人事のための情報サイト 人事バンク

■介護離職の実態

総務省が2017年に発表した「就業構造基本調査」によると、家族の介護・看護をするために離職した人の数は、年間約9万9100人。

この離職者のうち、75.1%は女性であり、男性よりも女性の方が介護・看護の負担が高いことがわかっています。

 

実際に要介護者を持つ正規雇用者が、週に介護をしている日数の割合を見てみると、男性は「月に3日以内(32.5%)」が最も多く、「週に1回(22.6%)」、「週に6日以上(20.3%)」と続いています。

 

一方、女性の場合は「週に6日以上(30.7%)」が最も多く、「月に3日以内(25.1%)」、「週に1日(19.0%)」と続き、男性とはまったく逆の順に並んでいることがわかります。

 

また、女性の方がより再就職が難しい現状にあります。

 

2017年から過去1年間に介護離職した人のうち、調査時点で再就職できている人の割合は24.8%となっており、約4人に1人しか再就職することができていません。

 

再就職率は、男性が32.1%、女性は22.6%と、10%近くの差が生まれています。

 

そのため、介護との両立が難しいからといって離職してしまうと、収入の低下や社会復帰の困難さなどが問題になっているのです。

 

 

■企業への影響・離職者への影響

では、実際に介護による離職者が出た場合に、企業・離職者にどんな影響があるのか、それぞれ確認していきましょう。

 

≪企業への影響≫

◆人材の損失

企業にとって一番の影響は、やはり人材の損失です。

働く人材が減るということは、それだけでこれまで行っていた業務に影響が出たり、時には営業がままならなくなる事態に陥ってしまう可能性もあるでしょう。

今後高齢化が進んでしまったときには、多数の社員が同時期に介護離職してしまうなどのリスクが高まってきます。

 

◆採用コスト

従業員が減ってしまったときには、新たな人材を確保する必要がありますが、もちろんそこには採用のためにコストがかかってきます。

即戦力となる人材を雇うにも、若い人材を雇い育てるにも、それ相応のコストが必要になるため、介護による退社と採用を繰り返すことが大きな損失に繋がるのは、火を見るよりも明らかです。

 

◆他社員のモチベーションの低下

介護離職による影響は、離職者本人だけに留まりません。

当然離職者が行っていた業務は、他の社員が穴埋めしなければならないため、モチベーションの低下や仕事効率のダウンに繋がってしまう場合もあります。

 

 

≪離職者への影響≫

◆収入の低下

離職者にとっての一番の影響は、収入がなくなることです。

離職したとしても、貯金や両親の年金、財産などで生活をすることができるかもしれませんが、多くの場合は以前よりも苦しい生計になります。

 

◆再就職の難しさ

一度介護離職をしてしまうと、介護が落ち着いてもう一度働こうと思った時に、再就職が難しいことがあります。

また、たとえ再就職することができたとしても、その収入は離職以前よりも低くなってしまう場合が多く、経済的に苦しくなってしまう可能性が高いです。

 

◆身体的、精神的な疲労

たとえ離職して介護に専念することができたとしても、そこには身体的、精神的な疲労が待っていることが多いです。

もちろん、介護施設などの利用をすることができれば、その負担はグッと減ります。

しかし、特別養護老人ホームの待機者問題は未だ改善されていないため、家族に負担が大きくかかることも少なくありません。

 

 

■介護休業制度を活用しよう

日本には、「育児・介護休業法」が制定されています。

これを上手に活用することができれば、会社を離職しなくても介護を行うことができる場合もあるのです。

 

では、実際に従業員から介護を理由に介護休業の申し出があった時、どのように対応すればいいのか確認していきましょう。

 

≪介護休業とは≫

介護休業とは、「育児・介護休業法」によって定められた、要介護者を持つ従業員が家族を介護するために使うことができる休業制度です。

負傷や疾病、または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする場合、93日以内であれば3回まで分割して取得することができます。

 

≪介護休業の対象となる家族≫

◆配偶者

◆父母

◆配偶者の父母

◆子

◆祖父母

◆兄弟姉妹

◆孫

 

≪介護休業の対象とならない従業員≫

◆雇用された期間が1年に満たない者

◆介護休業の申請日から起算して、93日以内に雇用関係が終了する者

◆1週間の所定労働日数が2日以下の者

 

≪介護休業中の賃金補償≫

家族の介護のために休業した場合、その期間中の給料は基本的に支払われることがありません。

しかし、以下の条件を満たしている人ならば、雇用保険から介護給付金を受け取ることができます。

 

◆一般被保険者または高齢被保険者

◆介護休業開始日の前2年に、賃金支払い基礎日数11日以上の月が12か月以上ある

◆休業開始から1か月毎の区切り内で、就業している日数が10日以内である

◆休業開始時の賃金に比べ、80%未満の賃金で雇用されている

 

給付金額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」として計算されます。

支給を希望する場合は事業主が所轄公共職業安定所に申請が必要です。

 

 

■先進企業の取り組み事例

中には、従業員の介護に対して理解を示し、介護休業の他にもすでに様々な取り組みを行っている先進企業があります。

ここでは、その一例となる企業を紹介します。

 

≪花王株式会社≫

大手化粧品メーカーである花王株式会社では、2008年頃からすでに介護離職に対する取り組みがされており、実態把握からその重要性が認識されています。

実際に、2018年には男性従業員の6に1人が介護に関わっており、介護に直面した従業員への金銭的な援助や各部署毎に合った働き方の改革が進められています。

 

≪有限会社すこやか≫

介護事業を行っている有限会社すこやかでは、介護職員の新規採用が難しい現状を受けて、仕事と介護の両立をしやすい環境作りが進められています。

そのために作られたのが、「働き方検討委員会」。

ここでは就業規則の見直しや働きやすい環境の整備が話し合われ、実際にそれを実現することで介護職員が人手不足な中、従業員の高い定着率を誇っています。

 

≪株式会社 阿部兄弟建築事務所≫

建築関係の事業をしている株式会社 阿部兄弟建築事務所では、従業員の技術を育てるために、労働条件や制度を改善することで定着率の向上に取り組んでいます。

介護と仕事の両立にもしっかりと対応しており、介護のために在宅勤務や時短勤務など、従業員の状況に合わせて柔軟な制度を導入しています。

 

 

■まとめ

今後、高齢者の割合が増えていくにつれて、介護離職問題がより深刻化していく可能性は十分にあります。

そんな時、従業員に無理を強いるのではなく、上手く働きやすい環境を整える、労働条件や制度を見直して改善するなど、企業側が率先して対策していくことが、介護離職問題の解決だけではなく、それぞれの会社の発展にも繋がるのではないでしょうか。

まずは従業員がどれだけ介護に関わっているのか、それを把握することから始めてみるといいかもしれませんね。

ノウハウ記事は毎週【火・木】更新!

無料会員登録をすると、新着記事をまとめたメルマガを受け取ることが可能。
その他、さまざまな会員限定コンテンツをご利用いただけます。

無料会員登録する

最新記事

ログインまたは新規会員登録してからご利用ください。

新規会員登録

無料会員登録をすると、さまざまな会員限定コンテンツをご利用いただけます。

無料会員登録する

人事バンクについて

この企業をフォローしました。
フォローした企業の一覧はマイページからご確認いただけます。

この企業のフォローを解除しました。