対面と違って相手の顔が見えない電話に、苦手意識を持つ人は多いです。
貴社にも、電話応対が苦手な社員がいるのではないでしょうか。
電話応対は会社の印象を大きく左右するため、この記事では、ビジネスパーソンとして押さえておきたい電話応対の基本とマナーについてご紹介します。
電話応対の基本
電話は、声だけのコミュニケーションだからこそ、普段以上に丁寧に対応する必要があります。
まずは、電話応対で押さえておきたい基本を見ていきましょう。
事前準備
電話に慣れていないうちは、手一杯になってしまい、内容を覚えていないこともあります。
電話の取り次ぎや案内をスムーズに進めるためにも、用件や電話番号などを残せるよう、常にメモ用紙と筆記用具を用意しておきましょう。
また、保留や転送、履歴の見方、ボリューム調整といった電話機の操作方法を把握しておくことも重要です。
「もしもし」はNG
「もしもし」は、「申す」を重ねて呼びかける言葉の略語です。
ビジネスシーンにおいて、略語は失礼にあたるため「もしもし」は言わないよう気をつけましょう。
電話を受けるときは「お電話ありがとうございます。○○会社でございます」と名乗り、電話をかけるときは「お世話になっております」などと、添えてから名乗るのが一般的です。
なお、相手の声が聞こえないときは、「お客様?お声届いてますでしょうか」「恐れ入ります、お電話が遠いようで」のように、呼びかけましょう。
明るく、ハキハキ対応
電話はお互いの顔が見えないため、声のトーンや話し方で相手に与える印象が大きく変わります。
電話越しの相手にとって、応対者がどのような立場の人間であろうと、その会社の人間と認識します。
そのため、会社の代表としての意識を持ち、明るくハキハキと話すことが大切です。
分からないことがあっても「確認します」「担当に代わります」と言えば、問題ありません。
焦る必要はないので、落ち着いてしっかりと相手の話を聞きましょう。
自社の人間に敬称・敬語はつけない
ビジネスシーンでは、社外の相手に対して「○○さんは外出中で~」などと、社内の人間に敬称をつけて呼ぶことはありません。
自分より上の立場であっても、社内の人間は呼び捨てにしてください。
例えば、
社内の相手…「あいにく、○○社長は別の電話に出ていらっしゃいます」
社外の相手…「あいにく、社長の○○は別の電話に出ております」
のように、役職者であっても呼び捨てにした上で、敬語も外します。
ただし、ご家族から電話がかかってきたときは、社内の人間を相手にするときと同じように、敬称・敬語を使いましょう。
社外の相手と同じように敬称・敬語抜きで話すと「自分の家族を呼び捨てにされた」と、相手に悪印象を与えます。
電話の受け方とマナー
では、電話を受けるときは、どのような点に注意したら良いのでしょうか。
電話は3コール以内に取る
一般的なビジネスマナーでは、3コール以内に受話器を取るのが好ましいとされています。
多くの企業が3コール以内の対応を心がけているため、これ以上長くなると「待たされている」と感じさせやすくなります。
電話に出るのが遅いからといって、トラブルになることはほとんどありませんが、待ち時間と比例してストレスは大きくなるため早めに取りましょう。
また、待ちきれずに途中で切ってしまう方も多いため、商談や注文といった機会損失を防ぐためにも、早めの対応が重要です。
3コール以内に取れなかった場合は「お待たせいたしました」、5コール以上になった場合は「大変お待たせいたしました」と、一言添えてから名乗りましょう。
社名と自分の名前を名乗る
電話を取ったら、相手が名乗る前に社名と名前を伝えましょう。
受け答えのルールは企業によって異なりますが、一般的には「お電話ありがとうございます。○○会社の△△でございます」が多いです。
お待たせしたときは「お待たせいたしました。○○会社の○○でございます」のように、状況に応じて冒頭の言葉を変更しましょう。
相手の名前や要件を復唱
通常、こちらが名乗ると相手も「●●会社●●です」などと名乗り返してくれます。
名乗り終わったら「お世話になっております。●●会社の●●様でいらっしゃいますね」と復唱し、メモを取って記録に残しましょう。
相手が名乗らなかったり、聞き取れなかったりした場合は、
相手が名乗らない場合…「恐れ入りますが、御社名とお名前をお伺いできますでしょうか」
社名か名前どちらかしか言わなかった場合…「恐れ入りますが、差し支えなければ御社名(ご担当者様のお名前)をお伺いしてもよろしいでしょうか」
聞き取れなかった場合…「恐れ入ります。お電話が遠いようでして、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
と伝えてみてください。
電話を取り次ぐ
電話応対では相手から「○○さんいますか」と、担当者への取り次ぎを依頼されることも多いでしょう。
引き継ぐ場合は「○○でございますね、少々お待ちくださいませ」と返した上で、保留ボタンを押します。
担当者がいる場合は、「●●会社の●●様から1番にお電話です」のように、相手の社名と名前、使用中の回線番号を伝えて終了です。
担当者不在の旨と折り返しの電話を伝える
担当者が不在だった場合は、折り返し電話することを伝えましょう。
