パワハラは企業の大小に関わらず起こる可能性があります。

 

被害を受けた従業員が精神疾患を発症することや最悪の場合、自殺してしまった事例もあります。

 

ここではパワハラの定義から起こった場合の対応策を実際の裁判例を交えて解説していきます。

 

パワハラの定義

パワーハラスメントとは、「職場内での優位性」を理由に労働者に対して、「業務の適正範囲」を超えて行われる精神的または身体的に、苦痛や職場環境を悪化させるものを指します。

 

判断基準となるのは以下の3つにあたります。

 

職場の地位・優位性を利用する行為

「職場内での優位性」とは、業務に対しての豊富な経験や深い知識を有していることも該当するため、長年同じ職場に勤務している部下が、新任の上司に対して継続的に嫌がらせ行為を行うこともパワハラに含まれることがあります。

 

業務の適正な範囲を超えた指示・命令

業務とは関係のない事項(送迎の指示、金銭貸借の強要など)を命令することや、注意指導の中で土下座を申し付けるなどが該当します。

 

ポイントは「業務の適正範囲」であるかということなので、上司が部下に対して厳しい叱責を行った場合でも「適正な範囲」と認められればパワハラには該当しません。

 

精神的苦痛を与える行為や職場環境を害する行為

例えば、ちょっとしたミスでも「死んでしまえ」「早く辞めろ」など人格や尊厳を否定する発言は、精神的苦痛を与えると考えられパワハラと認められる可能性が高いです。

 

パワハラの6つの類型

身体的攻撃

目に見えて分かる暴行や侵害行為を指し、殴る・蹴る・突き飛ばすなどが該当します。

 

例えば、胸座を掴まれる、長時間にわたって正座をさせられるなどが含まれます。

 

精神的攻撃

脅迫、名誉棄損、侮辱や酷い暴言を繰り返すなど精神的に個人を侵害する行為があたります。

 

結果的に精神障害を患ってしまうこともよく起こります。

 

人間関係からの切り離し

挨拶をしても無視される、報告しても反応がないことや、他の社員と関りをもてないように仲間はずれにする、別の部屋に隔離するなどの行為を指します。

 

過大な要求

一人では明らかにやり切れない仕事を強制する行為や、業務に必要のない仕事を強制する行為を指します。

 

例えば、部下に私用の買い物をさせることや車での送迎を強制することもあたります。

 

過小な要求

仕事を与えないことや、程度の低い作業を与え続けることを指します。

 

毎日お茶汲みだけさせることや、除草作業だけをさせるなどの行為があたります。

 

個の侵害

業務に無関係な家庭のことや宗教のことなど、プライベートなことに過剰に踏み込む行為も、相手に精神的苦痛や環境を害することがあれば該当します。

 

社内でパワハラが起こってしまったら?

パワハラを止めさせるには

個人で上司や先輩からパワハラが行われている場合は、会社を味方に付けてパワハラを行っている人物を注意してもらうように働きましょう。

 

報告しても会社が動かない場合は、外部の機関に報告すべきです。

 

パワハラを訴えたい

酷いパワハラを受けている場合や、すでに精神障害を発症しているなど実害を受けている場合は、会社を訴えることを考えても良いでしょう。

 

訴える際に気を付けること

証拠が揃っていない場合では、パワハラと認められにくい現状があります。

 

一人だけで戦うには無理がありますので、必ず弁護士に相談してください。

 

労働問題が得意な弁護士がいますので、まずは無料の相談から始めるようにしましょう。

 

残業代未払いや不当な降格などの被害がある場合は、同時にそちらも相談してください。

 

とにかく相談したい

自分でもどうしたら良いのか分からない、とにかくつらいという方はパワハラ専門の相談窓口がありますので、まずは相談しましょう。

 

下記に相談窓口をいくつか掲載していますのでご利用ください。

 

◇厚生労働省 総合労働相談コーナー

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

 

◇NPO法人 労働相談センター

http://www.rodosodan.org/

 

実例(裁判例)

パワハラと認められた判例

事件概要

2か月間、会社から退職推奨のあった後、拒み続けていたAは、営業部管理職から倉庫業務に降格させられました。

 

倉庫業務はこれまで大卒者が就いた前例がなく(Aは大卒)、給与も2分の1となりました。

 

判決

配置転換・降格命令は業務上の必要性が乏しく、Aに対する嫌がらせ目的で行われたものと判断され無効となりました。

 

さらに、不法行為にあたるとし賃金差額当及び慰謝料の請求を会社に命じられました。

 

パワハラとの関係性

会社からの一方的な命令により、退職推奨、降格などパワハラ以外の問題も多くあった事件です。

 

大卒者が就業したことのない倉庫業務に就かせたことは、過小な要求型のパワハラと考えられます。

 

参考:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/33

 

パワハラと認められなかった判例

事件概要

先輩社員に暴言、暴力、徹夜での作業命令などパワハラを受けたとして、不法行為、安全配慮義務違反に基づき会社へ慰謝料を請求しました。

 

判決

パワハラでの慰謝料請求は認められませんでした。

未払い賃金の請求の一部のみ認められたようです。

 

パワハラとの関係性

原告と被告の言い分が食い違い、証拠が足りないことが認められなかった理由です。

 

参考:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/29

 

まとめ

パワハラは職場内で日常的に起こる可能性があるので、被害者にとっては非常に大きな苦痛を伴うものであり、企業に与える損害も小さくはありません。

 

職場全体で予防に取り組み、問題が発生した場合は迅速な対応が求められます。

 

パワハラには明確な線引きはありません。

 

裁判まで持ち込むのであれば、十分な証拠を集めるためにも弁護士に相談することが大切です。

 

悩んでいるのであれば、相談窓口はたくさんありますので、まずは相談することをおすすめします。

 

人事としては、相談しやすい環境・雰囲気作りなど、社員全員が健全に業務を遂行できるようサポートを尽くしましょう。

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