昨今、メディアを賑わせているAI(人工知能)。

 

将来は人間の仕事がAIに奪われてしまうのではないかという危惧の声が上がるほど、急激な進化を遂げています。

 

人事分野においても、「HRテック」という言葉が巷をにぎわせており、AIを活用した人材管理に注目が集まっています。

 

今回は、そんなAIによる人事の仕事の変化や未来について、解説したいと思います。

 

“AI化”される人事の仕事とは?

人事の仕事と言っても、事務的な作業から採用、教育、メンタルケアに至るまで、その業務は様々です。

 

では、AIの発達によって、どこまでAI化が進むのでしょうか?

 

結論から言えば、いずれはすべての仕事にAIが介在する可能性は高いと予想されています。

 

特に給与計算、社会保険の手続き、年末調整などのデータ処理は近い将来自動化が進んでいくと言われており、既に自動化している企業もあるようです。

 

また、これまで経験則に基づいて行われることが多かった人事評価や採用についても、経歴や実績、スキル、特性、モチベーションなどの情報をもとに社員のビッグデータを作成し、その情報に基づいて判断していく技術の開発も進んでおり、一部企業では部分的にAIを導入し、人事に現場で役立てているという事例もあります。

 

これらのAIの導入は、無駄な業務を削減し効率的な人材開発を実現したり、人の感情による揺らぎのない公平な評価に役立つものとして、今後の人事の仕事に大きな影響を与えていくでしょう。

 

“AI”の導入による人事の変化

高度に進化したAIを導入することで、人事の仕事はどのように変わっていくのでしょうか。

 

大きく様変わりする可能性があるのは、単純事務作業が大幅に削減されるということです。

 

煩雑になりがちな人事の事務作業において、このメリットは非常に大きく、空いた時間を人員の能力評価や、採用活動などに力を注ぐことを可能にします。

 

また、人材活用という面においても、データ分析に基づいた傾向を見分けられるようになるため、適材適所への人材の配置や優秀な人材の確保などに役立てることができます。

 

逆に、面接やカウンセリングといった人が介在しなければできない業務は変わることはありません。

 

ですが、これまで以上に詳細に情報を得ることができるようになるため、事前の準備や対応などに大きく貢献することは間違いないでしょう。

 

“AI化”の落とし穴

一方で、AIを活用した人事に対する課題も見つかっています。

 

2018年10月、AmazonがAI採用を男性優遇の判定があるとして廃止したニュースが世界に飛び交いました。

 

AIは集積されたデータから傾向を分析し、ディープラーニングによってその内容を学習することで、高度な判断を可能にしています。

 

Amazonが導入したAIでは、過去10年に渡って受け取ってきた履歴書をもとにディープラーニングを行っており、その履歴書の大半が男性であったため、AIが男性を優先して選ぶように訓練されてしまったことに原因がありました。

 

Amazonでは、これらの条件を中立なものとして判断するよう修正を行いましたが、実際に他の分野の判断においても、本当に性別による偏りがないかを自信をもって確認できなくなったため、今回のように廃止するという事態になったようです。

 

今回のケースでは、もともとテクノロジー産業の分野が男性優位だったことも原因として挙げられていますが、根本的にディープラーニングに活用したデータに何らかのバイアスを含まれていると、結果としてAIもバイアスを持った結果を学習してしまい、公平性を欠いた人事になってしまう恐れがあります。

 

採用のみならず、異動や査定など、今までの人事が公平に行われていたかどうかの精査をしていくことも、人事の現場でAIを活用していくためのポイントになります。

 

未来に向けて、人事としてやるべきこと

近い将来、人事分野へのAIの導入は、企業の経営において欠かせないものになってくることが予想されています。

 

では、将来的にAIの導入を進めていくにあたり、今の段階でどのような準備が必要になるのか簡単にまとめてみました。

 

人事が行っている業務の明確化

給与計算等に代表される定型的な業務、採用・昇格等の企画型の業務をひとつひとつ切り分けておくことで、段階的にAIを導入することができ、スムーズな移行が可能になります。

 

企画型業務の判断基準の明確化

AIも万能ではありません。

Amazonの事例のように、これまでの判断にバイアスがかかっていた場合、導入後に大きな問題に発展する危険性があります。

そうならないよう、何を基準に判断していくのか、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

 

IT技術やトレンドに対する理解

どんなに優れたAIを導入したとしても、最終的に管理は人の手によって行われます。

自分たちが扱うことになるAIに関する理解のみならず、ITの分野で何が起こっているのかを常にキャッチアップしていくことが、今後求められることになるでしょう。

 

導入に向けての社内調整

経営陣へ提出する導入計画の立案や、それに付随した関連各所との調整、開発会社の策定など、いざ導入となったときにすぐに動けるよう、前もって準備を進めておきましょう。

 

まとめ

グローバル化の加速や人口減少など日本の企業を取り巻く環境が急速に変わっていく中、人事の役割もまた、企業戦略をサポートしていくことが求められるようになっています。

 

適材適所への人材の配置、優秀な人材の登用など、無駄の少ない効果的な人事を行っていくために、人事分野のAI化をぜひ貴社でも検討してみてはいかがでしょうか。

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