具体的には、
「お待たせいたしました。あいにく○○はただいま外出中で、〇時頃に帰社予定でございます。折り返し連絡するよう伝えますので、ご連絡先を教えていただけますでしょうか」
のように、不在のため折り返す旨を伝えます。
また、
- 「差し支えなければ、ご用件をお伺いして申し伝えますが、いかがなさいますか」
- 「わたくしでよろしければ、代わりにご用件をお伺いいたしますが、いかがなさいますか」
と、こちらから要件を聞くと、親切です。
折り返し不要と言われた際は、「かしこまりました。お電話あった旨だけ申し伝えておきます」と言っておきましょう。
静かに受話器を置く
電話は、かけてきた方が先に切るのがマナーです。
電話を受けたら「プープー」という通話終了時の音が聞こえてから、受話器を置きましょう。
相手が電話を切らず沈黙になってしまった場合、「お電話ありがとうございました。こちらから失礼させていただきます」など、一言添えてから切れば失礼にはあたりません。
電話を切る際は、一拍おいてから静かに受話器を置くか、電話機のフックをそっと押した後に受話器を置きましょう。
電話の内容を担当者に伝える
終話後は、できる限り早く担当者に電話があったことを伝えましょう。
メモには、
- 宛名
- 電話のあった日時
- 相手の社名・名前
- 用件
- 折り返しの有無
- 電話番号
- 自分の名前
を簡潔に書いておくと、分かりやすいです。
担当者への共有方法は企業によって異なりますが、一般的には緊急でない限りデスクにメモを置いておくだけで構いません。
緊急の場合は、すぐに対応できるよう電話やチャットツールなどで知らせましょう。
電話のかけ方とマナー
つづいて、電話をかけるときのマナーについてご紹介します。
事前に要件を整理しておく
電話をかける前に、伝えたいことをメモなどにまとめておきましょう。
抜け漏れなく、スムーズに用件を伝えられるため、相手の時間も無駄にせず済みます。
電話する時間に注意
始業前や始業直後、お昼、就業間近、週明けの午前中といった時間帯は、多忙な時間帯のため緊急の要件でない限り避けましょう。
特に、営業電話は多忙の時間帯に電話すると、相手にしてもらえない可能性が高いです。
多忙の時間帯は業界・業種によっても変わってくるため、注意しましょう。
社名と名前を名乗る
電話がつながったら「お世話になっております」と挨拶し、社名と名前を名乗ってから「●●様はお手すきでしょうか」と尋ねましょう。
先方からの折り返しで電話する場合は、名乗った後に「●●部の●●様からお電話をいただき、折り返しお電話をいたしました」などと伝えます。
また稀にモゴモゴと早口で話す人もいますが、聞き取れないと再度聞き返されることになるので、相手が聞き取りやすいようハキハキ話すよう意識してください。
用件を伝える
担当者に取り次いでもらえた際は、再度社名と名前を名乗り用件を簡潔に伝えましょう。
また、話が長くなりそうな場合は「○○の件についてなのですが、今〇分ほどお時間いただいてもよろしいでしょうか」と確認するのが適切です。
不在の場合は戻り時間を尋ねる
担当者が不在だった場合、電話口の相手に戻り時間を尋ねて、かけ直す旨を伝えた上で電話を終えます。
ただし、話し合う必要のない簡単な要件であれば、電話口の相手に伝言をお願いしましょう。
伝言だけで済めば、お互いの負担が減ります。
困ったときの電話応対
電話応対では、スムーズにコミュニケーションできないこともあります。
いつでも落ち着いて対処できるよう、トラブル発生時の電話応対について把握しておきましょう。
相手が名乗らない
社名と名前を名乗る人がほとんどですが、中には「○○さんいますか」など名乗らずに担当者への取り次ぎを依頼されることもあります。
相手が名乗らない場合は「誠に恐れ入りますが、御社名とお名前を伺ってもよろしいでしょうか」と聞いてから担当者に取り次ぎましょう。
なお、名前しか名乗らなかった場合は「●●様、恐れ入りますが御社名をお伺いしてもよろしいでしょうか」のように、促しましょう。
声が小さくて聞き取れない
ボリュームを上げても相手の声が聞き取れない場合、「声が小さい」「聞こえない」と直接的な言い方で伝えるのは厳禁です。
相手に非があると感じさせないよう、
「大変恐れ入りますが、お電話が遠いようですので、もう一度お伺いできますでしょうか」
「大変恐れ入りますが、電波の調子が悪いようですので~」
と、伝えてください。
上記のように間接的に伝えても改善しない場合や、全く聞こえない場合は、「お客様?」と何度か呼びかけた上で「恐れ入ります。
お電話が遠いようですのでこちらからかけ直させていただきます」などと断ってから、一旦電話を切りましょう。
その後、受話器に記録されている履歴をもとに、こちらから電話をかけてみてください。
名前や伝言を聞きそびれた
相手に内容を聞き直すのは、失礼なことではありません。
名前や伝言を聞きそびれてしまった際は、「申し訳ございませんが~」「恐れ入りますが~」などのクッション言葉を用いて、聞き直しましょう。
聞き取れないときは「恐れ入りますが、漢字だとどのようにお書きするのでしょうか」と聞くと、把握しやすくなります。
すぐに答えられない
