急激な社会構造の変化に適応しきれず、強いストレスを感じている労働者は増加傾向にあり、精神的な障害を発症して労災認定された件数は、2017年時点で506件にも上っています。

 

メンタルヘルスの不調は、生産性低下や離職の原因にもなるため、企業にとっても関心の高い問題です。

 

この記事では、休職から職場復帰までのステップや、メンタルヘルス不調の対策の取り組みなどについてご紹介します。

 

メンタルヘルス対策と休職者支援の現状

労働者健康状況調査では、働いている人の約6割が「ストレスを感じている」と回答しており、メンタルヘルス対策や職場復帰支援の取り組みは急務となっています。

 

メンタルヘルスに不調を来し、精神疾患を発症すると改善するまで時間がかり、症状が良くなっても、悪化する可能性も考えられます。

 

メンタルヘルス不調により休職した労働者が復帰するには、安心して働ける職場環境を作るなどのサポート体制を整える必要がありますが、下記のデータを見ると十分な対応ができているとは言えません。

 

2017年時点のメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は58.4%、その内職場復帰における支援をしている事業所は18.9%。

 

参考:厚生労働省「平成29年 労働安全衛生調査(実態調査)

 

また、管理者のメンタルヘルスに関する認識の甘さにより、本人からの訴えがあっても軽く考えて、精神疾患を発症してしまうケースもあります。

 

メンタルヘルスに関する正しい知識が重要と言えますね。

 

健康に働ける職場づくりの強化

長時間労働や精神的不調などによる健康リスクが高い従業員を見逃さないためには、産業医の面談指導、健康相談が確実に行われなくてはなりません。

 

そのため、事業者は雇用している従業員数に応じた産業医の選任や、労働者の情報を産業医に提供する必要があります。

 

また、働き方改革関連法による『産業医・産業保健の機能』が見直されたことで、産業医の権限が強化され、産業医は必要に応じた職場の配置転換や、休職などを企業に対して指示できるようになりました。

 

企業側は産業医からの指示に対して報告義務が生じるため、何らかの対応をする必要があります。

 

さらに、産業医の効果を上げるために企業側は労働者の業務内容など、必要な情報を提供しなくてはなりません。

 

年々増加しているメンタルヘルス不調への対策として、企業は労働者が健康に働ける職場づくりを行うことを求められています。

 

メンタルヘルス対策の取り組み

メンタルヘルス不調は予防することが最も重要です。

 

その施策として企業ができる取り組みを見ていきましょう。

 

メンタルヘルスの研修

メンタルヘルス研修は、管理者が対象となる『ラインケア研修』と、労働者本人を対象とした『セルフケア研修』があります。

 

ストレスやうつ病などの基礎知識に加え、ラインケア研修では職場環境改善や相談対応などを学び、セルフケア研修ではストレスへの対処法などを学びます。

 

一人ひとりが正しい知識を身に付け、メンタルヘルス対策の必要性を理解することが重要です。

 

日常的に相談できる環境を整える

メンター制度導入や相談窓口となるような人を選任し、メンタルヘルス関連の情報を管理者へ集約する仕組みを作ると、早期の対応が可能になります。

 

また、気になる従業員がいたら、相談を待つのではなく管理者から積極的に声掛けなどを行いましょう。

 

話を聞く際は『相手の話に耳を傾ける真摯な姿勢』が大切です。

 

内容によっては反論したくなることもあるかと思いますが、否定されると相談者はそれ以上話さなくなってしまいます。

 

相談者が口に出すことで“気持ちを整理することが目的”と割り切った対応を心がけましょう。

 

メンタルヘルス不調者による休職者が出てしまったら

メンタルヘルス不調による休職者が出てしまった時、知っておきたい職場復帰支援の流れをご紹介します。

 

STEP1:病気休業開始および休業中のケア

診断書が提出されて休職が決まったら、療養に専念できるよう傷病手当金や職場復帰支援の手順などについて説明する必要があります。

 

・傷病手当金などの保障

・悩み相談先

・休業できる最長期間など

 

就業規則をもとに休職や復職に関する書類を作成し、説明すると後々のトラブルを防げます。

 

STEP2:主治医による職場復帰可能の判断

メンタルヘルス不調により、休職していた労働者が職場復帰する場合、医師の診断書が必要です。

 

ただし、日常生活での回復状況から判断しているので、必ずしも業務遂行能力が回復しているとは言えません。

 

主治医の判断と、職場復帰後の業務内容や勤務体制などを産業医に伝え、精査してもらいましょう。

 

STEP3:職場復帰の可否判断および職場復帰支援プランの作成

職場復帰の前段階として、下記の項目を確認の上復帰が適当かを判断します。

 

・復帰に関する本人の意思

・病状の回復状況

・職場環境(復帰支援体制など)

・治療に関する問題点など

 

職場復帰が可能であれば、業務内容や治療上必要な配慮、フォローアップ体制などについて決めた職場復帰支援プランを作成します。

 

STEP4:最終的な職場復帰の決定

第3ステップを踏まえて事業場内産業保健スタッフが話し合い、職場復帰が可能かを判断します。

 

STEP5:職場復帰後のフォローアップ

復帰後は症状が悪化していないか、職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかなどを観察します。

 

本人の状況から必要に応じて、職場復帰支援プランの評価や見直し行っていきます。

 

参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

 

まとめ

メンタルヘルス不調は強いストレスに加え、人間関係の問題などの複合的な要因で起こります。

 

誰にでも発症する可能性のある身近な問題として捉え、メンタルヘルス不調者を出さないための取り組みを行うことが重要です。

 

また、メンタルヘルス不調の従業員が出た時は、療養に専念できるよう説明を行うこと、職場復帰のためのサポートをしっかり行いましょう。

 

まずは労働者一人ひとりがメンタルヘルスに関する正しい知識を身に付けられるよう、研修などを行ってみてはいかがでしょうか。

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