社員が良好に働ける環境を創り出していくうえで「社内コミュニケーション」は大切だと考える企業は少なくありません。
しかし、社内コミュニケーションが会社の成長をも左右するようなメリットを生み出すという事まで意識して取り組んでいる方は少ないのではないでしょうか。
ここでは、そんな社内コミュニケーションについて解説したいと思います。
企業の課題、社内コミュニケーション
HR総研が2016年に実施した「社内コミュニケーションに関する調査」によると、コミュニケーションに対して課題を感じている企業が約8割もおり、多くの企業が問題意識を持っていることが分かりました。
終身雇用が崩壊して以降、労働者が流動的になり、1つの会社に留まるという考え方も減りつつあります。
また、働き方改革などにより労働環境が大きく変わっていく中、組織の在り方や社員の雇用形態が多様化しており、労働者の中での社内コミュニケーションの重要性が薄れているという背景もあります。
その結果、業務効率の低下や離職率の増加につながっており、企業にとっては大きな課題となっているわけです。
社内コミュニケーションの活性化がもたらすメリット
社員同士のコミュニケーションな活発な組織になると、会社全体にどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。
ここでは、そんなメリットをいくつか紹介します。
生産性向上
社員同士が情報を共有するようになると、全体の仕事の進み具合が分かるため、滞っている作業をフォローするようになったり、先回りして準備を行うことができるようになります。
また、チーム内だけでなく部署を超えて情報を共有していくことで、無駄な確認作業などを省くことができるので、業務効率化・生産性向上が期待できます。
社員定着率向上
退職を選ぶ社員の内、最も多い理由は「人間関係の悩み・不満」に関するものです。
常日頃から、同僚や上司に相談できる環境を作っておくことで、こういった人間関係の悩みを事前に把握し、離職を防ぐことができます。
サービス品質の向上
良好な社内コミュニケーションが実現できると、自然と全員が目的や目標を共有していきます。
このことは、会社全体の士気向上につながり、建設的な意見が発信しやすい環境を生み出します。
結果として、サービス品質が向上し、企業のブランド力アップや、顧客満足度の向上につながります。
正当な評価につながる
360度評価に代表されるように、社員の一面だけではなく様々な角度からその能力を評価する制度が注目を集めている中、社内コミュニケーションが活発化すると、こういった従業員の隠れた一面や、日頃の仕事からは見えてこないような活躍を発見することができます。
これにより一人ひとりの能力を正当に評価することができ、社員のモチベーションアップにもつながります。
社内コミュニケーションの改善方法
では、コミュニケーション不全に陥っている職場を、コミュニケーションが活発な職場に変えていくためには、どうすれば良いのでしょうか。
コミュニケーションツールの導入や、社内イベントの実施するといったやり方も真っ先に想像された方もいるかもしれませんが、これらの取り組みをコミュニケーション不全に陥っている状態で実施しても効果的とは言えません。
そもそもコミュニケーションを取る習慣そのものがないため、ツールや機会を提供したとしても十分に活用されないからです。
効果的な方法のひとつとして、上司自身が積極的にコミュニケーションを図るようにするというものがあります。
上下関係がある職場では、部下がなかなか意見を発信できず、結果としてコミュニケーション不全が起きているケースも少なくありません。
まず、上長が積極的に部下と交流し、何を考えているのか、意見を出しやすい状況を創り上げていくことで環境を改善していくことができます。
また、社員一人ひとりに裁量を与えるというのもコミュニケーションを活性化させます。
自分自身で判断できることが増えると、その責任感から判断基準となる情報を集めるようになります。
その過程で、メンバーや他部署と様々な情報を交換するため、自然とコミュニケーションが活発になります。
取り組み事例
ここでは、コミュニケーションを活発化させることに成功した事例を紹介します。
ヤフー株式会社
上司との1on1ミーティングで、効果を上げたのがヤフー株式会社です。
1on1ミーティング自体を導入している企業は少ないと思いますが、ヤフーのユニークなところはまず「ミーティングのテーマ・ゴールの共有」を行ったという事。
そうすることで、1on1ミーティングの本来の目的である「内省から教訓を引き出すプロセス」に正確に立ち返ることができるだけでなく、ミーティングの成果を可視化することで、ミーティングの質を高めることができ、結果として効果的なコミュニケーションを生み出すことに成功しました。
株式会社アカツキ
社員が誰でも月に一度、直々に役員を指定して会社が経費を負担するランチ会を設定することができます。
上下関係がある環境の中、役員と食事を交えながら意見を交換することで、会社全体の信頼関係を育み、自由に意見が言える環境づくりに成功しました。
株式会社資生堂
資生堂は、「若手社員が上司のメンターになる」リバースメンター制度を導入。
対象となる上司は社長や執行役員も含まれており、ITやデジタル領域の知識を若手社員から教わることで、デジタル技術の活用につなげていく狙いがあります。
加えて、若手社員の「伝える」能力を高める効果も期待でき、社員の育成にもつながりました。
クックパッド株式会社
クックパッドでは、2014年のオフィス移転の際、30~40名の社員が同時に料理を作れる巨大なキッチンスペースを設けました。
食材は無料で支給され、社員が自由に料理することができるため、自然とコミュニケーションが生まれています。
まさにクックパッドらしい取り組みと言えるでしょう。
まとめ
社員のコミュニケーションを活性化させることは、会社にとってビジネスを成長させていくうえでの最重要課題と言っても過言ではないかもしれません。
社員同士の交流の中から、今までになかったアイデアが生まれたり、同じ志を持つ仲間が集まり、強いチームが完成したり、様々なメリットを生み出す社内コミュニケーション。
これを機会に、まず人事担当であるあなた自身から、社員との積極的なコミュニケーションを図るように努力してみてはいかがでしょうか。