分からないことや自分では対処できないことなど、すぐに答えられないときは、その場で無理に対応しようとせず、担当者に取り次ぎましょう。
具体的には、
「○○についてですね。お問い合わせありがとうございます。担当のものにおつなぎしますので、少々お待ちくださいませ。」
「申し訳ございません。わたくしでは判断できかねますので、担当のものにおつなぎいたします。」
「申し訳ございません。ただいま担当のものが席を外しておりますので、戻り次第ご連絡させていただきます。恐れ入りますが、御社名とお名前、ご連絡先をお伺いしてもよろしいでしょうか」
などです。
また、保留時間が長くなると相手にストレスを与えます。
そのため、長くなりそうな場合は「お調べするのにお時間がかかるため、こちらからかけ直させていただいてもよろしいですか」と聞いて、折り返し電話しましょう。
その場で答えられなくても、きちんとした返しができれば、相手に不快感を与えることはありません。
クレームの電話応対
企業には、お客様や取引先からクレームの電話がかかってくることもあります。
いざというときに慌てず済むよう、クレームの電話応対方法について把握しておきましょう。
まずは状況理解
クレーム電話を入れてくる相手は、すでに不快感を抱いている状態です。
出だしから感情むき出しで不満を言われることもありますが、相手の状態に振り回されず、まずは落ち着いて相手の話を聞きましょう。
途中で話を遮ったり「それはお客様の過失ですよね」などと、直接的な言い方をするとさらにヒートアップさせてしまい、収拾がつかなくなります。
そのため、異議があったとしてもまずは最後まで話を聞き、状況を理解することが重要です。
クッション言葉を用いる
クレーム電話では、特に言葉遣いに気をつけましょう。
例えば、クレームの詳細を聞くときは「差し支えなければ、詳細をお聞かせいただけますでしょうか」のようにクッション言葉を挟むと、相手に不快感を与えずに済みます。
また、「左様でございましたか」「それは困ってしまいますよね」「仰る通りです」など、同調しながら相づちを打つと、徐々に当たりが柔らかくなってきます。
相手も落ち着いてくるので、話を整理しやすくなるでしょう。
謝罪する
明らかに、こちら側に非がある場合は、深く謝罪してください。
どちらに非があるか分からない場合は「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」のように、不快な気持ちにさせたことについてのみ、謝罪しましょう。
また、クレームでは先方から何らかの要望が上がることもあります。
その場合、上長に代わるもしくは、確認して責任者から折り返す旨を伝えて、すぐに上長に相談してください。
中には不当な要求を突きつけてくる人もいるので、トラブルが発生した際は速やかにベテラン社員や上長に知らせましょう。
電話応対でよく使う言葉遣い
さいごに、電話応対でよく使う敬語表現とクッション言葉をご紹介します。
よく使う敬語表現
スムーズにコミュニケーションを取るためにも、敬語表現はマスターしておきましょう。
確認するとき |
●●様でいらっしゃいますね。 復唱させていただきます。 |
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保留にするとき |
少々お待ちくださいませ。 少々お待ちいただけますでしょうか。 |
相手を待たせたとき |
大変お待たせいたしました。 お待たせして申し訳ございません。 |
了承するとき |
かしこまりました。 承知しました。 |
依頼するとき |
恐れ入りますが、~していただけますでしょうか。 お手数おかけしますが、~していただけますでしょうか。 |
相手の判断を聞くとき | いかがなさいますか。 |
できないとき | 恐れ入りますが、~できかねます。 |
相づちを打つとき |
はい/ええ 左様でございますか |
肯定するとき |
おっしゃる通りでございます。 ごもっともです。 ご指摘の通りでございます。 |
謝罪するとき |
大変申し訳ございません。 誠に申し訳ございません。 |
クッション言葉
「できません」「~してください」などのお断りやお願いは、ストレートに言うときつい印象を与えます。
「恐れ入りますが~」などのクッション言葉を添えてから、本題を伝えましょう。
尋ねるとき |
恐れ入りますが 差し支えなければ よろしければ 失礼ですが |
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要望に沿えないとき |
あいにく 大変恐れ入りますが 申し訳ございませんが |
依頼するとき |
恐れ入りますが お手数ですが お手数おかけしますが |
反論するとき |
大変申し上げにくいのですが お言葉を返すようですが |
マナーを覚えれば電話応対は怖くない
電話応対に苦手意識を持つ人は多いですが、基本マナーさえ覚えてしまえば、それほど難しいことではありません。
電話応対に不慣れな社員には、ご紹介した内容をもとに、一度教育を施してみてはいかがでしょうか。
また、基本マナーと合わせて、問い合わせの多い内容やクレーム発生時の対応方法などをまとめておけば、いざというときもスムーズに対応できるでしょう。