様々な働き方改革が導入される中、2019年4月から年5日の有給休暇取得義務化がスタートし、最低でも年5日は有給休暇を取得させなくてはならなくなりました。
この記事では、有給休暇取得が適用される要件や、違反した場合に課せられる罰則などについて詳しくご紹介していきます。
2019年4月から、年5日の有給休暇取得が義務化
働き方改革関連法解説では下記のように解説されています。
2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
※出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
これまで、申請された有給休暇の拒否は違法とされる規定はあったものの、企業から積極的に働きかける義務はありませんでした。
今回のような法改正の背景にあるのは、日本人の取得率の低さです。
2017年に厚生労働省が行った年次有給休暇取得率は51.1%、業種別に見れば『宿泊業、飲食サービス業』が32.5%と厳しい労働環境が伺えます。
また、休暇取得への罪悪感やためらいも、有給休暇取得率を低迷させています。
このような状況から、心身のリフレッシュや疲労回復を図るため、すべての企業を対象に有給休暇取得の義務化が始まりました。
この制度により、企業は労働者一人ひとりの有給休暇取得状況を、正確に把握する必要が出てきます。
『誰に何日付与されているのか』『何日消化しているのか』確認できる体制を整備する必要があります。
管理体制が整っていない企業は、勤怠管理システムの導入なども検討されてみてはいかがでしょうか。
有給休暇取得が適用される条件
年次有給休暇は下記2点を満たしていれば、管理監督者やパートなど雇用形態に関わりなく取得することができます。
有給休暇の発生要件
・雇い入れの日から6ヶ月以上継続雇用されていること
・全労働日数の内、8割以上出勤していること
発生要件を満たしていれば、誰でも有給休暇を取得することができますが、所定労働日数によって付与される日数が異なるため、注意が必要です。
原則付与日数】※表1
パートタイムなど、所定労働日数が少ない労働者の付与日数】※表2
比例付与の対象者は、所定労働時間が週30時間未満かつ、所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216日以下の労働者です。
※表1・表2出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
○太枠内は年5日の有給休暇取得の対象
所定労働日数の少ないパートやアルバイトなどは、10日未満の付与日数だった場合、年5日の有給休暇取得義務の対象外となりますが、勤続年数が長くなると付与される有給休暇が10日を超えるケースも出てきます。
義務化対象者の見落としに注意しましょう。
有給休暇取得に違反したらどんな罰則があるの?
法改正以前は、有給休暇取得の積極的な働きかけの義務はなかったため、「溜まった有給が2年の時効を迎えて消滅した」という方も多いのではないでしょうか。
今回の法改正を受け、労働者側から取得申請が出ていなくても、最低年5日は必ず取得させる必要があります。
法改正後、年5日の有給休暇取得義務を違反した場合、下記の罰則を受けることになります。
<違反内容>--------------
・年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
⇒ 30万円以下の罰金
・使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合
⇒ 30万円以下の罰金
・労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合
⇒ 6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金
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有給休暇を取得させなかった場合に罰則があるのはもちろんのこと、有給休暇取得の時季を指定場合は、就業規則に明記しなくてはなりません。
罰則規定に違反している箇所がないか、今一度確認しておきましょう。
中小企業で有給休暇を取得するのは難しい?
法改正により、日本の有給休暇取得率は間違いなく向上することになるでしょう。
しかし、深刻な人手不足で悩んでいる企業などは、『就業規則で休日と定めていた祝日を労働日に設定し、有給消化をそこへ充てさせる』などの方法を取り入れる可能性も考えられます。
これでは、休みの日数が増えていないので、法改正した意味がありません。
『労働者が心身ともにリフレッシュすること』という有給休暇取得の目的に沿った運用をしてほしいものですね。
有給休暇を取得しやすくするには、業務に支障が出ないような体制を作ることが重要です。
・自身の業務代行者を任命しておく
・繁忙期や閑散期を加味した休暇取得の計画を立てておく
・仕事をフォローし合えるように色々な業務を行う
・企業側は早めの休暇計画を呼び掛ける
など、労働者側と企業側双方の努力が必要となります。
まとめ
有給休暇取得で労働者がゆとりを持てるようになれば、作業効率やモチベーション向上も期待できます。
労働者にとってワーク・ライフ・バランスは非常に関心の高い問題ですので、法改正によって、労働者が気兼ねなく有給を取得できるようになったことは喜ばしいですね。
しかし、深刻な人手不足業界や中小企業では、法改正によって大きな負担がかかってしまうことも考えられます。
企業の負担が増大しないよう、政府が仕組みを作ることも必要不可欠と言えるのではないでしょうか。