あらゆるものにAIの技術が導入されている今、企業の採用活動でもAIの活用が始まっていることをご存知でしょうか。
ここでは将来、導入する企業の増加が見込まれる『AI採用』について言及し、考えられるメリット、すでに導入している企業の実例などをお話ししていきます。
HRテックとは?
「HRTech(HRテック)」という言葉をご存知でしょうか?
これは人事を指す“Human Resource”の略語「HR」とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。
クラウドやビッグデータ解析、AIなどのIT関連技術を利用して、採用や評価といった人事に関する業務を指す語として用いられます。
この言葉自体は採用活動のみを指す言葉ではなく、リーダー育成や給与計算、業務改善など、幅広い業務を包括しています。
採用活動に限ってIT技術を生かしたサービスの事例を見てみると、億単位の求職者の情報を持ったデータベースサービス、求人募集広告のテキストを分析し、ターゲットとなる候補者の目を引く文言を作成するサービスなど、内容は様々です。
現時点ではまだAIよりも人間が優れている点が多いものの、今後人間の仕事の多くはAIが代行するとされており、人事の仕事も例外ではありません。
例えば、有名なロボット・ペッパーは表情や音声から人間の感情をある程度読み取ることができるようになっています。
こうした現状を踏まえると、AIは将来、事務作業だけでなく面接などもこなせるようになり、採用活動全般を肩代わりする可能性も秘めているのです。
メリット1…業務効率化
では、AIを採用活動に導入することで得られるメリットとは何でしょうか。
今回は大きく二つのポイントにフォーカスしてみましょう。
第一に挙げられるのは「業務の効率化」です。
AIがすべての採用活動を代行しないまでも、応募者のデータの集計や書類選考など、一部の業務を肩代わりするだけでも人事担当者の負担は軽減され、他の業務に時間を割くことができるようになります。
将来は人事部門の業務をAIに一任し、コストカットを図るという経営面のメリットも見込めるでしょう。
現時点でも、反復的な事務作業であれば、正確さ・スピード、いずれの点でもAIが人間を遥かに上回っています。
今はすべての活動をAIに託すレベルにまでは至っていませんが、AIが得意とする領域を見極め、人間と業務を分担していくことはすでに可能です。
少なくとも今後数年は、人事に携わる方がAIをいかに使いこなすかが重要になりそうです。
メリット2…人の“思い込み”の是正
第二に挙げられるのは、採用における“思い込み”の是正です。
AIは過去のデータを分析し、客観的な回答を出すため、主観が入り込む余地がありません。
その特徴を利用すれば、より効率のいい採用を行うこともできるようになります。
ここで、NECクラウドプラットフォーム事業部が行った実験を見てみましょう。
この実験では、新卒採用で「ガッツがある人」を対象に活動を行ったと仮定し、AIに絞り込みをさせました。
採用担当者の考え方にもよりますが、一般的には体育会系の部活動を経験した学生など、「ガッツが身につきそうな経験をした学生」を対象に面接を行うのではないでしょうか。
AIはこうした思い込みを排し、過去の採用データをもとに「ガッツのありそうな人」を絞り込みます。
その結果、「何事も積極的に取り組む」「着実に役割をこなすことが得意」といった内容を履歴書に書いた学生を選ぶのが効果的という結論を出しました。
AIは、ともすれば採用担当の固定観念によって曖昧になってしまうターゲット層を明確にし、書類選考や一次面接など初期のフローでフィルタリングをかけることができます。
すでに導入されている事例
2017年5月29日、ソフトバンク株式会社が新卒採用のエントリーシート評価に、質問応答システム・意思決定支援システムとして知られる「IBM Watson」を活用すると発表し、話題となりました。
ソフトバンクはIBM Watsonの導入によって応募者をより客観的かつ適正に評価しつつ、人事担当者がエントリーシートの確認にあてる時間を75%軽減できるとしています。
具体的に成果があったか否かは同社からの報告を待つ必要がありますが、同社の試みによって、2017年が「AI採用元年」と言われる年になったことは記憶に留めておくべきでしょう。
AI採用に商機を見出し、研究を行ってきたのがNECです。
同社が2015年12月に構築した人材マッチングシステムには、「RAPID機械学習」というAIシステムが組み込まれています。
膨大な応募者の中から、企業が定めるターゲット層に当てはまる人材を高精度で抽出できる画期的なシステムとして、求人サイトを運営する企業などへ売り込みを始め、2017年度は10社程度の導入を見込んでいます。
既存のものや新たに研究開発されたシステムが一般的になれば、より多くの企業でAI採用を導入する企業が増え、採用活動の在り方は大きく変化していくでしょう。
今後もAIの進歩には注視していきましょう!
さらなるAIの進歩によってロボットが面接を行う未来が訪れれば、面接上の嘘や建前が通じなくなり、応募者の面接に対する姿勢も大きく変化すると言われています。
AIに求められるまま個人情報を開示することで生じるトラブルなど、新たな問題の発生も予想されます。
AI採用におけるルールの策定もまた、今後進んでいくでしょう。
現段階で言えるのは、HRテックの動向に注目し、時代の流れに沿った採用方法を実践することが、企業として生き残れるかを左右するということです。
社内の人事制度や選考フローを見直し、これから間違いなく訪れる社会の変化に対応できるよう努めましょう。