、今一度会社の労働環境を見直し、従業員のモチベーションアップや会社の業績向上に繋げるためにどういった方法があるのか、今一度検討してみても良いかもしれません。